最近、ListTimerZenyTaxnoteを8ヶ国語ぐらい追加対応したので、その過程とか、使ったサービスとか、結果とかを書いてみたい。たぶん、翻訳を考えている人には役に立つと思う。

なんで多言語化しようと思ったか?

普通ローカライゼーションするとしても、まずは英語、ついでに中国語ぐらいだと思う。自分も、2年ほど前にリリースした時は日本語と英語ぐらいしか対応せず、そのままずっとやってきてた。

で、だいぶアプリがいい感じに出来上がってきたので、そろそろ他の言語にも対応してみるかな、でも面倒だなと思っていた時、まずは様子見として翻訳が簡単なListTimerのAppStoreの説明文とスクリーンショットだけでも他言語化してみようと思ったのが半年ほど前でした。

アプリのAppStoreでの名前や説明を7ヶ国語にローカライズしたらDL数が増えました

その時のレポートが上記の記事なんだけど、後からAppAnnieのデータを見てみたら、自分が勘違いしてたことにそのあと気づいたんですね。

以前は日本語と英語のみ対応してたListTimerを、中国語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語と一気に主要言語に説明文とスクリーンショットだけ対応してみたんですよ。

アプリの内部は大変だから、まずは反応を見てからどれに対応するか決めようと思って。

で、やってみたら、韓国語とロシア語のダウンロード数が増えた。特に韓国語が一ヶ月に10ぐらいだったのが一気に600ぐらいなってたと思う。そして、他の言語はあまり変わらず。

この時、人口的には他の言語のほうが多いはずなのになんでだろうなと不思議に思ってたんだけど、あとから気づいたんだけど、実は韓国語とロシア語だけアプリ内部もついでに翻訳してたんですよ。。うっかり忘れててあとから気づいた。なんという勘違い。

で、この時、「ああ、AppStoreの説明文とスクリーンショットだけでは、その言語のダウンロード数がどの程度増えるかわからないんだな。やっぱり内部も翻訳して、アクティブユーザが増えて、口コミで広がるっていう流れが出来ないとダメか。」ということに気づいた。

つまり、ストアの説明文とスクショだけ翻訳して、効果のあった言語を見極めてから内部を翻訳するという当初の計画はあまり使えなかったということでした。

ならば、結局はアプリの内部も翻訳して効果を見るしかないかと思い、まずはどの言語を翻訳するのが優先度高いかを調べることにした。

iOSアプリ翻訳の言語別優先順位

英語の次は中国語をすればいいだろうというのはなんとなくわかるんだけど、3つ目、4つ目、5つ目に優先すべき言語はなにかというのが意外にわからなかった。

というのも、Appleはそれぞれの国でのiOSがどれだけ普及しているか公開してない。そこで、まずは世界中で使われている言語の順位ってなんだろうと思ってググったり検索してみた。でもよくわからんなあとかTwitterで呟いてたら、友人の加藤さんがいい感じのリンクを教えてくれた。

ネイティブスピーカーの数が多い言語の一覧

このリンクによると、中国語、英語、ヒンディー語、スペイン語、アラビア語と続いていく。

しかし、単純に使われている人口が多くても、購買力がある順番とか、そもそもiPhone持っている人がいる割合も考えないといけないから悩ましい。

そんな感じで悩んでまたググってたら、一番参考になるリンクを、また加藤さんが教えてくれた。(笑)

これはアプリの分析ツールMixpanelが発表しているiOSの言語比率なので一番参考になる。2014年のだけど。最近なんかの数字で2015年から2016年にかけて中国語のiPhone販売率がかなり増えたという記事を読んだ記憶があるので、適当に中国の数字を多めに見つめればよいだろう。

というわけで、このデータをもとにすると、日本語以外の優先順位はだいたい以下のようになる。

1 英語
2 中国語(簡体字)
3 スペイン語、フランス語
4 ドイツ語、アラビア語
5 ポルトガル語
6 ロシア語 

しかし、ListTimerの経験では、なぜか世界的な人口では上記の言語より少なめの韓国語と中国語(繁体字)での結果がヨーロッパ言語よりよかった。具体的には、韓国、台湾からの流入である。

ちなみに、中国でメインで使われているのは簡体字(Simplified Chinese)で、香港、台湾、シンガポールなどで繁体字(Traditional Chinese)が使われているらしい。見分け方としては、漢字を省略して簡単にして作り変えたのが簡体字で、日本でも使われている漢字のもとになってる字数が多い難しいほうが繁体字です。

中国政府が識字率を上げるために簡単な漢字を普及させたとか、中国の人民を支配しやすいように昔の書物を読める人間を少なくするためにやったとかなんとか。

話を戻すと、なぜか自分のアプリでは韓国語と繁体字の流入が多そうなので、この二つは翻訳することにした。自分の仮説としては、日本から近いから、アプリの口コミが広がるのに若干有利なんじゃないだろうか。日本への留学生が広めてくれたりとか?

そして、なんだか言語として翻訳難易度高そうなヒンディー語とアラビア語はスルーすることにした。

最初は4ヶ国語ぐらいで様子見しようかと思ったけど、勢いで中国語(簡体字、繁体字)、ドイツ語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語と8ヶ国語一気にやることにした。

なにがきっかけでヒットするかはわからないので、ついでにたくさん対応しておこうと。

さて、次はどうやって翻訳していくかを考えた。

翻訳の質が心配

まず、一番の懸念事項が翻訳を頼んでも、アプリとして変な翻訳になってしまわないかということでした。

英語だったらだいたいわかるけど、他の言語だとそもそも合っているかどうかもわからない。翻訳をテキストで頼んでも、翻訳する人はアプリを操作しながら考えるわけではないので、翻訳されたテキストをアプリ内で使用した時にどうなるかというのが一番心配だった。

完璧を目指すならアプリを翻訳した後に、Upworkとかでネイティブの人にアプリを操作しながらチェックしてもらおうかなあとか、iPhoneアプリのチェックも前提でやってくれる人を探そうかと考えてた。

結果的にはお金かかるし面倒だから断念したんだけど、スマホアプリに特化した翻訳サービスとかすごい需要あると思う。UIちゃんとわかってる人が翻訳してくれるなら余裕でプレミアム払うよ。

ということで、今回は前回も使ったGengo.comを使うことにしました。

アプリ翻訳する時に便利なサービスと使い方

iOSアプリをローカライズする時に便利なサービスがいくつかあります。

まず、スクショを編集するにはScreenshotBuilder。これがあるとフォトショップとかいらないし、多言語に翻訳するならめちゃ効率あがる。

さらにfastlaneというツール群のDeliverっていうツール。これは一度に大量のスクショやテキストをiTunesにアップロードしてくれる。これがないとiTunesで手動でやることになるので死んじゃう。

詳しくは昔まとめたので、こちらを参考にしてもらえれば。
gengoとScreenshotBuilderとfastlaneで、AppStoreのローカライズがめちゃくちゃ楽になった

さて、今回は実際に翻訳を依頼しないといけないのだが、実はスマホアプリの翻訳用のWebサービスがいくつかあったりする。

昔いくつか試してみたんだけど、よさげだったのはlokaliseというサービス。

ただ、結局これは使わないことにした。localiseはgengo.comのAPIを使っていて、localiseで翻訳依頼したテキストはgengo経由で翻訳されるんだけど、localise経由だとユーロでしか払えないとか、日本語からの翻訳ができないとか不便で、それなら直接gengo経由で依頼すればいいじゃねえかとなった。

ちなみに、iPhoneアプリの翻訳テキストの形式はこんな形になっている。

“Watch” = “見る”;
“Cancel” = “キャンセル”;

localiseを使うと、iPhoneのローカライズファイルを読み込んで、Web上で編集できたり、そのまま翻訳依頼できたりするのがウリなんだけど、gengo.comに慣れてきたら普通に自分でテキストを一括で変換して依頼したらいいなという結論になったのです。

gengoを使う上で一番重要な作業が、iOSアプリの翻訳ファイルで翻訳しなくてよい部分を[[[]]]で囲むこと。[[[]]]で囲まれた項目は、翻訳者には見えるけど翻訳はしなくてよいテキストになって、料金のカウントからも省かれる。

ちょっと面倒だけど、テキストエディタの置換機能を使って、こんな感じに変換する。

[[[“Watch” = ]]] “見る”;
[[[“Cancel” = ]]] “キャンセル”;

このようにすると、翻訳者は下記のように翻訳したファイルをアップロードしてくれる。

[[[“Watch” = ]]] “观看”;
[[[“Cancel” = ]]] “取消”;

あとは[[[]]]]をエディタで一気に消して、Xcodeにそのまま貼り付ければいいので楽チン。gengoでは[[[]]]の使いかたと、テキストエディタの置換を工夫する必要あり。

さらに、重要な点として、gengoで翻訳依頼する時、「Tell us the purpose of your translation」という項目があるので、アプリの場合はここで、「App/Web localization」を選んで、「Business」を選ぼう。

翻訳者の中にはiOSアプリの翻訳とか慣れている人もいて、僕はやりとりしてたらたまたまCSの学位持っててアプリの翻訳何回もやってるって人もいた。こういうアプリに詳しい人に割り振られる可能性が高まると思う。

お値段と時間

gengoはインターフェイスがすごくよくできていて使いやすくて素晴らしんだけど、一番いいのはとにかく翻訳結果が爆速で出来上がるってところ。

20文字ぐらいの短文をサクッと7ヶ国語に翻訳したいって時でも、数分ぐらいで出来上がったりする。このスピードがいちばん嬉しい。

料金体系は、英語からの他言語への翻訳でStandardで$0.06/word、Businessで$0.12/word。よっぽど簡単な文章以外はアプリの翻訳はBusinessを選ぶのが無難。これが日本語からの翻訳になると結構高くなる。

なので、自分はまず英語に翻訳してから、その英語を他の言語に翻訳していった。さらに、英語 => ロシア語は可能だけど、日本語 => ロシア語はできないとかそういうことがよくある。なので、実質的に英語ベースで他の言語にやらないと厳しい。

ざっくりで申し訳ないけど、あまり翻訳する部分は少ないListTimerみたいなアプリだと、アプリの内部、スクショ、ヘルプとか全部翻訳して、一つの言語につき1万円ぐらいだった。これが、Taxnoteみたいな翻訳料が多いものになると、アプリ、スクショ、ヘルプと合わせて言語につき4万ぐらいかかってしまった。

なんか勢いでたくさんの言語に翻訳してしまったけど、正直ここまでお金かかってたら1年後でも回収できない気もする。

きになる結果

以前のデータとして、Taxnoteのダウンロードは日本語圏が7割、英語圏が2割、その他が1割といったところ。ListTimerは日本語圏が6割、英語圏が2割、その他が2割といったところでしょうか。

まだ、翻訳してから1ヶ月ぐらいしか立ってないからはっきりとした効果がなんともわからない。こういうのって突然増えるより、じょじょに増えたりすることが多いので。一気に増える場合は、タイトルとかキーワードがハマった時かな。

中国語、ドイツ語、フランス語とか、今まで翻訳してなかった言語を翻訳することによりAppAnnieの分析をみたら、それぞれの言語で100パーセントの上昇率とかになるんだけど、これはそもそもに数字が小さいから。

例えば、翻訳する前、ドイツからの流入は1ヶ月に3ダウンロードぐらいだったので、30になったとか。そういう形です。まあ、翻訳すると底上げされるのは間違いない。僕みたいな個人開発者だとかけたお金に対してのコストパフォーマンスがどうなるかが大事なんだけど。

多言語に翻訳するさいの注意

当たり前だけど8ヶ国語も対応してしまったら、今後アップデートでちょっとどこかの文章を変えるたびに、対応しないといけなくなる。これがめちゃ面倒になる。幸いなのは、短い文章であればgengoに依頼すると1時間以内に納品してくれるというとこでしょうか。

ついでにいうと、英語以外での問い合わせもやってくる。僕はHelpshiftというサービスを使ってアプリ内部から気軽に問い合わせできる仕組みを入れてるので、韓国語とかでメッセージが来た時に「おお、どうしよう。。」と最初なった。

フィードバックしやすい状況を作るHelpshift

こういう時は、google翻訳使ってる。まず、自動翻訳で文章に意味がわかったら、それへの返信を英語で書いて、なおかつその下に韓国語に自動翻訳した文章を貼り付けてる。

とりあえず今回は翻訳するまでの過程やどうやったかを書いたけど、数ヶ月ぐらいしたら翻訳の効果もはっきりしてくるので、その時はまた記事を書こうかと。


*自己紹介と過去ログはこちら