最近、Dモーニングっていうのを購読したんですよ。モーニングっていう雑誌がiPhoneやiPadで読み放題、一ヶ月に500円っていう値付けのやつ。

これ、モーニング系の漫画好きな人ならモトが取れるし、きっかけは友達に熱烈に勧められて、「た、たしかにそれはいいかも。。」と思って一週間まえから始めてみた。

使ってみた感想はなかなかいい!雑誌買ったらゴミになるけど、スマホならいつでもどこでも、気軽に読めるし、バックナンバーも自由にダウンロードできる。

僕は毎週木曜日にチャンピオンの刃牙を立ち読みするのが一週間の楽しみだったんだけど、毎週の楽しみがまたひとつ増えました。

と、こういう普通の日記を書こうと思ったんじゃなくて、このDモーニングの重要な設計について書きたい。

漫画の掲載順が重要になる

この、Dモーニング、雑誌版に比べて、漫画の掲載順が死ぬほど重要になるんです。それぞれの漫画のページビューにとって。

というのも、Dモーニングの設計はまず低画質版を一気に全部ダウンロードされると、すべての漫画が”とりあえず”アプリで読めるようになり始める。

しかし、低画質版だとちょっと読む気にならないレベル。だから、バックグラウンドで高画質版をアプリがダウンロードし始めるので、高画質版が完了した漫画から読むようになりました。

これ、高画質版のダウンロードは漫画の掲載順なんですよ。

普通、雑誌の掲載順も読まれやすい漫画に影響はあるだろうけど、この高画質版のダウンロード完了の順番が関係してくると、もう圧倒的に影響がでかい。

だって、雑誌ならペラペラっと数秒で終わるところが、高画質版のダウンロードになると、数分、電波悪いともっとかかるわけですよ。

これなら、Dモーニングの掲載順が一番後ろの漫画は読まれる可能性がすごい低くなるだろうと簡単に予想できる。

読まれる可能性が低くなると、読書投票にも影響するし、電子書籍版はページビューとかの数値も計測してるなら、そこにも大きく影響するはず。

今後、電子書籍版で読むユーザがほとんどになった時、この設計のままだと大御所の作者が掲載順の前で有利になるから、新しい漫画の読まれる確率や、後ろに回された漫画の逆転は雑誌時代に比べてはるかに難しくなるかもしれない。

App Storeでランキング上位になれば、ずっと上位が続きやすく、新しいアプリがなかなか下克上しにくいみたいな。

じゃあ、どうすりゃいいか。お気に入り機能とかで、高画質版ダウンロード順をカスタマイズできるとか、いろいろな方法があるとは思うんだけど、僕は、別にDモーニングの設計はこうするべきだってことをここで書きたいわけでもないんですよ。

何を思ったかというと、使うモノの設計しだいで、人間の行動が大きく影響するから、その業界のビジネスの新陳代謝や発展にどれだけ影響するかを意識しながらアップデートしていくと、いい未来がやってくるんじゃないかと思ったわけです。

ニコラスカーの話

これをすごく意識させられたのは、ニコラスカーの、「ネットバカ」という本です。

毎回、ニコラスカーの本はクソみたいなタイトルを翻訳版はつけられて、カー先生に出版社は恨みでもあるのかと勘ぐっていますが、この本は素晴らしい本です。

人類が、道具の発達によって、行動様式、脳みその機能、身体機能がどう変わっていったかという話を、活版印刷の登場からGoogleまでかなり深く洞察してる。

例えば、パソコンを使うようになって漢字は書けなくなるし、GoogleMapで地図を読めない人が増えるとか、そんなのは誰でも思いつく。

で、そのマイナス面はみんな直感的にわかっていて、僕だって「別に漢字書けなくても、パソコン時代だから特にデメリット少ないし。」と思ってるわけです。

ただ、世の中にはデメリットがないと思いこんでたり、まったく気づいていないデメリットが往々にしてあったりするということもあります。

最近読んだ、「失われてゆく、我々の内なる細菌」という本では、画期的な発明と賞賛され、昔なら死んでいた病気から人類を救っている抗生物質や、家畜に使われる成長促進剤が、昔ならほとんどなかったアレルギーなどの新しい問題の原因になっているという話を書いていた。

なにか便利なものを作ると、想像の範囲を超えたデメリットや結果が発生する可能性がよくあると。そういうことをモノづくりする時は意識して、改良し続けるのが重要だなと思う。

電子書籍 月額読み放題サービス

音楽ではSpotifyやAppleMusicなど、当たり前になってきた月額定額での聞き放題サービス。

これに似た、電子書籍の読み放題サービスをアマゾンがこの前発表してた。

音楽では聞かれた曲数によってクリエイターに収益配分が分配されるが、書籍だとさらに複雑になる。

ニコラスカーのこのブログ記事では、Amazonの新サービスのルールを適用すると、書籍業界にどういう影響が出るかを詳細に書いてて面白い。

How to write a book when you’re paid by the page

例えば、読んだページ数によって、作者に分配がされ、カウントは最初の読んだ時だけというルール。

これなら、サクサクと読みやすく、続きが気になる本が圧倒的に有利になり、儲けるためにはそういうジャンルばかりになりやすい。

何度もページを読み返して、深く味わう種類の本にはまったく儲からないプラットフォームになるので、そういう本は消えていく。

紙の本から電子書籍になり、その次は放題サービスと、プラットフォームが変わるたびに、そのルールが生態系を変えちゃう可能性があります。

ふだんの生活でどうすりゃいいか

普通は大きな影響力を持つプラットフォームを作るわけでもないので、なにかを利用する時のほうが意識すると面白いかもしれない。

なにか、便利なものを買ったり、使い始めたりした時、一見想像できるデメリットや副作用はなさそうで、後々顔を出してくるネガティブな側面に気づくとか。

逆に、すごく不便な土地や、快適とは思えない生活をしばらくしたら、今まで頭の中だけではわからなかった事が実感できたり。最近そういうことが自分にあって面白かった。


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