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起業家の選択の実証データ

先日、ジュンク堂に寄ったら、ワッサーマンの「The Founder’s Dilemmas」の邦訳本が並んでるではないですか。

起業家はどこで選択を誤るのか――スタートアップが必ず陥る9つのジレンマというタイトル。

スルーしかけるタイトルだった。

おお、こんなマニアックな本の翻訳本が出ているとはと思い、サラサラっと目次を読んでみたら、やっぱこの本は面白そうだ。

面白そうなんだけど、まだ読んでない。なんか教科書みたいに太いのと、値段が高いから買うのを顕著してしまったのだ。

ハーバードの教授が研究を元に執筆した本だから太いんだけど。

でも、一時間ぐらいあるThe Founder’s DilemmasのPodcastは昔聞いたので、それについて書いてみる。

たしかスタンフォードのPodcastだったはずなんだけど、どうも見つかったヤツは短いのしかない。

Joelが推薦してる

この本について知ったのは、Joel SpolskyがTwitterで薦めてたから。

ちなみに、Joelさんのブログ記事はかなり深くて好きだ。

文章も上手いのだけど、Joelさんがユニークなのには理由がある。

マイクロソフトという大企業で勤め、自己資本で受託会社、コンサル、自社サービスを作り、なおかつ、StackOverFlowが成功したため、資金調達での急成長を目指すスタートアップも実際にやってるので、それぞれの側面を語れるユニークな人なわけです。

YC主催のスタートアップスクールでの講演も期待通り面白かったし。

ちなみに、ブートストラップ(自己資金での起業) vs スタートアップ(投資を受けるやつ) というテーマは常にホットなトピックで、Rails作ったDHHとかが油をそそいて、よく、やんややんやとなる。

もちろん、この二つのメリット、デメリット、会社のコントロールを優先するか、大成功とスピードのジレンマもこの本では扱っているようです。

ファウンダのジレンマの授業が面白い

実は、以前聞いたファウンダのジレンマの授業の1時間分のトークは、Podcastで聞いた覚えがあるんだけど、これがめちゃくちゃ面白い。

短いバージョンしか見つからなかったけど、以下はリンク。

  • 創業は一人でするか共同創業者とするのがいいか。
  • 共同創業者と起業するなら、資本比率は5:5がいいのか、片方が決定権を持つぐらいなのがいいのか。
  • 自己資金でやるか、投資を受けてやるか。
  • 学校を卒業してすぐに起業するか、一度企業で勤めて経験をつんでからやるべきか。
  • こういう、スタートアップあるあるなジレンマの数々を、ケーススタディだけでなく、実証的な数字を元に語っている研究結果なので面白い。

    普通はその人個人の経験から、自分が選んだ道をもとに「こっちのほうがいい。なぜなら自分の経験から〜」と薦めてくる場合がほとんど。

    でも、ワッサーマン先生は、CEOがIPOした後に取締役会から追い出される確率は何%だとか、共同創業者と一緒に起業した場合、途中で分かれる確率は何%だとか、とにかく研究結果からなる数字を出してくる。

    具体例となるケーススタディも面白い、

    別に統計結果がどうだろうが、自分の選んだ道を行けばいいと思うけど、実際のデータを元にした話には価値があると思う。

    なぜかというと、人間は分かりやすかったり、感情に訴えやすいストーリーを聞いた時、どうしてもそれがマジョリティだと頭の中でインプットする。

    あと、成功における運の比重が大きい分野になるほど、実際の確率を見誤りやすい。

    例えば、Facebookを作って大金持ちになったザッカーバークがいるけど、似たような事を目指しても、もの凄く成功確率は低い。

    でも、大リーグで大活躍するダルビッシュみたいになるよりも、ザッカーバーグになるほうが可能性ありそうと感じるかもしれない。

    ブラックスワンによると、運の比重が大きい分野ほど、人間は実際の確率を判断するのに不自由になり、ダルビッシュになれる確率はある程度正確に見積もれるけど、ザッカーバークになると不自由になるらしい。

    もちろんザッカーバーグは凄い実力と頭脳を持ってこそで、あれは運だと言っているわけではなく、確率の見積もりの話なのです。

    だからいろんな反証の連続を数字と具体例で見せるこの本は面白いと思う。

    答えはないから自分で決断するしかない

    ワッサーマンの授業を見てよかったのが、こっちのほうがオススメだという答えを提案しているわけではなく、ジレンマとリアルな数字をマシンガンのように延々と話しているところ。

    「A案のメリットはこれで、デメリットはこうだ。一方、B案ではこれが解決するが、デメリットはこれだ。一般的にはこういうイメージだが、実際の数字はこうだ。」という形式。

    それを踏まえて、こういう情報と数々の事例が君たちの意思決定に役立つといいね、グッドラック!といったスタイルだった印象。

    この本を読んだら、似たようなジレンマで悩んでいる人はさらに悩むかもしれないけど、数々の反証を知る事はよりよい意思決定には繋がるかも。

    そのうえで決めた事は知らずに判断するよりいくらかよいだろうし。

    それをふまえ、統計データがどうであれ周りがなんと言おうと俺はこうだという、自分の納得する決断であれば素晴らしい。

    こういっちゃなんですが、最終的には理屈じゃなくて、好みで決めるべきだと思います。


    *家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら


    勝者総取り世界の憂鬱

    またまたブラックスワンについて書いてみる。この本は凄く面白いからである。

    この本は人間の追認バイアス、大きな影響を及ぼす不確実性に関する事がテーマなんだけど、数年ぶりに読み返してみると、とても面白い章があった。

    それは上巻の第七章「希望の控えの間に暮らす」という章。

    ここでは、思想家、科学者、芸術家など、成功はほんの一部に集中し、成功する人は一握りしかいない分野で働く人の憂鬱を書いている。

    読み返した時、ここまで面白い章があったのかとびっくりした。

    アプリやWebは勝者が掛け金の大部分をかっさらう分野でありまして、数年前はそういうことをしてなかったからそこまで印象に残らなかったのかもしれない。

    そういうものをやる時の憂鬱がよく表現されていて、今読み返すと秀逸でした。

    ちなみに、著者のタレブ自身、ウォール街でクオンツをしていたのだが、その時の手法が10年にあるかないかの大暴落のほうにかけるというもの。

    その逆ばりの手法から、普段は周りから成績がよくないトレーダーとしてみられるので、こういうエッセイが書けたのかもしれない。

    かもしれないと書いたのは、人間は因果関係をすぐにでっちあげたがると口酸っぱく言っている本だからです。実証データがない限り大抵は思い込みの可能性が高い。

    話がそれた。

    勝者総取りの世界の憂鬱についてでした。

    まわりの冷たい目

    毎朝あなたは大学の研究室に行く。〜中略〜

    もちろんいい事なんかなかった。なんにも見つからなかった。時計の修理工ではないのだ。

    何も見つからなかった事にはとても価値がある。それも発見にいたる過程の一部だからだ。〜中略〜

    一方、あなたの義理の弟はウォール街企業の営業担当で、手数料をがっぽり稼いでいる。しかも、着実に、だ。〜中略〜

    休日はひどいことになる。家族の集まりで義理の弟に出くわすと、いつも自分の奥さんが間違いなくイライラしているのを感じる。

    彼女は一瞬、自分が負け犬と結婚してしまったんじゃないかと思い、それからやっと、あなたの仕事の仕組みを思い出す。 〜中略〜

    どうすればいいんだろう? 〜中略〜

    ヒッピーみたいな格好をして反抗すればいいんだろうか?

    芸術家ならそういうのもアリだろうが、科学者や勤め人だと難しい。あなたは行き詰まってしまう。

    まわりの冷たい目というのは、すぐに成果が出ないものに取り組む時はどうしても避けられないもので、スタミナが必要だと書いてる。

    ソフトウェアの世界だとリリースまで長い時間がかかるサービスもあるし、リーンな感じでアップデートを繰り返しても人気が出るまで時間がかかるものもある。

    そして、大抵は長い時間かけても結果がでなくて報われないのが普通。

    大成功か何も得られないかという、プラスの方向に突出した結果がいちどきに出る事のある仕事はたくさんある。

    使命感を持って没頭する類の仕事、たとえば地道にガンを治す薬を見つけるという難題に取り組んだり、人の世界の見方を変える本を書いたり。

    ちなみに、ブラックスワンでは、突出した成功はないけど着実な積み重ねが報われる”月並みの国”の世界と、大勢の敗者と、一部の突出した成功だけがある”果ての国”という概念がある。

    例として、歯医者や会計士など、一度に出来る量は限られているけど、確実に成果が出るのが月並みの国で、芸術家や俳優など、一部が総取りするのが果ての国。

    これを読んでいる時に思ったんだけど、こういう類の仕事はITの発展やグローバリゼーションが進むにつれ、増えていく一方なのではないでしょうか。

    コモディティ化した作業がどんどんロボットやソフトウェアに浸食されていくとすると、今より多くの人がますます果ての国の仕事を選ぶようになるかもしれない。

    現在は月並みの国の枠内でも、技術革新により、だんだんと格差が開き始めている業種もあると思った。

    結果より過程?

    スタートアップ系の記事でもよく出てくる、過程を愛するという話について。

    結果よりも過程が大事だという人もいる。でも、彼らが人類であるとすれば、あれは半分はウソだ。真実を全部語ってない。

    物書きは名声を求めて書くのではないとか、芸術家は芸術をやりたくて創作を行うだとか、ああいう活動はそれ自体が報いだとかよく聞くが、あれは半分ウソだ。

    たしかに、そういうことをやっていると、それだけでいつも満足できる。でも、だからといって芸術家たちが注目されたいと思ってないわけではないし、有名になったほうがいい思いが出来る事に変わりはない。

    これには反論できない。

    僕は自分が欲しいアプリを作ってて、もちろん過程が楽しいのは間違いないけど、ストアに出す限りは世間様に認められることを期待して開発するわけです。

    自分が使うからいいやと思ったとしても、売れなかったら惨めな気持ちになるし、負け犬呼ばわりされて枕を濡らす日々です。

    ヒュームのような力量のある哲学者でさえ、最高傑作を書評で罵倒されて、何週間も寝込んでしまったと書いてた。

    ヒュームも人間だったか。

    人間の本性と幸せ

    実証心理学の実験にもよく出ますが、人間は9年間で収入0円、次の一年で5000万円稼ぐよりも、10年に渡って500万円ずつ稼いだほうが幸せを感じるようです。

    最初の一年で5000万稼いで残りの9年で収入が0円でも、均等に稼いだほうがずっと幸せを感じる。

    いい気分の強さより、いい気分になった回数のほうにずっと強い影響を受ける。

    楽しく暮らすには小さな快楽を均等に分けたほうが胃に優しい。

    当然、果ての国の職業は胃に悪いですな。

    職業選択を安定重視で選んだとしても、人生はごくたまに起こる大きなジャンプが全体に強い影響を与える。

    問題はもちろん、私たちは結果が安定的には出ない環境で生きていることだ。黒い白鳥が人類の歴史の大部分を左右している。

    残念なことに、今の環境に合った正しい戦略は、私たちの体内で報酬を提供しないし、正のフィードバックも起こさない。

    過去に比べ、果ての国の事象が増えているのが現代社会。

    僕は技術革新が好きだけど、人間は隣の芝生を見て自分の幸福度を計測するので、収入、ネットでの影響力など、あらゆる部分で格差が可視化できるのが現代社会。

    Facebookを見ればリア充がまぶしく、不幸になるという研究結果があるらしいけど、ここで上手く折り合いをつけていくのは重要な問題かもしれない。

    ネットは人間を憂鬱にする部分もあるし、救う部分もあるので、救う部分を強化するサービスを作れば流行るかも。

    お仲間と敬意

    人間、一人じゃ生きていけないなんて陳腐な言い草かもしれないが、実際、自分で思っているよりも私たちには他人が必要なのだ。

    特に尊厳や敬意という点で必要なのである。

    実際、まわりから認められることなく、何か大きなことを成し遂げた人は歴史上ほとんどいない。〜中略〜

    黒い白鳥に左右される営みに手を出すなら、お仲間がいたほうがいいのである。

    これを読んでいる時、ポールグレアムのエッセイを思い出した。

    スタートアップでは、周りから無駄な事をやっていると思われ、蔑まされる辛い期間を耐え抜くスタミナが必要で、一人ではなかなか耐えきれず諦めてしまう。だから共同創業者がいたほうがいい。とかだった気がする。

    この章を読んだあとは、なかなか成果が出なくても努力している人には敬意を持とうと思った。敬意と言うとジョジョを思い出す。

    こうしたほうがいいんじゃないかとか、ついつい思ってしまうのが人間ではあるけれど、そんな些細な予測は当てにならないし。

    その営みの過程で何かを発見するという事が往々にしてあるし、全面的に応援するという姿勢が重要だと思ったので、うっかり忘れない限りそうしようと思う。

    ちなみに、著者のタレブが個人にオススメするのは、9割を月並みの国の仕事に割り当て、残りの1割ぐらいで果ての国の事象に割り当てるバーベル戦略というものなんですが。

    ただ、リスクテイカーである起業家に対しては敬意を持っていると、スタンフォードの授業に出ている動画で言ってた。

    失敗できる数が限られている個人としては最適戦略ではないけど、無数のソルジャーによって、社会にとっては大きな前進が起こる原動力になるかららしい。

    月並みの国と果ての国のパーセンテージをどのぐらいで割り当てるかは、その人の趣向やおかれている状況によっても変わってくる。

    関連リンク

    果ての国と月並みの国:橘玲 公式サイト

    果ての国と月並みの国と、スタートアップのスケール

    不確実性とは不完全情報のこと

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    不確実性とは不完全情報のこと

    ブラックスワンという不確実性を扱った本があります。

    この本は人生で最も影響を受けた本といっても過言ではないので、最近もう一度読み返してみた。

    以前読んだのはこの本が発売した2009年の6月だと思うから、4年ぶりぐらいにしっかりともう一度読んだ。やっぱ素晴らしい本だった。

    4年前といえばサービスもアプリも作り始めてなかったし、プログラミングさえもやってなかった。

    単純にその頃は行動経済学とか歴史とか金融とか科学とか、そういう本を読むのが好きで、ブラックスワンはその中でも特に面白かったけど、今読むともっと面白かった。

    というのも、3年前ぐらいからプログラミング初めてWebサービスやらアプリを作るようになったのが大きいと思う。

    予測ができない事象の数々

    プログラミングする時は、将来どの程度まで開発を続けるか、どの程度までスケールするかが分からない中、なんとか変化に柔軟に対応できるようにしつつ、なおかつ目の前の効率とのバランスを考えながら設計を考えないといけない。

    機能の開発にどの程度の時間がかかるかも不確実で、あたらしいことをやる時は思ってもみなかった部分でハマって時間を食うということがよくあります。

    もっと分からないのは、どんなWebサービスやアプリがヒットするかどうか。後から説明をつけるのは簡単だけど、なにがどの程度ヒットするかの予測はほんとわからない。

    ブログ記事でも、どの記事がどの程度バズるかはわからなく、まさかあの記事があそこまで読まれる事になるとはという現象がよくあります。

    ここで重要なのは、ある程度予測できる部分と不確実で予測は不可能な部分、いろいろな事象があり、ブラックスワンという本はそこをもの凄く詳しく書いている。

    科学は大災害を予測できるか とか、最近ではシグナル&ノイズなど、予測系の本はいろいろあるけれど、これらの本は予測が難しい事象にどの程度まで挑めるかという内容でした。

    短期的には予測がある程度可能な事象と不確実で予測は不可能な事象の違いを詳しく説明し、それらをどう区別してつき合うかまでを描いた点でブラックスワンは別物で、そこがこの本を特別なものにしていると思う。

    不確実性とは不完全情報のこと

    僕もよくこの罠にハマるのですが、どうしても「正解」というもの、正しい道筋というものを求めがちな事がよくあります。

    アプリの設計なら、将来Webサービスまで拡大するかも、ソーシャル機能をつけるかも、月額課金に移行するかも、などなど、いろんな将来の可能性を見越して可能な限り柔軟な設計にしたいと。

    往々にして、柔軟性と目の前の開発効率がトレードオフになって悩む。さらにいうと、アプリ自体のシンプルさとのトレードオフにも悩む。

    いろんな拡張性を残したいという気持ちと、最小限の機能でシンプルなものを最初に作る時のトレードオフにも悩む。

    ああだこうだ悩みながら、現時点での最善の進め方はこれだなと決めて前に進むわけですが、やっぱ間違ってたという時も往々にあります。

    アプリのアイデアを考える時も、設計を考える時も、後から無駄だと思うような事はしたくない、可能な限り成功の精度を高めたいと思うのが人間の性です。

    不確実に見える事象にも実は法則性があり、本当はなにか正しいやり方があるのでないかと。

    そんなもやもや感を持っていたのですが、ブラックスワンではこう書かれています。

    現実的にはランダム性とは不完全情報のことである。

    現実のランダム性を相手にしていない人には、この微妙な違いがわからない。〜中略〜

    真にランダムなシステムとは、本当にランダムで、予測できる要素をもっていない。カオスなシステムは完全に予測可能な性質を持つが、それがとてもわかりにくい。〜中略〜

    現実的には、これら二つが果たす役割はまったく違わない。私たちは二つを区別できないからだ。二つの違いは数学的なもので、現実的なものではない。

    お腹の大きい女性がいるとして、子供の性別は私にとって純粋にランダムだ。でも、その人がかかっているお医者さんにとってはランダムではない。もう超音波で判定しているかもしれない。

    現実には、ランダム性とは不完全情報のことである。〜中略〜

    結局、ランダム性とは不知、つまり知らないことにすぎない。世界はぼやけていて、ちょっと見ただけでは私たちはだまされてしまうのである。

    カーネマンのファスト&スロー に詳しいのだけど、人間は過去を振り返って因果関係を作り出す性質があるらしい。

    新しいアプリやサービスのアイデアで言うと、ある程度のとっちらかった状態で小さくトライ&エラーをするしか道はないので、不確実性と上手くつきあう方法を選択するのが得策だなと思った。

    よい不確実性とうまくつき合う部分、悪い不確実性に備える部分について、アプリ制作やブログにどう応用するかをうんうんと考えているので、また書いてみたい。

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    四作目のアプリが失敗した過程

    TweetMashを2ヶ月前ほどに出したけどびっくりするほどダメでした。フリーミアムモデルだけど、売れる以前に一日のダウンロード数が2とかだった。

    失敗談を書くのも価値があるかなと思ったので、当初の予想と現実の違いを書いてみる。

    自分が欲しいアプリではあった

    TweetMashは自分のTwitterタイムラインから、リンク記事付きのツイートだけを取得するアプリ。

    僕はGoogleReaderが閉鎖してからRSSを使うのが極端に減りました。そこで、普段から面白い記事はTwitter上から拾ってきているので、それを効率化するアプリが欲しかったわけです。

    リンク記事付きで、なおかつ元のメッセージもTwitterと同じように表示し、写真とか動画とか、Web記事以外はミュートできるような仕様にしました。

    iOS7からはSafariに共有リンクという似たような機能が出来たけど、写真とか動画とかをフィルタして、リストの表示もできる、共有リンク収集に特化したアプリが欲しかった。

    よく、自分がユーザになる製品を作れば、誰もほしがらないものを作ってしまうリスクは下げられると言いますが、一応この基準はクリアしてた。

    文字で書いても伝わりにくいので、簡単なデモ動画がこちら。

    他人も欲しがるか

    自分が欲しくても、他人も欲しがるものじゃないと売れないので、ここは常にブラックボックス。ただ、似たようなアプリもいろいろあったし、おそらく他人も欲しがるのではないかなあという期待はありました。

    しかし、そういうわけではなかった。

    デザインやもっと細かい機能とか突き詰めるといろいろ違いが出て、また違った結果が出る可能性はあったかもしれない。

    ただ、自分はシンプルな現在のTweetMashみたいなものが欲しかったので、そういうものへの需要はなかったということかも。

    ふと思ったのは、Twitterクライアントの中のさらに共有リンクを取ってくるというニッチなアプリはTODOアプリみたいなもので、10人いたら10通りの好みがある種類のアプリなのかもしれない。

    Twitterアプリ、TODOアプリ、ニュースアプリなど、細かく細分化されたニーズがあり、なおかつ開発者が作りたがるものは相当突き抜けた完成度でないと相当レッドオーシャンなのかな、ちょっと戦場を間違えたかなと思いました。

    でも、これは後づけでなので、結局リリースしてみないとわからないことだらけ。

    とりあえず最低限の機能でリリース

    今までの経験から、一番重要な機能だけに絞りシンプルな状態で早くリリースという事を心がけ、開発スタートから2週間ぐらいでストアに出した。

    そこから周りの人に見せたり、Twitterでフィードバックをもらおうと思ってて、この試み自体はよかった。いろいろ有益な意見や、考えてなかったナイスな機能をアドバイスもらえた。

    例えば、Retweet数でフィルタする機能などは意見をもらった後に凄くいいと思って後からつけた機能。結果的に、自分一人でアプリの内容をつめてバージョン1.0を出すより効率よく改善は出来たと。

    早く出して一番よかったのは、ここまでダウンロードされないとは思ってなかったので明確な数字が早くでたという部分。

    早めにシビアな現実が分かり、それでも続けたいか、だいたい自分が使うのに満足するレベルで終わらせるかの判断が分かりやすかった。

    まとめ

    4作目なので、コードも設計も今までで一番綺麗に書けてるなあとは思っているけど、ユーザには当然そんな事どうでもよく、ニーズがなければそれまでという悲しい結果に。

    オープンソースにしようかと思ったけど、有料で買ったアイコンとかの処理が面倒だなと考えてそのまま。自分が欲しくて、なおかつ他人がお金を出してもよいと思うアプリを作るのは難しいなあと思いました。


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    競合の開発者が動画作ってくれた

    この世の中にはイケメンがいるもんです。

    先日、Lisgoの競合であるReedeoというアプリの開発者から一通のメールが届きました。

    :Reedeoにタオル投入

    兄弟でLisgoと似たコンセプトのアプリを作る会社を作ったんだけど、残念ながら人気が出なかった。

    Lisgoを使ってみたけど、すごくよくできてる。

    Reedeoの紹介ビデオをすこし編集したらLisgo用として有益かもしれない。

    もし興味があればLisgo用に作り直すから教えてくれ。

    グッドラック

    David

    ちなみに、Reedeoの紹介ビデオはこちら。後で読むサービスであるPocketを耳で聞くアプリというコンセプトを上手く伝えていて、ユーザの問題を提示してから解決方法を示している。

    正直このアプリの事は初めてしったんだけど、メールを読んだ時は、「マジか、なんて太っ腹な人なんだ。確かにコンセプトは一緒だけど動画編集は面倒な作業なのに。」とびっくりした。

    もちろん、感謝の気持ちを伝えて、可能ならぜひお願いしますという旨の返信を送信した。

    Lisgoを作った後にこういうビデオを作りたかったけど、面倒だから結局作らなかったのを思い出しました。

    そうしたら、しばらく立って、

    やあ、出来たよ。気に入ってくれたらいいね。これがリンクで、こっちが元ファイルのダウンロードリンクだよ。

    Best of Luck with Lisgo

    という返信メールが届いた。

    これがLisgo用に作ってもらった動画。

    写真とかを変えるだけとか説明してたんだけど、動画を見てみるとかなりカスタマイズされている。。。

    ナレーションも新しく喋ってくれてるし、Lisgo特有の機能である読み上げ箇所のハイライト、自動で次の記事に進むとかもわざわざ説明してくれているではないですか。

    ここまでのものをわざわざ作ってくれるとは感動しました。

    という事で、これに答えるにはランディングページもリニューアルせねばならんと思い、ビデオが映えるように僕も作り直して感謝のメールを送りました。Voicepaperを流用したから結構楽にはできたんだけど。

    これが昔のランディングページ。

    スクリーンショット 2013-12-16 18.25.23

    こっちが新しいランディングページ。http://lisgo.org/
    (Lisgoは日本語含め10カ国語の音声にも対応してます)

    スクリーンショット 2013-12-17 21.00.05

    競合同士ってどうしても、潰すぞオラ、こっちが先に新機能出すぞコラ、みたいになるもんだと思うんですが、開発終了後とはいえここまでGiveの精神の人と出会い、イケメンとはなにかを教えて頂きました。


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    iOSの自動継続課金での注意事項

    Marco.orgで非常に興味深い記事が書かれていたので紹介してみる。これは自動継続課金をiOSアプリで検討している開発者は必見の記事だと思う。

    Why I Don’t Recommend Auto-Renewable Subscriptions, Even If Apple Lets Your App Use Them

    結論からいうと、Appleの自動継続課金システムの問題でユーザを混乱させてしまう状況が発生するから、許可されたとしてもマニュアルの継続課金を使ったほうがよいという内容。

    このMarcoさんの記事によると、最近はサービス系のアプリにも少しずつAppleが自動継続課金を許可し始めている動きがあると書いている。

    ※SaaS系のアプリは自動継続課金を使おうとすると大抵リジェクトされる。

    僕としては、自動継続課金がSaaS系でも使えるようになったら嬉しい事ですよねと思ってたんだけど、この記事では、問題がたくさん発生するからやめた方がいいというスタンスです。

    説得力あって興味深い情報だと思うのでポイントを紹介したい。原文はもっと詳しいので、興味があれば原文を。

    前提知識として、MarcoさんのInstapaperではマニュアルの継続課金、ニューススタンドの雑誌系アプリThe Magazineでは自動継続課金が使われてます。

    解約ボタンをアプリ側で作れない

    開発者が自動継続課金を解約する機能をアプリ内で作れない。ユーザはiOSの設定画面の分かりにくい部分にあるところまで行ってキャンセルしないといけない。

    簡単に解約できない事から、混乱したユーザから怒りの星1レビューやサポートメールに苦労することになる。

    購入時のUX問題

    ユーザが自動継続課金を購入した時、”share your information with the publisher”のメッセージが出てきて、サービス系のアプリで購入するユーザを混乱させる。

    これは雑誌系アプリ用に作られたからの仕様なんですが、サービス系のアプリで情報を取得したくなくてもこのポップが出る事を避けられないんですよね。。

    アプリ内課金系の細かなUXは、ダイアログが少しでも変だとユーザが不安になるので凄く気を使うのだが、ここはサポートメールで質問いっぱいきそう。

    また、ユーザが購入をリストアする時、リストアボタンを押さずに購入ボタンを押すと「もうすでに購入してます」メッセージが出る。

    しかし、それがアプリ側ではエラー通知となり、すでに購入済みかエラーかの確認ができない。

    (ここはかなりクリティカルだと思ったけど、僕は実際にテストしてないので詳しくは分からない。)

    自動継続課金がいつ終わるか分からない

    ユーザが自動継続設定でオフにした場合、それを知らせるAPIがない。購読は現在の期間中は続くけど、実際に終了するまでいつ終わるかが分からず、マニュアルで終わらせる事もできない。

    無料ボーナスとかはできない

    レビューアなどにプロモコード渡すように、課金部分を無料で提供できない。なにかバグがあった時に、お詫びにユーザに無料で数ヶ月分使ってもらうなどができない。

    これはアプリ内課金でもそうなので、いつも困りますね。マニュアルの継続課金を使うと自由に開発者側が操作できるので本当に便利です。

    自動継続課金のメリット

    自動継続を忘れたユーザからお金が入り続ける。しかし、ユーザとの長期的な関係を考えるとよろしいモデルではない。むしろ、解約がシンプルにできないで混乱させる事のデメリットが大きい。

    ちなみに、ずっと使ってないのに月額課金を払い続けるユーザにはサービス側が警告して解約させようという意見もあります。

    というのも、たまたま忘れててお金を自動で払い続けてしまった場合、サービス側に落ち度がなくユーザの責任だったとしても、「くそう忘れてた!解約だ!」となり、サービス側への印象が悪くなってる事が多々あると思う。

    逆に、サービス側が親切に知らせてくれてた場合、ユーザから感謝されて、印象はよくなるという話です。

    これは利益が下がる可能性が多いにあるため、勇気ある決断が必要ですが、ユーザ目線でいいと思った。

    詳しくはこの記事。
    Do the Right Thing (and fight the Zombies)

    あとは、Webでの継続課金にはPaypalではなくStripeを使えと書いているけど、Stripeってまだ日本では使えないと聞いた。はやく使えるようになってほしい。。

    さて、ここまでがブログ記事の紹介で、最後に自分が最近思っている事を書いてみる。

    モバイル・タブレット時代のSaaS系課金問題

    最近Uberとかイーコマース系のアプリで、アプリ内でクレジットカードを登録して、そこを介して購入するというアプリが増えている。

    でも、これは物質的なものを提供している性質だからOKのようです。デジタルやSaaS系のようなタイプだと、Appleのアプリ内課金を使わないとリジェクトされるのがルールだと僕は認識している。

    このへんの解釈が変化している可能性もあるので、詳しい人がいれば指摘してもらいたい。

    で、これからはPCからモバイルやタブレットにどんどん移行していくので、従来のSaaS系のWebアプリを提供している人達にとって、iOSの課金システムの不便さは大きな問題なんですね。

    PCで完結するならStripeとかPaypalとかクレジットカードを使えばいいけど、そもそもPCは使わずにアプリのみで入ってくる人がどんどん増えている。

    この時、iOSアプリで継続課金の仕組みを導入しようとすると今回のMarcoさんのブログで書かれているような不便があり、ここはiOS7でも特に変更はされなかった。

    Appleのビジネスモデルはデバイスからの収益が大きい。アプリ側の料金は低くてシンプルなほうが都合がよく、アップデート課金やSaaS系アプリへの課金システムに力をいれる動機が低いのが問題を複雑にしているなと思う。

    圧倒的ユーザがAndroidに移行したら誰も気にしなくなるかもしれないけど、僕はiOSが好きなのでいい方向にいかないかなと。

    参考

    SaaS系サービスがiPhoneアプリで月額課金を実装する時に直面する、アップルのマニュアルに書いてないルール

    上記は2013年1月の記事ですが、申し訳ないことに、この当時の内容が今でも同じかは分からないです。というのも、Marcoさんの記事にもあるように、継続課金系のルールはドキュメントに明記されてない部分も多く、曖昧で流動的だからです。

    Instapaper作者が立ち上げたメディア、The Magazineというニューススタンドアプリの収益が公開された


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    ソフトウェアが世界を変えている

    BALAJI SRINIVASANのSoftware Is Reorganizing the Worldという記事が面白すぎた。

    ソフトウェアやクラウドの普及により、コミュニティ、国のありかた、人々の移動、移民、新しいサービスや生活スタイルが、現在進行形でどのように変わっているかという内容。

    もう、最近読んだ記事のなかでピカイチの面白さ。素晴らしい。新規事業のアイデアを考えている人にもオススメ。

    全部紹介していたら長過ぎて疲れてしまうので、クラウドとスマートフォンの普及により、物理的なサービスがどうデジタル化されていっているかの話に絞ってみる。

    ソフトウェアが世界を飲み込む

    Software is eathing the worldという話は、ネットスケープを作ったマークアンドリーセンが話して、とても話題になった言葉。今回のBalajiさんの話は、このアイデアを掘り下げつつ、実際に起こっている事例の紹介やリンクがたくさん紹介されてる。

    僕が最初にこのアイデアを聞いた時は、そうか、確かにいろんな事がソフトウェアでデジタル化されてるもんな。会計とか財務処理とか、昔は紙や人力でやってたものがどんどんデジタルサービス化されていくのか。と単純なイメージを持っていた。

    なので、「でも、物理的にデジタル化できないものはそうはいかないよな。。」と最初は思ったのです。

    しかし、最近は、自分の家を他人の宿泊場所として貸し出すAirbnb、タクシーを楽チンに呼べるUberなど、物理的な商品だと思われていたものにどんどんソフトウェアによるサービスが進出している。

    こういう事例を見ていると、「あれ、待てよ。ソフトウェアが世界を支配するとはこういう事なのか。あれれ。」と考え直した。

    この時、確かにソフトウェアが物理的なものやサービスにどんどん進出して、モバイルの普及と共にイノベーションが起きているというのはなんとなく理解できたんだけど、物理的なものとデジタル化できるもの、この二つの組み合わせがはっきりと分かっていなかった。

    でも、今回のBalajiさんの記事でスッキリしました。

    物理的な商品がデジタル化できない時、インターフェイスがデジタル化する

    テクノロジーの未来はロケーションベースのアプリではなく、地理的状況を重要ではなくすることらしい。

    しかし、すべてがモバイルになり、ポータブルになる事はできない。移動、インフラ、食事、衣服などはどうなんだろうという疑問に対して、「インターフェイスがデジタル化する」という分かりやすい説明をしている。

    例えば、アメリカでは車を所有する割合が減っていて、タクシー配送サービスのUberや、相乗りサービスのLyft以外にも、車のシェアサービスがどんどん増えているようです。

    車をオンデマンドでレンタルできるサービスがどんどん増えていっている事によって、物理的なものを所有することから、オンデマンドな世界にどんどん世界が移り変わっている。

    この記事の面白いところは、物理的な商品やサービスが、どんどんデジタル化されたり、オンデマンド化されてる事例がたくさん乗っているところ。

    Food as a Serviceとかファッションをレンタルするサービス、自転車のシェアの移動系など様々なサービスのインターフェイスがデジタル化されてる。

    財布のインターフェイスもデジタル化されてきてる。

    ドアの鍵も。

    新しいアイデアは無数にありそう

    クラウドとスマートフォンの普及により、様々な物理サービスのインターフェイスをデジタル化するトレンドが世界的に起こっているようだ。

    物理的な所有をなくし、シェアするというアイデア自体は以前からあったと思うけど、その体験をスマートフォンやクラウドを使ってデジタル化する事のメリットは凄く大きい。

    日本でも、いろいろなサービスのインターフェイスをデジタル化すると利便性が高まるものがたくさんあると思う。特に、東京という世界でも人口が密集していて、なおかつインターネットの速度が高速な都市でこそ可能なアイデアとか。

    プログラミングしてると、すべてテクノロジーだけで解決できるアイデアを考えて、無意識に物理的な要素が侵入してくるサービスを却下しちゃいがちなんだけど、これはいかんなと思いました。

    まあ、リアルな部分が絡んでくると、デジタルだけの時に比べて初期コストもかかるしスケールも簡単ではないのだけど、デジタルオンリーの分野はあらかたやりつくされていて競争も激しく、物理的な部分を組み合わせた分野のほうが開拓地が広がってそうです。

    逆にいうと、今までデジタル化とは関係ないと思っていた分野でも、デジタル化に適応できないサービスは衰退してしまう可能性が。

    インターネットの普及はほんの始まりにすぎず、スマートフォンとクラウドが普及してきた今からが、ソフトウェア革命の本番なのかもしれません。

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    Yコンビネーター主催のイベントに参加してから、「たたかう」と「にげる」について考えるようになったという話 (Balajiの講演”Silicon Valley’s Ultimate Exit”が訳されてる面白い記事)


    *家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら


    KindleのVoiceOverでながら聞き

    KindleのVoiceOverが今年の5月にiOSアプリで使用できるようになった。これは僕のiPhoneでのながら聞き読書生活に衝撃を与える出来事で、素晴らしいアップデートだった。

    そして、iOS7から、iOSのVoiceOver設定で高品質版というものが使えるようになり、これで音質がよくなった。だいぶ前から開発者だから知ってたけど、iOS7が正式リリースするまで守秘義務で言えなかったのです。

    もう使いまくっているんだけど、KindleのVoiceOverの素晴らしさについて書きたい。

    家事作業の時間が退屈で死ぬ、ジョギングも続かん

    まず、なんで、ながら聞きに興味をもったかというとこれ。

    一人暮らししてるんだけど、毎日、食器洗い、洗濯物を干す、洗濯物をたたむ、掃除機をかける、など、退屈なルーチンワークがエンドレスにやってくる。

    さらに、毎日のジョギングや筋トレも同じように退屈である。どこかへの移動中も退屈だ。

    この時、同じ音楽を聞いてもすぐ飽きるし、Podcastやラジオも面白いのは限られてるしタマがたりない。大きな問題だった。

    しかし、ソファーに座った時は、インターネットしたり、いろいろやりたい事とバッティングするので、結構、本を読むだけの時間はちゃんと作らないと厳しい。

    というわけで、退屈な家事作業やジョギングや筋トレを退屈だと思わないようにしたいなと思ってVoicepaperというアプリを作った。

    簡単に説明すると、中古で買った本を自炊して、OCRでテキスト化して、それをVoicepaperで、家事作業したり、運動したり、歩いている時に聞いていたのです。

    自炊作業がくそめんどい

    しかし、大きな問題がありまして、それは当然ながら、本を自炊して、そっからテキスト化するのがくそめんどいということ。

    さらに、Amazonで中古本を買って読んだら売るということができないため、ばかすか本を買ってたら結構お金かかってしまう。

    LisgoでWeb記事聞いても、たいして面白い記事は多くないからすぐ終わっちゃう。TweetMashつくって、かなり面白いWeb記事をほいほい見つける事ができるようになったけど、それでも限界はある。

    そもそも、やっぱりWeb記事と面白い本を比べると、本の内容のほうが聞いてて面白いし、すぐに終わったりしない。

    でも、自炊作業がめんどい。

    そこで、KindleのVoiceoverです。すでに電子書籍化してるし、Kindle版だと値段も若干安い。

    たまに対応してないのもあるので、Kindleの無料サンプル版をiPhoneに送信して試すのがおすすめ。

    Kindleの本がながら聞きできて、目でも読める

    重要なのは、目で読みたい時は目で読めて、ルーチンワークしてて退屈だけど、目で読めないって時は耳でながら聞きできるということです。

    これが、Kindleのボイスオーバーならできる!

    さらに、Kindleの電子書籍本は世界でも一番タマがそろっていると思うし、英語の本だとほとんど読みたい新刊が全部Kindle化されて発売されてる!

    やり方の説明としては、まず、iOSのアクセシビリティの設定に行き、ボイスオーバーのショートカットをトリプルタップにするのがおすすめ。

    そして、Kindleを開いてボイスオーバーを使いたい時に、トリプルタップで切り替えて、そこから、二本指で上に画面をスワイプすると、ずっと止まらずに全ての文字を読み上げ続けてくれる。ページも自動で変わる。

    二本指で画面をタップすると、一時停止、再生ができる。

    さて、ここで大問題なのが、ボイスオーバーはiOSのオーディオプレイヤーを使っているわけじゃないので、ヘッドフォンでコントロールできないということ。

    Voicepaperだと長押しで早送りできたり、イヤフォンで操作できたりできるんだが、できない。。

    まあ、しょうがない。この不便さも、Kindleの書籍がさくっと買えて、すぐに読み始められる利便性があるので我慢して使っている。

    ちなみに、AccSellの中根さんに教えてもらったんだけど、カバーケースをiPhoneの画面をふたする形式のものを使うと、ポケットにいれながらボイスオーバー再生し続けると聞いて、さっそくそういう形式の買ったらいい感じになりました!

    日本語のデモ動画はこちら。

    音質は慣れた

    肝心のテキストスピーチの音質に関してなんだけど、最初聞いた時は、「いやあ、これはダメっすわ。僕は使わないっすわ。」と思ってた。

    ところが、毎日のルーチンワーク時に退屈すぎるのと、その時に面白い本が聞けたら逆に楽しくなるので、続けていると、慣れてくるんですね。これが。

    まあ、これはLisgoやVoicepaperの時の音質も、最初はダメだなこれと思ってたけど、しばらくすると全然慣れていったのに似てる。

    方言みたいなもんで、聞きづらかったものが、ずっと聞いていると慣れてくる感じ。

    ちなみに、iOS7の設定で高音質版を使うと品質がよくなります。
    iOSの 設定 => 一般 => アクセシビリティ => VoiceOver => 言語と方言 => 日本語 => 高品質を230MB程度でダウンロード

    自動音声の質に関して、個人的な感想は日本語だとこんな順位。
    EvernoteのClearlyの音質 (Web経由) >> LisgoやVoicepaper >= iOS7のボイスオーバー(高品質版)

    英語だとこんな感じ。
    EvernoteのClearlyの音質 (Web経由) >> LisgoやVoicepaper >> iOS7のボイスオーバー(高品質版)

    しかし、最初に慣れた音質によって個人差があるので、好みもあると思う。

    Kindle WhisperSync for Voiceに関して

    実は、KindleはAudibleというオーディオブック会社を以前に買収していて、Kindleで読んでいるページと、Audibleで聞いているページを、クラウド経由で同期してくれるというサービスをやってる。

    これは僕も、なんども使ってみたんですが、どうも同期が速攻でサクサクされないからダメだった。

    特に、オーディオブックで音声を聞いていて、わからない単語が出たらすぐにテキストを読みたいっていうことしたいのだけど、これがなかなか同期してくれなかったり不安定で使えなかった。

    やっぱ、同時にハイライトするとか、常に画面上で朗読中の部分をテキスト表示してくれないと困る。

    その点、KindleをVoiceOverで聞くと、ハイライトはないものの、同じページは表示されているので、わからない単語があれば、使いやすいKindleの英和辞典がすぐに使える。

    まあ、Audibleで購入したオーディオブックは人間が朗読しているから完璧ではあるんだけど、目で読みたい時にすぐに移行しにくい、WhisperSync for Voiceも同期がうまくいかなかったというので続かなかった。

    あと、Audibleも買うと高いし。(KindleとAudibleどちらも買うと割引してくれる場合もあるが)

    これがWhispersync for Voiceの動画。

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