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「邦訳に4年かかった謎」タレブの「反脆弱性」(アンチフラジャイル)と次回作のSkinInTheGameについて

ブラックスワンで有名なナシーム・タレブの著作、アンチフラジャイルの日本語版がようやく発売されました。めでたい!

邦題は、「反脆弱性」。いやあ、元々これはタレブの造語なんだから、そのままアンチフラジャイルでいいんじゃねえかと思うんですが、まあやっと日本語で出るので嬉しい限りです。

というのも、この本、英語版が出たのは2012年の11月ですよ。つまり、翻訳に4年ぐらいかかってる。僕は友達とこの話するたびに、「ああ、なんか翻訳で問題が出たんだろうなあ。。」って話してたんだけど、案の定、今までタレブの本をすべて翻訳してきた、 望月衛さんが翻訳者から監修者に変わっていた。

一体何があったんだろうか!ブラックスワンてかなり売れてる本だから、商業的な理由じゃないのは確かなんですよね。ちなみに、 望月さんの翻訳する本は金融・経済系でたいてい面白い本が多い。最近だと、ヤバイ社会学書いた人の新作を翻訳している。これも面白そうだ。

まあ、ここ数年、いつ出るのかいつ出るのかとTwitterで訴えてきたけど、最近はもう諦めてただけに、日本語版として出してくれるだけで嬉しいですよ。

もうその間、待ちきれず、英語版で3回以上は読んだから、内容はだいたいわかってるんだけど、やっぱ僕は日本語ネイティブなんで日本語のほうが読みやすいし。

僕のアプリ開発のノウハウって、タレブの本とBasecampの本に書いてることをそのまま実践してるだけなんですよね。だから、このブログの以下の記事とか興味ある人は、間違いなく面白いと思う。

勝者総取り世界の憂鬱
不確実性とは不完全情報のこと
新しい便利なモノは新しい問題も作る

さらにいうと、このアンチフラジャイルという本は、今までの難解なタレブ本の中で一番読みやすいんじゃないかと思う。まず、一作目のまぐれや二作目のブラックスワンのように、金融や経済の予備知識はあまりいらない。

そして、この本は「じゃあ、いったいこの不確実な世界でどう生きていけばよいの?」っていうブラックスワンを読んだ読者に対する答えであり、具体的にこうしたらいいよっていう内容なので、そのぶん読みやすい。

タレブの本は、まぐれとブラックスワンもどちらも最高に面白いけど、初めて読む人には、この反脆弱性(アンチフラジャイル)から入ると読みやすいんじゃないかなと。タレブ自身、アンチフラジャイルが自身の最高傑作だと言ってます。

反脆弱性ってどんな内容?

ブラックスワンでは、非常に小さい可能性で起こるが、それが大きな影響を持つ事象について書かれた本だった。そして、もしそれが悪い事態を起こすものなら十分注意しろという警告がちりばめられている。

こういった事象は過去の一度も起こった事がない場合が多いので、基本的に過去のデータは役に立たない。例えば、僕が自転車で東京を走っていて、突然、酔っ払い運転のトラックに後ろからすごいスピードで引かれたとする。

毎日同じ道を自転車で走っていて、3年間一度もそんなことはなかったけれど、突然そのようなことが起こったら、これは間違いなく僕にとってはブラックスワンな現象です。悪いブラックスワン。

逆に、よいブラックスワンもある。例えば、アプリの勉強会でなにかを発表して、それを見た人がたまたま懇談会で声をかけてくれ、その人が今まで想像もできなかったアプリのアイデアを授けてくれるかもしれない。これはよいブラックスワン。

反脆弱性という本は、日々生きている中で、どうやってブラックスワンという現象を発見し、悪いブラックスワンには気をつけて、よいブラックスワンが起こりやすい状況を作るかというテーマです。

ここでもっとも重要なのが、ブラックスワンを予測しようとしないこと。確立で計算できるカジノのようなケースはごく稀であり、この世界のほとんどの事象は複雑系である。だから、未来を予測しようと無駄な努力はせずに、起きうる結果の大きさに注目しろというのが本の趣旨です。

ある事象が起こるかを予測をするのは不可能だけど、ある事象が起きた時にどれほど影響が大きいかを予測するのは簡単である。そして、ブラックスワンな現象は、リスクとリターンが非対称であるのが特徴。

例えば、普通は車を運転していて重大な事故に遭遇することはまずない。でも、もしその事象が起きてしまったら、人生が終わってしまうかもしれない。これは、ほとんどの場合は大丈夫だけど、なにかが起きた時はとても大きなリスクがあるという非対称性がある。

こういう、ほとんどの場合には何も起こらないけど、起きてしまった時の結果が悲惨だと思われる事柄にはめちゃくちゃ臆病になるのがよい。

逆に、IT勉強会とかに足を運んでも、特に何も得る事がなかったりして、「これなら家で勉強してたほうが効率よかったな。。」って思ったことがある人は多いんではないだろうか。

でも、IT勉強会やパーティに行くっていうのは、たいていの場合、そこまでよいことが起きず、時間の無駄だったかもと後悔することも多いのだが、なにかのきっかけでものすごく重要な、ラッキーなことが起きる可能性を秘めている。ここにも非対称性がある。

こういう、大抵の時は上手くいかないけど、その失敗のリスクは低くて、もし上手くいった時のリターンがすごく大きな場合、失敗を恐れずに積極的にリスクを取りましょうという話です。

人間の脳みそは悪いブラックスワンが起こる確率も、よいブラックスワンが起こる確率も軽視しがちです。だからこそ、悪いブラックスワンに対しては徹底的に臆病になり、よいブラックスワンが起こるチャンスにはどんどんトライするのがよい戦略となる。

また、複雑系の世界(例えば人間相手の商売など)では、トライアンドエラーは知識に勝るということも口すっぱく語られてる。この世界の理論はトライアンドエラーによって出た結果により、後から作られることがほとんど。

あれこれ試した結果、上手くいく方法を発見した事例に基づいて理論が出来上がるのが歴史の常だけど、後からみると、あたかも理論を発見してから結果を出しているように勘違いされやすい。

医療の現場で顕著なのだけど、ずっと人類は「よくわからないけど、こうすると上手くいく」という経験則でやってきた事が驚くほど多いみたいです。そして、後々になって理論的に正しいことが発見されたり。

まあ、この本の内容は広範囲に広がりつつも、中身が濃いので、このブログで簡単に紹介することは不可能であります。薄っぺらいビジネス書と違って要約ができないし、かいつまんで説明しようとしても、中身の百分の一も説明することができない。

というわけで、いつも通り今までの思い込みをぶち壊されちゃう面白い本なんだけど、この本、英語版が発売されてから四年ほどたっているんです。

そうなんです、このアンチフラジャイルの次回作である、「Skin in the game」というのがもうすぐ発売されようとしてるんですね。せっかくだからこの本についても書いてみたい。

タレブの次回作Skin in the gameってどんな本?

次回作はタレブの公式HPにドラフトがアップされていて、Mediumでも公開されている。Mediumのサイトがデザイン的に読みやすいのでオススメです。

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このSkin in the gameっていうのは、「自分がやっている事に対して、自らもリスクを負う」というような意味。

例えば、僕が野菜を作っている農家だったとする。自分が売っている農作物を自らも食べていると、これはSkin in the gameの状態で社会にとって望ましい。でも、自分が作っている農作物は農薬だらけで、それを売ることはするけど自分では絶対に食べる代物ではないというなら、これはSkin in the gameの状態にないことになる。

儲かったら多額のボーナスがもらえて、失敗したら国民のお金で救済されるリーマンショック時の投資銀行のようなシステムは、自らとったリスクを自らで引く受けていないことになり、こういう事象がある社会システムはよろしくないと。逆に、それぞれが自らのリスクを引き受けている状態であるほど望ましい。

これってどんな時にでもいえますね。何か仕事していて、失敗したとしても自分の責任にならないなら、その仕事は適当になるし、慎重にもならないし、結果的に質も下がる。なので、常にSkin in the gameの状況に自分をおくというのも注意するべきとなります。

とはいっても、この次回作、結構いろんな分野の話があって面白い。一応全部読んだけど、僕のオススメはこの3つ。

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特に、1番目のThe Most Intolerant Winsは傑作だと思う。豚肉を禁ずるハラール食メニューの追加や、禁煙などのルールがあるレストランの標準ルールになるには、賛成派が過半数を取る必要はなく、25パーセントを占めればそれでことが足りるという仕組みを論じてます。

例えば、バーベキューパーティで4組の家族を招待した時、その中の1組だけイスラム教徒だったとする。イスラム教徒の家族は絶対豚肉食べないから、どちらでも合わせられる3組の家族はそれに合わせ、そのバーベキューは豚肉なしになる可能性が高い。

このマイノリティルールは大小関わらず、世界のあらゆるところに見られ、ピーナッツアレルギーから宗教的ルールまで幅広い。タレブはここから議論を展開し、厳しいマイノリティルールを持った宗教が、もし他者にもルールを強制する場合はどうなるかという話まで発展していく。

とにかくこの記事は長いけど、今のところ一番人気の文章のようです。

とはいってもタレブの難解な文章を英語で読むのはしんどいので、次回作の日本語版はぜひとも、半年後ぐらいには発売してほしいっす。翻訳はかなり大変な部類だと思うけど、期待しております。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら


「記事を書くほど単体では赤字になる」アプリマーケティング研究所の方に、運営の苦労、収益モデル、タイトルの決め方など、いろいろ教えてもらいました。

みなさんは「アプリマーケティング研究所」というサイトを知っているでしょうか?アプリ開発者の苦労話や、実際の収益モデルなど、興味深い記事がたくさんあるサイトです。

業界人なら一度は読んだことがあると思う。僕自身も、数年前から「このサイトのインタビュー記事はすげえ!」と早くから注目していたんです。あまり他のサイトでは読めない、スモールビジネス系の開発者インタビューが面白いんですよね。

そして、どんな人がやってるのかなと興味持ち、たまたま近くに住んでいることを発見したので、「ランチしてもらえませんか?」と数年前にお願いしたという過去がありまして。

そんな縁があったおかげなのか、先日、アプリマーケティング研究所の有料noteのほうでインタビューさせてもらえませんかと言われました。

僕は二つ返事でOKしたのですが、このチャンスを逃すまじと思いまして、「謝礼とかいらないので、ぜひ僕からもブログ運営の話をSkypeでインタビューさせてください!」と駄目もとで聞いてみた。すると、「いいですヨ」とあっさりとOKをもらえました。

そしたら、「そこまで話してもらっていいんですか?これお金取れるレベルなんじゃないですか?」っていうぐらい、いろいろ教えてもらいました。記事のノウハウやら、ビジネスモデルやら、運営で苦労する点やら。

「コンサルで儲けているわけじゃないからぶっちゃけても別に大丈夫なんです」とは言われたけど、ブログ書いてる人には面白い話なんじゃないだろうか。僕は勉強になることがかなり多かった。

自分が興味あることを中心に聞いたんですが、内容としてはこんな感じ。

1.なぜアプリマーケティング研究所を始めたか
2.キラキラ女子記事に対する、極端に違う読者からの反応
3.タイトルのつけ方・イラスト挿入の効果
4.ブログのビジネスモデル・差別化戦略など

1.なぜアプリマーケティング研究所を始めたか

Q.ちなみに、このブログを始めたきっかけってなんだったんでしょうか?アプリ業界に興味があったとか?

A.もともとネット系の企業にいたんだけど、アプリというよりマーケティングに興味があったんです。アプリに特化したマーケティングのメディアがなかったのでやってみようと思って。

おお、これは意外な答えだった。特にアプリにこだわりがなかったとは。

Q.しかし、会社を辞めて、自分でメディア運営するって相当大変そうですよね。。

A.自分が興味のあることを、自分で好きな人に話を聞きにいけるのが楽しいですね。自分で全部決められるというのが一番いいところです。

僕も個人でアプリ開発してるけど、全てを自分で決められるのは確かに凄くいいところですね。失敗しても上手くいっても、そのまま自分に返ってくるので納得がいくというか。

A.ただ、なにをやるかを考えた時に、10億円あってもやり続けたいことという基準で選んだんです。お金が余るほどあって、数ヶ月休める状況になっても、今までどおりメディア運営を続けると思います。

ああ、この気持ちはなんとなくわかりますね。プログラマもこういう人多いと思う。「休日も特にやることないからプログラミングしてた」とか半分冗談で、半分本当の話をよく聞くし。

僕もアプリとか、なにかモノを作るのが好きなので、お金の心配がなくなっても結局毎日やってると思います。

2.キラキラ女子記事に対する、極端に違う読者からの反応

さて、このスカイプをした時にちょうどバズっていたもので、「なぜインスタは「キラキラ専用空間」ではなくなってしまったのか? 女子大生が語るインスタに起きている変化と、SNSで「着物の価値」が上がった理由。」というアプリマーケティング研究所の記事がありました。

僕も面白いなあと思いながら読んでたのもあり、軽い気持ちで雑談してたら、この記事の裏話が興味深かった。

というのも、この記事では、「自分のインスタにいいねされたら、こっちも相手にいいねしないといけない無言の圧力」とか、「GoProで撮ったものをインスタに載せるといいね率が高まるから人気」とか、女子大生にとっては当たり前らしいが僕にとっては新事実がたくさんあって面白かったのです。

Q.いやあ、あの記事は女子大生のインスタ事情を詳しくレポートしてたけど、普段周りでキラキラ女子大生と接する機会がない僕にとっては衝撃でした。いいねの圧力とか、インスタのために着物着るとか、本当かよ?という感じで、未だに信じられないですよ。

A.あの記事で面白かったのが、読者層によって反応が両極端なんですよ。例えば、Twitterを見てると、おじさん達は否定とか驚きがほとんどで、女子大生のアカウントだったら「あるある」とか、「10回うなづきながら読んだ」とか。

Q.マジですか。僕にとってはアプリマーケティング研究所がそういう世界との唯一の接点なんで、完全に情報の隔離がありますね。あそこまでインスタに熱意ある女子なんて特殊な例だろうと思ってたけど。

A.あの記事で聞いた人は最高峰のキラキラ女子じゃないですよ。どちらかというと、普通の女子大生なんです。もう1年前ぐらいからああいう空気です。最近はCamcanでも「インスタの女王になりたい」という特集があるし、小中学生の雑誌でも「インスタでいいねをもらうには?」というコーナーがある。GoProの宣伝動画でも、SNSにアップしていいねがバババってついていくのを売りにしていたり。

*こちらの動画の1分44秒あたりから

この話を聞いた時は、「これは特殊な女子をブログで取り上げているんだろう」と勝手に想像していた自分の短絡的な発想を修正しなければいかんと思いました。人間、自分では想像できない、または目の前で見たことがまだないという事象に関しては納得できないことがよくあるもんでして。。

3.タイトルのつけ方・イラスト挿入の効果

次に、ぜひ僕が聞きたいと思ってたことが記事タイトルの付け方です。自分もブログやってるだけに、タイトルの重要性は重々承知してるんだけど、すごい難しいですよね。なにが難しいかというと、まずよいタイトルが思いつかない。

さらに、世間では長いタイトルが多くなってる気がするけど、元々はポールグレアムのブログの影響でなんか短いタイトルがカッコいいという変な固定観念があって、どうも抵抗があったのです。そうは言っても結局分かりやすい方がいいかも、ということで最近は長めに書いてるというのが僕の傾向です。

Q.僕が記事のタイトルに時間使うようになったのは、AVのタイトルの影響なんです。長いんだけどクリックさせるタイトルなんですよね。

昔は、大事なのは中身なんだから装飾文字はいらないだろとか思ってたんです。でも、読み手の立場になると頭に入りやすいイメージがあったらついクリックしてるのに気づいたんですよ。「某名門女子大学テニス部所属のお嬢様 緊急デビュー」とか。

その媒体の相当のファンでもない限り、シンプルすぎるタイトルだと興味を持たずにスルーする可能性が高い。そんな時、なにかわかりやすい関連キーワードがあるだけで、自分がクリックする可能性は上がるんですよね。テク系のサイトだと「元アップル社員が起業して作ったのはAIが指導してくれるフィットネスアプリ」とか。

アプルマーケティング研究所では、どうやってタイトルをつけてるんでしょうか。

A.タイトルはすごく重要なんで、毎回何度も書き直しますよ。一時間ぐらいかけたり。今の例だと、タイトルに入っているキーワードで、集まってくるクラスタが変わるんですよ。AVで「お嬢様」だと清楚が好きな人がくるし。(それで見てみたら「ヤンキー口調」だったらガッカリする)テク系の記事で「アップル」というキーワードだと、アップルに興味あるクラスタがくる。

そして、中身がちゃんとそのクラスタが期待している内容とマッチするかも重要です。想定する読者層が読みそうなキーワードをタイトルにいれても、その人たちが期待していた内容と記事の中身が違っていたらガッカリさせてしまう。

ちなみに、スカイプする前に、タイトルはどうやって考えているか聞きたいですと僕が話してたのもあり、メモまで見せてもらいました。そのメモがかなり参考になったので、そのまま紹介。

■1、タイトルはどうやって考えるか
もはや長いタイトルのほうが良い気がしています。(ソーシャル時代は?)

前半をA(「!」か「?」、キャッチーかどうか)
後半をB(その記事に書いてあることを説明するような文章)

Aの意図は ソーシャルのタイムライン戦争で生き残ること
Bの意図は 記事に何がかいてあるか伝えること

Aは記事の中で一番グッとくるところをピックアップする
Bはこういうことが書いてありますということを示す(ここに何が)

AとBをバラバラに5つくらいずつつくって、かけあわせてみてどれがいいか脳内でABテストかけて、一番しっくりくるものを選ぶ。記事のタイトルは最後につけているが、なんだかんだ毎回1時間くらいかける。

ソーシャルのタイムラインでは「アイコン」「最初のテキスト(左上)」「画像・サムネイル」をみんな無意識にみているはず。(どんなクラスターのユーザーがくるかはタイトルで決まりやすい。どんなユーザーが訪れてくるか、かなりコントロールされることになる)

たとえば、映画で「感動の結末」と宣伝されていたら、その「感動の結末」に期待してみにくるひとが多い。もし、そこのユーザー体験と一致していたら「期待通りよかった」となる。この人は「感動の結末」が好きそうな友達にしゃべって、「これは泣けるからいくべき」という。これが、「ほっこり家族愛」と宣伝されていたら、また違うユーザーがくるし。

簡単に例)このブログのタイトルを決めるなら?
技術書執筆は大変すぎて割りに合わないとプログラマ友達からよく聞くけど、それでも出す理由を聞いてみた

1、まずグッとくるところをピックアップする(A)
・本って思った以上にフィードバックがなくて、「名前が売れる」という実感はない
・ツライし儲からないけど、良いと思うよ。おすすめです。

2、全体を説明するテキストをつくる(B)
・プログラマの友達がそれでも書籍をだす理由
・プログラミング書籍をだした友人の意外な本音

3、AとBをかけあわせる。

・「名前が売れる」という実感はない。プログラマの友達がそれでも書籍をだす理由
・「ツライし儲からない」けどおすすめ。プログラマの友達がそれでも書籍をだす理由
・「名前が売れる」という実感はない。プログラミング書籍をだした友人の意外な本音
・「ツライし儲からない」けどおすすめ。プログラミング書籍をだした友人の意外な本音

この中でどれがいいかな?と選んで、そこからまたブラッシュアップする感じ。
(読んでほしいターゲットユーザー、本文を読んだ時の読後感と合っているか、読み心地の響きやひらがな漢字のバランス)

・ 書籍を出すのは「ツライし儲からない」でもおすすめ。プログラミング本を5冊だした友人が語った苦悩と本音。
・ 書籍を出すのは「ツライし儲からない」それでも友人がプログラミング本を書くのをやめない理由。

なるほど。こうやってタイトルをひねり出していたのか。。どんな分野でもそうだけど、誰かが作った結果を参考にする材料は世の中に溢れている。ただ、その過程で考えていることをこんなふうに聞ける機会ってなかなかないんですよね。

ソーシャルで記事がシェアされて拡散される時代なので、今は長いタイトルのほうが合っているというのはなるほどなと思った。昔はRSSリーダーの一覧で切れない長さに収める必要性があったけど、最近はみんなSNS経由からきてるだろうし。

補足として、以下のような情報も教えてもらいました。

ファミマの冷凍食品が「インスタ」+「ラノベ化?(説明的タイトル)」していた。みんなそうなっていくのかな?

これはあくまで海外英語圏の統計データで参考ですが、

1、サムネイル画像を入れるとクリック率+27%
2、偶数よりも奇数のほうが20%も吸引力がある
3、疑問系で終えるとクリック率が2倍になる
らしいですよ。

Q.そういや、一時期からブログ内でオリジナルのイラストが挿入されるようになりましたよね。あれ、個人的には視覚的に読みやすくていいんですが、効果はやっぱあったんでしょうか?

A.最初はこういう単体記事だけでイラストを入れようと考えたんです。
10秒マンガでわかるマーケティング。「アプリを出す前に知っておきたい、アプリストア5つの特徴」

これは、「萌えに媚びている」「ふざけている」みたいなリアクションがくると思ってたんだけど、「かわいい」「わかりやすい」と言ってもらえて。

教科書のエレンベーカー先生などもそうだけど、逆に、萌え絵寄りのテイストって、一般化しているのかもしれません。それで、そこからイラストを入れはじめることにしました。コストがかかって大変なんですけど。

イラストを入れた一番の影響は、ツイッターで記事を一口サイズに区切ったものが、拡散されやすくなったことですね。

6,000RT

1,200RT

主観ですが、その他のイラストつかうメリットも。
・タイムラインで目が行きやすくなる(サムネイル)
・「あのイラストのサイトか」と認識してもらえるようになった
・どこか取材にいくと「イラストが良い」ばかり言われる。本当に。 (嬉しいような寂しいような??)

ある本で読んだのですが、絵をつかって説明をすると、3日後の記憶が6.5倍ものこりやすいそうですよ
https://twitter.com/appmarkelabo/status/831730476427665413

ただ、イラスト代金もかかるし、実はアプリマーケティング研究所の記事は書けば書くほど単体では赤字になるんです。バナー広告では全然ペイしないので。収益モデルは有料のPR記事と有料購読のnoteなので、それにつなげる、ある意味「カタログ」的な意味合いもあるのかなと。

ここで、ビジネスモデルなどの話になったので、そこもいろいろ聞いてみました。

4.ブログのビジネスモデル・差別化戦略など

Q.バナー広告は全然ダメなんですかね。

A.これはニッチジャンル特有の課題かもしれないけど、コストをかけて良い記事をつくって、記事がたくさんの人に読まれても、(記事単体だと)コストがそこまで回収できないんです。無料で良い記事をつくって、記事に広告(アドセンスとかのこと)をつけてコスト回収する、というモデルが成立しにくい。

アプリマーケティング研究所の記事は、記事を出せばだすほど、記事単体では99.9%の確率で赤字になります。(笑)

去年「はてなブックマーク年間ランキング 2016」に2つの記事がランクインしました。それのアクセス解析データをまとめたのが以下の図。ざっくりどちらも20万PVくらい。

20万PVでアドセンス最適化しても、せいぜい1PV×0.3円くらいだと思うので、広告収益6万円にしかならない。メジャーなジャンルだと、そこからの検索流入が積み上がるのだが、ニッチなジャンルだとあまりそこが期待できないんです。

たとえば、アプリビジネス系のキーワードで、トップレベルに大きいキーワードは「アプリ開発」だと思うけど、グーグルで月1万回くらいしか検索されていない。こういう理由で、記事単体だと制作コストは回収できないし、夢もないんですよね。。

ただ、希望のある話だと、noteの定期購読者がすこしずつ増えていっています。元々、「本を出版してみないか?」というお誘いがあって、本を出すぐらいならnoteの課金モデルのほうがいいんじゃないかなと思って試したのがきっかけでした。

収益全体の中でもnoteの課金購読の割合が増えてきているので、将来的にはこちらを収益の柱にしたいですね。

なるほど、やはりニッチジャンルに有料購読型は相性よいみたいだ。昔と違ってnoteみたいなマネタイズできるプラットフォームができたのがデカイですよね。

僕も最近、「リジェクトされまくったiOSの自動継続課金が規約変更でついに利用でき、使いやすくもなったので、Androidの定期購入と比較してみる」という記事で書いたけど、良質なコンテンツにみんなお金を払う時代になってきたのもある。

僕自身、NewsPicksとクーリエジャポンを購読している。以前ははてぶから面白そうな記事を選んで読んでいくという行動パターンだったけど、最近は有料購読している記事のほうが面白い場合が多いので、先に有料の記事を読んで、その後にはてぶで選んだ記事を読むという順番に変わった。

Q.アプリマーケティング研究所は似たポジションの競合もあまりないですよね。

A.実は、今はまだかなりのゆるげーなんです。みんなビジネスモデルを模索している段階なので。アプリで言うと、数年前のまだ大手企業がランキングにあまりいなかった時代みたいな。

ただ、紙の雑誌の人たちが本格的にネットのほうに流れてくると、一気に競争率が高くなると思います。すげえ編集者の人たちがいるから殺されちゃう。そういう危機感が常にあるので、頑張って書く力をあげようと意識しています。

なるほど、日本ではNewsPicksとかが収益モデルがちゃんとあって、レベルの高い編集者を雇えて、結果的に面白い記事が提供できる循環になった一つの例かもしれないが、今後はもっと増えていくのかもしれない。

海外だと「The Information」っていう、結構高めの価格設定だけど、良質なテク系の記事だけ有料購読で配信するっていうサイトが最近人気だと聞いた。これも、大手の新聞から有名編集者達を引き抜いて作ってるらしいし。

Q.最後に、ブログ運営やってきて、これ失敗だったなという話などありますかね?

A.以前はセミナー(講演)のレポート記事を書いていたが、いまではほぼ書いていません。これはもっと早く辞めればよかった気がする。セミナーレポートはとても楽なんです。セミナー主催者や講演者が記事を拡散してくれやすいし、講演する人が確実に準備して話す分、言葉がコンパクトに洗練されているし、そのまま書き起こすだけでも形になりやすい。

これの何がダメかというと、誰がやっても同じような記事になるから。どのメディアが書いても同じような記事になるから。PV数を増やすという意味ではいいけど、記事をつくる力はつきにくい。

そのメディアのファンになってもらうには、ここの記事はおもしろいよねと思ってもらわないといけない。もちろん、講演をわかりやすくまとめるのも、いろんなスキルが必要なのは間違いないのですが。

一方、インタビューは言い方はわるいけど、労力がかかるしめんどうくさい。そして、それがたのしくもある。

・誰にインタビューするのか?
・どんなテーマでどんな質問や議論をするのか?
・聞いた話をどう構成/編集してまとめるか?
・どこにどんな図/イラストをいれるのか?

などなど、やることの幅がたくさんあって、企画やアイディアの入る余地があるので、より経験値が溜まりやすい気がします。なので、セミナーレポート記事は、初期のコンテンツとしてはアリだけど、もっと取材コンテンツに力を入れた方がよかった。

なるほど、これは僕がブログ始めた時も、少しだけ似たようなことがありました。だいぶ前だけど、最初はカウンターストライクっていうPCゲームの洋ゲーのニュースを日本語でまとめるサイトを始めたのが最初だったんですよ。

今は、できるかぎり自分しか書かない内容を選ぶようにはしてるけど、あれはあれでブログ初心者の頃の助走期間としてよかった。みんなに読んでもらえやすいし。

しかし、今回話をしてて思ったのは、書く力を上げ続けるという意識がすごく高いんだなということです。「すごい編集者達がWebに移動してきたら殺される。負けないような力をつけないと」ということを、話している時に何度も聞いたので。

これ、プログラマの人達が常にスキルを高め続けるのと似てますね。どんな業界でも、そういう部分は一緒なんですね。

補足

ちなみに、今回の記事のきっかけとなった、僕がインタビューを受けた有料記事はこちら。途中までは無料で読めるようになってる。

「アプリの中身」まで翻訳したら、海外でも課金ユーザーが増えた。ツールアプリで生活する個人開発者に聞く、アプリの翻訳とマネタイズのコツ。|アプリマーケティング研究所|note(ノート)

この内容は、広告の出し方とローカライズの話なので、僕のブログのこのへんの記事と関連があります。

*ローカライズ
iOSアプリを8ヶ国語に翻訳した過程でわかったこと
アプリを一気に多言語へ翻訳・ローカライズしたのを若干後悔してる

*広告
ツール系アプリに広告つけるのが難しすぎる
ツール系アプリにApplovinの動画広告を試した結果
アプリに広告があると離脱率はどれだけ高まるかをABテストしてみた

アプリマーケティング研究所の有料noteは、ビジネスに役立つ情報やノウハウなどのコンテンツがメインらしい。確かに、投資や教育という分野になるとみんなお金出しやすくなりますよね。

僕のブログだったら、「こんなこと思いました」系の記事だと誰もお金払わないだろうけど、「自分のアプリで試した検証結果やノウハウ」系の記事だと有料noteでもみんな買ってくれるのかな?

今度気が向いたら単発記事で一回試してみたい。ちゃんと儲かるなら、アプリ開発系の人が買いたくなるような検証・ノウハウ記事を頑張って書くモチベーションもわきそう。

ただ、毎週いいネタがあることはまずないので、購読モデルは厳しそうだ。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら


リジェクトされまくったiOSの自動継続課金が規約変更でついに利用でき、使いやすくもなったので、Androidの定期購入と比較してみる

去年、フィルシアラーさんがiTunesの責任者になってからというもの、iOSアプリのビジネスが格段にやりやすくなりました。

僕としては、アプリの審査時間が平均1週間から2日以内ぐらいになったのが一番大きく、その次にデカイのが自動継続課金をツール系アプリでも使えるようになったことです。

昔のAppStoreでは、自動継続課金はメディア系のアプリだけじゃないと使えないというルールだった。そのため、雑誌とか出版系じゃないツール系のアプリは自動継続課金を組み込みたくてもことごとくリジェクトされるという悲しい事例が世界中のあちこちで起こっていました。

そのため、ツール系アプリだけど審査通すために無理やり定期ニュース発行して、メディア機能もありますよという建前を作ったり、Appleとコネを作らないと厳しいという話もよく聞いていた。とても悲しい時代でした。

しかし、今では「継続的なバリューをユーザに提供する」という条件を通れば、ツール系アプリでも堂々と自動継続課金を使えるようになったのです。今までは、クラウド機能があるSaaS系アプリでも「メディア系じゃないからダメです」とサクっとリジェクトされるのは当たり前だったので、いい時代になりました。

詳しくはアップルのガイドラインを。

僕のTaxnote(確定申告する人向けの帳簿アプリ)では、「Taxnoteクラウド」というオプションで自動継続課金を使っている。(iOSやAndroidの複数端末で、日々の帳簿データを自動同期できるというオプション機能。)昔はクラウド機能つけても何度もリジェクトされてたので不安だったけど、新ガイドラインでは普通に通った。

一回買い切りしか選択肢がないと、継続的なビジネスをするのが非常に難しいので、アプリでビジネスしてる人々にとってこれは本当に大きな出来事です。Androidでは前から余裕で可能だったけど、課金系はiOSのほうが圧倒的にお金出す人多いので。(全体のシェアはAndroidが圧倒的なのに、課金売り上げはiOSがAndroidの約2倍です。)

*iOSアプリとAndroidアプリの収益性と開発効率について

ちなみに、昔のつらい時代を知りたいという方は昔書いた記事があります。今読んでも役に立たないので、大変だったんだなとしみじみしたい人向けです。

iPhoneの月額課金で直面するマニュアルにないルール
iPhoneの月額課金はツール系で使えるか
iOSの自動継続課金での注意事項

さて、iOS開発者によって今はいい時代だということが確認できたところで、iOSとAndroidの継続課金システムの使いかってを比較してみたい。TaxnoteのiOS版では去年の秋頃に自動継続課金を使い始めて、TaxnoteのAndroid版でも春ごろから使い始めたので、その体験からの感想です。

iOSの自動継続課金は使いやすくなった

まず、iOSからです。個人的な感想だけどこんな感じ。

@審査 => Androidより面倒だけど、以前よりだいぶまし
@価格変更などのシステム => すごく使いやすい
@分析ツール => けっこう使いやすい

以前はそもそもツール系で審査通らなかったり、運良く審査通っても、もともとは出版系アプリのために作られた仕組みなので使いかってが悪かった。

でも今はツール系でも使えるし、なにより価格変更、分析ツールなどのシステムがめちゃくちゃ使いやすくなっている。

まず、審査なんですが、通りやすくなったといえ、そこはアップルなのでAndroidのようにほぼ全自動で数時間後に使えるようになるというようなユルユルではない。普通の一回買い切り課金を実装するより審査が厳しい。

まず、アプリの説明文に自動継続課金の注意事項(解約方法、自動継続の仕組みなどを書いた文章)を書く必要がある。あと、説明文に課金の価格も書いておかないといけない。また、アプリ内からも自動継続課金の注意事項をユーザが課金を購入前に読めるようにしておかないといけない。

上記のルールはアップルのガイドラインには全部書かれてないんじゃないかな。アップルは、審査を体験してみて始めて説明されるガイドラインが結構あります。まあ、昔みたいに審査の返信も一週間待ちとかじゃないので、慣れていない最初は気長にやりましょう。

ちなみに、アップルのレビューワーは最初の返信でガイドラインのコピペを貼り付けてくるので、ハッキリとどこを修正したらいいか分からないことが多い。こういう場合は、具体的にどこをどうすればいいの?と返信してみましょう。コミュニケーション取ったほうが修正箇所もハッキリするのでよい。

ここはAndroidのほうが圧倒的に楽なのは言うまでもありません。Androidは数時間後に使えるようになるのが当たり前です。

次に、iTunesConnectで自動継続課金する時の価格設定などのシステム。これはかなり使いやすい。普通の買い切り課金だと100円単位ぐらいでしか設定できないんだけど、継続課金だと10円単位ぐらいで細かく設定できる。もちろん国ごとに価格を変更したりもできる。

上記は当たり前として、iOSがAndroidより圧倒的に使いやすいのが、リリースした後の自動継続課金価格の変更システムです。これ、コード側をいじらずにiTunes側からWebでサクッと変更できるんだけど、この仕組みがよくできてる。

例えば、最初は「月額500円」でアプリを出していたとする。途中で気が変わって、やっぱり「月額800円」にしたいとなった時どうすればよいか。

これ、SaaS系のサービスでよくやるのは、月額500円の時期に加入した人はそのままの値段で今後も購読を続けることができるようにして、新しく購読する人は月額800円で購読が始まるようにする。英語だとGrandfatheringとか言います。

でも、これをシステムでちゃんと動くように対応するって相当面倒だし、デリケートなところだけあって大変なんですよね。昔SaaSビジネスの価格戦略とかを勉強していた時は、Grandfatheringの悪夢みたいに呼ばれてました。

これをiOSの自動継続課金では全部やってくれる。もちろん、現在月額500円で購読してくれる人も、来月からは全員値上げで月額800円にするという設定も可能。

そして、来月から月額500円を月額300円に値下げしたいって時はどうなるか?その場合は、月額500円で購読している人も自動的に月額300円になります。これもスムーズでいいですね。

自動継続課金の価格設定のマニュアルはこちら。Androidはここの仕組みが使い難いので、圧倒的にiOSのほうがいい。

最後に自動継続課金の分析ツールについてですが、Web系苦手なアップルさんには珍しく、結構使いやすくてよい。

現在のアクティブな登録数。
アクティブな無料トライアル数。
リテンションおよび無料トライアルのコンバージョン率。

上記のデータがiTunesの「売り上げとトレンド」タブで見ることができる。これ、以前は無料トライアルは何人やってくれてるかとかも一切見れなかったんですよ。なので、一気に改善した。自動継続課金のユーザが減っているか、横ばいか、増えているかも時系列グラフでパッと見てわかるのもよい。

Androidのコンバージョン計測は、インストール日から何日後のコホートが見やすいから、どっちがよいかは優劣つけがたいけど、iTunesもけっこういいです。少なくとも、昔に比べて一気によくなりました。

Androidの継続課金は価格変更が面倒

さて、今年に入ってからTaxnote、ZenyListTimerのAndroid版を作ってまして、自動継続課金も使ってみました。

個人的な感想はこんな具合。

@審査 => 自動なのでめちゃ楽
@価格変更などのシステム => コードを書き直す必要あるので使い難い
@分析ツール => まあまあ使いやすい

まず審査ですが、Androidではアプリのリリースも、買い切りのアプリ内課金も、定期購読のアプリ内課金も、数時間後には自動的に有効になります。Appleの審査に何度も時間かけてきた自分としては天国なんじゃないかと思うぐらい。

次に、Androidの定期購読の仕組み。審査は簡単に通るけど、価格変更がすごく面倒。なんと、Developerコンソールのシステム側で価格をあとから変更できない。ちなみに、Androidでも一回買い切りの課金はシステム側で変更できるんだけど。

じゃあ、価格を変更したい時はどうすればいいかというと、新しいアプリ内課金のIDをデペロッパーコンソールで作成して、そのidをコードに埋め込んでリリースしないといけない。えらい面倒。つまり、アプリ自体をアップデートしないといけない。

ちなみに、月額300円から、月額500円に値上げしたいケースで、以前のバージョンで月額300円で購読しているユーザはどうなるの?ってのが気になると思う。この場合、そのユーザは購読をキャンセルしない限り、月額300円で契約し続けることができる。

この仕組みなので、値下げする時は面倒そうだ。iTunesのように既存の価格の人も自動的に値下げとかできないだろうから、「一度キャンセルしてもっかい購読し直すと安い価格で定期購読できるからお得ですよ!」とかわざわざ告知しないといけなそう。

この記事とか参考なる。
アプリ内アイテム → 定期購入 の値上げ方法(Google Play 課金)

ついでに、Android版のアプリ内課金で注意なのが、一度有効にした課金アイテムは、その価格がアプリのPlayStoreの説明文の価格レンジにずっと反映されて消すことはできないということ。

例えば、980円の定期購読課金を作成して有効にする。そして、その後、それをやめて、現在は、500円の定期購読のみ提供するようにしたとする。それでも、PlayStoreの説明文には、「このアプリは500円~980円の課金を提供してます」みたいな表示のままになる。

これは消せないらしい。詳しくはこちらを参考。
1度有効にした定期購入アイテムは2度と無効にすることはできない、絶対に、如何なる理由や事情があっても……だ!(Google Play 課金)

最後に分析ツールですが、これはAndroidのやつもまあまあ使いやすい。一週間後ごとにコホート分析が見れるし、コンバージョンも表示してくれる。見やすいわーってほどでもないけど、そこまで悪くはないんじゃないでしょうか。

定期購読テストのしやすさ

ついでに、定期購読のテスト環境も比べてみたい。

まず、iOSはアプリをDebug環境で定期購読テストできる、Sandboxとかいう仕組みがある。ようは、アプリをストアにリリースする前に、自分で定期購読を実機でテストできる仕組み。これはそんなに使いやすいわけでもないけど、Androidよりはましである。

なぜかというと、AndroidはいちいちPlayStoreにα版としてアップデートして、数時間待ってそれがPlayStoreに反映されてからじゃないとテストできないから。

さらに、iOSの定期購読は、テストする時は定期購読の時間がいい感じに短くなるのでやりやすい。1ヶ月更新の課金をテストする時は5分で更新のタイミングがくる。1年更新の課金をテストする時は1時間で更新のタイミングがくる。これは地味に便利。

Androidはというと、まずPlayStoreにアップデートして、それが反映されるまで数時間待ってからじゃないとテストできないのに加え、月額課金の更新タイミングは1日に短縮されます。

1日って!長すぎるわ!つまり、1日待たないと更新のテストできないので面倒だ。いったいどうしてこうなったのだろうか。

継続課金はギフトカードで買えるか?

アプリ内課金を提供している時によくある問い合わせが「クレジットカードを使えないのですが、購入する方法ないですか?」というもの。こういう時に便利なのが、コンビニで売っているiTunesカードです。

しかし、iOSはiTunesカードで継続課金を購入できるけど、なんとAndroidではGooglePlayのギフトカードで定期購入ができません。これは落とし穴なので注意。

一体いつからAndroid アプリの定期購入代金を Google Play ギフトカードで支払うことができると錯覚していた?(Google Play 課金)

ちなみに、一部のアプリはPlayStoreのギフトカードで定期購入を買えるようで、この違いはどういう理由なんでしょうか。謎すぎる。誰か教えてください。

さらに補足すると、iTunesカードなどで継続課金を購入している人にとっては、年額購入を用意してくれたほうが楽なようです。月額課金に年額購入の選択肢を用意する意味はこういうところにもあるんですね。

継続課金についての雑感

最近はアプリで継続課金するのにユーザが慣れてきている気がする。これは、食べログだったりクックパッドだったり、Netflixだったり、スポナビライブだったり、いろいろな月額課金サービスをアプリから購入する機会が今まで以上に増えてきたからじゃないだろうか。

もともとはWebのものにお金を払うなんて習慣がユーザにはなかったのだが、インターネットの普及と同時にWebサービスも増えてきて、Webの世界では定額課金サービスは当たり前になっていった。

その次にアプリの時代になったんだけど、誰でも有料アプリ・有料課金を一回買うまでは大きな抵抗感があるんですよね。でも、例えば、一回でもLineで有料スタンプを買うのに慣れると、2回目からはあまり抵抗がなくなる。

僕は、「アプリがWebと連携しているか」という事実が継続課金をユーザが購入してくれるかどうかの納得感につながるだろうと当初思っていたんだけど、それより重要なのはユーザ側の継続課金に対しての慣れが大きいのではないかと思います。お金払って使いたいと思うかどうかは大前提として。

そういう意味で、アプリでもWebでも、サブスクリプション型のサービスが増えてきている昨今はビジネスがやりやすくなっているなと感じる。

実は、Taxnoteクラウド(iOS・Android端末で自動データ連携できたり、その他の機能が有効になる)という月額課金オプションを去年リリースした当初はドキドキだったんですよ。

まず、「月額課金をやるなんて許せない!」とか、「買い切りじゃないと困ります!」とか言われるだろうなあと最初はヒヤヒヤしていた。でも、一回買い切りでは継続的に開発続けるのは難しいので、上手くいかなければ未来はどうせないんだしと思ってやってみたんですね。

そしたら、ネガティブな反応は思ったより少なくて、普通に喜んで使ってくれる人が多かった。これならAndroid版作る価値もあるなと思い、今年に入ってTaxnoteのAndroid版も作ったわけです。今までアプリで稼いだ貯金を使って。

ツール系のアプリって継続的なアップデートが重要で、一回買い切りだと何年も開発を続けるのが難しいから自動継続課金が上手くいくかはとても重要だ。ちなみに、「続けるのが難しい」という部分を具体的にいうと、お金が儲からないという意味なんですね。

例えば、あるアプリを3年前に一回買い切りで購入したユーザは、その後アプリがアップデートしたり、iOSのアップデートに対応したり、ユーザサポートを続けていたとしても、特にお金をかけずに使い続けることができる。

これは、ユーザからすると一見よいことのように見えるのだが、お金が継続的に儲かる仕組みがないと開発者はやる気がなくなって、そのうち開発がストップしてしまうのは避けられない。

もちろん、一年に一回程度の軽い修正ぐらいであとは放置するという姿勢なら、そこまでコストもかからないし悪くないんだけど、やっぱりちゃんと儲からないとそのアプリに力入れるインセンティブがなかなか働かない。フルタイムで時間使うのは諦めて、本業の余った時間でサポートするぐらいになる。

いやいや、昔のパッケージソフトみたいにTaxnote1、Taxnote2、Taxnote3と毎年別バージョンを販売すればいいじゃないか?と思うかもしれない。

もちろん、大きなアップデートごとに新しいバージョンをリリースするというのも一つの手です。ただ、アプリってちょくちょくユーザの声を聞きながらアップデートしていくのが効率的なので、このやり方はやりたくないんですよ。

このやり方だと、大きくデザインが一新されるとか、大きな新機能がつくとか、ユーザの買い替えを促す新しい理由が必要となり、目立たないけど重要な改善などをちょくちょくやっていくインセンティブは小さくなる。

僕みたいに、できるだけ新機能を増やさずシンプルなものばっかり作ってる場合は致命的です。あと、昔のバージョンを使い続けたいという人をサポートし続けることもこのモデルだと難しい。

というわけで、この問題はずっと前からiOS開発者が訴えてきたアプリビジネスの構造的問題だった。

「Appleが自動継続課金を使いやすくしないのは、ユーザがアプリへ使う費用が高くなれば、iPhone本体を売るAppleのビジネスにとって都合が悪いからだ」とかいう分析なども海外のブログで書かれたりもしてました。

僕も当時、「ふーん、確かにもっともな理屈だな。それならこれからも期待薄か。。」と思ってたもんです。ところが、iTunesConnectの責任者にシアラーさんがなったら一気に流れが変わった。

「我々はiOS開発者が抱えているこの問題を認識している。ちゃんとiOS開発者が継続的にビジネスを続けて、AppStore全体に出来のよいアプリが増えるようにしたい!」みたいなことを言って、iOS開発者はみんなブラボー!となった。実際、本当に改善されたし。

ちなみに、継続課金でお金をもらい、ユーザのデータをサーバで管理するようになると、買い切り型や広告のみのモデルに比べて日々のストレスが半端ない。Herokuサーバが落ちたらどうしようとか、バグが発生したらどうしようとか、今までなかったストレスが発生する。

これもずっとビビってやってこなかった理由の一つだった。半年以上やってみてどうだったかというと、予想通りのストレスで、「思ったより気楽だわ」ってことはなかったです。

これも、Instapaperを開発して、数年前に売却したMarcoさんが「いつもサーバのことを気にしていて休まる暇がなかったけど、Instapaperを売却した時は本当に肩の荷が降りた。」って言ってましたね。

Webサービスを運営している人にはあるあるだろうけど、[継続課金+データベース管理]を検討する時はこのストレスも考慮に入れるとよいかも。

まあ、ユーザがお金を払ってくれるものを作れるかが一番難しいので、そんなこと最初から心配しても意味ないよという話でもあるんですが。なんにせよ、一番ユーザがお金を払ってくれるiOSで仕組みが整ってくると、新しいアプリを作ってみようかなというモチベーションが出ますね。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら


モテるiOSエンジニアがどういう基準で会社を選ぶか聞いてみた

数年前からエンジニアの方達がモテモテです。特に、勉強会でモリモリ発表とかして名が売れてくると、いろいろな会社からさらにモテています。すると、さらにモテがモテを生むようです。

ちなみに、採用する側の立場としては、大企業からベンチャーにいたるまで、「優秀なエンジニアが欲しいんだ!」という話をよくききますが、優秀なエンジニアの人達はいろいろと選べる立場だから、担当者の人達はみんな大変そうです。

さらにいうと、いい会社であればあるほど、会社側が取りたいエンジニアのレベルも上げてくるので、お眼鏡にかなった人達を見つけるのは結局どこも難しくなる。

となると、結局、よいエンジニアの人達を取りたい会社は、給料をあげる、面白い仕事を用意する、働く環境をよくする(面白い人と働ける)とか、こういう当たり前のことを揃えるしかないから、なにも工夫する余地はないんでしょうか?

いやいや、そんなわけはなくて、そういった当たり前のことは簡単に充実させることができないし差別化は難しい。だから、みんなそれぞれの強みとか他社に真似できない独自のアッピールポイントを作って、それにたまたまマッチした優秀なエンジニアを一本釣りしたいなと思っているんじゃないだろか。

例えば、リモート前提の会社ならリモートで働きやすい仕組みが整っているとか、鎌倉にある会社なら人気の地方で働けるとか、最先端の技術を攻めてる会社なら新しいことができるワクワク感とか。

さて、ここまでは誰もがわかっているけど簡単に充実させることが難しいこと、そして、それぞれの強みを生かした差別化のことの二つを書いてみた。どちらもそうだよねとしか言いようがない事柄で、逆に言うと、すぐ実行できる話でもない。

となると、この二つの中間である、たいてい誰にでも参考になって、知っていさえすれば実行しやすい話が価値があるのではないかと思いました。そのポイントが世の会社の人たちに共有されればエンジニア側もハッピーになって世の中上手く回るかもしれない。

僕の経験から、自分の頭の中で「たぶん、こんな感じじゃないかな?」と想像していたのが、実際に質問してみると意外と違っていて新しい発見があることが多いので、お友達のもりもっちゃん(@dealforest)に聞いてみました。

もりもっちゃんは、iOSが得意分野だけど、Web側もできるし、UIもよくわかっているという、いろんな会社からモテてるエンジニア。最近は、こんな技術本も共著で出た。 (モバイルアプリ開発エキスパート養成読本)

二年ぐらいフリーランスやってて、最近BONXというスタートアップに入ったので聞いてみた。あくまで一人の意見を聞いただけなので一般化はできないかもしれないけど、なるほどなあと思う部分もあって結構面白かった。

いろいろ聞いてみた

Q フリーランス二年ぐらいやって、いろいろな会社に誘われてたと思うけど、どういう誘いが一番ぐらっとくるもんなの?

ぐらっとくる誘いはなかなかないけど、でも、あるとしたら、自分が凄いと思っているエンジニアの人から誘われた時はぐらっときちゃう。

ちなみに、BONXの場合は、ちょうど区切りも良かったため、そのへんでフリーランスとしての関りからは離れる予定だった。でも、ちょっと離れるのも寂しいなあという思いもあり、社員になることになりました。

とりあえず、フリーランスもちょっと飽きてきたので、会社員になってみようかなと思って入ることに。今思うとフリーランスで自分がJOINしてもいいなって思う会社を探していたのかもしれない。

(ある程度、信頼関係ができてからだと、いろいろと中のこともわかっているからお互いにミスマッチがないですね。まあ、これはよくある理想的な形なのかもしれない。)

Q 給与面でいえば、どの会社もそこまで違いはでなさそうだから、結局他の要素を判断基準にするんじゃないかと予想してるんだけど、実際どうすか。株式とかストックオプションとかもあるとは思うけど。

この人たちと一緒にものが作りたいってところかなあ。ちょうどそういう気持ちのタイミングだったのもあるかなあ。最先端の技術をやりたいというよりは、みんなで、ああでもない、こうでもないと試行錯誤しながらキャッキャワイワイやりながらモノつくりがしたい気持ちがあったので。

タイミング的にお金が欲しいっていう時だったら、ちょっと違うかもしれないけど。それだったら、圧倒的にお金が儲かるフリーランスを普通にやってるかな。

(やはり何事もタイミングが大事なようです。男女関係のようですね。)

Q 最初はフリーランスの立場でかかわりながら、徐々にJOINしてくれないかと誘われると中の様子が分かってエンジニアとしても入りやすいと思う。最初の関わり方って具体的にどういう案件がいいのかな?機能追加とか?

そうねえ。フリーランスだと、機能追加とか、こういう仕様に変えたいとかしか基本的にはないんだけど、BONXの場合は実際に会社に行って、中の人と一緒に作っていく感覚が体験できたのがよかったかなあ。結構任される範囲も多かったし。

逆に、全部仕様がきっちり決まってて、相談したり、途中でコネコネ変えたりすることがなかったら、そういう体験はできなかったかも。フリーランスの時は複数の案件をかけもちしていたけど、かっちりと仕様が決まっていた案件は完全にリモートでやることが多いかなあ。

(やはり実際に会社に行って、中の様子を知っていたというのも大きかったみたい。わかる情報量が圧倒的に違いますもんね。)

Q 自分のスキルが役に立ちそうな職場が魅力的だとは思うけど、同時に、ある程度は新しい事にチャレンジできる職場も理想的だとはよく聞く。もりもっちゃんとしては、そういう部分ありました? 完全に新しい事だらけだったら未経験とされて給与も減るから、このバランスが常に職業人としては難しいと思うんだけど。

フリーランスをやっている時は、次の案件を決める時に何をベースに決めるかで決まってくると思う。iOS のアプリ開発だと、だいたい同じことの繰り返しになりがちな部分はあるかな。エンジニアとしてのスキルを高めたいだけなら、別にフリーランスのままでも、新しい案件を積極的にとっていく意識があれば別に大丈夫だったりする。

フリーランスから会社員になって、稼げるお金は少なくなったけど、今は技術自体への興味より、一緒にものづくりしてキャッキャするほうがやりたくなったのが大きいかな。

(フリーランスやってると自分の得意な範囲の仕事を取りがちで、なかなか新しい分野にチャレンジしにくい罠があるとは聞いたことがある。でも、そういう悩みはあまりなかったようです。わいわいきゃっきゃっていうのは個人的には気持ちわかる。会社に属してないと自由なのはいいんだけど、その分ワイワイキャッキャが恋しくなる人は多そう。だから、エンジニアを取りたい会社側は、こんなワイワイキャッキャと楽しいことがあるよという面をアピールするといいのかも。例えば、僕みたいな人は、フットサルチームがあるとか、筋トレクラブがあるとか、レースゲー同好会があるとか言われると、おお!ってなると思う。)

Q これは実際には上手くいかなさそうな思いつきでもいいんだけど、世の中のいいエンジニアを雇いたい会社側が、「意外とみんなやってないけど、こうすればいいんじゃないかな」っていうアイデアあります?

知人にエンジニアがいるならその人を経由して紹介してもらうとかが確実かな。有名なエンジニア経由とか、業界につながりのあるエンジニア経由で探すのも良いと思うけど、よくあるので「いい人いませんか?」と聞かれても、仲良くない人に紹介してトラブルになるのも困るので教えたくないと思うのでうまくいかないことが多い気がする。

誰も知り合いがいない場合は、間借りしている場所、コーワーキングスペースが重要になってくると思う。イケてる人達が集まってきそうな場所でプロダクト作っているスタートアップの人がたまたまそこにいた場合、面白そうなプロダクトだなと興味持ったエンジニアが手伝い始めるのをよくみてきたので。場所を意識するとよいかも。

例えば、まったく知らなかったスタートアップでも、自分が普段通っている場所でプロダクトの進捗を実際に見ていたら、興味を持つ人が出てくるかもしれない。中の人たちの様子も自然とわかってくるし、本気でやっているのを側でみていると「必要なタイミングで声かけてもらえればお手伝いします。」みたいな繋がりができるかもしれない。

(リモートで仕事はいくらでも出来る時代なんだけど、やっぱりその場にいるっていうのと、偶然の出会いの重要さがよくわかる話ですね。とにかく人生は、いい偶然がいかに生まれやすい状況を日頃から作るのが重要なようです。)

Q 逆に、世の中ではみんながこうしたほうがよいエンジニアが集まるだろうって一般的に思われているけど、実際はあんまり効果なさそうだなっていうことある?

よく転職といえばWantedlyとか転職サイトを使うけど、自分だったら転職サイト経由では入らないと思う。まわりのエンジニアの知り合いを見てても、あまり転職サイト経由でいい人が入ってくるイメージがあまりわかない。

ただ、単純にそういう感じで転職をしたことがないだけなのかもしれない。

でも、SNS経由で拡散する時の募集要項としては有用なんだなと思う。会社を認知できるきっかけにもなるしね。人づてで紹介する時に、こういう会社ですという紹介の情報源として見せやすいから。

(転職サイト経由だと全然いい人こないよみたいな話はよく聞くんだけど、実は知り合い経由で会社を紹介する時に送るリンクとかサイトはめちゃくちゃ重要ですよね。そういう意味で、転職サイトのデザイン、UI、拡散とかシェアしやすいかどうかはすごく大切で、知り合い経由で紹介する時はWantedlyが使いやすいのかも。僕が見る立場だったら、写真とかで会社の雰囲気がわかりやすければ素晴らしいし、もっと中の人が書いたブログ読めばもっと中の様子がよくわかる。最近はPodcastとか動画で中の人がわかればもっと親近感がわいて分かりやすいのかもしれない。)

BONXのWantedlyのリンク。

最近発売された、もりもっちゃん(@dealforest)が共著の本。ちなみに、この本書くのに年末から1ヶ月近く完全にかかっりきりで大変だったらしい。

*関連
*技術書執筆は大変すぎて割りに合わないとプログラマ友達からよく聞くけど、それでも出す理由を聞いてみた
*リモートのエンジニアが働きやすくなるにはどうしたらええやろか


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら


アプリの世界は資本力のある企業以外は勝てなくなるか

先日、お友達に教えてもらったnextstep.fmというPodcastを初めて聞いたんだけど、これがとても面白かった。僕が聞いたのは「#003 かつて有料アプリでビルが建つ時代があった」という回なんだけど、iPhoneアプリ開発、エコシステム、アプリビジネスなどを創成期から振り返っていて、これが聴いててすごくよかった。

ちなみに、この回の話し手はみんなiPhoneアプリ開発を初期からやっている凄く有名なiOSエンジニアの方達で、まさに、このPodcastでしか聞けないという内容。ブログではここまで細かい話は書き尽くせないだろうし、当時から今まで第一線でバリバリやってきてないと話せない内容なので、iOS開発に興味ある人はめちゃオススメ。

ここまで読むと、「俺、アプリビジネスには興味あるけど、そこまでプログラミングの話はついていけないなあ」と思う人がいるかもしれない。ところが、少なくともこの回は技術の話だけじゃなく、iOSアプリ界隈のエコシステム全般の移り変わりを語っているので、ビジネスよりの人も楽しめる内容なんですよ、これが。

昔はアプリで儲けやすかった?

今のAppStoreは昔に比べて明らかに競争率が高い。大企業が自社アプリのCMをバンバン流してマーケティングするし、それぞれのアプリのレベルも上がってユーザの期待値も上がっている。

ポッドキャストの第三回で話されていたのは、初期のAppStoreは企業もそこまで進出してなくて、今ではほとんど見向きもされない有料買い切りアプリでさえ、そこそこ儲かるチャンスがあったという話してた。

僕は東日本大震災の時にMacbookAirを注文してアプリ開発始めたから、その頃は確かiPhone3GSとかだった気がする。ほんとちょっと前のことだと思っていたら、もう五年ぐらいたってしまっているではないですか。

このポッドキャストを聞いてて、そういえば五年前でも今のAppStoreとはだいぶ環境が違ってたなあというのを思い出して、これからはどうなるんだろうかと考えるきっかけになってよかったです。たぶん、ビジネス環境もまたコロッと変わって、今うまくいっているビジネスもうまくいかなかったりするんだろう。

大企業しか戦えない土壌になるのか?

五年前と今で比べると、アプリのエコシステムはかなり充実していまして、Helpshiftやら、Mixpanelやら、Fabricやら、アプリ運営を楽チンにしてくれるサービスがたくさんあります。Xcodeも使いやすくなってるし、StackOverFlowもキータもあるし、開発効率も上がっていると思う。

*参考
フィードバックしやすい状況を作るHelpshift
アプリに広告があると離脱率はどれだけ高まるかをABテストしてみた (MixpanelとSkyLab利用)

そして、そのぶん、みんなが参入しやすくなっているので競争率が上がってる。

さて、僕のような小規模の個人開発者や、小さなスタートアップにとってこれはよいことなんだろうか、よくないことなんだろうか。

このポッドキャストを聞いてて思い出したのが、TwitterとかMediumを作ったエバンウイリアムズが以前書いてた話。こんなことを言ってた。

“最近のテクノロジースタートアップ業界は、最初から資本力がないと話にならない世界になってきている。そのため、小さなスタートアップが新規参入できる余地もどんどん小さくなってきた。例えば、車業界を例にあげると、昔はHONDAのような小さな町工場から成功する車会社もあったけど、今の車業界でそういうことは不可能に近い。テクノロジースタートアップ業界もそうなりつつある。”

この話は業界ごとに変わると思うので、日本のAppStoreのアプリビジネスに絞って考えてみる。

確かに、カメラや位置情報などスマホ独自の技術を応用したサービスなど、これだといったものを大ヒットさせるアイデアはもう掘りつくされた感はあるにはあります。

ただ、ビジネスを助けるエコシステムは充実していて、開発や運用のコストは以前より下がっているので初期コストは下がっている。となると、ビジネスアイデアさえあれば、ニッチな分野から戦いやすくなったということもできる。

例えば、TODOアプリやカメラアプリなど、作る人が多い分野になればなるほど競争が激しくてめちゃくちゃレベルが高い。

でも、農業とか、医療とか、僕の想像もつかない業種のサービス・アプリってなると、未だに「ここだけ時代が止まっているんじゃないか。。」と思っちゃうようなサービス、Webページ、アプリがあったりする。

そして、開発や運用がやりやすくなればなるほど、その人にしかわからないような専門知識を持った人がサービスを作りやすくなっていくので、ニッチなアイデアや専門知識を持っている人から出てくるサービスが増えていく段階になっているんだと思います。山登りとか、草野球のチーム管理とか。

最近では、AppStoreで月額課金もやりやすくなったし、ユーザ側の月額課金に対するハードルも徐々に下がってきていると感じる。

僕個人の例でいうと、数年前はアプリ内課金も月額課金も買ったことがなかったので心理的ハードルが高かったけど、今はNetflixやら、食べログやら、NewsPicksやらで、アプリ側から月額課金に加入するのに慣れてきた。

エンジニアと遠そうな趣味や専門知識

まとめると、エンジニアリングやテクノロジー好きからは遠そうな専門知識を活用したサービスほどまだ開拓されてないのでよさそうです。

ライフハックに興味があるエンジニアはたくさんいるけど、農業、ゴルフ、ダンスなどに詳しい人は少数派だと思うので、そういう意外性のある接点があればあるほどよいと思う。

そうはいっても、自分の趣味なんてそんな戦略的に開拓しても夢中になれなかったりするので、頭ではわかっていても現実世界ではそう上手くいくわけではないんですが。

しかし、PodcastってWebで出始めた当初はたいして盛り上がらなくて消えていくのかなと思っていたけど、スマホが普及してきた昨今、一気に普及しているんじゃないだろうか。この普及の波はTwitterに似ている。

Podcastとか、音声専用のAdmobみたいなサービスが出始めたら、本格的に広まったと言えそう。僕がLisgoとかVoicepaper作ってた4年前ぐらいって、こういう音声専用のAdサービスそのうち出るだろうと思ってたけど、未だにこれといったものが普及してないですね。

結局のところ小規模な開発者に勝算はあるのかい?

ここまで書いてきて、「じゃあ、お前の意見として、個人や小規模なチームでアプリ開発するのは実際どうなのよ?」という見えない声が聞こえてきたので、それについて考えてみる。

これについての答えは簡単で、基本的にほとんど失敗するというか、みんながやっている市場であればあるほど勝率は低いと思う。じゃあ、今は競争率低いけど、これから伸びる市場でアプリ作るのがいいんじゃないかとなるけど、これが予想できたら誰も苦労しないので難しい。

そうはいっても、いろいろ試行錯誤しながら試していると、たまたまなにかが上手くいくこともあるので、結局のところ、「失敗してもいいから自分がやりたい。」とか、「失敗してもリスクが低いからやってみたい。」とか、そういうのをコツコツ続けるしかないのではないかと思ってる。無理のない範囲で。

電気自動車作るのに比べて初期投資は圧倒的に低いから参加はできるけど、そのぶん競争率も上がってるので失敗前提で撤退準備しながらダメ元でやるしかないというのが、いつもの結論になってしまいます。

*参考
勝者総取り世界の憂鬱

あと、僕が5年ぐらい個人アプリ開発してて思ったことは、世の中で言われている定説と、実際にやってみてわかったことのズレは結構あるということです。これはどんな分野でも同じだと思う。

興味のあることはちょっとでもいいから試してみると、自分が耳で聞いてた想像と、実際にやってみた真実とのズレが補正されるので、そこに大きな価値がある。これは、みんなが大変だとか苦痛だとか言っていることが、自分にはそこまで苦痛じゃなかったとか、個人間の温度差の話も入ってきます。

しかし、最近はテクノロジー系の面白いポッドキャストが増えてきて、こういう意味でもエコシステムが整ってきている。今現在で聴いているのをまとめるとこんな感じになった。

@日本語
Rebuildfm (Webとかプログラミングとか。)
nextstep.fm (iOSが中心。)

@英語
a16z (スタートアップ系。テクノロジー分野の最先端の話題。)
Under the Radar (iOSアプリの個人開発系。ビジネスサイドの話題多い。)

あとはスタンフォードのやつとか、Googleベンチャーのやつとかは、DHHとか、マークアンドリーセンとか、イーロンマスクとか、特定の人がゲストで出てくる回は外れなくて面白い。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら


技術書執筆は大変すぎて割りに合わないとプログラマ友達からよく聞くけど、それでも出す理由を聞いてみた

以前、耐久カート大会に誘って頂いた、エンジニアのお友達である長谷川さんが、「TECHNICAL MASTER はじめてのiOSアプリ開発 第2版 Xcode 8+Swift 3対応」という本を出したらしい。

というわけで、エンジニアと技術書執筆というテーマについて書きたいんだけど、周りでもエンジニアの人が技術書を出したという話は結構よくあることです。

しかし、「本を出すのは本当に大変だった。。」とか、「執筆に集中するため、その間は他の仕事全然できなかった。。」とか、「特に儲からないので、お金目的だったら絶対割に合わない。。」とか、とにかく技術書書くのは大変だという話をよく聞く。

では、ただでさえ仕様が変わると対応するのが大変な技術書を、そこまでして書くモチベーションはなんだろうか。これに関しては、「名前が売れて自分のキャリアに繋がる」という意見が一般的です。

やっぱ、ブログで書くのと書籍を出すのとは違うので、本を書いているっていうのはそれだけでブランドアップなのは間違いない。あと、最近、僕が電話サポート始めて実感したんだけど、ブログでリーチできる読者と、本でリーチできる読者は違うことが多いので、まったく別の層の人たちに届けられるってのがあると思う。

それ以外には、自分が学習した知識を本という形で発表したいとか、僕がブログ書いている理由のように、本を出すことによって偶発的なよいことが起こる可能性は高まりそう。

ブログを書いていると、たまに突発的ないいことが起こる

ここまでは僕の想像の話なんだけど、長谷川さんはすでに会社のCTOだし、iOSDCっていう国内最大規模なんじゃないかっていうiOSのカンファレンスを成功させたりと、いろいろやってるんですよね。

だから、僕の想像もつかない崇高な理由だったり、コミュニティに貢献する気持ちが高すぎるとか、隠された世界征服計画みたいなのがあるのかもしれない。なので、このへんをのらりくらりと誤魔化されないよう、ビシッと聞いてみました。

本を書くことで自信がつく?

FBでサラッと聞いてみただけなんだけど、結構自分が予想してた答えと違った部分が多々ありました。

@長谷川さん
僕は今回の本は4冊目なのだけど、動機はどれも違っていて。

1冊目はFacebookアプリの本だったのだけど、ずっと「1回本を書いてみたい」って思ってたところに、出版社の方から「Facebookアプリの本を書ける人を探しているのだけどどうですか?」って連絡頂いて、それなら、という形でした。

2冊目(CakePHPの本)と3冊目(iOSの本)は同じ動機で、会社の新メンバーに「これだけ読めば良いから」という本が、その当時に無くて、内部的なマニュアルを書くぐらいなら本にした方が良いな、ということで出版社の方に企画を持ち込んでいます。

4冊目(今回のやつ)は3冊目のアップデートで、「3冊目、内容自体はまだ有用だと思うのだけど、Swiftのバージョンが上がってしまって使えなくなってしまって勿体ない!アップデートしたい!」という動機でした。

で、効果として、本って思った以上にフィードバックがなくて、「名前が売れる」という実感はないんですよね。考えてみたら自分も本を読んで感想エントリを書くことはほとんど無いし、ましてや著者に何かフィードバックしたことないし、まあ、そりゃそうか、とは思いますが。

長谷川が書く技術書の初版発行部数から考えると、たくさんの人に届けるだけならBlogの方が多くの人に届く感じですねー。

本を書く効果として、最初から狙っていた訳じゃないのだけど、あとから気付いた効果は、自分への自信が付くというところですね。
特に僕は本を書かなかったら勉強会デビューしなかったと思うし。
「本を書いたから勉強会に行っても恥ずかしくないな」みたいに当時は思って勉強会デビューした。(そしたらすごい人が沢山居て自分の程を知ったのだけど。)

あとは、当然だけど、その書いた範囲で正しい知識が付きますね。嘘は書けないのでちゃんと調べるから。

そう言う意味で、「こんど本を書かないか?って誘われているのだけど」と相談されたら「ツライし儲からないけど、良いと思うよ。おすすめです。」って答えると思います。

なるほど、本を書いても意外と名前が売れる感覚はないらしい。

しかし、本を出してから勉強会デビューというのは相当ハードルが高い(笑)。僕なんて、iPhoneアプリ始めたばっかりの頃なんて、さっぱりわからない状態で参加して、登壇者の発表の10%も理解できてなかった気がします。

しかし、まだまだ本音を引き出しきれていない気がするので、さらに質問をブッこんでみました。

僕を褒めて!みたいな理由はないんですか?

@梅本
なるほど、これはすごい面白いですね。。自分への自信がつくと。

そういえば、僕が勉強会で自分が最近得た知識とかを発表する時って、例えば、iOSMeetUpでかなり周りに褒めてもらった、Mixpanel使ったリーンアナリティクスの話なんかは、「このサービスのこんな便利な使い方と、ハマりポイントをみんなに教えてあげる俺をみんな褒めて!」みたいなモチベーションでやったんです。

Lean Analytics 虚構の数字と改善に繋がる数字

あまりそういう、みんな僕を褒めて!みたいな欲求はないんですかね。ブログだと波及効果高いけど、勉強会で発表するって本よりネットワーク効果は薄い。ただ、僕の場合、勉強会の発表にはまたそういう違うモチベーションがありまして。

@長谷川さん
本を書くにあたっては、「褒めて!」というモチベーションは自分は無いかなあ。Blogを書く時はまさに自分も「良いでしょ!褒めて!」のモチベーションなので、不思議ですね。相手の顔が見える度合いという意味では、「勉強会 >> Blog >> 本」って感じだろうから、それとモチベーションのベクトルが関係しているのかなー。

確かに、そう考えると本を出すって、自分の作品を世の中に出すという感覚で、勉強会やブログとはまた違う満足感がありそうですね。言われてみるとそうかもしれない。

でも、そうは言っても技術書を書くってすごい大変だろうし、周りのできるエンジニアの方達の中でも、「僕は無理ですわ。。」っていう意見もよく聞くんですよ。なので、もっと深掘りするべく、質問を続けてみました。

自分の作品を出すという感覚

@梅本
3冊目の本、Swift本を最初に書こうと思ったモチベーションは、まずSwiftについて調べたかった、そして、調べていくと詳しくなったからどうせなら本にしたかったってのもあるんでしょうか?

@長谷川さん
これは、環境がSwift化したことで、今まででも「これ1冊でOK」というのがなかったのに拍車がかかって困るなー、今が一番書くタイミングだな、と思った感じでした。あとはまあ、Swift化して本が減るタイミングなので労力に対するリターン(注目・実売数)大きそうだな!というスケベ心もありましたw

その過程で勉強できて嬉しかったけど、自分の場合は「勉強になるから書こう」という感じでは無かったですね。

なるほど。聞いていくと、世の中に求められているタイミングで、そのニーズを満たすものを本という形で出したいというのが執筆のモチベーションになっているのかな?と思った。

聞いてると気がついたんだけど、勉強会やブログと違って、本を出すって、自分の作品を世の中に出すって感覚があるんじゃないかなあと。自信がついたというのは、結果的にそうなっただけで、最初から意図してたわけではないだろうし。

僕の経験で想像すると、自信がついたっていうのも、自分が気合い入れてやったことだからこそなんではないかと。

例えば、どんなに周りから評価されても、自分がどれだけ努力したかってのは自分がわかってるので、「実は、あれ大して俺力いれてないんだよね。。」てなモノだったら本当の自信にはつながらないだろうし。

てなことを聞いてみると、さらに突っ込んだお話が聞けました。

@長谷川さん
確かにそうかも。 > 求められているタイミングでそのニーズを満たすモノを本という形で出したい

自信が付いたのは、まさに結果的に、ですね。

そして、「自分の作品を出す」というのは確かにあると思う。
書き始めに、少なくとも、出版社がお金を掛けて(投資して)出す、ということで、最初から一定の評価を受けている状態、というのも良いのかもしれない。(声をかけられたり、企画が通った時にはやっぱりアガるし。)

「自分の作品」というのは本当にその通りで、今回、実は、ちょっと自分の不本意な形で本が出そうになって、普通だったら人に言わない様なハードな交渉を編集者にして、不本意な形を回避したんだよね。

具体的には、最後の校正のタイミングで、1週間かけて校正して提出したら「もう印刷所に回しました」「その校正結果は反映できません」「なんでもっと速く校正してくれなかったの」と言われて、一度は怒りつつも「そうですか」と言ったのだけど、夜、妻に話したら「それはおかしい」と言ってくれて、一転、「これじゃ出せません」「これは僕の名前で出すものです」という話をしたんです。
そして、「1)スケジュールを引き直して、長谷川の校正を反映して頂く。 2)今回は出さない、9月のタイミングでiOS11を反映した版として、あなた以外の編集と出す 3)この本は出さない。この話は無かったことにする 4)このまま出す。長谷川の名前だけでこれを出すのはフェアでないので、長谷川が校正で見つけた誤植を、あなた(編集者)の実名入りの経緯とともにBlogに書く」という提案をしました。

結果、撤回してもらえて、自分の100%のモノが出せたのだけど、この怒りはやっぱり「自分の作品」感から来てると思う。

本は常に「100%完璧!」とはならなくて、「もっとこうしたかった!」というのはあるけど、それでも、納得の1冊にはなっていて、それが自信につながるというのは仰るとおりですねー。

これは妻以外には初めて話しましたw

ただ、彼にも彼の立場があり、長谷川が当初想定して、彼に話していた内容から彼が想像していた納期よりかなり伸びていたのは確かなので、100:0の責任じゃないのだけどね。ただ、それにしても最後の最後の印刷所受け渡しのところで長谷川確認が入らないのはマズいですね。

おおお、僕はこういう深い話が聞きたかったんですよ!!こういう魂を込めている感じはいいですね。自分の作品だという意識があると、短期的な目の前の利益とか関係なくいいものを出したいという気持ちになるのはアプリ開発やその他の創作活動でも同じだと思う。

でも、書籍やハードウェアってデジタルなものと違って簡単に変更できないから、やっぱり大変ですね。そのぶん、デジタルなものはプラットフォーム上のサービスが終了したらすぐ使えなくなる可能性が高いんですが。

今回はなるほどなあと思う部分がいろいろありました。いろいろと掘り下げて聞いてみると、自分の想像を超えた新しい発見があって面白いですね。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら


個人アプリ開発者だけど電話サポートをやってみた

僕は個人でアプリを出してるんですが、以前から試してみたいなと思いながらもビビっていた電話サポートを最近始めてみた。

以前から、アプリ内にHelpshiftでヘルプチャットいれて、そこからのフィードバックは多いに参考にしながらアプリをアップデートしてるんだけど、さすがに電話サポートまでは面倒だなというか、開発中に突然電話かかってきたら集中力が途切れないかなとか、そういう懸念からやってませんでした。

しかし、チャットに比べて電話で対応できたらユーザがどこで詰まるかの情報量も圧倒的に多くて改善に役立つだろうし、その場でこちらから質問もできるから解決も速いはず。

さらに、問題がわかった順にアプリを改善していったり、ヘルプの書き方を変えていけば、同じ質問は何度もこなくなるというのは以前からの経験でわかっている。Airbnbの創業者も創業当時はずっとヘッドセットつけながら、ユーザーサポートを自分でやってたらしい。

といっても、自分はスタートアップじゃないしなあとか、こっちの時間で返信できるサポートメッセージとは違うだろうしなあと思ってたわけです。

しかし、時は確定申告シーズン真っ只中。Taxnoteで試してみてもいいかなと先日ふと思った。電話に取れなかったら掛け直せばいいし。どうせたいしてかかってこないだろう。

なんでも試しにやってみて上手くいかなければ中止すればいいかという軽い気持ちでやることに。Taxnoteのヘルプページに電話サポートも始めたよと書いて、サブで持ってた050の電話番号を記載しておいた。050って解約するのが面倒で放置してたけど、こんな時に役に立つとは。

Helpshiftのヘルプページがこんな感じなので、一番上に電話対応の項目を追加。これは、Web側から自由に消したりできるので楽チン。

電話がかかってきました

今から二週間前ぐらいから始めたんだけど、さっそく電話がかかってきてた。その時は自分がiPhoneをお休みモードかなんかにしてて気づかなかったので、こちらからかけ直した。

電話してみると、僕と同じ関西出身の若い感じの人でした。質問は、「このアプリってどうやって確定申告に使うの?」っていう話だったかと思う。なので、「このアプリは帳簿をサクサク入力できるアプリで、申告時は損益表画面の集計を書き写してもらって〜」というような話をした。

次の日もかかってきた。次の日もなぜか電話に気づかなかったのでこっちからかけ直した。次は落ち着いた感じのお店を経営してる人だった。「このアプリを数年前に買って有料版で使ってるんだけど、またお金払ったりしないといけないの?」といった質問だった。

これは、Taxnoteクラウドという月額課金のオプションを今年から追加したのだけど、これをみて、「以前アップグレードしてるんだけど、課金しないと使えなくなるのか?」といった質問だったと思う。

そこで、「いや、これはさらに便利になるオプション機能だから、特に必要なかれば今まで通り使えますよ」というようなことを説明した。

それ以外にもだいたい二日に一回ぐらい電話がかかってくるけど、よくあるのはやっぱり有料版に関する質問。お金を払う部分になるとみんな慎重になるから、ここはしつこいぐらい丁寧にアプリ内で説明しておいて、誤解のないようにする必要があるなあと再認識できた。

課金の質問と同じぐらい多いのが、やっぱり確定申告さっぱりわからんのだけど、どうすればいいんでしょうかといった具合の質問だった。

ここは、アプリ内で、初めて確定申告する人からのよくある質問とか、確定申告を楽にする合理的な方法のまとめとかのリンクを張っているけど、それ以前にわからない部分とかいろいろあるようで、ここも初めて申告する人がまずどこで詰まるのかというのがすごく参考になる。

初めて申告する人がどういう疑問を持ちやすいかがわかれば、どういうアプリのデザインをしていって、どういう順番で適切なヘルプに誘導すればよいのかも想像しやすくなるので、ここもかなり参考になる。

電話だとITに疎い人の状況がよくわかる

予想してたことなんだけど、メッセージベースのサポートと電話サポートの大きな違いは、ITにあまり詳しくないユーザの話が聞けたり、その人の状況が詳しくわかるということである。

例えば、メッセージでのサポートは、IT系に慣れている人に向いている。というのも、PCやアプリを使い慣れている人は、自分のエラー状況とか、困っている状況を適切に説明することに慣れているわけです。

「こういう状況で、こういう操作をするとアプリがクラッシュします。これこれこういうことを試したんだけど、上手くいかない。自分はiOS9だけど、それが原因ですかね?」

結構詳しい人だとこんな感じです。もっとわかりやすくするため、スクリーンショットまで貼り付けてくれたりする。こういう場合、メッセージから相手の状況がわかりやすいし、適切に解決方法がわかって対処できたりする。

しかし、ほとんどのユーザはアプリにそこまで詳しくないし、PC操作も慣れていない人が多い。そういう場合、メッセージ打ち込むのも時間がかかるからやらないだろうし、そもそもメッセージしても短文でこんな感じです。

「弥生会計に移せない」

この場合、Taxnoteのデータ出力機能を使った時に問題があるのか、それとも、TaxnoteのデータをPCに移す過程がわからないのか、それとも弥生会計にTaxnoteファイルを取り込む部分がわからないのか、こちらとしては情報量が少なくてわからないわけです。

なので、「今はこういう状況ですか?もしかして、こういう状況ですか?」とこっちで詰まっているところをいろいろ想像して質問を返して、相手に状況を説明してもらうよう促すのだけど、たいていの人は問題の状況を説明するのが面倒だろうし、どう説明したらいいのかも慣れていないから諦めてしまう。

こんな時、電話サポートだと、その場で直接相手の状況をこちらから質問できるので、ITに疎い人でも、言い方を変えたり、相手にわかりやすいような質問の仕方を工夫することによって、問題の状況が圧倒的に理解しやすい。

こんなふうに、情報量が圧倒的に豊富になるというのと、こちらから質問しやすいというのが電話サポートの大きなメリット。

さらにいうと、メッセージでのサポートとは違った種類の質問がくるというのもわかった。例えば、メッセージだと、「こんな機能ありますか?」というようなものが多いけど、電話だと、「そもそもこのアプリはなにができるんですか?」という、もっとはじめのの段階の話が多い。

つまり、電話サポートというのは、メッセージでのサポートとはまた違うセグメントのユーザに対応できるというのがやってみてハッキリわかりました。

ちなみに、いろいろサポートをしていると、「この操作をすると、ホーム画面が表示される」という表現はアプリが落ちるという意味であることが多いとか、どういった表現を使えば分かりやすいかというのが学習できて、アプリ内にわかりやすいテキストを書く力が向上しやすい。

どこで離脱しているかの想像力が格段に高まる

電話サポートをしてみると、全国各地のいろんな人が使ってくれてるんだなとか、問題を解決した後に直接喜んでくれるとか、最後になにか要望とかありますか?とか聞けるとか、いろいろよいことはあるんだけど、なんといっても一番の価値は、ユーザがどこで離脱するかの想像力が高まるということです。

ユーザをグループ分けしてみると以下のようになると思う。

1.少し使ってよくわからないから離脱した人。
2.少し使ってわからないからヘルプ探した人。
3.少し使ってわからないからヘルプ見て質問送った人。
4.少し使って自力で使い方を習得した人。

今までは、1と2で離脱していた人のレベル感とか、どのへんで離脱するかはブラックボックスだったわけです。3以降の人はメッセージが来るから、その内容から「ああ、このへんがわかりづらいんだなあ。」とか想像することができた。

しかし、電話サポートしてみたことで、2の段階の人の声を少しでも聞くことができて、「ああ、こういうところでわからなかったらもうお手上げだったのかー」とか、もう一つ前の段階のレベルで改善すべき点がたくさんわかった。

これは、別に新しい機能をつけるとかたいそうなことが必要じゃない場合も多くて、ちょっとヘルプの書き方を変えたり、ヘルプにスクリーンショットをつけたり、アプリのメッセージの文言を改善したりで解決する場合が多い。

ようは、気づくか気づかないかの違いだったということが多くて、この情報が大きな差になるというのが、小さな改善の積み重ねの繰り返しでは重要になってくる。

というわけで、サポートに力をいれてもいいかなと思うアプリだったら、新しい気づきがあるので興味のある人はぜひ試してみてください。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら


リモートのエンジニアが働きやすくなるにはどうしたらええやろか

最近はTaxnoteのAndroid版を作ってるんだけど、僕はAndroid開発に慣れてなくて一人でやると亀のようにノロイ。ということで、できる方にお願いしてSkypeペアプロで教えてもらったり、ここの作業をお願いしますといった形で、リモートで開発を手伝ってもらいはじめた。

このサイトでも、エンジニアをゆるく募集というページを最近作りました。

去年からRailsやらAndroidやらと、Skypeで画面共有しながら教えてもらうことを始めたんだけど、完全にコーディングをお任せするというのは初体験だったのでどうしたら上手くいくか日々考えてるところ。

そこで、リモートで働いてもらう時にどうしたら相手がやりやすいか考えてる。周りのフリーの人の話を聞いたり、自分だったらこういうやり方が働きやすいかなと想像しながら実行してるアイデア。


1.時給でお願いして時間は自己申告してもらう
2.コミュニケーションをめちゃ大事にする
3.ゆるくお願いする
4.こちらから提供出来る事も考える

時給でお願いして時間は自己申告してもらう

まず、プログラミングなんてものは修正の繰り返しだし、機能を実装するのにどれだけ時間かかるか見積もるなんてミッション・インポッシブル。というわけで、働いた時間だけお金を払う時給計算が無難だと思う。

プログラミングはどれだけ時間かかるか事前にはわからないし、こだわればこだわるほど時間がかかる。アプリって何度もやり直しながら作るもんだから、時給じゃないと修正依頼も言いにくいし、やるほうもいやだろうと思う。

そして、作業時間は自分で測ってもらう。そのさい、調べ物する時間や、作業中にハマった時間も含めて、仕事に関する作業をしている時間はすべて計測して申告してくださいとしている。プログラミングって頭の中で考えたり、調べ物したり、ハマったりすることは当たり前なので。

もちろん、Skypeで作業の打ち合わせをする時間も、作業報告のメール書く時間も含め、すべて計測してもらって。

こうすることで、お願いする自分のほうも、相手が効率良く仕事できるようにいろいろ考えるので結構いい。例えば、相手が作業中に悩まないように必要な情報を漏れなく完結に伝えるとか。疑問点や聞きたいことがあれば速攻で聞いてもらうようにするとか。

これ、お願いする側からすると、どれだけお金がかかるかわからないから不安だとか、ダラダラ仕事されたら不安とか思うかもしれない。でも、優秀なエンジニアはそんなケチなことしないので大丈夫。

まだお互い付き合い短い間は、これ以上時間かかりそうだったら一旦止めて相談してくださいと先に言っておいてもいい。

ちなみに、世界最大のリモートワーク斡旋サイトUpworkでは、時給計算のお仕事用に作業者のPC画面のスクショを定期的に記録する機能があるけど、あんなのは絶対にやめたほうがいいと思う。

僕だったら、自分のPCを定期的にスクショ取られる時点でプライベートなものが写ったらどうしようと気になって集中できない。作業でハマった時には頭をクリーンインストールするため、エッチな動画でも見てスッキリするのはエンジニアでは誰もがやっている当然のことだろうし。

コミュニケーションをめちゃ大事にする

こうすればやりやすいかなと思った事を実行してるんだけど、自分の想像と相手とのズレがあったらまずいので、出来るだけ定期的にこちらから相手にいろいろ聞くようにしてる。聞かれないと自分から言いにくい事ってたくさんあるし。

「もっと働きやすいようにするにはどうしたらいいですかね?」とか、「どういう時が一番困りますかね?」とか。

すると、「やっぱり、コミュニケーションを密にとってもらうのが一番重要だと思います。」と教えてもらった。

確かに、依頼側の要求がよくわからないままやる作業ほどストレス溜まるだろうし、作業中に「これどうしたらいいかな?」とか、「ここどうしてほしいかな?」とかいろいろ疑問に思う事は無数に出てくると思う。

なので、聞きたいことがあったらすぐ聞いてもらえるよう、Skypeにできる限り常駐することにした。あと、電話で聞いてもらってもいいし。

さらに、やってほしい作業の説明も誤解がないよう出来る限り詳しく説明するように。特に、アプリ開発って何度もやりなおしたり、後からUIが変わったり、今は後回しにするけど将来的にはこういう設計にしたいとかいろいろある。

特に僕は、小さくリリースしてユーザの反応や要望を聞きながら開発するポイントの優先順位を決めていくので、最初は本当に重要な部分から順番に開発する。だから、新しい実装をお願いする時も、変更や修正が多そうなところは、まずはザックリとだけ作ってもらうようにお願いしてる。

せっかくやってもらった作業が無駄にならないよう、「ここはいろいろ変わったり、違う方法に変更するかもしれないので、まずはざっくりとラフな感じでお願いできますかね」といった感じ。

ほんと、コミュニケーションを取るってのはこまめに相談する機会を増やすにつきるだろうし、言いやすい空気もあるだろうし、お互いのイメージに誤解があるとやりにくいだろうし、本当に難しいと思う。

反対に、何度も無駄な打ち合わせがあってもウンザリするだろうし、簡潔に大事なことを短く伝えるというのは意識し続けないと難しそうだ。相手だって要点がわかりにくい長い文章を読みたくないだろし。

フリーでやってる友達に聞いたところ、Skypeの打ち合わせはお互いに時間を合わせないといけないのがダルいらしい。だから、機能追加していく場合、詳細な説明が書かれている実装リストを細かく定義してくれるのがやりやすいとか。

今まで基本的に一人で作ってきたので、こういうところは本当に新しい領域。

ゆるくお願いする

先週、ペアプロで教えてもらってるエンジニアの方に「ゆるくできるのはメリット」だとも教えてもらった。どういうゆるさがよかったのかは聞いてないのだが、自分がどっかで働くなら、労働時間が短くて、いつでも気軽に辞められて、スケジュール調整に融通がきくのが嬉しい。

まず、キツイ納期だといいプログラミングが書けないので、1日3時間ぐらいまでのペースでやってもらって、あまり作業は急かさないようにするのがよいと思う。もちろん、もっと長くやりたい場合はやってもらってもいいんだけど。

あと、ちょっと仕事したくなくなってきたら、いつでも気軽に辞めれる、またはしばらく休める、気乗りしないプロジェクトや作業は断れるっていうのが気軽でいいと思う。僕もコードを書くので完全に開発がストップするということはない。

ゆるい感じだと、「ちょっと興味あるけど、始めてみてなんか微妙だったら嫌だな」と思った優秀なエンジニアが軽い気持ちでちょろっと手伝ってくれるかもしれない。飽きたり、他のことをしたくなったりもすると思うので、暇な時だけ手伝ってもらうぐらいがいいかも。

こうなってくると、ワークシェアみたいな考え方で同時に複数人の人に手伝ってもらう体制になるので、メリットもデメリットもありそう。

まず、エンジニアとしては他の人が書いたコードを引き継ぐというのは基本的に苦痛である。だから、作業人数が多くなればなるほどやりにくい。とはいえ、フリーランスの人もいろいろな仕事をかけもちしてるだろうから、毎日手伝ってもらうことも難しい。このへんはジレンマ。

こちらから提供出来る事も考える

世の中には無料ランチとか、技術書読み放題とか、成長できる!とかいろいろ働く場所によっていいことがあります。

残念ながら僕の開発を手伝うのはあまり成長できるわけでもなさそうだし、セクシーなスタートアップ環境でもない。このへんも厳しいところなんだけど、このブログで書けないように自分の個人アプリ開発での経験やらノウハウやらに興味ある人には、雑談タイムに好きなだけ話したい。

あとは、Taxnote作るにあたって確定申告に詳しくなったので、初めて申告する人の相談にはのれそう。

こう書いてみたけど、正直どちらもエンジニアの人にとってはあまりメリットなさそうなのが困る。やっぱ、エンジニアなら優秀な人が集まってて、成長できて、新しいことに挑戦できる職場がいいもんですよね。悩ましい。

僕の経験でいうと、仲の良い友達と一緒にやるバイトってのは楽しかった思い出があるんで、一番重要なのは少しでも楽しく仕事ができる雰囲気を作ることなんですかね。このへんは人間力が問われる難しいところだ。

実際いろんな意見を聞くとハッとすることが多いので、TwitterでもFacebookでも、こういうのよくなくて、こういうのがやりやすいというのを教えてもらえれば喜びます。


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