確定申告はなぜ憂鬱なのか?それは、謎な部分が多く、作業が面倒で苦痛だからです。
僕は10冊以上の本を読んで勉強したけど、重要なことを最初に教えてくれる本が皆無だった。
というわけで、申告に慣れていない事業主の方が楽になる方法を、簡潔に、具体的に、ポイントだけを説明したい。
目次
– ポイント1 複式簿記をしない
– ポイント2 複式簿記でいくら得になる?
– ポイント3 帳簿作業を楽にする方法
– ポイント4 勘定科目で悩む理由
– ポイント5 専門家に聞くべき部分
– ポイント6 青色申告申請の罠
– ポイント7 確定申告にこれ必要?
– 最後に
ポイント1 複式簿記をしない
最も効果あるのは「複式簿記をやらない」です。これ。
申告の方法は3つある。
白色申告/青色申告(簡易簿記)/青色申告(複式簿記)
ここで参考書がこぞって勧める複式を選択せず、簡易簿記を選択します。すると、面倒さはレベル100から5ぐらいまで下がります。
どれだけ簡単かというと、会計ソフトもいらないレベル。アプリとかで、日々の儲けと経費をカテゴリごとに記録しとけばいいだけです。複式じゃないからそれでいいんです。
青色申告(複式)は節税効果高いんでしょ?という声があるかもしれない。そうなんだけど、複式は一気にレベル100にあがっちゃうし、儲けが少ない時は、お得になる金額が労力に合わないかもしれないのです。
複式を選択する前に、どれだけ苦労して、いくら得するかの具体的なイメージが重要です。
複式の面倒さは最後にまとめてるので、ここでは、難解さ(専門家に相談する費用や時間含む)が飛躍的に増大するとだけ言っておき、いくら得するかに進みます。
ちなみに、簡易簿記(この記事では現金式簡易簿記を指す)は、前々年度の所得(儲け)が300万以下であること、という要件があります。事業始めたばかりの人や、まだそこまで儲かってない人なら、ぜひオススメ。
白色申告ですが、2014年から白色申告にも帳簿保存義務が課せられたので、青色(現金式簡易)が使えるなら白色を選ぶメリットはほぼ0になりました。青色(簡易)が使えなくて、複式がどうしても面倒だという人は選択肢に入れてもいいかも。
※参考
個人事業主メモ 3種類の青色申告を比較!
ポイント2 複式簿記でいくら得になる?
複式は65万控除ですが、65万控除は最終的に65万得するわけじゃないのですよ。計算は複雑なので、青色(簡易)と比べ、いくら得するかだけ大雑把に書きます。
売上 – 経費 = 所得(儲け)が38万以下
一年の儲けが38万以下なら、基礎控除38万で課税所得0になるので、複式で苦労しても無駄骨です。青色(簡易)か白色でOK。
所得が150万
苦行を選んで得するのは13万程度。
所得が300万
得するのは16万程度。
所得が500万
得するのは21万程度。
実際は、医療などの各種控除、前年の赤字繰り越し、開業費などで実際の課税所得がもっと減る場合が多い。
どうでしょうか。これで、所得に応じて、やる価値あるかの選択のイメージがつきやすくなったと思います。
ちなみに、白色と青色(簡易)の面倒さは一緒と考えてOK。だから、とりあえず青色の届け出を出しておきましょう。複式から簡易には申告する直前でも変えられます。
白色との違いや、具体的な計算方法も知りたい方はこちら。
※参考
青色申告/複式簿記に苦労して、白色申告や青色申告/簡易簿記に比べていくらお得?
事業をする人にとって時間は大切な資源です。その時間を面倒な作業と学習に使う価値があるかの参考に。
ポイント3 帳簿作業を楽にする方法
まず、簡易簿記の楽チンコースでも、所得少ない時期は問題ないと安心してもらいました。次に面倒なのが、帳簿記録、主に売上、経費の記録です。
これは、レシートを保存し、帳簿も保存しないといけない。残念ながら、2016年1月9日の時点で、レシートをスマホで撮影したものは証拠として認められません。ここをどう楽チンにするか。
まず、できるだけクレカで経費は払いましょう。明細が記録になるのでレシート保存の手間が省けます。
発生してしまったレシートの保存は、茶封筒とかに月ごとに分けるぐらいで大雑把に保存。ノートに日付ごとに貼るのが理想とか参考書には書いてるけど、現実的にそれは面倒すぎますよね。
帳簿の記録はアプリがいいと思います。iPhone/iPadな方は、僕が作ったTaxnoteを使えば、家計簿感覚で自動的に複式簿記で記録されます。(簡易、白色にも使えます)
やよい会計、freee、エクセルなどにも出力できるし、何も考えずにこれ使っといてねと言いたいところですが、簡易や白色ならあまり気にせず一番楽な方法で。
ただ、帳簿は7年保存する必要があり、白色でも保存義務ができたので、少なくとも仕分けデータを表計算ソフトに出力できるアプリが望ましい。
レシートを貯めて一気にやると、レシートを探して、日付を入力してと時間がかかるので、理想は毎日、その場でアプリで入力ですかね。その日につける場合、アプリなら日付つける手間が省けるし。
でも、人間、申告前に慌ててやるという性質を持っていまして、そこはしょうがないのかもしれません。
簡易簿記の入力方法の例ですが
日付、勘定科目 (何に使ったか)、金額、(メモ)
これだけでOKです。簡単ですね。クレカ払いは銀行からお金引かれる日付が揃うので楽です。
ポイント4 勘定科目で悩む理由
勘定科目の選択が悩むんだけど?とはじめはよくなると思います。本当に最初だけなので、大して心配いらないですが。
これは参考となる例をネットで検索しよう。でも、大切なのは、厳密な答えがないということなんです。
例えば、出張で飛行機代払ったら旅費交通費でまず迷いません。
でも、出張で必要になったモノを買った時、これは旅費交通費なんでしょうか、日用品費なんでしょうか。それとも出張費なのでしょうか?
誤解を恐れずにいうと、どれでもいいんです。勘定科目にこれはこうという正解はなく、例があるぐらいです。
だから、一般的な書き方をネットでチャチャっと調べて、だいたい合わせておけばOK。額が大きいなら、自分で名前つけて作ってもよし。
例えば、僕はVoicepaper、Lisgo、音声文庫という音声読み上げアプリを作っておりまして、音声エンジンのライセンス料支払いが大きな額なので、「音声エンジン手数料」という科目を作ってます。
もっと重要なのは一貫性です。
つまり、一度、出張で必要になったものを買った時に使った勘定科目を旅費交通費にしたら、その後も、同じような支出は同じ勘定科目を使う。
ポイント5 専門家に聞くべき部分
本をたくさん読んでも、情報が多すぎて悩むので勉強熱心な人以外はお勧めできません。一冊ぐらいざっと読んで、わからない部分はわかろうと努力しなくても良いです。
僕が一番悩んだところ、クレカ仕分けの日付問題とか、複式と簡易、自分ならどっちが費用対効果高いかとか、そういうことは詳しく書いてないんです。
後からわかったのですが、確定申告にはきっちりした正解がない部分も多く、どこまで厳密にするかも事業規模や、個人の趣向によって変わると教えてもらいました。
だから、申告書を出す時の最後は専門家に相談するのがオススメです。これが一番時間の短縮になります。
複式簿記は、銀行口座と数字を合わせるとか、会計ソフト使っても難しさは解消されないので、帳簿始める前の最初に相談するのが吉。
まずは税務署の無料電話相談があります。
次に、青色申告会が年会費2万ほどで、何度でも相談に行けるので安くてオススメです。最後に、税理士さんに申告の時だけ相談する方法もあります。
2年目からは自分でできるように、丸投げじゃなくて、疑問点を学ぶためにお金を払うというのがいいんじゃないかと。
ポイント6 青色申告申請の罠
簿記三級で教えてくれない重要な知識として、青色は、決められた期限に申請が必要というのがある。
申請してないと、その年は残念なことに白色しか選べない。間に合わない人は来年からやろう。大丈夫、これは簡単な一枚の書類で、税務署に行けば誰でもできます。
ここでは、青色(複式)で申請しましょう。青色(複式)で申請すると、後から複式、簡易、白色、どれにでも変化できます。
というか、複式の要件を満たしていないとダウングレードされます。逆に言うと、複式で頑張ろうと思ったけど、やっぱ出来なかったから最終的に簡易で出すとかできる。もちろん白色にも。
※参考
「確定申告の疑問」を税理士にズバリ聞いた!第2回青色申告編
つまり、青色で申請しておくリスクは0に等しい。メリットはたくさん。
ただ、これ申告直前だと全然間に合わないんです。。悔しいことに。
申告年度の3月15日が期限。大抵の人は、申告期限直前に慌てて始めるので、その時は青色の申請期限は去年の3月でしたってなる。
例えば、2016年の年明けに2015年度分の申告の準備を始めるとします。去年の3月15日までに青色の申請をしてないと、2015年度分は残念ながら白色になります。2016年度分は2016年3月15日までに申請しましょう。
ちなみに、2016年度の最初は商売始めてなくて、2016年6月に事業開始したケースだと、事業開始から2か月以内だと青色の申請できる。
ポイント7 確定申告にこれ必要?
帳簿入力代行
簡易簿記なら特にいらない。アプリとかで自分でやれる。専門家に相談するのは、帳簿始める最初と、申告時の最後ぐらいでいいと思う。
ただ、年末にレシートだけ溜まっていて、日付も整理もされてなくて、日付と科目を一つ一つ入力するのが死ぬほど辛くて泣きそうだったら、封筒送りつけて一気にやってくれというのはアリかも。。
僕はアプリを使って、現金で払った経費はその場で、クレカ払いは月に一回明細書を見ながらペチペチやるのでいらないけど、どこまで時間をお金で買うかで考えが変わりますね。
簿記三級レベルの知識
会計ソフトがある今、簿記三級レベルの知識はなくても大丈夫です。ハマる部分は簿記とは関係ない部分というのが自分の感想。主に、日々の帳簿のつけ方。
複式に挑戦するつもりだとしても、簿記の本読むより、確定申告に必要な帳簿の記録方法だけ専門家に聞きながら覚え、決算書作成の時期にもっかいサポートしてもらうのが良い。
会計ソフト
弥生会計、freee、MFクラウドなどの会計ソフト。複式簿記なら貸借対照表など各種の帳簿作成に必須です。白色と青色(簡易簿記)なら、一年の合計値を申告時に書き写すレベルなのでなくてもいいかな。
低所得の年度は複式簿記のコスパは高くない。そして、確定申告の経験がない事業開始年度からガンガン儲かるケースは稀。儲かってるなら専門家に任せる選択肢もあるし。
でも、始めての確定申告する人のための本はみな「会計ソフト使えば複式簿記は簡単、頑張ろう!」というノリなのはなぜだろう。会計ソフト使っても、ハマリどころたくさんなのに。
最後に
ちなみに、確定申告のハマリどころは、やり方さえわかれば次の年からは簡単になります。でも、毎年続く最大の負担は日々の帳簿付けなんです。クレカ明細を自動で仕分けするクラウド会計使っても、修正が必要だったり、現金支出は手動だし。
このストレスをなんとか軽減させるためにTaxnoteを作ったので、もしよければ。
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*家計簿と読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら。