先日、お友達に教えてもらったnextstep.fmというPodcastを初めて聞いたんだけど、これがとても面白かった。僕が聞いたのは「#003 かつて有料アプリでビルが建つ時代があった」という回なんだけど、iPhoneアプリ開発、エコシステム、アプリビジネスなどを創成期から振り返っていて、これが聴いててすごくよかった。

ちなみに、この回の話し手はみんなiPhoneアプリ開発を初期からやっている凄く有名なiOSエンジニアの方達で、まさに、このPodcastでしか聞けないという内容。ブログではここまで細かい話は書き尽くせないだろうし、当時から今まで第一線でバリバリやってきてないと話せない内容なので、iOS開発に興味ある人はめちゃオススメ。

ここまで読むと、「俺、アプリビジネスには興味あるけど、そこまでプログラミングの話はついていけないなあ」と思う人がいるかもしれない。ところが、少なくともこの回は技術の話だけじゃなく、iOSアプリ界隈のエコシステム全般の移り変わりを語っているので、ビジネスよりの人も楽しめる内容なんですよ、これが。

昔はアプリで儲けやすかった?

今のAppStoreは昔に比べて明らかに競争率が高い。大企業が自社アプリのCMをバンバン流してマーケティングするし、それぞれのアプリのレベルも上がってユーザの期待値も上がっている。

ポッドキャストの第三回で話されていたのは、初期のAppStoreは企業もそこまで進出してなくて、今ではほとんど見向きもされない有料買い切りアプリでさえ、そこそこ儲かるチャンスがあったという話してた。

僕は東日本大震災の時にMacbookAirを注文してアプリ開発始めたから、その頃は確かiPhone3GSとかだった気がする。ほんとちょっと前のことだと思っていたら、もう五年ぐらいたってしまっているではないですか。

このポッドキャストを聞いてて、そういえば五年前でも今のAppStoreとはだいぶ環境が違ってたなあというのを思い出して、これからはどうなるんだろうかと考えるきっかけになってよかったです。たぶん、ビジネス環境もまたコロッと変わって、今うまくいっているビジネスもうまくいかなかったりするんだろう。

大企業しか戦えない土壌になるのか?

五年前と今で比べると、アプリのエコシステムはかなり充実していまして、Helpshiftやら、Mixpanelやら、Fabricやら、アプリ運営を楽チンにしてくれるサービスがたくさんあります。Xcodeも使いやすくなってるし、StackOverFlowもキータもあるし、開発効率も上がっていると思う。

*参考
フィードバックしやすい状況を作るHelpshift
アプリに広告があると離脱率はどれだけ高まるかをABテストしてみた (MixpanelとSkyLab利用)

そして、そのぶん、みんなが参入しやすくなっているので競争率が上がってる。

さて、僕のような小規模の個人開発者や、小さなスタートアップにとってこれはよいことなんだろうか、よくないことなんだろうか。

このポッドキャストを聞いてて思い出したのが、TwitterとかMediumを作ったエバンウイリアムズが以前書いてた話。こんなことを言ってた。

“最近のテクノロジースタートアップ業界は、最初から資本力がないと話にならない世界になってきている。そのため、小さなスタートアップが新規参入できる余地もどんどん小さくなってきた。例えば、車業界を例にあげると、昔はHONDAのような小さな町工場から成功する車会社もあったけど、今の車業界でそういうことは不可能に近い。テクノロジースタートアップ業界もそうなりつつある。”

この話は業界ごとに変わると思うので、日本のAppStoreのアプリビジネスに絞って考えてみる。

確かに、カメラや位置情報などスマホ独自の技術を応用したサービスなど、これだといったものを大ヒットさせるアイデアはもう掘りつくされた感はあるにはあります。

ただ、ビジネスを助けるエコシステムは充実していて、開発や運用のコストは以前より下がっているので初期コストは下がっている。となると、ビジネスアイデアさえあれば、ニッチな分野から戦いやすくなったということもできる。

例えば、TODOアプリやカメラアプリなど、作る人が多い分野になればなるほど競争が激しくてめちゃくちゃレベルが高い。

でも、農業とか、医療とか、僕の想像もつかない業種のサービス・アプリってなると、未だに「ここだけ時代が止まっているんじゃないか。。」と思っちゃうようなサービス、Webページ、アプリがあったりする。

そして、開発や運用がやりやすくなればなるほど、その人にしかわからないような専門知識を持った人がサービスを作りやすくなっていくので、ニッチなアイデアや専門知識を持っている人から出てくるサービスが増えていく段階になっているんだと思います。山登りとか、草野球のチーム管理とか。

最近では、AppStoreで月額課金もやりやすくなったし、ユーザ側の月額課金に対するハードルも徐々に下がってきていると感じる。

僕個人の例でいうと、数年前はアプリ内課金も月額課金も買ったことがなかったので心理的ハードルが高かったけど、今はNetflixやら、食べログやら、NewsPicksやらで、アプリ側から月額課金に加入するのに慣れてきた。

エンジニアと遠そうな趣味や専門知識

まとめると、エンジニアリングやテクノロジー好きからは遠そうな専門知識を活用したサービスほどまだ開拓されてないのでよさそうです。

ライフハックに興味があるエンジニアはたくさんいるけど、農業、ゴルフ、ダンスなどに詳しい人は少数派だと思うので、そういう意外性のある接点があればあるほどよいと思う。

そうはいっても、自分の趣味なんてそんな戦略的に開拓しても夢中になれなかったりするので、頭ではわかっていても現実世界ではそう上手くいくわけではないんですが。

しかし、PodcastってWebで出始めた当初はたいして盛り上がらなくて消えていくのかなと思っていたけど、スマホが普及してきた昨今、一気に普及しているんじゃないだろうか。この普及の波はTwitterに似ている。

Podcastとか、音声専用のAdmobみたいなサービスが出始めたら、本格的に広まったと言えそう。僕がLisgoとかVoicepaper作ってた4年前ぐらいって、こういう音声専用のAdサービスそのうち出るだろうと思ってたけど、未だにこれといったものが普及してないですね。

結局のところ小規模な開発者に勝算はあるのかい?

ここまで書いてきて、「じゃあ、お前の意見として、個人や小規模なチームでアプリ開発するのは実際どうなのよ?」という見えない声が聞こえてきたので、それについて考えてみる。

これについての答えは簡単で、基本的にほとんど失敗するというか、みんながやっている市場であればあるほど勝率は低いと思う。じゃあ、今は競争率低いけど、これから伸びる市場でアプリ作るのがいいんじゃないかとなるけど、これが予想できたら誰も苦労しないので難しい。

そうはいっても、いろいろ試行錯誤しながら試していると、たまたまなにかが上手くいくこともあるので、結局のところ、「失敗してもいいから自分がやりたい。」とか、「失敗してもリスクが低いからやってみたい。」とか、そういうのをコツコツ続けるしかないのではないかと思ってる。無理のない範囲で。

電気自動車作るのに比べて初期投資は圧倒的に低いから参加はできるけど、そのぶん競争率も上がってるので失敗前提で撤退準備しながらダメ元でやるしかないというのが、いつもの結論になってしまいます。

*参考
勝者総取り世界の憂鬱

あと、僕が5年ぐらい個人アプリ開発してて思ったことは、世の中で言われている定説と、実際にやってみてわかったことのズレは結構あるということです。これはどんな分野でも同じだと思う。

興味のあることはちょっとでもいいから試してみると、自分が耳で聞いてた想像と、実際にやってみた真実とのズレが補正されるので、そこに大きな価値がある。これは、みんなが大変だとか苦痛だとか言っていることが、自分にはそこまで苦痛じゃなかったとか、個人間の温度差の話も入ってきます。

しかし、最近はテクノロジー系の面白いポッドキャストが増えてきて、こういう意味でもエコシステムが整ってきている。今現在で聴いているのをまとめるとこんな感じになった。

@日本語
Rebuildfm (Webとかプログラミングとか。)
nextstep.fm (iOSが中心。)

@英語
a16z (スタートアップ系。テクノロジー分野の最先端の話題。)
Under the Radar (iOSアプリの個人開発系。ビジネスサイドの話題多い。)

あとはスタンフォードのやつとか、Googleベンチャーのやつとかは、DHHとか、マークアンドリーセンとか、イーロンマスクとか、特定の人がゲストで出てくる回は外れなくて面白い。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら