最近、同じ本を何回も読むことには指数関数的な価値があるという記事を書いたことがきっかけで、「かくかくしかじか」という、東村アキコの名作を読み返している。ちなみに、この漫画は東村アキコの自伝的漫画です。
僕はこの本が、ここ数年で読んだ漫画の中で一番好きと言っても過言ではないんだけど、この本に出てくる絵画教室の先生というぶっ飛んだキャラクターがすごくいい。
この絵画教室の先生はとにかくスパルタで、竹刀を振り回して絵を習いにきた生徒を指導するんだけど、絵に対する情熱というか、熱意が半端ない。人間としてもぶっ飛んでいるし、最近の科学に裏付けされた教育論とか、いかに生徒のモチベーションを上げるかとかいう方法論からすると、まるっきりNGだらけのやり方で生徒を教えている。
そういう意味で、すぐ辞めちゃう子も多いようだけど、それでも絵画教室は口コミで評判になっていたようだし、実際に色々と人が育っているのが漫画を読むとよくわかる。
この本に出てくる強烈なキャラクターである先生を見ていると、人間というもの、何かに対する熱意、情熱というものは、一番大切なものであるんだなと再認識した。落ち込んだ時やスランプの時にどう上げていくかみたいなテクニック論というものは、その後にあれば良いというオプションであって、柱となる気持ちがないといけないなと。
多分、人に何かプレゼントする時でも、どっかのイベントで発表する時でも、それこそ何かの製品を作る時でも、作品を発表する時でも、気持ちがこもったものはなぜか人に伝わるもんでして、それがあれば、多少のアラや間違ったところや、恥ずかしい部分があってもOKとなっちゃう。
さて、そうすると、「僕は特にそこまで情熱を捧げられる対象がないなあ」という悩みが誰でも出てくるもんですが、こういうケースに刺さる言葉を先生は言ってた。
描きたいものなんてなくていいんや
物語の背景としては、東村アキコが本当は漫画を書きたいことを先生に言い出せずに先生の教室を手伝っていた20代前半の頃。先生に一緒に個展をやるから絵を描き溜めておけと言われるシーン。
東村アキコが「いや、でも描きたいものがなくて」っていうと、
“描きたいものなんてなくていいんや。ただ、描けばいいんや。目の前にあるものを。描きたいものなんて探しとるからダメになる。描けなくなる。お前は余計なこと考えすぎじゃ。”
というなかなかの名言を普通に話します。
これ、アプリやサービス、プログラミングでも、作りたいものを作るのが一番の学習なんだけど、作りたいものが思いつかないんだよなっていう状況は良くあるんで、いろんなケースに刺さる言葉なんじゃないかなと。
僕なんか、機械学習とか、ちょっと面白そうだなあと思ったりもするけど、何か作りたいものが出ないとどうもやる気が出ないんよなあというタイプなんで、そんなこと考えずに、興味あるならとにかくやっとけというのが正解なのかもしれません。
ただやりたいんだっていう理由だけでもいい
この前、エンジニアの友達と話してた時、フリーランスのお仕事を受ける時の話が出てきた。
というのも、エンジニアというもの、「これをやってください」という指示だけだと、どれだけ要件が的確でもどうもモチベーションがわかない。そのプロダクトに本当に必要であるかとか、本当に顧客が必要としているかとか、そういうものが伴っていないと「これやる必要ありますかね。」と、やりたくなくなるよねという話をした。
一応、僕もプログラミングをやるので、この気持ちはすごく良くわかる。誰かに手伝ってもらう時とかは、なんでこの機能をつけたいかとか、どうして他の事より優先度が高いかなど、バックグラウンドの説明を常に忘れてはいけないなあと思いました。
こういう時、「ウケるかわからないけど、とにかく僕がやりたいんです。」という情熱が伝われば、それだけでも良かったりするらしい。この気持ちも良くわかる。
さて、まとめてみると、情熱とはかけがえのないものでして、数値化したり理論化したりしにくいので、ビジネスの世界では過小評価されてるかもしれない。
もう一つは、そこまで情熱を捧げるものがなかったり、まだわからなかったりする段階でも、興味がちょこっとでもあれば、とりあえずやっとけと。
ちなみに、僕は気が乗らなくても、体がだるくても、毎日3時間はアプリ作りをやるっていうノルマを数年続けてますが、僕みたいなマラソンタイプにはこれもおススメです。
*家計簿と読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら。