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退屈な時間を楽しくする音声読み上げ。Pocket、Dropbox、Evernote対応の自動音声アプリVoicepaper2 for iPhone・iPadをリリース

こんにちは。三年ぶりにVoicepaper2という新作アプリをリリースしました。

Voicepaper 2 for iPhone・iPadをダウンロード。

これは以前作ったLisgoとVoicepaperを合体させた読み上げアプリなんだけど、まず動画でアプリを紹介したあと、なんで作ったか、作ったアプリのよさを伝えるのが難しいと思ったことをそのあと書いてみます。

音声読み上げの品質はこんな感じ

まず、一番気になるのは音声読み上げの品質はどんなもんなの?ってところじゃないでしょうか?

これ、一番最初に聞いた時は、「ああ、この品質だとちょっと耐えられないわ。。」っていう印象を受けるんです。僕もそうでした。ここが読み上げアプリの一番最初の壁なんですが、30分ぐらい聞いてると、方言聞いてるみたいにびっくりするほど慣れてくるんですよね。

最初は抵抗があったあの歌手の歌い方だけど、慣れると気にならなくなったみたいな。

そうはいっても、高品質なほうがよいので、アプリ使う時は、まず、iOSの設定で高品質版をダウンロードしてください。

指定位置再生・文字のハイライト

Voicepaperでは、とにかくごちゃごちゃしたボタンを少なく、シンプルに、なおかつ大切な要素は簡単に操作できるということを徹底しております。

まず、読み上げ中の文章はハイライトし、画面は自動スクロールします。そして、文章を途中から読み上げて欲しい時は、文字をダブルタップするだけでOK。

30分後に終了したり、現在のテキストが終わると終了したり、試験対策で繰り返し聞きたい人向けにリピートしたりと、タイマー機能もついてます。

ロック画面で連続再生・並び替え

もう一つ重要なのが音楽アプリのようにロック画面で自由に操作できることなんです。これが、Pocketアプリの読み上げ機能や、他の音声読み上げアプリのほとんどで僕が満足できない部分なんです。

Voicepaperではロック画面でもリモートで進んだり、戻ったりでき、リスト画面でタイトルを長押しすると簡単に並び替えができます。そして、これらの動作を読み上げ再生中にも行えるというのがポイントです。

あとで読むサービスPocketからWeb記事を取り込む

Pocketとは、WebブラウザやTwitterなどで読みたい記事をワンタッチで保存できるサービスです。VoicepaperではPocketに保存したページを簡単に取り込み、「あとで聞く」ことが可能になります。

僕は、はてぶ、SmartNews、Twitter、Webブラウザなどで気になった記事をポンポンとPocketに保存してます。

あとで読むアプリ「Pocket」が便利!使い方と2タップで保存する方法

Evernoteのノートを取り込む

Evernoteに保存したノートやクリップも取り込めます。最近はPocketとEvernoteのWebクリッパーを併用してます。EvernoteのWebクリッパーはどんなページも読み込めるし、印刷ボタンがあるページだと全体をまとめてクリップできたりします。

もちろん、自分で書いた文章の公正に読み上げでチェックしたり、試験前に暗記するために耳で何回も聴いたりするのにEvernoteとVoicepaperの連携はよく使われています。

Evernote Webクリッパーとは?

Dropboxに保存したテキストを取り込む

Dropboxに保存したテキストファイルを取り込むことも可能です。pdfや電子書籍ファイルは読み込めないのでご注意ください。

僕は本をスキャンしてtext化したファイルをDropboxに保存して、Voicepaperに取り込んで耳で聴いたりしてます。

コピペしたテキストを貼り付ける

Voicepaperでは、クリップボードにコピペしたテキストを貼り付けて読み上げることもできます。たぶん、一番簡単なテキストの取り込み方法はこれだと思います。

ちなみに、Macをお使いの方は、ユニバーサルクリップボードという機能がありまして、なんとMac側でコピペしたテキストをiPhoneやiPad側で貼り付けることができるんです。

これが、Voicepaperを使っている人にはめちゃくちゃ相性よくて、Mac側でがががーっと文章をコピペして、iPhoneを開いてVoicepaperで貼り付けたらサクッとMac側でコピーしたテキストをiPhoneで読み上げることができるんですね。

ユニバーサルクリップボードが超便利!MacでコピーしてiPhoneでペースト!macOS Sierraの使える新機能

25ヶ国語に対応・音声言語は自動切り替え

Voicepaper2では以前のアプリと違って、25ヶ国語以上の言語に対応しており、言語ごと音声を購入する必要もありません。ヒンディー語やトルコ語でも使えます。英語はイギリス英語、アメリカ英語、オーストラリア英語、男性、女性とかいろいろ使えます。

特に便利なのは、テキストを読み込んだ時点で音声を自動で切り替えるので、英語と日本語のテキストを併用して聴いている人はストレスフリーです。

そして、言語ごとに音声スピードを設定できるので、日本語の文章で速い音声を設定しておき、英語の時はゆっくりめで聞きたいということもいちいち調整する必要がありません。

そして、以前のLisgoやVoicepaperではできなかった、読み上げの発音も設定から自由に編集することができます。これで、「炭水化物」を「たんすいばけもの」と読まれる悪夢からも解放されました。

Voicepaper2の有料版について

Voicepaper 2は無料で使ってもらい、気に入ってもらった方にアップグレードしてもらう形式をとってます。とりあえず、無料版では3分ごとに広告が出現してストップするというやり方を試してるんですが、今後どうなるかはわからない。

僕のアプリの有料版の価格戦略は、リリース直後は安くして、人気がでてきたら段々と値上げしていくという形を毎回取っている。これだと、機能追加のたびに有料版を付け足していくより、最初のバージョンから使ってくれたユーザに報いるという形になってバランスいいと思うのが理由。

もしユーザが増えなかったり、利益が出なかったら残念ながらアプリの開発は継続できなくなるけど、ニッチながらコアなファンがついてくれて上手いこと収益が上がってくれることを期待しております。

ちなみに、アプリの質問、要望、改善点などはアプリの設定画面にある「質問・要望を送る」ボタンからいつでも受け付けているので、いつでも歓迎です。

なんで読み上げアプリを作ったのか?

実は、僕がiPhoneアプリ開発を5年以上前に独学で勉強して始めたきっかけは、家事洗濯中やランニング中が退屈すぎるから、読みたいWeb記事を耳で聞きながら楽しく時間を過ごしたいなと思ったからなんです。

もう、自分が使いたいからモチベーションはマックスで夢中で勉強しながら作りました。

そこで作ったのがLisgoという、Pocketという「あとで読む」という保存サービスと連携して、「あとで聞く」ことができるアプリです。

そのあと、Voicepaperという、DropboxやEvernoteに保存したテキストを読み込める読み上げアプリも作りました。これは、自分でスキャンした本を、これまた運動中とか歩いている時に耳で聞きたかったからです。

当時作ってる最中は周りの友達にアイデアを話しても、「目で読んだほうが速いし」とか、「集中できないし」とか、「人間の声じゃないと嫌」とか、そういう意見が多くて自分はめちゃくちゃ欲しいのに周りは全否定という想定外の状況でした。

しかし、自分が欲しいんだから売れなくてもいいやという思いと、多分こういうものが欲しい人は全世界に一定数いるはずだという思いから気にせずせっせと作り、iOS5あたりの時にリリースしました。

すると、確かに一般受けはしないんだけど、刺さる人にはめちゃくちゃ刺さって「これ神アプリだわ!」っていってくれる人もたくさんでてきた。これは、自分が時間も頭も相当な時間を使った初めてのプロダクトとして小さな自信になりまして、この時の小さな成功体験が僕の人生でもすごく大きな出来事でした。

*Lisgoは特にいろんな人が記事書いてくれた。海外でも人気出た。
情報収集の常識を変えるアプリ!記事読み上げの「Lisgo」が凄い
LisgoでPocketの記事を聴くと情報収集が捗る!これは神iPhoneアプリ!

で、iOS7になってiPhoneアプリのUIが大幅に変更して、頑張って対応しようと思ったけどiOS7のバグのせいでどちらもアップデートするとハイライト部分が動かないという状況になってしまったんですね。

というわけで、iOS6からLisgoとVoicepaperはずっと放置だったんです。そのあとはTaxnoteとかListTimerとか作ってました。

ところが、iOS10の時代になっても未だに根強い人気があって、見た目はiOS6なのに二つともそこそこ売れ続けてました。

しかし、アップルの方針からどちらも32bit時代のアプリなんでiOS11で動かなくなるんです。

それならば、今までのノウハウを結集させ、LisgoとVoicepaperの機能を合体させたアプリ、つまり、テキストのコピペ、Pocket、Dropbox、Evernoteすべてに対応させたVoicepaper2というものをゼロベースから作ってみるかと思い立ち、数ヶ月前から集中して開発していて、やっとリリースできました。

ちなみに、僕は基本的に今まで自分が欲しいものばっかり作ってきました。

運動中に音楽聴くのに飽きたからLisgoやVoicepaperを作り、アプリが売れたので確定申告する必要ができ、弥生会計で帳簿をつけるのが面倒すぎてTaxnoteを作り、ついでに食費とかをシンプルに把握するためにZenyを作り、iOSの標準タイマーのセットが時間かかるのでListTimerを作ってきました。

そういう意味で、Voicepaper2は自分が毎日使い倒すアプリなのでモチベーションもマックスを超えていて、自分にとってはなくてはならないアプリなんだけど、自分の作ったプロダクトの良さをゼロから他人に説明するのって意外と難しいんです。

これ、特に作ってる自分は無数に利点が頭の中にあるから、逆にまったく初めての他人に1から説明しようとすると、あれもできる、これもできる説明するという袋小路に陥ってしまったり、そもそも相手に刺さらない部分をアピールする結果になってしまったりするのがよくある。

これ、自分でプロダクト作ってまったく初めての人に説明しようとした人ならよくわかってくれるんじゃないだろうか。あるあるだと思う。

Voicepaperの場合だと、「運動中に耳でながら聞きできるんだよ!」とか言っても「いや、音楽聴くし。。」とか、「読む時間がない時に、移動中に耳で聞けるから時間を効率的に使えるよ!」と言っても、「いや、そもそも活字って耳で読まないと頭に入らないし。。」とか、もっともな答えが返ってくるんですよね。

で、僕自身もよくよくなんで便利読み上げアプリが欲しかったかというと、別にながら聞きがしたいとか、効率的な情報収集したいとか、そういう理由が一番最初にきたんじゃなかったわということに気づいたんです。今でも集中して読みたい時は目で、紙の本の手触りを感じながら読みたいし。

そこで、なんで欲しかったんだっけとじっくり考えなおしてみた。

退屈で面倒な時間を楽しい時間に変えること

すると、日々どうしても遭遇する自分の中で退屈で面倒な時間、つまらない時間を楽しい時間に変える、有意義な時間に変える。長い時間を感じていたことが、辛くなくなってあっという間にすぎる時間になる。そういったことが大事だったんだと気付きました。

例えば、僕の場合は毎日の食器洗い、家事洗濯の時間です。この時はずっとiPhoneで音楽を聴いてたんだけど、音楽って毎日気に入った新曲を聞けるわけでもないので毎日ずっと聴いてたらどうしても飽きてくるんですよね。

なので、Podcastとか聴くほうがまだもつんだけど、こんな時に自分が読みたいブログとか文章とかを聞けたらもっと楽しいだろうなあと想像したのが最初だった。

で、アプリを作ってみたら本当にその通りで、毎日退屈だった掃除機かけとか、食器洗いの時間のストレスが大幅に減って、あまり苦にならない有意義な時間になっちゃったんです。

これは、毎日のランニングでも同じだった。ランニング中のモチベーションを維持したり少しでも退屈しないようにいろいろ音楽を選んだり、Podcastを聴いたりするんだけど、やっぱりネタ切れになってきて、そういう時は退屈すぎて辛いんですよ。

ランニングって頭を空っぽにしたほうがよいとか、そういう時もあるけど、やっぱり毎日のルーチーンで退屈しちゃうと続かなくなっちゃうんですよね。

そういう時も、毎日読みたい文章があると、さあこれをアプリに入れて今日はこれ聞きながら走ってくるかとなって、全然退屈やストレスを感じなくなった。

Shu Uesugiさんに教えてもらったんだけど、Hookedという本の著者もLisgoのユーザで、自分のやりたくないことを習慣にするために、自分のやりたいことと組み合わせるというテクニックを使うために、Pocketに保存した記事を聞きながらエクササイズしているらしい。

“If you can take something you don’t like doing and…pair it with something you do like doing, you’re more likely do the thing you don’t like doing,”

“あなたがやりたくないことを続けたければ、あなたがやりたいことと一緒にやるといい。すると、やりたくないことを続けやすくなる。”

*Nir Eyal | Hooked on Technology (Episode 431)より

もちろん、Voicepaperを作ったら、老眼や目が見えない人たちから感謝されたり、語学学習に使っている人、試験勉強に使っている人、子供を寝かせている時に耳でなにか聞きたい人、パソコン作業中にWikipediaの歴史資料を流し続ける人など、いろんな人に感謝されたんだけど、自分にとってのよさを説明するとこんな感じになります。

Voicepaper 2 for iPhone・iPadをダウンロード。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

怠惰の法則とシンプルにしすぎる罠について

先日、UIデザインで有名な深津さんがゲスト出演しているPodcastを聞いた。ここで「怠惰の法則」というなかなかキャッチーで、なにそれと気になっちゃうテーマについて話してたんだけど、これがシンプルながらも強力な考え方でとても面白かった。

サービス設計とかに興味ある人はぜひオススメ。

怠惰の法則とはなんぞやというと、「ユーザは基本的に怠惰であるから、いくつかの新しいサービスが出てきた時、どれだけ使うのに面倒くささがないかが普及の決めてになる。」という考え方でした。

この考えかたを元にすると、VRとかはまだまだヘッドセット用意して、カメラ設置して、高スペックのPC用意して面倒なので、メインストリームになるにはもっとお手軽さが向上しないと厳しいだろうという話をしてた。

このPodcastで話されている内容は、世の中が進むにつれてメインストリームから離れ、必要でなくなったことも、それはそれで文化や趣味として残るという話までしていて、深みがあって面白い。(例えば、移動手段としてメインだった馬は、車が普及しても乗馬という趣味として残ったり)

さて、ここでほうそうかあ、面白いなあとして終わらせるのはもったいないので、アプリ制作という具体的な内容に落とし込んだ時、どうこの教訓を活かせるかというのを考えてみた。

こういう話って、「なるほどなあ。。」と頷いて参考になったあと、じゃあ自分の立場でどう生かせるかって考えると、すぐには具体的なアクションが思いつかないもんです。でも、結果的になにか実行に移せるまで考えることに価値があると思うので。

というわけで、僕もアプリ作る時は、いかにユーザの潜在的な脳みそへの負担を減らすかを常に考えている。こういうとカッコいいけど、単純にユーザの選択肢を増やしすぎないようにしたり、ボタン数や機能を多くしすぎないようにしたり、iOSやAndroid固有の一般的なUIばっかり使うとかそういうことです。

ここからさらに、怠惰なユーザがとにかく面倒でなくなるように突き詰めると、実はいろいろやれることはたくさんある。僕のアプリ、Taxnoteも今後優先しようと思っているのは機能追加よりもヘルプ機能の充実とか、いかにアプリの理解を楽チンにするかに重きをおこうと思ってる。

ヘルプを死ぬほど見やすくする

まず、設定画面にヘルプボタンを置いて、そこにすべてのヘルプ事項を書いていってもユーザは基本的にそこまでたどり着かない。なぜなら、なんかハマった時に設定画面に飛んで、ヘルプを開いて、そこで調べようって思うユーザはほとんどいないからです。

自分がユーザだった場合を考えると簡単で、「あれ、これどうやるんだろ?」って思ったあと、わざわざヘルプを探してそこで自分の解決策を探して見つからなかった時のリスクを考えると、面倒だからいいやってなってそこで諦めてしまうからです。

となると、あまり手間もかからずに効果的だなと思ってやっているのが、いろいろなアプリ内のアクションの中に関連するヘルプを埋め込むというやり方。

例えば、何かのエラーダイアログを出す時に、そのエラーに関連するヘルプへのリンクを埋め込んでおく。そこで、関連する便利な使い方のヒントもついでに書き込めるし、ユーザにアプリ操作を教える大チャンスを見逃す手はない。

以下は現在開発中の読み上げアプリVoicepaper2のUI。写真の左の例だと、テキストをコピーする時、貼り付けできるテキストがない時に表示するダイアログに、追加情報や便利な使い方のヒントを盛り込む予定。こういうのって、設定画面のヘルプに書いていても誰もそこまで飛んで読んだりしないので。

写真右の例だと、Dropboxとかからテキストを取り込むアクションシートの中にヘルプを埋め込む。ここで、「これなに?どうやって使うの?DropboxとかPocketってなんだよ。」というユーザがすぐにヘルプ飛んで理解しやすいようにする予定。

*Voicepaperはテキストを取り込んで耳で聴ける読み上げアプリ

めんどくさくないサービスってこういう細かい楽チンさが決定的だなあと思ったんだけど、これを愚直にやってると感じるのがメルカリです。

メルカリで商品購入されて、そこから発送する時のワークフローは今までのオークションサービスに比べてはるかに使いやすい。以前のヤフオクなら、入金先教えて、住所聞いて、発送しましたとか連絡してとか、もうとにかく怠惰な人には我慢できないほど面倒だったんだけど、そういうのがほぼ全自動でできている。

さらに、ヤマト運輸の集荷まで数タップで終わっちゃう。

この楽チンさに慣れてしまうと、他のサービスで出品するのが面倒になってきて、手数料が多少高くてもいいかとなる。

Airbnbも3タップで予約が完了するというのに徹底的にこだわって設計したと本に書いてあったし、「もっと手間を省けないか。自動化できる部分はもっとないか。」というのを何度も考えると結果的に使いやすいサービスが出来上がるんだと思います。

で、その努力っていうのはわかりやすい料金とか見た目とかではなく、本当に細かすぎて伝わらないレベルの積み重ねなんだけど、その積み重ねこそが「使ってみたらこれが一番使いやすい」っていうのに繋がるんだろうなと。

シンプルさにしすぎる罠

こう考えると、ヘルプなんか読まなくても直感的に使えるのが一番だ!という話にもなるんですが、これは理想と現実というものがありまして、あまりシンプルにしすぎるのもダメという話があります。

これは、ゼロベースの石橋さんがよく言ってることなんだけど、「ユーザは誰も初心者のままではいたくない」という話が根っこにある。

つまり、最終的にユーザは赤ちゃんでも使える単純なアプリをずっと使い続けたいわけではなくて、少なくとも中級者レベルまでは使いこなせるようになりたいわけです。

となると、便利だけど、この機能は絶対に一定のユーザにはヘルプが必要だから却下というのばかりを繰り返していると、あまりにも単純で、この機能があれば便利なのにという機能もなく、物足りなすぎるアプリが出来上がってしまう。

なので、ヘルプが必要すぎるのもダメだけど、ヘルプがまったくいらないアプリを作るというのも本末転倒になってしまう。このへんのさじ加減がすごく難しくて、ジャンルによるので簡単な正解はないし、作りながら自分で考えるしかないんです。

そうなると、やっぱりヘルプはある程度必要になってくる。そして、ヘルプを埋め込むタイミングを工夫するのに加えて最近考えているのが、ひたすら動画も用意するといいなということ。

とにかく、細切れにそれぞれのヘルプや操作方法を説明した動画をYoutubeで用意しておき、それぞれのヘルプページに貼り付けておく。動画は長くしすぎず、短くサクッと確認できるように。テキストで読んでもいいし、動画で確認してもよいと。

もちろん、開発者に直接メッセージで質問できるボタンもわかりやすいところにいろいろ設置して、テキスト、動画、メッセージ質問という3つの選択肢を用意しておけば、怠惰な人でもちょっとずつ学習していってもらえるんではないだろうか。

よいものを作っても誰も使ってくれないと意味がないからマーケティングが重要とはいいますが、まずは、使い方の80%ぐらいはわかってもらえるようにいろいろ努力を積み重ねる必要があるなと思った。

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*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

アプリのランディングページ作成サービスをいろいろ試した結果、機能が少なくシンプルなAppsitesを使ってみた

こんにちは。最近、僕のメインで開発しているアプリ、Taxnote、ZenyListTimerのAndroid版がリリースされました。

自分がさも開発したかのように語っておりますが、実際は途中から強力助っ人な方に手伝ってもらい、途中からプログラミングはほぼ全部お任せしちゃいました。

さて、これに伴い、それぞれのアプリのランディングページを作る必要性が高まってしまいました。というのも、今までアプリを紹介する時のリンクはAppStoreだけ貼り付けときゃよかったわけです。

しかし、今後は、iOSもAndroidも対応してるよということを世の中に普及しないといけない。となると、一つのランディングページを作り、その中にAppStoreとPlaystoreのダウンロードリンクを表示する必要がある。

これで、「あ、このアプリはiPhoneでもAndroidでも使えるんだ!」と世の中の人にわかってもらえると思う。

と思って、気合いいれてランディングページを作ろうとしたんだけど、やり始めたら本当に面倒くさい。

「動画とかもいい感じで載せたいな」とか、「スクショも綺麗に載せたいな」とか、「ソーシャルボタンもいい感じに付けたいな」とか、「英語ユーザと日本語ユーザで別サイト表示したいな」とか。

いろいろと頭の中で理想とするイメージはあるんだけど、そのどれもやろうと思うと、結局は既存の「このサービス使うとお手軽にランディングページ作れるよ!」っていうサービスでは実現できないことが発覚。

しゃあないからThemeForestとかで気に入ったテンプレを購入して、カスタマイズしようとしたんだが、これがめちゃくちゃ面倒。やり方はわかるからできるんだけど、面倒すぎて途中でやりたくなくなった。

というわけで、全部実現するのはサクッと諦めて、ある程度のシンプルなサイトを作れればいいや!という方針に途中で切り替えました。

そこで、僕がかねてより愛用していたけどGoogleに買収されちゃってもうすぐ閉鎖するScreenshotsBuilderのサイトで紹介されていたAppsites.comを使うことにした。

その他にもいろいろあるので試してたんだけど、このサイトが一番ダントツで使いやすかった。というのも、極端にやれることが少ない!結果的に、操作がわかりやすくて、圧倒的に使いやすかった。

久々に機能が少ないこととシンプルであるということの大きなメリットを実感しました。他のサイトだともっといろいろできるんだけど、操作覚えるのがすごい面倒そうなんですよね。途中で挫折しちゃうというか、そこまでやる気がないというか。

というわけで、僕のようにめちゃくちゃシンプルに、そこそこのサイトをサクッと作りたいという人にはおすすめです。月9ドルでひとつのサイト、月19ドルで無制限にサイト作れます。

ちなみに、昔の僕だったら「なんでランディングページに月額課金しないといけないんだ!もったいない。一回作ったら自分でアップして放置しとけばいいだけなのに。。」って思ってたんですよね。

でも、一回この簡単に作れるサービスを体験してみたら、「ああ、まあすごく簡単に作れるからお金払っていいか。」っていう気持ちに変わりました。これも、人間は実際に体験してみると気持ちがコロッと変わるというのを久々に実感しましたね。勉強になります。

そんなこんなで作ったTaxnoteのページがこれ。「確定申告を楽チンに」をキャッチにした。

家計簿のZenyはこれです。自分のオカンも続いてるから、「おかんも使えるアプリ」と書いときました。

一番DLされてるListTimerはこれ。爆速セットが売りなんだけど、ここまで人気出るとは意外だった。

しかし、これが圧倒的に使いやすかったから毎月お金払っているんだけど、このappsites.comというサービス、サポートにメール送ってもまったく音沙汰がない。なんか細かいバグらしきものもあるし、大丈夫なんだろうか。

このサービスは、今後もサービスを改良してくれるんだろうか?って心配しちゃうぐらい、なんか作った後に今は放置してます感があります。そんなわけで、あまり声高にオススメできないサービスなんですが、一応僕みたいな境遇の人の参考になれば幸いです。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

「邦訳に4年かかった謎」タレブの「反脆弱性」(アンチフラジャイル)と次回作のSkinInTheGameについて

ブラックスワンで有名なナシーム・タレブの著作、アンチフラジャイルの日本語版がようやく発売されました。めでたい!

邦題は、「反脆弱性」。いやあ、元々これはタレブの造語なんだから、そのままアンチフラジャイルでいいんじゃねえかと思うんですが、まあやっと日本語で出るので嬉しい限りです。

というのも、この本、英語版が出たのは2012年の11月ですよ。つまり、翻訳に4年ぐらいかかってる。僕は友達とこの話するたびに、「ああ、なんか翻訳で問題が出たんだろうなあ。。」って話してたんだけど、案の定、今までタレブの本をすべて翻訳してきた、 望月衛さんが翻訳者から監修者に変わっていた。

一体何があったんだろうか!ブラックスワンてかなり売れてる本だから、商業的な理由じゃないのは確かなんですよね。ちなみに、 望月さんの翻訳する本は金融・経済系でたいてい面白い本が多い。最近だと、ヤバイ社会学書いた人の新作を翻訳している。これも面白そうだ。

まあ、ここ数年、いつ出るのかいつ出るのかとTwitterで訴えてきたけど、最近はもう諦めてただけに、日本語版として出してくれるだけで嬉しいですよ。

もうその間、待ちきれず、英語版で3回以上は読んだから、内容はだいたいわかってるんだけど、やっぱ僕は日本語ネイティブなんで日本語のほうが読みやすいし。

僕のアプリ開発のノウハウって、タレブの本とBasecampの本に書いてることをそのまま実践してるだけなんですよね。だから、このブログの以下の記事とか興味ある人は、間違いなく面白いと思う。

勝者総取り世界の憂鬱
不確実性とは不完全情報のこと
新しい便利なモノは新しい問題も作る

さらにいうと、このアンチフラジャイルという本は、今までの難解なタレブ本の中で一番読みやすいんじゃないかと思う。まず、一作目のまぐれや二作目のブラックスワンのように、金融や経済の予備知識はあまりいらない。

そして、この本は「じゃあ、いったいこの不確実な世界でどう生きていけばよいの?」っていうブラックスワンを読んだ読者に対する答えであり、具体的にこうしたらいいよっていう内容なので、そのぶん読みやすい。

タレブの本は、まぐれとブラックスワンもどちらも最高に面白いけど、初めて読む人には、この反脆弱性(アンチフラジャイル)から入ると読みやすいんじゃないかなと。タレブ自身、アンチフラジャイルが自身の最高傑作だと言ってます。

反脆弱性ってどんな内容?

ブラックスワンでは、非常に小さい可能性で起こるが、それが大きな影響を持つ事象について書かれた本だった。そして、もしそれが悪い事態を起こすものなら十分注意しろという警告がちりばめられている。

こういった事象は過去の一度も起こった事がない場合が多いので、基本的に過去のデータは役に立たない。例えば、僕が自転車で東京を走っていて、突然、酔っ払い運転のトラックに後ろからすごいスピードで引かれたとする。

毎日同じ道を自転車で走っていて、3年間一度もそんなことはなかったけれど、突然そのようなことが起こったら、これは間違いなく僕にとってはブラックスワンな現象です。悪いブラックスワン。

逆に、よいブラックスワンもある。例えば、アプリの勉強会でなにかを発表して、それを見た人がたまたま懇談会で声をかけてくれ、その人が今まで想像もできなかったアプリのアイデアを授けてくれるかもしれない。これはよいブラックスワン。

反脆弱性という本は、日々生きている中で、どうやってブラックスワンという現象を発見し、悪いブラックスワンには気をつけて、よいブラックスワンが起こりやすい状況を作るかというテーマです。

ここでもっとも重要なのが、ブラックスワンを予測しようとしないこと。確立で計算できるカジノのようなケースはごく稀であり、この世界のほとんどの事象は複雑系である。だから、未来を予測しようと無駄な努力はせずに、起きうる結果の大きさに注目しろというのが本の趣旨です。

ある事象が起こるかを予測をするのは不可能だけど、ある事象が起きた時にどれほど影響が大きいかを予測するのは簡単である。そして、ブラックスワンな現象は、リスクとリターンが非対称であるのが特徴。

例えば、普通は車を運転していて重大な事故に遭遇することはまずない。でも、もしその事象が起きてしまったら、人生が終わってしまうかもしれない。これは、ほとんどの場合は大丈夫だけど、なにかが起きた時はとても大きなリスクがあるという非対称性がある。

こういう、ほとんどの場合には何も起こらないけど、起きてしまった時の結果が悲惨だと思われる事柄にはめちゃくちゃ臆病になるのがよい。

逆に、IT勉強会とかに足を運んでも、特に何も得る事がなかったりして、「これなら家で勉強してたほうが効率よかったな。。」って思ったことがある人は多いんではないだろうか。

でも、IT勉強会やパーティに行くっていうのは、たいていの場合、そこまでよいことが起きず、時間の無駄だったかもと後悔することも多いのだが、なにかのきっかけでものすごく重要な、ラッキーなことが起きる可能性を秘めている。ここにも非対称性がある。

こういう、大抵の時は上手くいかないけど、その失敗のリスクは低くて、もし上手くいった時のリターンがすごく大きな場合、失敗を恐れずに積極的にリスクを取りましょうという話です。

人間の脳みそは悪いブラックスワンが起こる確率も、よいブラックスワンが起こる確率も軽視しがちです。だからこそ、悪いブラックスワンに対しては徹底的に臆病になり、よいブラックスワンが起こるチャンスにはどんどんトライするのがよい戦略となる。

また、複雑系の世界(例えば人間相手の商売など)では、トライアンドエラーは知識に勝るということも口すっぱく語られてる。この世界の理論はトライアンドエラーによって出た結果により、後から作られることがほとんど。

あれこれ試した結果、上手くいく方法を発見した事例に基づいて理論が出来上がるのが歴史の常だけど、後からみると、あたかも理論を発見してから結果を出しているように勘違いされやすい。

医療の現場で顕著なのだけど、ずっと人類は「よくわからないけど、こうすると上手くいく」という経験則でやってきた事が驚くほど多いみたいです。そして、後々になって理論的に正しいことが発見されたり。

まあ、この本の内容は広範囲に広がりつつも、中身が濃いので、このブログで簡単に紹介することは不可能であります。薄っぺらいビジネス書と違って要約ができないし、かいつまんで説明しようとしても、中身の百分の一も説明することができない。

というわけで、いつも通り今までの思い込みをぶち壊されちゃう面白い本なんだけど、この本、英語版が発売されてから四年ほどたっているんです。

そうなんです、このアンチフラジャイルの次回作である、「Skin in the game」というのがもうすぐ発売されようとしてるんですね。せっかくだからこの本についても書いてみたい。

タレブの次回作Skin in the gameってどんな本?

次回作はタレブの公式HPにドラフトがアップされていて、Mediumでも公開されている。Mediumのサイトがデザイン的に読みやすいのでオススメです。

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このSkin in the gameっていうのは、「自分がやっている事に対して、自らもリスクを負う」というような意味。

例えば、僕が野菜を作っている農家だったとする。自分が売っている農作物を自らも食べていると、これはSkin in the gameの状態で社会にとって望ましい。でも、自分が作っている農作物は農薬だらけで、それを売ることはするけど自分では絶対に食べる代物ではないというなら、これはSkin in the gameの状態にないことになる。

儲かったら多額のボーナスがもらえて、失敗したら国民のお金で救済されるリーマンショック時の投資銀行のようなシステムは、自らとったリスクを自らで引く受けていないことになり、こういう事象がある社会システムはよろしくないと。逆に、それぞれが自らのリスクを引き受けている状態であるほど望ましい。

これってどんな時にでもいえますね。何か仕事していて、失敗したとしても自分の責任にならないなら、その仕事は適当になるし、慎重にもならないし、結果的に質も下がる。なので、常にSkin in the gameの状況に自分をおくというのも注意するべきとなります。

とはいっても、この次回作、結構いろんな分野の話があって面白い。一応全部読んだけど、僕のオススメはこの3つ。

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特に、1番目のThe Most Intolerant Winsは傑作だと思う。豚肉を禁ずるハラール食メニューの追加や、禁煙などのルールがあるレストランの標準ルールになるには、賛成派が過半数を取る必要はなく、25パーセントを占めればそれでことが足りるという仕組みを論じてます。

例えば、バーベキューパーティで4組の家族を招待した時、その中の1組だけイスラム教徒だったとする。イスラム教徒の家族は絶対豚肉食べないから、どちらでも合わせられる3組の家族はそれに合わせ、そのバーベキューは豚肉なしになる可能性が高い。

このマイノリティルールは大小関わらず、世界のあらゆるところに見られ、ピーナッツアレルギーから宗教的ルールまで幅広い。タレブはここから議論を展開し、厳しいマイノリティルールを持った宗教が、もし他者にもルールを強制する場合はどうなるかという話まで発展していく。

とにかくこの記事は長いけど、今のところ一番人気の文章のようです。

とはいってもタレブの難解な文章を英語で読むのはしんどいので、次回作の日本語版はぜひとも、半年後ぐらいには発売してほしいっす。翻訳はかなり大変な部類だと思うけど、期待しております。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

「記事を書くほど単体では赤字になる」アプリマーケティング研究所の方に、運営の苦労、収益モデル、タイトルの決め方など、いろいろ教えてもらいました。

みなさんは「アプリマーケティング研究所」というサイトを知っているでしょうか?アプリ開発者の苦労話や、実際の収益モデルなど、興味深い記事がたくさんあるサイトです。

業界人なら一度は読んだことがあると思う。僕自身も、数年前から「このサイトのインタビュー記事はすげえ!」と早くから注目していたんです。あまり他のサイトでは読めない、スモールビジネス系の開発者インタビューが面白いんですよね。

そして、どんな人がやってるのかなと興味持ち、たまたま近くに住んでいることを発見したので、「ランチしてもらえませんか?」と数年前にお願いしたという過去がありまして。

そんな縁があったおかげなのか、先日、アプリマーケティング研究所の有料noteのほうでインタビューさせてもらえませんかと言われました。

僕は二つ返事でOKしたのですが、このチャンスを逃すまじと思いまして、「謝礼とかいらないので、ぜひ僕からもブログ運営の話をSkypeでインタビューさせてください!」と駄目もとで聞いてみた。すると、「いいですヨ」とあっさりとOKをもらえました。

そしたら、「そこまで話してもらっていいんですか?これお金取れるレベルなんじゃないですか?」っていうぐらい、いろいろ教えてもらいました。記事のノウハウやら、ビジネスモデルやら、運営で苦労する点やら。

「コンサルで儲けているわけじゃないからぶっちゃけても別に大丈夫なんです」とは言われたけど、ブログ書いてる人には面白い話なんじゃないだろうか。僕は勉強になることがかなり多かった。

自分が興味あることを中心に聞いたんですが、内容としてはこんな感じ。

1.なぜアプリマーケティング研究所を始めたか
2.キラキラ女子記事に対する、極端に違う読者からの反応
3.タイトルのつけ方・イラスト挿入の効果
4.ブログのビジネスモデル・差別化戦略など

1.なぜアプリマーケティング研究所を始めたか

Q.ちなみに、このブログを始めたきっかけってなんだったんでしょうか?アプリ業界に興味があったとか?

A.もともとネット系の企業にいたんだけど、アプリというよりマーケティングに興味があったんです。アプリに特化したマーケティングのメディアがなかったのでやってみようと思って。

おお、これは意外な答えだった。特にアプリにこだわりがなかったとは。

Q.しかし、会社を辞めて、自分でメディア運営するって相当大変そうですよね。。

A.自分が興味のあることを、自分で好きな人に話を聞きにいけるのが楽しいですね。自分で全部決められるというのが一番いいところです。

僕も個人でアプリ開発してるけど、全てを自分で決められるのは確かに凄くいいところですね。失敗しても上手くいっても、そのまま自分に返ってくるので納得がいくというか。

A.ただ、なにをやるかを考えた時に、10億円あってもやり続けたいことという基準で選んだんです。お金が余るほどあって、数ヶ月休める状況になっても、今までどおりメディア運営を続けると思います。

ああ、この気持ちはなんとなくわかりますね。プログラマもこういう人多いと思う。「休日も特にやることないからプログラミングしてた」とか半分冗談で、半分本当の話をよく聞くし。

僕もアプリとか、なにかモノを作るのが好きなので、お金の心配がなくなっても結局毎日やってると思います。

2.キラキラ女子記事に対する、極端に違う読者からの反応

さて、このスカイプをした時にちょうどバズっていたもので、「なぜインスタは「キラキラ専用空間」ではなくなってしまったのか? 女子大生が語るインスタに起きている変化と、SNSで「着物の価値」が上がった理由。」というアプリマーケティング研究所の記事がありました。

僕も面白いなあと思いながら読んでたのもあり、軽い気持ちで雑談してたら、この記事の裏話が興味深かった。

というのも、この記事では、「自分のインスタにいいねされたら、こっちも相手にいいねしないといけない無言の圧力」とか、「GoProで撮ったものをインスタに載せるといいね率が高まるから人気」とか、女子大生にとっては当たり前らしいが僕にとっては新事実がたくさんあって面白かったのです。

Q.いやあ、あの記事は女子大生のインスタ事情を詳しくレポートしてたけど、普段周りでキラキラ女子大生と接する機会がない僕にとっては衝撃でした。いいねの圧力とか、インスタのために着物着るとか、本当かよ?という感じで、未だに信じられないですよ。

A.あの記事で面白かったのが、読者層によって反応が両極端なんですよ。例えば、Twitterを見てると、おじさん達は否定とか驚きがほとんどで、女子大生のアカウントだったら「あるある」とか、「10回うなづきながら読んだ」とか。

Q.マジですか。僕にとってはアプリマーケティング研究所がそういう世界との唯一の接点なんで、完全に情報の隔離がありますね。あそこまでインスタに熱意ある女子なんて特殊な例だろうと思ってたけど。

A.あの記事で聞いた人は最高峰のキラキラ女子じゃないですよ。どちらかというと、普通の女子大生なんです。もう1年前ぐらいからああいう空気です。最近はCamcanでも「インスタの女王になりたい」という特集があるし、小中学生の雑誌でも「インスタでいいねをもらうには?」というコーナーがある。GoProの宣伝動画でも、SNSにアップしていいねがバババってついていくのを売りにしていたり。

*こちらの動画の1分44秒あたりから

この話を聞いた時は、「これは特殊な女子をブログで取り上げているんだろう」と勝手に想像していた自分の短絡的な発想を修正しなければいかんと思いました。人間、自分では想像できない、または目の前で見たことがまだないという事象に関しては納得できないことがよくあるもんでして。。

3.タイトルのつけ方・イラスト挿入の効果

次に、ぜひ僕が聞きたいと思ってたことが記事タイトルの付け方です。自分もブログやってるだけに、タイトルの重要性は重々承知してるんだけど、すごい難しいですよね。なにが難しいかというと、まずよいタイトルが思いつかない。

さらに、世間では長いタイトルが多くなってる気がするけど、元々はポールグレアムのブログの影響でなんか短いタイトルがカッコいいという変な固定観念があって、どうも抵抗があったのです。そうは言っても結局分かりやすい方がいいかも、ということで最近は長めに書いてるというのが僕の傾向です。

Q.僕が記事のタイトルに時間使うようになったのは、AVのタイトルの影響なんです。長いんだけどクリックさせるタイトルなんですよね。

昔は、大事なのは中身なんだから装飾文字はいらないだろとか思ってたんです。でも、読み手の立場になると頭に入りやすいイメージがあったらついクリックしてるのに気づいたんですよ。「某名門女子大学テニス部所属のお嬢様 緊急デビュー」とか。

その媒体の相当のファンでもない限り、シンプルすぎるタイトルだと興味を持たずにスルーする可能性が高い。そんな時、なにかわかりやすい関連キーワードがあるだけで、自分がクリックする可能性は上がるんですよね。テク系のサイトだと「元アップル社員が起業して作ったのはAIが指導してくれるフィットネスアプリ」とか。

アプルマーケティング研究所では、どうやってタイトルをつけてるんでしょうか。

A.タイトルはすごく重要なんで、毎回何度も書き直しますよ。一時間ぐらいかけたり。今の例だと、タイトルに入っているキーワードで、集まってくるクラスタが変わるんですよ。AVで「お嬢様」だと清楚が好きな人がくるし。(それで見てみたら「ヤンキー口調」だったらガッカリする)テク系の記事で「アップル」というキーワードだと、アップルに興味あるクラスタがくる。

そして、中身がちゃんとそのクラスタが期待している内容とマッチするかも重要です。想定する読者層が読みそうなキーワードをタイトルにいれても、その人たちが期待していた内容と記事の中身が違っていたらガッカリさせてしまう。

ちなみに、スカイプする前に、タイトルはどうやって考えているか聞きたいですと僕が話してたのもあり、メモまで見せてもらいました。そのメモがかなり参考になったので、そのまま紹介。

■1、タイトルはどうやって考えるか
もはや長いタイトルのほうが良い気がしています。(ソーシャル時代は?)

前半をA(「!」か「?」、キャッチーかどうか)
後半をB(その記事に書いてあることを説明するような文章)

Aの意図は ソーシャルのタイムライン戦争で生き残ること
Bの意図は 記事に何がかいてあるか伝えること

Aは記事の中で一番グッとくるところをピックアップする
Bはこういうことが書いてありますということを示す(ここに何が)

AとBをバラバラに5つくらいずつつくって、かけあわせてみてどれがいいか脳内でABテストかけて、一番しっくりくるものを選ぶ。記事のタイトルは最後につけているが、なんだかんだ毎回1時間くらいかける。

ソーシャルのタイムラインでは「アイコン」「最初のテキスト(左上)」「画像・サムネイル」をみんな無意識にみているはず。(どんなクラスターのユーザーがくるかはタイトルで決まりやすい。どんなユーザーが訪れてくるか、かなりコントロールされることになる)

たとえば、映画で「感動の結末」と宣伝されていたら、その「感動の結末」に期待してみにくるひとが多い。もし、そこのユーザー体験と一致していたら「期待通りよかった」となる。この人は「感動の結末」が好きそうな友達にしゃべって、「これは泣けるからいくべき」という。これが、「ほっこり家族愛」と宣伝されていたら、また違うユーザーがくるし。

簡単に例)このブログのタイトルを決めるなら?
技術書執筆は大変すぎて割りに合わないとプログラマ友達からよく聞くけど、それでも出す理由を聞いてみた

1、まずグッとくるところをピックアップする(A)
・本って思った以上にフィードバックがなくて、「名前が売れる」という実感はない
・ツライし儲からないけど、良いと思うよ。おすすめです。

2、全体を説明するテキストをつくる(B)
・プログラマの友達がそれでも書籍をだす理由
・プログラミング書籍をだした友人の意外な本音

3、AとBをかけあわせる。

・「名前が売れる」という実感はない。プログラマの友達がそれでも書籍をだす理由
・「ツライし儲からない」けどおすすめ。プログラマの友達がそれでも書籍をだす理由
・「名前が売れる」という実感はない。プログラミング書籍をだした友人の意外な本音
・「ツライし儲からない」けどおすすめ。プログラミング書籍をだした友人の意外な本音

この中でどれがいいかな?と選んで、そこからまたブラッシュアップする感じ。
(読んでほしいターゲットユーザー、本文を読んだ時の読後感と合っているか、読み心地の響きやひらがな漢字のバランス)

・ 書籍を出すのは「ツライし儲からない」でもおすすめ。プログラミング本を5冊だした友人が語った苦悩と本音。
・ 書籍を出すのは「ツライし儲からない」それでも友人がプログラミング本を書くのをやめない理由。

なるほど。こうやってタイトルをひねり出していたのか。。どんな分野でもそうだけど、誰かが作った結果を参考にする材料は世の中に溢れている。ただ、その過程で考えていることをこんなふうに聞ける機会ってなかなかないんですよね。

ソーシャルで記事がシェアされて拡散される時代なので、今は長いタイトルのほうが合っているというのはなるほどなと思った。昔はRSSリーダーの一覧で切れない長さに収める必要性があったけど、最近はみんなSNS経由からきてるだろうし。

補足として、以下のような情報も教えてもらいました。

ファミマの冷凍食品が「インスタ」+「ラノベ化?(説明的タイトル)」していた。みんなそうなっていくのかな?

これはあくまで海外英語圏の統計データで参考ですが、

1、サムネイル画像を入れるとクリック率+27%
2、偶数よりも奇数のほうが20%も吸引力がある
3、疑問系で終えるとクリック率が2倍になる
らしいですよ。

Q.そういや、一時期からブログ内でオリジナルのイラストが挿入されるようになりましたよね。あれ、個人的には視覚的に読みやすくていいんですが、効果はやっぱあったんでしょうか?

A.最初はこういう単体記事だけでイラストを入れようと考えたんです。
10秒マンガでわかるマーケティング。「アプリを出す前に知っておきたい、アプリストア5つの特徴」

これは、「萌えに媚びている」「ふざけている」みたいなリアクションがくると思ってたんだけど、「かわいい」「わかりやすい」と言ってもらえて。

教科書のエレンベーカー先生などもそうだけど、逆に、萌え絵寄りのテイストって、一般化しているのかもしれません。それで、そこからイラストを入れはじめることにしました。コストがかかって大変なんですけど。

イラストを入れた一番の影響は、ツイッターで記事を一口サイズに区切ったものが、拡散されやすくなったことですね。

6,000RT

1,200RT

主観ですが、その他のイラストつかうメリットも。
・タイムラインで目が行きやすくなる(サムネイル)
・「あのイラストのサイトか」と認識してもらえるようになった
・どこか取材にいくと「イラストが良い」ばかり言われる。本当に。 (嬉しいような寂しいような??)

ある本で読んだのですが、絵をつかって説明をすると、3日後の記憶が6.5倍ものこりやすいそうですよ
https://twitter.com/appmarkelabo/status/831730476427665413

ただ、イラスト代金もかかるし、実はアプリマーケティング研究所の記事は書けば書くほど単体では赤字になるんです。バナー広告では全然ペイしないので。収益モデルは有料のPR記事と有料購読のnoteなので、それにつなげる、ある意味「カタログ」的な意味合いもあるのかなと。

ここで、ビジネスモデルなどの話になったので、そこもいろいろ聞いてみました。

4.ブログのビジネスモデル・差別化戦略など

Q.バナー広告は全然ダメなんですかね。

A.これはニッチジャンル特有の課題かもしれないけど、コストをかけて良い記事をつくって、記事がたくさんの人に読まれても、(記事単体だと)コストがそこまで回収できないんです。無料で良い記事をつくって、記事に広告(アドセンスとかのこと)をつけてコスト回収する、というモデルが成立しにくい。

アプリマーケティング研究所の記事は、記事を出せばだすほど、記事単体では99.9%の確率で赤字になります。(笑)

去年「はてなブックマーク年間ランキング 2016」に2つの記事がランクインしました。それのアクセス解析データをまとめたのが以下の図。ざっくりどちらも20万PVくらい。

20万PVでアドセンス最適化しても、せいぜい1PV×0.3円くらいだと思うので、広告収益6万円にしかならない。メジャーなジャンルだと、そこからの検索流入が積み上がるのだが、ニッチなジャンルだとあまりそこが期待できないんです。

たとえば、アプリビジネス系のキーワードで、トップレベルに大きいキーワードは「アプリ開発」だと思うけど、グーグルで月1万回くらいしか検索されていない。こういう理由で、記事単体だと制作コストは回収できないし、夢もないんですよね。。

ただ、希望のある話だと、noteの定期購読者がすこしずつ増えていっています。元々、「本を出版してみないか?」というお誘いがあって、本を出すぐらいならnoteの課金モデルのほうがいいんじゃないかなと思って試したのがきっかけでした。

収益全体の中でもnoteの課金購読の割合が増えてきているので、将来的にはこちらを収益の柱にしたいですね。

なるほど、やはりニッチジャンルに有料購読型は相性よいみたいだ。昔と違ってnoteみたいなマネタイズできるプラットフォームができたのがデカイですよね。

僕も最近、「リジェクトされまくったiOSの自動継続課金が規約変更でついに利用でき、使いやすくもなったので、Androidの定期購入と比較してみる」という記事で書いたけど、良質なコンテンツにみんなお金を払う時代になってきたのもある。

僕自身、NewsPicksとクーリエジャポンを購読している。以前ははてぶから面白そうな記事を選んで読んでいくという行動パターンだったけど、最近は有料購読している記事のほうが面白い場合が多いので、先に有料の記事を読んで、その後にはてぶで選んだ記事を読むという順番に変わった。

Q.アプリマーケティング研究所は似たポジションの競合もあまりないですよね。

A.実は、今はまだかなりのゆるげーなんです。みんなビジネスモデルを模索している段階なので。アプリで言うと、数年前のまだ大手企業がランキングにあまりいなかった時代みたいな。

ただ、紙の雑誌の人たちが本格的にネットのほうに流れてくると、一気に競争率が高くなると思います。すげえ編集者の人たちがいるから殺されちゃう。そういう危機感が常にあるので、頑張って書く力をあげようと意識しています。

なるほど、日本ではNewsPicksとかが収益モデルがちゃんとあって、レベルの高い編集者を雇えて、結果的に面白い記事が提供できる循環になった一つの例かもしれないが、今後はもっと増えていくのかもしれない。

海外だと「The Information」っていう、結構高めの価格設定だけど、良質なテク系の記事だけ有料購読で配信するっていうサイトが最近人気だと聞いた。これも、大手の新聞から有名編集者達を引き抜いて作ってるらしいし。

Q.最後に、ブログ運営やってきて、これ失敗だったなという話などありますかね?

A.以前はセミナー(講演)のレポート記事を書いていたが、いまではほぼ書いていません。これはもっと早く辞めればよかった気がする。セミナーレポートはとても楽なんです。セミナー主催者や講演者が記事を拡散してくれやすいし、講演する人が確実に準備して話す分、言葉がコンパクトに洗練されているし、そのまま書き起こすだけでも形になりやすい。

これの何がダメかというと、誰がやっても同じような記事になるから。どのメディアが書いても同じような記事になるから。PV数を増やすという意味ではいいけど、記事をつくる力はつきにくい。

そのメディアのファンになってもらうには、ここの記事はおもしろいよねと思ってもらわないといけない。もちろん、講演をわかりやすくまとめるのも、いろんなスキルが必要なのは間違いないのですが。

一方、インタビューは言い方はわるいけど、労力がかかるしめんどうくさい。そして、それがたのしくもある。

・誰にインタビューするのか?
・どんなテーマでどんな質問や議論をするのか?
・聞いた話をどう構成/編集してまとめるか?
・どこにどんな図/イラストをいれるのか?

などなど、やることの幅がたくさんあって、企画やアイディアの入る余地があるので、より経験値が溜まりやすい気がします。なので、セミナーレポート記事は、初期のコンテンツとしてはアリだけど、もっと取材コンテンツに力を入れた方がよかった。

なるほど、これは僕がブログ始めた時も、少しだけ似たようなことがありました。だいぶ前だけど、最初はカウンターストライクっていうPCゲームの洋ゲーのニュースを日本語でまとめるサイトを始めたのが最初だったんですよ。

今は、できるかぎり自分しか書かない内容を選ぶようにはしてるけど、あれはあれでブログ初心者の頃の助走期間としてよかった。みんなに読んでもらえやすいし。

しかし、今回話をしてて思ったのは、書く力を上げ続けるという意識がすごく高いんだなということです。「すごい編集者達がWebに移動してきたら殺される。負けないような力をつけないと」ということを、話している時に何度も聞いたので。

これ、プログラマの人達が常にスキルを高め続けるのと似てますね。どんな業界でも、そういう部分は一緒なんですね。

補足

ちなみに、今回の記事のきっかけとなった、僕がインタビューを受けた有料記事はこちら。途中までは無料で読めるようになってる。

「アプリの中身」まで翻訳したら、海外でも課金ユーザーが増えた。ツールアプリで生活する個人開発者に聞く、アプリの翻訳とマネタイズのコツ。|アプリマーケティング研究所|note(ノート)

この内容は、広告の出し方とローカライズの話なので、僕のブログのこのへんの記事と関連があります。

*ローカライズ
iOSアプリを8ヶ国語に翻訳した過程でわかったこと
アプリを一気に多言語へ翻訳・ローカライズしたのを若干後悔してる

*広告
ツール系アプリに広告つけるのが難しすぎる
ツール系アプリにApplovinの動画広告を試した結果
アプリに広告があると離脱率はどれだけ高まるかをABテストしてみた

アプリマーケティング研究所の有料noteは、ビジネスに役立つ情報やノウハウなどのコンテンツがメインらしい。確かに、投資や教育という分野になるとみんなお金出しやすくなりますよね。

僕のブログだったら、「こんなこと思いました」系の記事だと誰もお金払わないだろうけど、「自分のアプリで試した検証結果やノウハウ」系の記事だと有料noteでもみんな買ってくれるのかな?

今度気が向いたら単発記事で一回試してみたい。ちゃんと儲かるなら、アプリ開発系の人が買いたくなるような検証・ノウハウ記事を頑張って書くモチベーションもわきそう。

ただ、毎週いいネタがあることはまずないので、購読モデルは厳しそうだ。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

リジェクトされまくったiOSの自動継続課金が規約変更でついに利用でき、使いやすくもなったので、Androidの定期購入と比較してみる

去年、フィルシアラーさんがiTunesの責任者になってからというもの、iOSアプリのビジネスが格段にやりやすくなりました。

僕としては、アプリの審査時間が平均1週間から2日以内ぐらいになったのが一番大きく、その次にデカイのが自動継続課金をツール系アプリでも使えるようになったことです。

昔のAppStoreでは、自動継続課金はメディア系のアプリだけじゃないと使えないというルールだった。そのため、雑誌とか出版系じゃないツール系のアプリは自動継続課金を組み込みたくてもことごとくリジェクトされるという悲しい事例が世界中のあちこちで起こっていました。

そのため、ツール系アプリだけど審査通すために無理やり定期ニュース発行して、メディア機能もありますよという建前を作ったり、Appleとコネを作らないと厳しいという話もよく聞いていた。とても悲しい時代でした。

しかし、今では「継続的なバリューをユーザに提供する」という条件を通れば、ツール系アプリでも堂々と自動継続課金を使えるようになったのです。今までは、クラウド機能があるSaaS系アプリでも「メディア系じゃないからダメです」とサクっとリジェクトされるのは当たり前だったので、いい時代になりました。

詳しくはアップルのガイドラインを。

僕のTaxnote(確定申告する人向けの帳簿アプリ)では、「Taxnoteクラウド」というオプションで自動継続課金を使っている。(iOSやAndroidの複数端末で、日々の帳簿データを自動同期できるというオプション機能。)昔はクラウド機能つけても何度もリジェクトされてたので不安だったけど、新ガイドラインでは普通に通った。

一回買い切りしか選択肢がないと、継続的なビジネスをするのが非常に難しいので、アプリでビジネスしてる人々にとってこれは本当に大きな出来事です。Androidでは前から余裕で可能だったけど、課金系はiOSのほうが圧倒的にお金出す人多いので。(全体のシェアはAndroidが圧倒的なのに、課金売り上げはiOSがAndroidの約2倍です。)

*iOSアプリとAndroidアプリの収益性と開発効率について

ちなみに、昔のつらい時代を知りたいという方は昔書いた記事があります。今読んでも役に立たないので、大変だったんだなとしみじみしたい人向けです。

iPhoneの月額課金で直面するマニュアルにないルール
iPhoneの月額課金はツール系で使えるか
iOSの自動継続課金での注意事項

さて、iOS開発者によって今はいい時代だということが確認できたところで、iOSとAndroidの継続課金システムの使いかってを比較してみたい。TaxnoteのiOS版では去年の秋頃に自動継続課金を使い始めて、TaxnoteのAndroid版でも春ごろから使い始めたので、その体験からの感想です。

iOSの自動継続課金は使いやすくなった

まず、iOSからです。個人的な感想だけどこんな感じ。

@審査 => Androidより面倒だけど、以前よりだいぶまし
@価格変更などのシステム => すごく使いやすい
@分析ツール => けっこう使いやすい

以前はそもそもツール系で審査通らなかったり、運良く審査通っても、もともとは出版系アプリのために作られた仕組みなので使いかってが悪かった。

でも今はツール系でも使えるし、なにより価格変更、分析ツールなどのシステムがめちゃくちゃ使いやすくなっている。

まず、審査なんですが、通りやすくなったといえ、そこはアップルなのでAndroidのようにほぼ全自動で数時間後に使えるようになるというようなユルユルではない。普通の一回買い切り課金を実装するより審査が厳しい。

まず、アプリの説明文に自動継続課金の注意事項(解約方法、自動継続の仕組みなどを書いた文章)を書く必要がある。あと、説明文に課金の価格も書いておかないといけない。また、アプリ内からも自動継続課金の注意事項をユーザが課金を購入前に読めるようにしておかないといけない。

上記のルールはアップルのガイドラインには全部書かれてないんじゃないかな。アップルは、審査を体験してみて始めて説明されるガイドラインが結構あります。まあ、昔みたいに審査の返信も一週間待ちとかじゃないので、慣れていない最初は気長にやりましょう。

ちなみに、アップルのレビューワーは最初の返信でガイドラインのコピペを貼り付けてくるので、ハッキリとどこを修正したらいいか分からないことが多い。こういう場合は、具体的にどこをどうすればいいの?と返信してみましょう。コミュニケーション取ったほうが修正箇所もハッキリするのでよい。

ここはAndroidのほうが圧倒的に楽なのは言うまでもありません。Androidは数時間後に使えるようになるのが当たり前です。

次に、iTunesConnectで自動継続課金する時の価格設定などのシステム。これはかなり使いやすい。普通の買い切り課金だと100円単位ぐらいでしか設定できないんだけど、継続課金だと10円単位ぐらいで細かく設定できる。もちろん国ごとに価格を変更したりもできる。

上記は当たり前として、iOSがAndroidより圧倒的に使いやすいのが、リリースした後の自動継続課金価格の変更システムです。これ、コード側をいじらずにiTunes側からWebでサクッと変更できるんだけど、この仕組みがよくできてる。

例えば、最初は「月額500円」でアプリを出していたとする。途中で気が変わって、やっぱり「月額800円」にしたいとなった時どうすればよいか。

これ、SaaS系のサービスでよくやるのは、月額500円の時期に加入した人はそのままの値段で今後も購読を続けることができるようにして、新しく購読する人は月額800円で購読が始まるようにする。英語だとGrandfatheringとか言います。

でも、これをシステムでちゃんと動くように対応するって相当面倒だし、デリケートなところだけあって大変なんですよね。昔SaaSビジネスの価格戦略とかを勉強していた時は、Grandfatheringの悪夢みたいに呼ばれてました。

これをiOSの自動継続課金では全部やってくれる。もちろん、現在月額500円で購読してくれる人も、来月からは全員値上げで月額800円にするという設定も可能。

そして、来月から月額500円を月額300円に値下げしたいって時はどうなるか?その場合は、月額500円で購読している人も自動的に月額300円になります。これもスムーズでいいですね。

自動継続課金の価格設定のマニュアルはこちら。Androidはここの仕組みが使い難いので、圧倒的にiOSのほうがいい。

最後に自動継続課金の分析ツールについてですが、Web系苦手なアップルさんには珍しく、結構使いやすくてよい。

現在のアクティブな登録数。
アクティブな無料トライアル数。
リテンションおよび無料トライアルのコンバージョン率。

上記のデータがiTunesの「売り上げとトレンド」タブで見ることができる。これ、以前は無料トライアルは何人やってくれてるかとかも一切見れなかったんですよ。なので、一気に改善した。自動継続課金のユーザが減っているか、横ばいか、増えているかも時系列グラフでパッと見てわかるのもよい。

Androidのコンバージョン計測は、インストール日から何日後のコホートが見やすいから、どっちがよいかは優劣つけがたいけど、iTunesもけっこういいです。少なくとも、昔に比べて一気によくなりました。

Androidの継続課金は価格変更が面倒

さて、今年に入ってからTaxnote、ZenyListTimerのAndroid版を作ってまして、自動継続課金も使ってみました。

個人的な感想はこんな具合。

@審査 => 自動なのでめちゃ楽
@価格変更などのシステム => コードを書き直す必要あるので使い難い
@分析ツール => まあまあ使いやすい

まず審査ですが、Androidではアプリのリリースも、買い切りのアプリ内課金も、定期購読のアプリ内課金も、数時間後には自動的に有効になります。Appleの審査に何度も時間かけてきた自分としては天国なんじゃないかと思うぐらい。

次に、Androidの定期購読の仕組み。審査は簡単に通るけど、価格変更がすごく面倒。なんと、Developerコンソールのシステム側で価格をあとから変更できない。ちなみに、Androidでも一回買い切りの課金はシステム側で変更できるんだけど。

じゃあ、価格を変更したい時はどうすればいいかというと、新しいアプリ内課金のIDをデペロッパーコンソールで作成して、そのidをコードに埋め込んでリリースしないといけない。えらい面倒。つまり、アプリ自体をアップデートしないといけない。

ちなみに、月額300円から、月額500円に値上げしたいケースで、以前のバージョンで月額300円で購読しているユーザはどうなるの?ってのが気になると思う。この場合、そのユーザは購読をキャンセルしない限り、月額300円で契約し続けることができる。

この仕組みなので、値下げする時は面倒そうだ。iTunesのように既存の価格の人も自動的に値下げとかできないだろうから、「一度キャンセルしてもっかい購読し直すと安い価格で定期購読できるからお得ですよ!」とかわざわざ告知しないといけなそう。

この記事とか参考なる。
アプリ内アイテム → 定期購入 の値上げ方法(Google Play 課金)

ついでに、Android版のアプリ内課金で注意なのが、一度有効にした課金アイテムは、その価格がアプリのPlayStoreの説明文の価格レンジにずっと反映されて消すことはできないということ。

例えば、980円の定期購読課金を作成して有効にする。そして、その後、それをやめて、現在は、500円の定期購読のみ提供するようにしたとする。それでも、PlayStoreの説明文には、「このアプリは500円~980円の課金を提供してます」みたいな表示のままになる。

これは消せないらしい。詳しくはこちらを参考。
1度有効にした定期購入アイテムは2度と無効にすることはできない、絶対に、如何なる理由や事情があっても……だ!(Google Play 課金)

最後に分析ツールですが、これはAndroidのやつもまあまあ使いやすい。一週間後ごとにコホート分析が見れるし、コンバージョンも表示してくれる。見やすいわーってほどでもないけど、そこまで悪くはないんじゃないでしょうか。

定期購読テストのしやすさ

ついでに、定期購読のテスト環境も比べてみたい。

まず、iOSはアプリをDebug環境で定期購読テストできる、Sandboxとかいう仕組みがある。ようは、アプリをストアにリリースする前に、自分で定期購読を実機でテストできる仕組み。これはそんなに使いやすいわけでもないけど、Androidよりはましである。

なぜかというと、AndroidはいちいちPlayStoreにα版としてアップデートして、数時間待ってそれがPlayStoreに反映されてからじゃないとテストできないから。

さらに、iOSの定期購読は、テストする時は定期購読の時間がいい感じに短くなるのでやりやすい。1ヶ月更新の課金をテストする時は5分で更新のタイミングがくる。1年更新の課金をテストする時は1時間で更新のタイミングがくる。これは地味に便利。

Androidはというと、まずPlayStoreにアップデートして、それが反映されるまで数時間待ってからじゃないとテストできないのに加え、月額課金の更新タイミングは1日に短縮されます。

1日って!長すぎるわ!つまり、1日待たないと更新のテストできないので面倒だ。いったいどうしてこうなったのだろうか。

継続課金はギフトカードで買えるか?

アプリ内課金を提供している時によくある問い合わせが「クレジットカードを使えないのですが、購入する方法ないですか?」というもの。こういう時に便利なのが、コンビニで売っているiTunesカードです。

しかし、iOSはiTunesカードで継続課金を購入できるけど、なんとAndroidではGooglePlayのギフトカードで定期購入ができません。これは落とし穴なので注意。

一体いつからAndroid アプリの定期購入代金を Google Play ギフトカードで支払うことができると錯覚していた?(Google Play 課金)

ちなみに、一部のアプリはPlayStoreのギフトカードで定期購入を買えるようで、この違いはどういう理由なんでしょうか。謎すぎる。誰か教えてください。

さらに補足すると、iTunesカードなどで継続課金を購入している人にとっては、年額購入を用意してくれたほうが楽なようです。月額課金に年額購入の選択肢を用意する意味はこういうところにもあるんですね。

継続課金についての雑感

最近はアプリで継続課金するのにユーザが慣れてきている気がする。これは、食べログだったりクックパッドだったり、Netflixだったり、スポナビライブだったり、いろいろな月額課金サービスをアプリから購入する機会が今まで以上に増えてきたからじゃないだろうか。

もともとはWebのものにお金を払うなんて習慣がユーザにはなかったのだが、インターネットの普及と同時にWebサービスも増えてきて、Webの世界では定額課金サービスは当たり前になっていった。

その次にアプリの時代になったんだけど、誰でも有料アプリ・有料課金を一回買うまでは大きな抵抗感があるんですよね。でも、例えば、一回でもLineで有料スタンプを買うのに慣れると、2回目からはあまり抵抗がなくなる。

僕は、「アプリがWebと連携しているか」という事実が継続課金をユーザが購入してくれるかどうかの納得感につながるだろうと当初思っていたんだけど、それより重要なのはユーザ側の継続課金に対しての慣れが大きいのではないかと思います。お金払って使いたいと思うかどうかは大前提として。

そういう意味で、アプリでもWebでも、サブスクリプション型のサービスが増えてきている昨今はビジネスがやりやすくなっているなと感じる。

実は、Taxnoteクラウド(iOS・Android端末で自動データ連携できたり、その他の機能が有効になる)という月額課金オプションを去年リリースした当初はドキドキだったんですよ。

まず、「月額課金をやるなんて許せない!」とか、「買い切りじゃないと困ります!」とか言われるだろうなあと最初はヒヤヒヤしていた。でも、一回買い切りでは継続的に開発続けるのは難しいので、上手くいかなければ未来はどうせないんだしと思ってやってみたんですね。

そしたら、ネガティブな反応は思ったより少なくて、普通に喜んで使ってくれる人が多かった。これならAndroid版作る価値もあるなと思い、今年に入ってTaxnoteのAndroid版も作ったわけです。今までアプリで稼いだ貯金を使って。

ツール系のアプリって継続的なアップデートが重要で、一回買い切りだと何年も開発を続けるのが難しいから自動継続課金が上手くいくかはとても重要だ。ちなみに、「続けるのが難しい」という部分を具体的にいうと、お金が儲からないという意味なんですね。

例えば、あるアプリを3年前に一回買い切りで購入したユーザは、その後アプリがアップデートしたり、iOSのアップデートに対応したり、ユーザサポートを続けていたとしても、特にお金をかけずに使い続けることができる。

これは、ユーザからすると一見よいことのように見えるのだが、お金が継続的に儲かる仕組みがないと開発者はやる気がなくなって、そのうち開発がストップしてしまうのは避けられない。

もちろん、一年に一回程度の軽い修正ぐらいであとは放置するという姿勢なら、そこまでコストもかからないし悪くないんだけど、やっぱりちゃんと儲からないとそのアプリに力入れるインセンティブがなかなか働かない。フルタイムで時間使うのは諦めて、本業の余った時間でサポートするぐらいになる。

いやいや、昔のパッケージソフトみたいにTaxnote1、Taxnote2、Taxnote3と毎年別バージョンを販売すればいいじゃないか?と思うかもしれない。

もちろん、大きなアップデートごとに新しいバージョンをリリースするというのも一つの手です。ただ、アプリってちょくちょくユーザの声を聞きながらアップデートしていくのが効率的なので、このやり方はやりたくないんですよ。

このやり方だと、大きくデザインが一新されるとか、大きな新機能がつくとか、ユーザの買い替えを促す新しい理由が必要となり、目立たないけど重要な改善などをちょくちょくやっていくインセンティブは小さくなる。

僕みたいに、できるだけ新機能を増やさずシンプルなものばっかり作ってる場合は致命的です。あと、昔のバージョンを使い続けたいという人をサポートし続けることもこのモデルだと難しい。

というわけで、この問題はずっと前からiOS開発者が訴えてきたアプリビジネスの構造的問題だった。

「Appleが自動継続課金を使いやすくしないのは、ユーザがアプリへ使う費用が高くなれば、iPhone本体を売るAppleのビジネスにとって都合が悪いからだ」とかいう分析なども海外のブログで書かれたりもしてました。

僕も当時、「ふーん、確かにもっともな理屈だな。それならこれからも期待薄か。。」と思ってたもんです。ところが、iTunesConnectの責任者にシアラーさんがなったら一気に流れが変わった。

「我々はiOS開発者が抱えているこの問題を認識している。ちゃんとiOS開発者が継続的にビジネスを続けて、AppStore全体に出来のよいアプリが増えるようにしたい!」みたいなことを言って、iOS開発者はみんなブラボー!となった。実際、本当に改善されたし。

ちなみに、継続課金でお金をもらい、ユーザのデータをサーバで管理するようになると、買い切り型や広告のみのモデルに比べて日々のストレスが半端ない。Herokuサーバが落ちたらどうしようとか、バグが発生したらどうしようとか、今までなかったストレスが発生する。

これもずっとビビってやってこなかった理由の一つだった。半年以上やってみてどうだったかというと、予想通りのストレスで、「思ったより気楽だわ」ってことはなかったです。

これも、Instapaperを開発して、数年前に売却したMarcoさんが「いつもサーバのことを気にしていて休まる暇がなかったけど、Instapaperを売却した時は本当に肩の荷が降りた。」って言ってましたね。

Webサービスを運営している人にはあるあるだろうけど、[継続課金+データベース管理]を検討する時はこのストレスも考慮に入れるとよいかも。

まあ、ユーザがお金を払ってくれるものを作れるかが一番難しいので、そんなこと最初から心配しても意味ないよという話でもあるんですが。なんにせよ、一番ユーザがお金を払ってくれるiOSで仕組みが整ってくると、新しいアプリを作ってみようかなというモチベーションが出ますね。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

モテるiOSエンジニアがどういう基準で会社を選ぶか聞いてみた

数年前からエンジニアの方達がモテモテです。特に、勉強会でモリモリ発表とかして名が売れてくると、いろいろな会社からさらにモテています。すると、さらにモテがモテを生むようです。

ちなみに、採用する側の立場としては、大企業からベンチャーにいたるまで、「優秀なエンジニアが欲しいんだ!」という話をよくききますが、優秀なエンジニアの人達はいろいろと選べる立場だから、担当者の人達はみんな大変そうです。

さらにいうと、いい会社であればあるほど、会社側が取りたいエンジニアのレベルも上げてくるので、お眼鏡にかなった人達を見つけるのは結局どこも難しくなる。

となると、結局、よいエンジニアの人達を取りたい会社は、給料をあげる、面白い仕事を用意する、働く環境をよくする(面白い人と働ける)とか、こういう当たり前のことを揃えるしかないから、なにも工夫する余地はないんでしょうか?

いやいや、そんなわけはなくて、そういった当たり前のことは簡単に充実させることができないし差別化は難しい。だから、みんなそれぞれの強みとか他社に真似できない独自のアッピールポイントを作って、それにたまたまマッチした優秀なエンジニアを一本釣りしたいなと思っているんじゃないだろか。

例えば、リモート前提の会社ならリモートで働きやすい仕組みが整っているとか、鎌倉にある会社なら人気の地方で働けるとか、最先端の技術を攻めてる会社なら新しいことができるワクワク感とか。

さて、ここまでは誰もがわかっているけど簡単に充実させることが難しいこと、そして、それぞれの強みを生かした差別化のことの二つを書いてみた。どちらもそうだよねとしか言いようがない事柄で、逆に言うと、すぐ実行できる話でもない。

となると、この二つの中間である、たいてい誰にでも参考になって、知っていさえすれば実行しやすい話が価値があるのではないかと思いました。そのポイントが世の会社の人たちに共有されればエンジニア側もハッピーになって世の中上手く回るかもしれない。

僕の経験から、自分の頭の中で「たぶん、こんな感じじゃないかな?」と想像していたのが、実際に質問してみると意外と違っていて新しい発見があることが多いので、お友達のもりもっちゃん(@dealforest)に聞いてみました。

もりもっちゃんは、iOSが得意分野だけど、Web側もできるし、UIもよくわかっているという、いろんな会社からモテてるエンジニア。最近は、こんな技術本も共著で出た。 (モバイルアプリ開発エキスパート養成読本)

二年ぐらいフリーランスやってて、最近BONXというスタートアップに入ったので聞いてみた。あくまで一人の意見を聞いただけなので一般化はできないかもしれないけど、なるほどなあと思う部分もあって結構面白かった。

いろいろ聞いてみた

Q フリーランス二年ぐらいやって、いろいろな会社に誘われてたと思うけど、どういう誘いが一番ぐらっとくるもんなの?

ぐらっとくる誘いはなかなかないけど、でも、あるとしたら、自分が凄いと思っているエンジニアの人から誘われた時はぐらっときちゃう。

ちなみに、BONXの場合は、ちょうど区切りも良かったため、そのへんでフリーランスとしての関りからは離れる予定だった。でも、ちょっと離れるのも寂しいなあという思いもあり、社員になることになりました。

とりあえず、フリーランスもちょっと飽きてきたので、会社員になってみようかなと思って入ることに。今思うとフリーランスで自分がJOINしてもいいなって思う会社を探していたのかもしれない。

(ある程度、信頼関係ができてからだと、いろいろと中のこともわかっているからお互いにミスマッチがないですね。まあ、これはよくある理想的な形なのかもしれない。)

Q 給与面でいえば、どの会社もそこまで違いはでなさそうだから、結局他の要素を判断基準にするんじゃないかと予想してるんだけど、実際どうすか。株式とかストックオプションとかもあるとは思うけど。

この人たちと一緒にものが作りたいってところかなあ。ちょうどそういう気持ちのタイミングだったのもあるかなあ。最先端の技術をやりたいというよりは、みんなで、ああでもない、こうでもないと試行錯誤しながらキャッキャワイワイやりながらモノつくりがしたい気持ちがあったので。

タイミング的にお金が欲しいっていう時だったら、ちょっと違うかもしれないけど。それだったら、圧倒的にお金が儲かるフリーランスを普通にやってるかな。

(やはり何事もタイミングが大事なようです。男女関係のようですね。)

Q 最初はフリーランスの立場でかかわりながら、徐々にJOINしてくれないかと誘われると中の様子が分かってエンジニアとしても入りやすいと思う。最初の関わり方って具体的にどういう案件がいいのかな?機能追加とか?

そうねえ。フリーランスだと、機能追加とか、こういう仕様に変えたいとかしか基本的にはないんだけど、BONXの場合は実際に会社に行って、中の人と一緒に作っていく感覚が体験できたのがよかったかなあ。結構任される範囲も多かったし。

逆に、全部仕様がきっちり決まってて、相談したり、途中でコネコネ変えたりすることがなかったら、そういう体験はできなかったかも。フリーランスの時は複数の案件をかけもちしていたけど、かっちりと仕様が決まっていた案件は完全にリモートでやることが多いかなあ。

(やはり実際に会社に行って、中の様子を知っていたというのも大きかったみたい。わかる情報量が圧倒的に違いますもんね。)

Q 自分のスキルが役に立ちそうな職場が魅力的だとは思うけど、同時に、ある程度は新しい事にチャレンジできる職場も理想的だとはよく聞く。もりもっちゃんとしては、そういう部分ありました? 完全に新しい事だらけだったら未経験とされて給与も減るから、このバランスが常に職業人としては難しいと思うんだけど。

フリーランスをやっている時は、次の案件を決める時に何をベースに決めるかで決まってくると思う。iOS のアプリ開発だと、だいたい同じことの繰り返しになりがちな部分はあるかな。エンジニアとしてのスキルを高めたいだけなら、別にフリーランスのままでも、新しい案件を積極的にとっていく意識があれば別に大丈夫だったりする。

フリーランスから会社員になって、稼げるお金は少なくなったけど、今は技術自体への興味より、一緒にものづくりしてキャッキャするほうがやりたくなったのが大きいかな。

(フリーランスやってると自分の得意な範囲の仕事を取りがちで、なかなか新しい分野にチャレンジしにくい罠があるとは聞いたことがある。でも、そういう悩みはあまりなかったようです。わいわいきゃっきゃっていうのは個人的には気持ちわかる。会社に属してないと自由なのはいいんだけど、その分ワイワイキャッキャが恋しくなる人は多そう。だから、エンジニアを取りたい会社側は、こんなワイワイキャッキャと楽しいことがあるよという面をアピールするといいのかも。例えば、僕みたいな人は、フットサルチームがあるとか、筋トレクラブがあるとか、レースゲー同好会があるとか言われると、おお!ってなると思う。)

Q これは実際には上手くいかなさそうな思いつきでもいいんだけど、世の中のいいエンジニアを雇いたい会社側が、「意外とみんなやってないけど、こうすればいいんじゃないかな」っていうアイデアあります?

知人にエンジニアがいるならその人を経由して紹介してもらうとかが確実かな。有名なエンジニア経由とか、業界につながりのあるエンジニア経由で探すのも良いと思うけど、よくあるので「いい人いませんか?」と聞かれても、仲良くない人に紹介してトラブルになるのも困るので教えたくないと思うのでうまくいかないことが多い気がする。

誰も知り合いがいない場合は、間借りしている場所、コーワーキングスペースが重要になってくると思う。イケてる人達が集まってきそうな場所でプロダクト作っているスタートアップの人がたまたまそこにいた場合、面白そうなプロダクトだなと興味持ったエンジニアが手伝い始めるのをよくみてきたので。場所を意識するとよいかも。

例えば、まったく知らなかったスタートアップでも、自分が普段通っている場所でプロダクトの進捗を実際に見ていたら、興味を持つ人が出てくるかもしれない。中の人たちの様子も自然とわかってくるし、本気でやっているのを側でみていると「必要なタイミングで声かけてもらえればお手伝いします。」みたいな繋がりができるかもしれない。

(リモートで仕事はいくらでも出来る時代なんだけど、やっぱりその場にいるっていうのと、偶然の出会いの重要さがよくわかる話ですね。とにかく人生は、いい偶然がいかに生まれやすい状況を日頃から作るのが重要なようです。)

Q 逆に、世の中ではみんながこうしたほうがよいエンジニアが集まるだろうって一般的に思われているけど、実際はあんまり効果なさそうだなっていうことある?

よく転職といえばWantedlyとか転職サイトを使うけど、自分だったら転職サイト経由では入らないと思う。まわりのエンジニアの知り合いを見てても、あまり転職サイト経由でいい人が入ってくるイメージがあまりわかない。

ただ、単純にそういう感じで転職をしたことがないだけなのかもしれない。

でも、SNS経由で拡散する時の募集要項としては有用なんだなと思う。会社を認知できるきっかけにもなるしね。人づてで紹介する時に、こういう会社ですという紹介の情報源として見せやすいから。

(転職サイト経由だと全然いい人こないよみたいな話はよく聞くんだけど、実は知り合い経由で会社を紹介する時に送るリンクとかサイトはめちゃくちゃ重要ですよね。そういう意味で、転職サイトのデザイン、UI、拡散とかシェアしやすいかどうかはすごく大切で、知り合い経由で紹介する時はWantedlyが使いやすいのかも。僕が見る立場だったら、写真とかで会社の雰囲気がわかりやすければ素晴らしいし、もっと中の人が書いたブログ読めばもっと中の様子がよくわかる。最近はPodcastとか動画で中の人がわかればもっと親近感がわいて分かりやすいのかもしれない。)

BONXのWantedlyのリンク。

最近発売された、もりもっちゃん(@dealforest)が共著の本。ちなみに、この本書くのに年末から1ヶ月近く完全にかかっりきりで大変だったらしい。

*関連
*技術書執筆は大変すぎて割りに合わないとプログラマ友達からよく聞くけど、それでも出す理由を聞いてみた
*リモートのエンジニアが働きやすくなるにはどうしたらええやろか


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アプリの世界は資本力のある企業以外は勝てなくなるか

先日、お友達に教えてもらったnextstep.fmというPodcastを初めて聞いたんだけど、これがとても面白かった。僕が聞いたのは「#003 かつて有料アプリでビルが建つ時代があった」という回なんだけど、iPhoneアプリ開発、エコシステム、アプリビジネスなどを創成期から振り返っていて、これが聴いててすごくよかった。

ちなみに、この回の話し手はみんなiPhoneアプリ開発を初期からやっている凄く有名なiOSエンジニアの方達で、まさに、このPodcastでしか聞けないという内容。ブログではここまで細かい話は書き尽くせないだろうし、当時から今まで第一線でバリバリやってきてないと話せない内容なので、iOS開発に興味ある人はめちゃオススメ。

ここまで読むと、「俺、アプリビジネスには興味あるけど、そこまでプログラミングの話はついていけないなあ」と思う人がいるかもしれない。ところが、少なくともこの回は技術の話だけじゃなく、iOSアプリ界隈のエコシステム全般の移り変わりを語っているので、ビジネスよりの人も楽しめる内容なんですよ、これが。

昔はアプリで儲けやすかった?

今のAppStoreは昔に比べて明らかに競争率が高い。大企業が自社アプリのCMをバンバン流してマーケティングするし、それぞれのアプリのレベルも上がってユーザの期待値も上がっている。

ポッドキャストの第三回で話されていたのは、初期のAppStoreは企業もそこまで進出してなくて、今ではほとんど見向きもされない有料買い切りアプリでさえ、そこそこ儲かるチャンスがあったという話してた。

僕は東日本大震災の時にMacbookAirを注文してアプリ開発始めたから、その頃は確かiPhone3GSとかだった気がする。ほんとちょっと前のことだと思っていたら、もう五年ぐらいたってしまっているではないですか。

このポッドキャストを聞いてて、そういえば五年前でも今のAppStoreとはだいぶ環境が違ってたなあというのを思い出して、これからはどうなるんだろうかと考えるきっかけになってよかったです。たぶん、ビジネス環境もまたコロッと変わって、今うまくいっているビジネスもうまくいかなかったりするんだろう。

大企業しか戦えない土壌になるのか?

五年前と今で比べると、アプリのエコシステムはかなり充実していまして、Helpshiftやら、Mixpanelやら、Fabricやら、アプリ運営を楽チンにしてくれるサービスがたくさんあります。Xcodeも使いやすくなってるし、StackOverFlowもキータもあるし、開発効率も上がっていると思う。

*参考
フィードバックしやすい状況を作るHelpshift
アプリに広告があると離脱率はどれだけ高まるかをABテストしてみた (MixpanelとSkyLab利用)

そして、そのぶん、みんなが参入しやすくなっているので競争率が上がってる。

さて、僕のような小規模の個人開発者や、小さなスタートアップにとってこれはよいことなんだろうか、よくないことなんだろうか。

このポッドキャストを聞いてて思い出したのが、TwitterとかMediumを作ったエバンウイリアムズが以前書いてた話。こんなことを言ってた。

“最近のテクノロジースタートアップ業界は、最初から資本力がないと話にならない世界になってきている。そのため、小さなスタートアップが新規参入できる余地もどんどん小さくなってきた。例えば、車業界を例にあげると、昔はHONDAのような小さな町工場から成功する車会社もあったけど、今の車業界でそういうことは不可能に近い。テクノロジースタートアップ業界もそうなりつつある。”

この話は業界ごとに変わると思うので、日本のAppStoreのアプリビジネスに絞って考えてみる。

確かに、カメラや位置情報などスマホ独自の技術を応用したサービスなど、これだといったものを大ヒットさせるアイデアはもう掘りつくされた感はあるにはあります。

ただ、ビジネスを助けるエコシステムは充実していて、開発や運用のコストは以前より下がっているので初期コストは下がっている。となると、ビジネスアイデアさえあれば、ニッチな分野から戦いやすくなったということもできる。

例えば、TODOアプリやカメラアプリなど、作る人が多い分野になればなるほど競争が激しくてめちゃくちゃレベルが高い。

でも、農業とか、医療とか、僕の想像もつかない業種のサービス・アプリってなると、未だに「ここだけ時代が止まっているんじゃないか。。」と思っちゃうようなサービス、Webページ、アプリがあったりする。

そして、開発や運用がやりやすくなればなるほど、その人にしかわからないような専門知識を持った人がサービスを作りやすくなっていくので、ニッチなアイデアや専門知識を持っている人から出てくるサービスが増えていく段階になっているんだと思います。山登りとか、草野球のチーム管理とか。

最近では、AppStoreで月額課金もやりやすくなったし、ユーザ側の月額課金に対するハードルも徐々に下がってきていると感じる。

僕個人の例でいうと、数年前はアプリ内課金も月額課金も買ったことがなかったので心理的ハードルが高かったけど、今はNetflixやら、食べログやら、NewsPicksやらで、アプリ側から月額課金に加入するのに慣れてきた。

エンジニアと遠そうな趣味や専門知識

まとめると、エンジニアリングやテクノロジー好きからは遠そうな専門知識を活用したサービスほどまだ開拓されてないのでよさそうです。

ライフハックに興味があるエンジニアはたくさんいるけど、農業、ゴルフ、ダンスなどに詳しい人は少数派だと思うので、そういう意外性のある接点があればあるほどよいと思う。

そうはいっても、自分の趣味なんてそんな戦略的に開拓しても夢中になれなかったりするので、頭ではわかっていても現実世界ではそう上手くいくわけではないんですが。

しかし、PodcastってWebで出始めた当初はたいして盛り上がらなくて消えていくのかなと思っていたけど、スマホが普及してきた昨今、一気に普及しているんじゃないだろうか。この普及の波はTwitterに似ている。

Podcastとか、音声専用のAdmobみたいなサービスが出始めたら、本格的に広まったと言えそう。僕がLisgoとかVoicepaper作ってた4年前ぐらいって、こういう音声専用のAdサービスそのうち出るだろうと思ってたけど、未だにこれといったものが普及してないですね。

結局のところ小規模な開発者に勝算はあるのかい?

ここまで書いてきて、「じゃあ、お前の意見として、個人や小規模なチームでアプリ開発するのは実際どうなのよ?」という見えない声が聞こえてきたので、それについて考えてみる。

これについての答えは簡単で、基本的にほとんど失敗するというか、みんながやっている市場であればあるほど勝率は低いと思う。じゃあ、今は競争率低いけど、これから伸びる市場でアプリ作るのがいいんじゃないかとなるけど、これが予想できたら誰も苦労しないので難しい。

そうはいっても、いろいろ試行錯誤しながら試していると、たまたまなにかが上手くいくこともあるので、結局のところ、「失敗してもいいから自分がやりたい。」とか、「失敗してもリスクが低いからやってみたい。」とか、そういうのをコツコツ続けるしかないのではないかと思ってる。無理のない範囲で。

電気自動車作るのに比べて初期投資は圧倒的に低いから参加はできるけど、そのぶん競争率も上がってるので失敗前提で撤退準備しながらダメ元でやるしかないというのが、いつもの結論になってしまいます。

*参考
勝者総取り世界の憂鬱

あと、僕が5年ぐらい個人アプリ開発してて思ったことは、世の中で言われている定説と、実際にやってみてわかったことのズレは結構あるということです。これはどんな分野でも同じだと思う。

興味のあることはちょっとでもいいから試してみると、自分が耳で聞いてた想像と、実際にやってみた真実とのズレが補正されるので、そこに大きな価値がある。これは、みんなが大変だとか苦痛だとか言っていることが、自分にはそこまで苦痛じゃなかったとか、個人間の温度差の話も入ってきます。

しかし、最近はテクノロジー系の面白いポッドキャストが増えてきて、こういう意味でもエコシステムが整ってきている。今現在で聴いているのをまとめるとこんな感じになった。

@日本語
Rebuildfm (Webとかプログラミングとか。)
nextstep.fm (iOSが中心。)

@英語
a16z (スタートアップ系。テクノロジー分野の最先端の話題。)
Under the Radar (iOSアプリの個人開発系。ビジネスサイドの話題多い。)

あとはスタンフォードのやつとか、Googleベンチャーのやつとかは、DHHとか、マークアンドリーセンとか、イーロンマスクとか、特定の人がゲストで出てくる回は外れなくて面白い。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

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