InstapaperやOvercastを作った個人開発者マルコさんが、最近になってOvercastに広告をつけた経緯をブログやPodcastで話してた。

Overcast trying ads, dark theme now free

この人はおそらくツール系では世界一有名な個人iOS開発者だけど、いろいろな試行錯誤をブログやPodcastでシェアしてくれてて昔からすごく参考になってる。

最近の経緯も興味深くて、OvercastというPodcastアプリのマネタイズ方法の試行錯誤をシェアしてる。最初は、まずは無料で試せて、すべての機能を有効にするには5ドルの買いきり課金から始まってた。これは一般的なやり方だ。

しかし、初年度は順調だったが、だんだんと収益が下がってきて、買いきりモデルの限界を感じてきたそうな。

その後、Podcast市場が盛り上がってきたのをうけ、まずは一気にユーザ数を増やすことを優先するためにすべての機能を無料にして、サポートしたい人だけ月1ドル払う募金形式に変えていた。これはかなり大胆な試みだったので個人的にかなり経過が気になっていたのです。

募金形式のその後

そして、最新のブログでその結果を公表してた。募金形式での目標は5%のユーザの課金だったが、募金してくれたのは1.9%のユーザにとどまった。そこで、募金ユーザだけに、ダークテーマモードなど一部の機能を追加すると3%に増えたけど、十分な収益は得られず。さらに、一つの機能に月額課金するのはかなり不評だったらしい。

ここは僕もなんども考えたりするからよくわかるんだけど、募金形式って社会的意義が相当あるようなサービスじゃないとなかなか上手くいくとは思えないんですよね。僕自身だって、すごく便利なツールがあっても不便なく無料で使い続けられたらよっぽどじゃないとお金払わないと思うし。

付け加えると、募金形式って、一部の太っ腹なユーザが一般人の何百倍もぽんっと払える仕組みじゃないと、これまたきつい。募金の払う額って一人一人の平均なんて意味がない非線形の世界だから、どかんと払ってくれる個人や企業がたまに出現するのが重要だ。

とはいえ、ネット系のツールでたまに募金形式を導入しているものもあるので、もしかしたら上手くいかないかなと気になってたけど、やっぱり開発を続けられるほど十分ではなかったらしい。というわけで、他のまったく新しいアプリを作るのに時間を使うか、仕組みを変えるかを選ぶことになったと。

悩んだ結果、バナー広告をつけることにしたら予想通りネガティブなレビューがついてしまったけど、当初予想してたよりかはましで、結果的に広告を外すために月額課金への加入者が増えたので結果的にはよかったとラジオで言ってた。

なにより、課金ユーザが増えて継続的な収益が見込めるようになったので、アプリをもっとよくするモチベーションが凄く湧いていると話してたのが印象的。

そうかあと思って僕もOvercastのページを見てみたら、やっぱり広告つけることに対してのネガティブレビューが多かった。そして、アプリを開いてみたら、バナー広告がついていて、やっぱり今までのシンプルなデザインが損なわれているのがすぐわかる。

しかし、最終的には収益性を確保しないとアップデートを続けるのは難しいし、やる気もでないので、このジレンマは本当に理解できる。

広告は邪魔だからつけたくない

アプリを作ってる人なら誰でもそうだと思うけど、精魂込めて開発した大事なアプリにバナー広告とか本来ならばつけたくないんですよね。せっかくシンプルなデザインを目指しているのに、バナー広告があるだけで台無しになってしまう。ただでさえ、スマホはスペースが小さいし。

できることならば、広告は一切つけず、有料機能にアップグレードする人だけ月額課金という一般的なSaaSモデルがやりたい。

ただ、こういうモデルができるのってビジネスに使うサービスじゃないと難しく、一般向けのアプリではうまくいかない。例えば、Dropboxなら採用できるけど、TwitterやFacebookには難しい。

僕も、Zenyという家計簿アプリを二年以上前にリリースしてからこつこつとアップデートしてきたんだけど、いろいろ試行錯誤した結果、マネタイズはバナー広告になった。

ツール系アプリで広告をつけない方法

ツール系アプリで広告がない場合もあるけど、これはいろいろなパターンがある。

例えば、VCに投資されたスタートアップのアプリで、まずはユーザ数を増やすのに注力して、誰かに買収されるか、あとから広告をつけるか他の収益方法を考えるというパターン。これは個人で作っている場合には当てはまらない。

その他には、自分の代表作としてAppStoreにリリースしているケース。この場合、アプリは就活のネタだったり、フリーランスだったら宣伝のためなので、そのアプリは儲からなくてもいいので広告もつけないほうがいい。

他にもいろいろあると思うけど、こういう特殊ケースを除いて、どんなビジネスでも継続的に続けるには収益性が必要になってくるとは思います。

ちなみに、最近では、全画面広告とか、動画リワード広告とかが主流になってきていて、バナー広告は収益性も低いしオワコンになりつつあるんだけど、ツール系だとなかなか導入が難しい。

ゲームアプリのようにいかないツール系アプリ

ネットでは、動画広告や全画面広告を導入してアプリの収益性が倍に増えた!とかいう導入事例をよく聞くけど、基本的にこれはゲーム系アプリの話なんですよね。ツール系アプリに全画面広告はとても難しい。

もちろん、なにかの待ち時間に全画面広告を表示してうまくいくケースも稀にあるんだけど、一般的なゲームアプリのように簡単にはいかない。ツール系アプリでユーザが操作している時、突然全画面の広告を出したらめちゃくちゃ不快なので。

全画面広告って、バナー広告みたいに常にデザインを汚したりはしないから開発側としては導入も簡単だし、できることならば採用したいんだけど。あと、表示される広告はほとんどがゲームアプリの広告なので、そもそも広告の種類がツール系アプリと相性が悪いのも難点。

一番よいのはクオリティの高いネイティブ広告

広告にもいろいろありまして、みんなが好きな芸能人が出てくるクオリティの高いCMを見せられるのと、まったく興味のないエロ系の汚いバナー広告見せられるのでは、全然違うわけですね。

例えば、SmartNewsとかSnapchatぐらい大きくなれば、ある程度クオリティの高い広告をアプリに採用することができてくる。これが一つの理想なんだろうけど、大抵のアプリはやりたくてもできないのが現状です。

TwitterやFacebookで全画面広告なんて出てきたら一気に離脱率高まるからやってないんだろうし、現状のスタンダートはタイムラインや画面上での動画広告ですね。

もうちょっと広告のクリエイティビティが上がるか、現状で出来るとすれば、ユーザにジャンルを選択させる方式がいいかもしれない。

食品、ゲーム、金融、ファッション、読み物、とか10種類以上の選択肢があって、そこから興味あるものをいくつか選んでくださいと設定で指定してもらう形式になるとだいぶマシになりそうだし。Facebookが間接的にやってることって同じことだから、もうアプリ側でユーザにこういう広告は見たくなければ選択肢から外してねっていうのが単純かも。

こういうことを考えているだけに、最近のFacebook対Adblocksの抗争はネットビジネスの未来を占ううえでとても注目しております。


*確定申告のTaxnoteなど作ってます。自己紹介はこちら。エンジニアもゆる募