以前、耐久カート大会に誘って頂いた、エンジニアのお友達である長谷川さんが、「TECHNICAL MASTER はじめてのiOSアプリ開発 第2版 Xcode 8+Swift 3対応」という本を出したらしい。

というわけで、エンジニアと技術書執筆というテーマについて書きたいんだけど、周りでもエンジニアの人が技術書を出したという話は結構よくあることです。

しかし、「本を出すのは本当に大変だった。。」とか、「執筆に集中するため、その間は他の仕事全然できなかった。。」とか、「特に儲からないので、お金目的だったら絶対割に合わない。。」とか、とにかく技術書書くのは大変だという話をよく聞く。

では、ただでさえ仕様が変わると対応するのが大変な技術書を、そこまでして書くモチベーションはなんだろうか。これに関しては、「名前が売れて自分のキャリアに繋がる」という意見が一般的です。

やっぱ、ブログで書くのと書籍を出すのとは違うので、本を書いているっていうのはそれだけでブランドアップなのは間違いない。あと、最近、僕が電話サポート始めて実感したんだけど、ブログでリーチできる読者と、本でリーチできる読者は違うことが多いので、まったく別の層の人たちに届けられるってのがあると思う。

それ以外には、自分が学習した知識を本という形で発表したいとか、僕がブログ書いている理由のように、本を出すことによって偶発的なよいことが起こる可能性は高まりそう。

ブログを書いていると、たまに突発的ないいことが起こる

ここまでは僕の想像の話なんだけど、長谷川さんはすでに会社のCTOだし、iOSDCっていう国内最大規模なんじゃないかっていうiOSのカンファレンスを成功させたりと、いろいろやってるんですよね。

だから、僕の想像もつかない崇高な理由だったり、コミュニティに貢献する気持ちが高すぎるとか、隠された世界征服計画みたいなのがあるのかもしれない。なので、このへんをのらりくらりと誤魔化されないよう、ビシッと聞いてみました。

本を書くことで自信がつく?

FBでサラッと聞いてみただけなんだけど、結構自分が予想してた答えと違った部分が多々ありました。

@長谷川さん
僕は今回の本は4冊目なのだけど、動機はどれも違っていて。

1冊目はFacebookアプリの本だったのだけど、ずっと「1回本を書いてみたい」って思ってたところに、出版社の方から「Facebookアプリの本を書ける人を探しているのだけどどうですか?」って連絡頂いて、それなら、という形でした。

2冊目(CakePHPの本)と3冊目(iOSの本)は同じ動機で、会社の新メンバーに「これだけ読めば良いから」という本が、その当時に無くて、内部的なマニュアルを書くぐらいなら本にした方が良いな、ということで出版社の方に企画を持ち込んでいます。

4冊目(今回のやつ)は3冊目のアップデートで、「3冊目、内容自体はまだ有用だと思うのだけど、Swiftのバージョンが上がってしまって使えなくなってしまって勿体ない!アップデートしたい!」という動機でした。

で、効果として、本って思った以上にフィードバックがなくて、「名前が売れる」という実感はないんですよね。考えてみたら自分も本を読んで感想エントリを書くことはほとんど無いし、ましてや著者に何かフィードバックしたことないし、まあ、そりゃそうか、とは思いますが。

長谷川が書く技術書の初版発行部数から考えると、たくさんの人に届けるだけならBlogの方が多くの人に届く感じですねー。

本を書く効果として、最初から狙っていた訳じゃないのだけど、あとから気付いた効果は、自分への自信が付くというところですね。
特に僕は本を書かなかったら勉強会デビューしなかったと思うし。
「本を書いたから勉強会に行っても恥ずかしくないな」みたいに当時は思って勉強会デビューした。(そしたらすごい人が沢山居て自分の程を知ったのだけど。)

あとは、当然だけど、その書いた範囲で正しい知識が付きますね。嘘は書けないのでちゃんと調べるから。

そう言う意味で、「こんど本を書かないか?って誘われているのだけど」と相談されたら「ツライし儲からないけど、良いと思うよ。おすすめです。」って答えると思います。

なるほど、本を書いても意外と名前が売れる感覚はないらしい。

しかし、本を出してから勉強会デビューというのは相当ハードルが高い(笑)。僕なんて、iPhoneアプリ始めたばっかりの頃なんて、さっぱりわからない状態で参加して、登壇者の発表の10%も理解できてなかった気がします。

しかし、まだまだ本音を引き出しきれていない気がするので、さらに質問をブッこんでみました。

僕を褒めて!みたいな理由はないんですか?

@梅本
なるほど、これはすごい面白いですね。。自分への自信がつくと。

そういえば、僕が勉強会で自分が最近得た知識とかを発表する時って、例えば、iOSMeetUpでかなり周りに褒めてもらった、Mixpanel使ったリーンアナリティクスの話なんかは、「このサービスのこんな便利な使い方と、ハマりポイントをみんなに教えてあげる俺をみんな褒めて!」みたいなモチベーションでやったんです。

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あまりそういう、みんな僕を褒めて!みたいな欲求はないんですかね。ブログだと波及効果高いけど、勉強会で発表するって本よりネットワーク効果は薄い。ただ、僕の場合、勉強会の発表にはまたそういう違うモチベーションがありまして。

@長谷川さん
本を書くにあたっては、「褒めて!」というモチベーションは自分は無いかなあ。Blogを書く時はまさに自分も「良いでしょ!褒めて!」のモチベーションなので、不思議ですね。相手の顔が見える度合いという意味では、「勉強会 >> Blog >> 本」って感じだろうから、それとモチベーションのベクトルが関係しているのかなー。

確かに、そう考えると本を出すって、自分の作品を世の中に出すという感覚で、勉強会やブログとはまた違う満足感がありそうですね。言われてみるとそうかもしれない。

でも、そうは言っても技術書を書くってすごい大変だろうし、周りのできるエンジニアの方達の中でも、「僕は無理ですわ。。」っていう意見もよく聞くんですよ。なので、もっと深掘りするべく、質問を続けてみました。

自分の作品を出すという感覚

@梅本
3冊目の本、Swift本を最初に書こうと思ったモチベーションは、まずSwiftについて調べたかった、そして、調べていくと詳しくなったからどうせなら本にしたかったってのもあるんでしょうか?

@長谷川さん
これは、環境がSwift化したことで、今まででも「これ1冊でOK」というのがなかったのに拍車がかかって困るなー、今が一番書くタイミングだな、と思った感じでした。あとはまあ、Swift化して本が減るタイミングなので労力に対するリターン(注目・実売数)大きそうだな!というスケベ心もありましたw

その過程で勉強できて嬉しかったけど、自分の場合は「勉強になるから書こう」という感じでは無かったですね。

なるほど。聞いていくと、世の中に求められているタイミングで、そのニーズを満たすものを本という形で出したいというのが執筆のモチベーションになっているのかな?と思った。

聞いてると気がついたんだけど、勉強会やブログと違って、本を出すって、自分の作品を世の中に出すって感覚があるんじゃないかなあと。自信がついたというのは、結果的にそうなっただけで、最初から意図してたわけではないだろうし。

僕の経験で想像すると、自信がついたっていうのも、自分が気合い入れてやったことだからこそなんではないかと。

例えば、どんなに周りから評価されても、自分がどれだけ努力したかってのは自分がわかってるので、「実は、あれ大して俺力いれてないんだよね。。」てなモノだったら本当の自信にはつながらないだろうし。

てなことを聞いてみると、さらに突っ込んだお話が聞けました。

@長谷川さん
確かにそうかも。 > 求められているタイミングでそのニーズを満たすモノを本という形で出したい

自信が付いたのは、まさに結果的に、ですね。

そして、「自分の作品を出す」というのは確かにあると思う。
書き始めに、少なくとも、出版社がお金を掛けて(投資して)出す、ということで、最初から一定の評価を受けている状態、というのも良いのかもしれない。(声をかけられたり、企画が通った時にはやっぱりアガるし。)

「自分の作品」というのは本当にその通りで、今回、実は、ちょっと自分の不本意な形で本が出そうになって、普通だったら人に言わない様なハードな交渉を編集者にして、不本意な形を回避したんだよね。

具体的には、最後の校正のタイミングで、1週間かけて校正して提出したら「もう印刷所に回しました」「その校正結果は反映できません」「なんでもっと速く校正してくれなかったの」と言われて、一度は怒りつつも「そうですか」と言ったのだけど、夜、妻に話したら「それはおかしい」と言ってくれて、一転、「これじゃ出せません」「これは僕の名前で出すものです」という話をしたんです。
そして、「1)スケジュールを引き直して、長谷川の校正を反映して頂く。 2)今回は出さない、9月のタイミングでiOS11を反映した版として、あなた以外の編集と出す 3)この本は出さない。この話は無かったことにする 4)このまま出す。長谷川の名前だけでこれを出すのはフェアでないので、長谷川が校正で見つけた誤植を、あなた(編集者)の実名入りの経緯とともにBlogに書く」という提案をしました。

結果、撤回してもらえて、自分の100%のモノが出せたのだけど、この怒りはやっぱり「自分の作品」感から来てると思う。

本は常に「100%完璧!」とはならなくて、「もっとこうしたかった!」というのはあるけど、それでも、納得の1冊にはなっていて、それが自信につながるというのは仰るとおりですねー。

これは妻以外には初めて話しましたw

ただ、彼にも彼の立場があり、長谷川が当初想定して、彼に話していた内容から彼が想像していた納期よりかなり伸びていたのは確かなので、100:0の責任じゃないのだけどね。ただ、それにしても最後の最後の印刷所受け渡しのところで長谷川確認が入らないのはマズいですね。

おおお、僕はこういう深い話が聞きたかったんですよ!!こういう魂を込めている感じはいいですね。自分の作品だという意識があると、短期的な目の前の利益とか関係なくいいものを出したいという気持ちになるのはアプリ開発やその他の創作活動でも同じだと思う。

でも、書籍やハードウェアってデジタルなものと違って簡単に変更できないから、やっぱり大変ですね。そのぶん、デジタルなものはプラットフォーム上のサービスが終了したらすぐ使えなくなる可能性が高いんですが。

今回はなるほどなあと思う部分がいろいろありました。いろいろと掘り下げて聞いてみると、自分の想像を超えた新しい発見があって面白いですね。


*読み上げアプリVoicepaperなど作ってます。自己紹介はこちら。プログラマもゆる募