カテゴリー: 未分類

誰も欲しがらないかもという恐怖

先日、弥生会計やFreeeをサポート、爆速で会計入力できる青色申告アプリTaxnoteをリリースしましたという記事を書いたら、想像以上に反響があった。

これは確定申告の時期的なものもあると思うけど、作っている最中は常に”そこまで需要はないかも..”という恐怖との戦いだったので、ニーズがありそうでよかったです。

いつもなにかアプリを作る時は、実際にコード書き始める前に需要があるか少しでも把握できないか考える。

それはもちろん時間かけて作っても誰も欲しがらなかったというリスクを避けたいからに他ならないのであるが、結果的に、今回もほとんど何も分からず作ってリリースすることになった。

時間と効果のバランスでいろいろ選択肢を試したけど、結局リリースまでにほぼ何もわからなかったという過程を書いてみる。

コンセプトページで需要リサーチを検討

まず、去年自分が青色申告するようになって、日々の仕訳入力を素早くできるアプリが欲しくなったのです。

青色申告の本を読みあさったり、流行のクラウド会計や既存の会計ソフトの動向とかを研究して、ニーズもありそうだなと作る気持ちになったのが12月の頃。

ただ、自分が本当に今すぐ欲しいというのは最低限のスタートとしても、自分以外の人でどれだけの数の人が欲しがるかはわからない。

よく新製品を出す前にランディングページだけ作ってそれの反響で作るかどうか決めるとか、ターゲットユーザにお金を払う価値があるか聞いてある程度いけそうだったら作り始めるという、需要がないものを作るリスクを下げるリーンスタートアップ的な手法がある。

これは、一見、夢のような手法だ。

ただ、あれはやろうと思ったら結構難しくて、明確なイメージを聞く相手に持ってもらえるかが重要で、そういうサイト作成や調査のコストをかけても曖昧な情報しか得られない場合が多い。

あと、アプリやサービスのタイプによっても違ってきて、ターゲットユーザとすぐ会えるとか、BtoBですでに代替サービスを使っているところに流れ込むなどの場合にやりやすいと思う。

作る前に顧客が獲得できたらしいOptimizelyのような場合もあると思うけど、もし作る前にニーズを調査したい場合、動画付きのランディングページを作るとか、LaunchRockとかで作ってそれをターゲットの人達に見えるところに拡散しないといけない。

その時になんとも反応がない場合、そのサイトがダメなのか、ターゲットユーザに見られてないのか、アプリのニーズがないのかの判断がまた難しい。さらに、どの数字がリアルなのかの判断も難しい。

これは、なんかアイデアを思いついたらすぐ作るのがいいと言っているわけではなくて、もちろん今回もコードを書く前に、ユーザとなりそうな人に直接意見を聞いたり、自分が本当に欲しいかいろいろなソフトやアプリを研究して、どこに絞るべきかまではコード書く前に時間をかけた。

ただ、どれぐらいの人数の人が欲しがるかは以前としてわからないなと。

ということで、今回は、最も重要な部分に絞ったものを作って、ストアにリリースして、リアルな反応を見た方が時間帯効果が高いと思って作る事にした。

開発ブログを立ち上げる

今年に入ってから開発を始めたんだけど、作ってもニーズがないかもと思いながら作るのは怖い。

TweetMashの時とか、作ってみたものの毎日のダウンロード数が1とかで特に反響もなく自信を喪失した過去がフラッシュバックしてガクブル状態。

技術的な勉強とか他の目的があればそれほど気にしなかったのだけど、お金を払ってもらえる価値のあるアプリを作るというのが目的だったので、自分でコントロールできない予測不可能な部分はどうしてもリスク。

これに対する一番よい対処策は、やっぱり重要な部分に絞って早くリリースすることにつきると思う。

それに加え、なにか新しい事をしたかったので、作る過程を公開する開発日誌ブログを毎日書くことにした。

今回は開発初日からほぼ毎日やった作業を記録してました

そこでTaxnoteのコンセプトを書いておいて、読んだ人で興味がある人はリリース時にお知らせするからメアド登録してねみたいなボックスを作っておいたのだが、それを登録してくれた人は5人ぐらいで、あまり反応はなかった。。

今でもコツコツと書いているけど、あれはマーケティングというより自分の自己満足で続けている感じだ。最近は一応1日に50PVとか行く時もあるけど、まあそんなもんです。

でも、このブログもなんも記事書いてない時の平均は150〜200PVぐらいなので、そこまで悪くはないのかもしれない。

というわけで、ブログ記事を書いても、Twitterでこういうアプリを作っているとか毎日書いてても特にそんなに反響もなく、リリースしたら分かるのかなあと考えながら作ってた。

ちなみに、開発を始める前に、こんな会計アプリはどうだろうという、アイデアだけを書くというブログも書いてたけど、そっちも対して反響はなく、まったくニーズがあるかは不明であった。

あれは白色申告・青色申告どっちを選ぶべき?みたいな、一般的な記事も混ぜて工夫してたのだが。。

リリースされて分かったこと

AppStoreでTaxnoteがリリースされた日に、よし、ランディングページを作るほど時間はかけれないけど、少なくともブログ記事を書こうと思って、出来るだけアプリの良さが伝わるように書いてみた。

これについては、この日の開発日誌ブログの、Taxnoteが一日で承認されたので、短時間で出来る効果の高い宣伝方法で悩んでVine使ったに詳しく書いてる。

そしたら、思った以上に記事がTweetされて非常に嬉しかった。

なんというか、毎日、平常運転なモチベーションで開発してたけど、アプリの事を呟いてくれたり、アプリ内の意見ボックスから要望とかがくると、一気にアドレナリンが駆け巡り、アプリ開発のモチベーションが沸騰する感じです。

そういう意味で、普段の開発モチベーションが圧倒的に上がるので、早くリリースしてよかった。

この記事で、Vineの動画がわかりやすいという意見をたくさんもらったので、実際に動いている動画が乗っていたのがでかいと思う。

そこで思う疑問が、このブログ記事と同じような内容を、アプリが完成する前に書くことができたか?ということ。

まあ、物理的にはできる。ようは、見た目だけ動いているUIを作って、動画とブログ記事でコンセプトを伝えればよいわけです。

しかし、開発期間の間に、あのUIはああでもない、こうでもないと、実際にコーディングしながら変化していったのもあり、その間に動くものを周りの人に見せてアドバイスをもとにコネコネと作っていた。

だから、コーディングを始める前に同じようなブログ記事を書く事は実質できなかったのです。

せいぜい、青色申告の記帳業務が大変で、クラウド会計使っても現金部分は手動だからiPhoneでサクサクやりたい。といった部分を文字で説明するぐらい。

アプリの見た目より、実際に長く使い続けたくなる操作性に力をいれて作るので、やはり動いているものがないと厳しいと思う。なおかつ、すでに使えるものが出来たという状況もプラスだし。

その他、アプリを使ってくれている人がいるか、アップグレードまでしてくれる人の割合などの数字、要望や使いかってのフィードバックなど、一番大事なこともわかった。これはリリースしないと絶対分からない部分。

ついでに、会計ソフトの会社からいくつか連絡がもらえて、これもリリースして反響がなければ無理だった。

こうすればめちゃくちゃ使いやすい会計アプリが出来るというビジョンはあるので、フィードバックを参考にしながらTaxnoteを素晴らしいアプリにしたい。

結論

今回の記事はただの一例で、作る前に需要をリサーチできる部分と、リリースしないと分からない部分は状況によって変わってくる。

リリースまでの開発コストがどのぐらいかによっても、バランスも変わる。

それを前提としたうえで、今後新しいものを作る時は、リリースする前に分かる限界を意識して、ここまできたらもう作り始めてリリースを早めたほうがよいという見極めを大事にしたいです。

Taxnoteの場合は、「作ろうかな、どうしようかな、でも誰も欲しがらなかったら開発時間が無駄になるしな。。」と悩んでる期間が無駄に長かった気がする。その間に青色申告の知識は増えてたけど。TweetMashが悲惨だっただけにビビリが。。

関連記事

TweetMashが見事にこけた


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

弥生会計、freee、MFクラウドをサポート、爆速入力の青色申告・白色申告アプリ Taxnote

青色申告・白色申告の帳簿入力を劇的に楽にするiPhone/iPadアプリ、TaxnoteがAppStoreでリリースされました。めでたい。

このアプリは、エクセル、弥生会計、Freeeなどで確定申告する人が、日々の記帳業務をiPhoneから爆速で入力できるアプリです。

日々の経費を楽に記録したいというフリーランス・個人事業主の人向けに作りました。

Taxnoteをダウンロード

なぜ作ったか?

去年、僕自身がアプリ開発をする個人事業主として青色申告を始めたのがきっかけ。

申告に関する本読みあさり、近くの青色申告会に入会して帳簿作りのイロハを教えてもらった。

弥生会計などの会計ソフトを使えば、最終的に必要な帳簿の作成は凄く簡単になるけど、一番大変なのは日々の記帳業務。

確定申告に必要な決算書は会計ソフトが自動的に作ってくれるけど、それを作成するもとになる、日々の経費をコツコツ記入していく作業が相当めんどくさい。

そこで、時代の最先端を体験しようと思った僕は、話題のクラウド会計Freeeを使うことにしました。

Freeeでも現金入力は手動

Freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計は、クレジットカードを登録すれば明細を自動的にダウンロードし、それを元に、日付と金額、予測した勘定科目などをセットしてくれる。

これでかなり楽になる。

ところがどっこい、当然のごとく、現金で支払った分はレシートを持って帰って、その都度ペチペチと入力しないといけないのです。

Freee公式アプリが最近出たのでさっそく使ってみたのだけど、Taxnoteの快適さに慣れるとさすがに戻れない。

支払い後、素早く経費を入力できるアプリ

損益計算書、貸借対照表などの決算書作成は弥生会計やFreeeなどのソフトが自動で作成してくれる。

しかし、日々の支出入力を、お金を払ったその場で、iPhoneから素早く入力できるアプリが必要だとなった。

iPhoneでやるのは仕分け入力だけでいいのです。

仕分け入力したデータを弥生会計やFreeeなどのソフトにエクスポートすれば、決算書までの細かいところを任せられる。

AppStoreにある会計系のアプリをほぼ全て試したけど、操作性の面でどれも満足できなかった。勘定科目の選択はすぐ覚えるので、レシート自動認識など逆に時間のかかる動作は早い段階で却下となりました。

日々発生する仕分け入力をお金を支払ったその場で、iPhoneを使って爆速で入力できるアプリ。この体験だけに照準を絞った最高のUIを作ってやると思い立ち、何度も何度もUIを作っては捨てを繰り返しました。

どれだけ爆速か?

このアプリは仕分け入力を、片手で、最小タップ数で、爆速で出来るということを追求しました。

上記の動画で入力された項目は、

日付: 本日の日付 (自動)
支払い方法: 現金 (初期設定。普通用金などへの切り替えも素早く可能)
勘定科目: “接待交際費”を選択
摘要: “飲食代”を選択 (次の画面で摘要欄をタップすれば手動入力も可能)
金額: 支払い金額を入力

これらの項目のうち、毎回選択が必ず必要となるのは勘定科目と摘要と金額3つ。

この動作をアプリ起動からスムーズにすること、見た目でフローが分かりやすくすること、何度もタップするボタンは押しやすい位置に配置すること、文字表現の分かりやすさ、フォントやボタンの大きさなどなど、操作性を何度も詰めに詰めて作り込みました。

支出を入力すると仕訳帳が出来ます

Taxnoteでは、ユーザが仕分け入力すると複式簿記で記帳された仕分け帳が自動的に出来上がります。

Excelや会計ソフトにエクスポート

アプリで入力した仕分けデータは、エクセルや弥生会計、やよいの青色申告、Freee、MFクラウドなどでインポートできる形式で、メール経由でエクスポートできます。

期間指定も自由にできる。

会計の知識は必要か?

入力時に必要な勘定科目の選択は慣れれば難しくない。よくある支出の勘定科目を何にするか覚えれば後はルーチンワークです。

ただ、青色申告の帳簿付けが完全に初心者の人の場合、弥生会計使おうが、Freeeやマネーフォワードを使おうが最初のスタートダッシュは厳しいと思う。

その意味では、Taxnoteは記帳業務をすごく楽にするアプリではあるけど、青色申告や確定申告で必要な仕分けの知識がなくても使えるアプリではないのです。

ただ、一度、青色申告のやり方を本で勉強するなり、相談するなりして、日々の経費を記帳するやり方さえ覚えれば、Taxnoteは強力な便利アプリになるはずです。

気に入ったら購入してもらう形式

無料版ではそれぞれの月に15件までの仕分け入力と、CSV形式(Excel)でのエクスポートのみとなってる。アップグレードすると月の制限がなくなり、弥生会計やFreee形式でエクスポートできるようになる。

気に入ってもらった人に、一度限りでのアップグレードをしてもらうフリーミアム形式。iPhone・iPad版どちらかで購入すると片方のデバイスは無料でアップグレードできます。

レシートを持ち帰ってポチポチと会計ソフトやエクセルに仕分け入力するのは苦痛だし手間なので、その時間を買うという意味で、気に入ったら購入してもらえると嬉しい。

*更新 Taxnoteは進化してます

この記事を書いたのは2014年2月なので動画も古いバージョンですが、現在のTaxnoteはさらに使いやすくなっています。

飲食店経営の方、美容師さん、税理士さん、フリーライター、エンジニアなど、個人、法人問わず、幅広い方に使ってもらい、ストアのレビューも700以上で平均4.5の評価をもらっています。(2015年6月時点)

一年以上コツコツとアップデートしているので、今ではカレンダーから日付選択、パスコードロック、損益表の出力、電卓など、シンプルさを守りつつ、さらに便利になりました。よければ使ってみてください。

Taxnoteをダウンロード

確定申告する方は、こちらの記事も参考になるかも。
フリーランスの確定申告対策をぶっちゃける – 青色申告と白色申告、手間も考慮した本当の費用対効果


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

ツール系アプリの価格モデル

先日Twitterを眺めてたら、iOSアプリの価格モデルについての記事を発見。

Paid, Paymium or Freemium?

“有料アプリは死んでないよ”みたいなツイートと共にリンクが貼られてたと記憶してる。Clearを作った会社が書いたいい記事。

価格設定というのはその製品の戦略やポジションそのものを決定するとても重要な要素。僕もいつも悩む。

最近のアプリは有料アプリがどんどん売れなくなってきていて、売り上げランキングでもアプリ内課金がほとんどを占めてる。

アプリ戦国時代のご時世、いったいどうすればいいのだろうか?

価格モデルで悩んでいる人に参考になりそうなので、かんたんに要約して、それをネタにいろいろ書いてみたい。

ゲーム系でもある程度は参考にはなるかもしれませんが、主にプロダクト系のアプリを前提にしています。

有料アプリ

いろいろ言われてるが有料アプリモデルはまだ死んでない。特にツール系アプリでブランド力がある場合、有料モデルはまだまだよい選択肢だ。

有料アプリはセール時のプロモ効果があるだけでなく、ブランド力があるならとても上手く機能する。

有料モデルはここ18ヶ月減少傾向であり、アップストアの36%が有料アプリで。Distimoによると、アップストアの売り上げの4%しか占めてない。

しかし、無料アプリばかりになった今、有料アプリのプレミアム感が相対的に向上して有料モデルが復活するかもしれない。

僕は有料モデルが以前みたいに売れるようになる可能性は低いと思う。

アプリの数が増えれば増えるほど全体の質は落ちるので、ダウンロードして数秒で削除するようなハズレを引く可能性が高い状況でユーザが気軽にお金をさくっと払ってくれるとは思えない。

返金システムが変わるか、動画紹介やプロモーション方法が大きく進化するか、Appleが有料モデルをプッシュするような仕掛けに本腰をいれない限り厳しい。

でも、Appleのビジネスモデルはデバイスからの売り上げが大きく占めており、アプリの平均価格が低いほうがiPhoneは売れやすいので、構造的な問題であまり大きく期待できないのが現状。

製品の質とブランド力に自信がある場合は有料買い切りモデルがマッチするけど、問題は、製品の質とブランド力があるデベロッパーはほんの一握りだという点。

例えば、TweetBot3などは有料アプリが下火だからといってフリーミアムにしてたら逆効果だっただろうというのが分かりやすい。

さらに、有料買い切りモデルを成功させるにはプロモーションでも高いレベルが要求され、間違いなく数年前より敷居は高い。

僕の中では、有料買い切りモデルでの敷居が高い部分は、最初のリリース時から完成度と、それに備えたプロモーションを用意しないといけなくて、売れるかわからないアプリだと失敗した時のリスクが高いところだと思っています。

まとめると、ブランド力があり、すでにマーケットがあると確信があり、バージョン1.0に力を入れられるなら、有料買い切りはよい選択肢。

ランキングでも有利で、セールというブーストも使える。

あと、長く使い続けるかはわからないけど、一度触ってみたいという魅力があるアプリにも向いていると思う。

フリーミアム

※ここでのフリーミアムの定義は、無料でダウンロードできて、アプリ内課金を売るモデル。

たくさんの開発者が単純にフリーミアムに移行して、なにも得ずに失敗しているのを見てきた。

無料でユーザに与えすぎたか、与えすぎなかったかが原因であり、経験と知識がないとフリーミアムで成功するのはとても難しい。

アップストアでの売り上げの92%はフリーミアムのアプリからだが、実は、アップストア全体でフリーミアムのアプリが占める割合は11%だ。

一日に5,000万円以上稼ぐフリーミアムモデルのアプリもあるが、成功しているのはほんの僅かであり、それらの会社は新規ユーザを獲得するための戦略や、分析などにたくさんの投資をしている。

フリーミアムで収益をあげるにはたくさんのダウンロード数が必要。小さなデペロッパがフリーミアムタイトルで、長期的な収益をあげるのはとても難しい。フリーミアムモデルを選択する時は十分慎重にならないといけない。

ここで指摘しているように、フリーミアムモデルの場合、どこまで無料で、どこからアップグレードにするかの選択がとてもとても難しい。

ちなみに、アップストアのルールでフリートライアルは禁止されているので、Webサービスでよくある、30日間無料で、その後続けるには有料というモデルが使えない。

なので、Dropboxみたいな無料でも使えるアプリにしないといけないので、そこの境目を考えるのが難しい。

ちなみに、”みんなが使いたがる機能は無料にし、一部のハードコアユーザだけ必要な機能に課金する”というフリーミアムモデルの考え方が参考になるかも。これも、時と場合によるから難しいけど。

このモデルのメリットは、たくさんの人にとりあえずアプリを試してもらえるところ。

有料買い切り+無料バージョンの二つ出す場合と同じじゃないかと思うかもしれないけど、二つに分けるより、アプリ内ですぐアップグレードできるほうがシンプルで待ち時間もないので、ユーザフレンドリです。

気に入った人にだけ購入してもらうので、アプリに自信があれば、価格も買い切りモデルより高めに設定しやすいとも思う。

上手くいっている参考事例がPaperですが、このモデルを採用した時点で、ある程度のネガティブフィードバックは避けられない運命にもあります。

他のデメリットは、買い切りモデルと違い、有料版をプロモコードで配ることができない。

これは、なにかトラブルがあった時にお詫びとしてユーザにプロモコードを渡したり、レビューアに無料のプロモコードで試してもらうことができない。

他には、セールでダウンロード数を増やす無料のプロモーション活動が使えない。

ちなみに、元記事にある、”フリーミアムで利益を出すにはダウンロード数が相当数必要で難しい”という指摘は正しくないと思う。

ダウンロード数がそこまでいかなくても、コンバージョン率 x 一人当たりの単価が高い場合もあるからだ。

僕は有料買い切りモデルと無料+アップグレードは有料のフリーミアムモデル、どちらもやったことがあるけど、基本的にフリーミアムが多いです。

一番の理由は、新しいアイデアのアプリを早くリリースして、反応を聞きながらアップデートしていくという開発方法がフリーミアム型に合っているからです。

ペイミアム

元記事の最後では、「有料で最初に購入してもらい、一年ごとのアップグレードや追加機能にアプリ内課金で購入してもらう」という、ペイミアムというモデルも最後に紹介されている。

このモデルは今後可能性があるので、試していきたいと書かれているけど、これは有料買い切りアプリを売るよりハードルが高そうである。

まず、有料アップグレード機能をAppleが採用しないと無理だし、有料で購入したアプリでさらにアプリ内課金があると、アップストアの一般的なユーザ心理としてはかなり難しいと思う。

ただ、新しいモデルにチャレンジする先行者は常に応援するつもりなので、難しいだろうなと思いつつも、ぜひ頑張って頂きたいです。

僕も、あれが上手くいったとか失敗したとか、出来る限り試した事をブログでシェアしていきたい。

長くなってきたけど、価格モデルをネタにもうちょっと書いてみたい。

広告型

カジュアルゲームでは広告型が多いけど、プロダクト系のアプリではあまり広告型はみない。

これは、プロダクト系のアプリでは広告が嫌われるという要素もあるけど、実は広告のマッチング率の話なんじゃないかと思う。

アプリ広告を専門にしている人に詳しく聞いた事があるんだけど、日本でアプリ広告にお金を出す会社は、同じくアプリで儲かっているアプリゲーム会社が多い。

となると、似たようなユーザからの流入が期待できるカジュアルゲームのほうが、ユーザがその広告をタップしてくれる確率が高くて、その後、広告先のアプリをインストールしてくれる確率が高い。

例えば、毎日使う便利系のアプリに広告を出しても、それを使うユーザはゲームアプリに興味がない人が多く、タップしてくれる人はほとんどいなくて、広告単価が下がって、いれても儲からないというサイクルになるらしい。

ただ、モバイルでのEコマースが今後広がり、マッチング率も高まったら、プロダクト系のアプリを使っている人でも興味のある広告が出やすくなる可能性が高まるので、今後は変わる可能性がありそうです。

例えば、Gunosyというレコメンド系のニュースアプリにコマース系の広告出したら、もの凄い結果がよかったと最近聞いて、ほほーそうなんですかとびっくりした。

広告モデルはシンプルにユーザからお金を貰うモデルに比べ、サービス側が誰を優先するかのインセンティブが広告主とユーザと二分されてしまう難しいデメリットはあるけど、WebだとStackOverFlowというプログラムのQ&Aサイトみたいに、プログラマの求人広告がウザくない感じで上手く表示されているケースもありますね。

また、地味に重要なポイントとして、個人開発者がアプリを出す時に有料アプリは心理的ハードルが高いけど、広告モデルだと気軽にアップストアに出してみようかなとなりやすいこと。

ちなみに、サブスクリプション型とか、iOS7から可能になった買い切り => フリーミアムというやり方や、買い切り型とフリーミアム同時に出すとか、まだいろいろあるけど、さすがに長くなりすぎるので止めようと思う。

一番重要なこと

価格モデルを決定するうえで最も重要なのは、ユーザを知ることだと言われます。

自分のアプリを使ってくれる人はどういう人達なのか。さらにいえば、どういう人達に向けて売りたいか。

また、往々にして、実際にリリースする前に、この値段で払いますか?と聞いても無駄なことが多い。

人間は「喜んで払うよ」という人も、使った後に、「これは違うな、これじゃ払わないわ」となったり、「絶対払わないわ」と言っていた人が、「これはいいものだから払ったわ」となったりすることは日常茶飯事だし、自分もたくさんそういうことがある。

価格モデルには正解がないので悩ましいところです。

参考記事

discounted app upgrades suck
なぜか元記事のリンクが消えてたのでしょうがなくキャッシュ先。開発者が長年訴えてきた、有料アップグレード機能がなぜ最悪のユーザ体験に繋がるかの一読の価値ある文章。

How to Develop Your SaaS Pricing Model
SaaSを前提にしてるけど、価格設定の基本的な考え方は共通なので凄くいい。

ユーザーインタビューで製品にお金を払うか聞いても無駄な理由


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

起業家の選択の実証データ

先日、ジュンク堂に寄ったら、ワッサーマンの「The Founder’s Dilemmas」の邦訳本が並んでるではないですか。

起業家はどこで選択を誤るのか――スタートアップが必ず陥る9つのジレンマというタイトル。

スルーしかけるタイトルだった。

おお、こんなマニアックな本の翻訳本が出ているとはと思い、サラサラっと目次を読んでみたら、やっぱこの本は面白そうだ。

面白そうなんだけど、まだ読んでない。なんか教科書みたいに太いのと、値段が高いから買うのを顕著してしまったのだ。

ハーバードの教授が研究を元に執筆した本だから太いんだけど。

でも、一時間ぐらいあるThe Founder’s DilemmasのPodcastは昔聞いたので、それについて書いてみる。

たしかスタンフォードのPodcastだったはずなんだけど、どうも見つかったヤツは短いのしかない。

Joelが推薦してる

この本について知ったのは、Joel SpolskyがTwitterで薦めてたから。

ちなみに、Joelさんのブログ記事はかなり深くて好きだ。

文章も上手いのだけど、Joelさんがユニークなのには理由がある。

マイクロソフトという大企業で勤め、自己資本で受託会社、コンサル、自社サービスを作り、なおかつ、StackOverFlowが成功したため、資金調達での急成長を目指すスタートアップも実際にやってるので、それぞれの側面を語れるユニークな人なわけです。

YC主催のスタートアップスクールでの講演も期待通り面白かったし。

ちなみに、ブートストラップ(自己資金での起業) vs スタートアップ(投資を受けるやつ) というテーマは常にホットなトピックで、Rails作ったDHHとかが油をそそいて、よく、やんややんやとなる。

もちろん、この二つのメリット、デメリット、会社のコントロールを優先するか、大成功とスピードのジレンマもこの本では扱っているようです。

ファウンダのジレンマの授業が面白い

実は、以前聞いたファウンダのジレンマの授業の1時間分のトークは、Podcastで聞いた覚えがあるんだけど、これがめちゃくちゃ面白い。

短いバージョンしか見つからなかったけど、以下はリンク。

  • 創業は一人でするか共同創業者とするのがいいか。
  • 共同創業者と起業するなら、資本比率は5:5がいいのか、片方が決定権を持つぐらいなのがいいのか。
  • 自己資金でやるか、投資を受けてやるか。
  • 学校を卒業してすぐに起業するか、一度企業で勤めて経験をつんでからやるべきか。
  • こういう、スタートアップあるあるなジレンマの数々を、ケーススタディだけでなく、実証的な数字を元に語っている研究結果なので面白い。

    普通はその人個人の経験から、自分が選んだ道をもとに「こっちのほうがいい。なぜなら自分の経験から〜」と薦めてくる場合がほとんど。

    でも、ワッサーマン先生は、CEOがIPOした後に取締役会から追い出される確率は何%だとか、共同創業者と一緒に起業した場合、途中で分かれる確率は何%だとか、とにかく研究結果からなる数字を出してくる。

    具体例となるケーススタディも面白い、

    別に統計結果がどうだろうが、自分の選んだ道を行けばいいと思うけど、実際のデータを元にした話には価値があると思う。

    なぜかというと、人間は分かりやすかったり、感情に訴えやすいストーリーを聞いた時、どうしてもそれがマジョリティだと頭の中でインプットする。

    あと、成功における運の比重が大きい分野になるほど、実際の確率を見誤りやすい。

    例えば、Facebookを作って大金持ちになったザッカーバークがいるけど、似たような事を目指しても、もの凄く成功確率は低い。

    でも、大リーグで大活躍するダルビッシュみたいになるよりも、ザッカーバーグになるほうが可能性ありそうと感じるかもしれない。

    ブラックスワンによると、運の比重が大きい分野ほど、人間は実際の確率を判断するのに不自由になり、ダルビッシュになれる確率はある程度正確に見積もれるけど、ザッカーバークになると不自由になるらしい。

    もちろんザッカーバーグは凄い実力と頭脳を持ってこそで、あれは運だと言っているわけではなく、確率の見積もりの話なのです。

    だからいろんな反証の連続を数字と具体例で見せるこの本は面白いと思う。

    答えはないから自分で決断するしかない

    ワッサーマンの授業を見てよかったのが、こっちのほうがオススメだという答えを提案しているわけではなく、ジレンマとリアルな数字をマシンガンのように延々と話しているところ。

    「A案のメリットはこれで、デメリットはこうだ。一方、B案ではこれが解決するが、デメリットはこれだ。一般的にはこういうイメージだが、実際の数字はこうだ。」という形式。

    それを踏まえて、こういう情報と数々の事例が君たちの意思決定に役立つといいね、グッドラック!といったスタイルだった印象。

    この本を読んだら、似たようなジレンマで悩んでいる人はさらに悩むかもしれないけど、数々の反証を知る事はよりよい意思決定には繋がるかも。

    そのうえで決めた事は知らずに判断するよりいくらかよいだろうし。

    それをふまえ、統計データがどうであれ周りがなんと言おうと俺はこうだという、自分の納得する決断であれば素晴らしい。

    こういっちゃなんですが、最終的には理屈じゃなくて、好みで決めるべきだと思います。


    *家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

    勝者総取り世界の憂鬱

    またまたブラックスワンについて書いてみる。この本は凄く面白いからである。

    この本は人間の追認バイアス、大きな影響を及ぼす不確実性に関する事がテーマなんだけど、数年ぶりに読み返してみると、とても面白い章があった。

    それは上巻の第七章「希望の控えの間に暮らす」という章。

    ここでは、思想家、科学者、芸術家など、成功はほんの一部に集中し、成功する人は一握りしかいない分野で働く人の憂鬱を書いている。

    読み返した時、ここまで面白い章があったのかとびっくりした。

    アプリやWebは勝者が掛け金の大部分をかっさらう分野でありまして、数年前はそういうことをしてなかったからそこまで印象に残らなかったのかもしれない。

    そういうものをやる時の憂鬱がよく表現されていて、今読み返すと秀逸でした。

    ちなみに、著者のタレブ自身、ウォール街でクオンツをしていたのだが、その時の手法が10年にあるかないかの大暴落のほうにかけるというもの。

    その逆ばりの手法から、普段は周りから成績がよくないトレーダーとしてみられるので、こういうエッセイが書けたのかもしれない。

    かもしれないと書いたのは、人間は因果関係をすぐにでっちあげたがると口酸っぱく言っている本だからです。実証データがない限り大抵は思い込みの可能性が高い。

    話がそれた。

    勝者総取りの世界の憂鬱についてでした。

    まわりの冷たい目

    毎朝あなたは大学の研究室に行く。〜中略〜

    もちろんいい事なんかなかった。なんにも見つからなかった。時計の修理工ではないのだ。

    何も見つからなかった事にはとても価値がある。それも発見にいたる過程の一部だからだ。〜中略〜

    一方、あなたの義理の弟はウォール街企業の営業担当で、手数料をがっぽり稼いでいる。しかも、着実に、だ。〜中略〜

    休日はひどいことになる。家族の集まりで義理の弟に出くわすと、いつも自分の奥さんが間違いなくイライラしているのを感じる。

    彼女は一瞬、自分が負け犬と結婚してしまったんじゃないかと思い、それからやっと、あなたの仕事の仕組みを思い出す。 〜中略〜

    どうすればいいんだろう? 〜中略〜

    ヒッピーみたいな格好をして反抗すればいいんだろうか?

    芸術家ならそういうのもアリだろうが、科学者や勤め人だと難しい。あなたは行き詰まってしまう。

    まわりの冷たい目というのは、すぐに成果が出ないものに取り組む時はどうしても避けられないもので、スタミナが必要だと書いてる。

    ソフトウェアの世界だとリリースまで長い時間がかかるサービスもあるし、リーンな感じでアップデートを繰り返しても人気が出るまで時間がかかるものもある。

    そして、大抵は長い時間かけても結果がでなくて報われないのが普通。

    大成功か何も得られないかという、プラスの方向に突出した結果がいちどきに出る事のある仕事はたくさんある。

    使命感を持って没頭する類の仕事、たとえば地道にガンを治す薬を見つけるという難題に取り組んだり、人の世界の見方を変える本を書いたり。

    ちなみに、ブラックスワンでは、突出した成功はないけど着実な積み重ねが報われる”月並みの国”の世界と、大勢の敗者と、一部の突出した成功だけがある”果ての国”という概念がある。

    例として、歯医者や会計士など、一度に出来る量は限られているけど、確実に成果が出るのが月並みの国で、芸術家や俳優など、一部が総取りするのが果ての国。

    これを読んでいる時に思ったんだけど、こういう類の仕事はITの発展やグローバリゼーションが進むにつれ、増えていく一方なのではないでしょうか。

    コモディティ化した作業がどんどんロボットやソフトウェアに浸食されていくとすると、今より多くの人がますます果ての国の仕事を選ぶようになるかもしれない。

    現在は月並みの国の枠内でも、技術革新により、だんだんと格差が開き始めている業種もあると思った。

    結果より過程?

    スタートアップ系の記事でもよく出てくる、過程を愛するという話について。

    結果よりも過程が大事だという人もいる。でも、彼らが人類であるとすれば、あれは半分はウソだ。真実を全部語ってない。

    物書きは名声を求めて書くのではないとか、芸術家は芸術をやりたくて創作を行うだとか、ああいう活動はそれ自体が報いだとかよく聞くが、あれは半分ウソだ。

    たしかに、そういうことをやっていると、それだけでいつも満足できる。でも、だからといって芸術家たちが注目されたいと思ってないわけではないし、有名になったほうがいい思いが出来る事に変わりはない。

    これには反論できない。

    僕は自分が欲しいアプリを作ってて、もちろん過程が楽しいのは間違いないけど、ストアに出す限りは世間様に認められることを期待して開発するわけです。

    自分が使うからいいやと思ったとしても、売れなかったら惨めな気持ちになるし、負け犬呼ばわりされて枕を濡らす日々です。

    ヒュームのような力量のある哲学者でさえ、最高傑作を書評で罵倒されて、何週間も寝込んでしまったと書いてた。

    ヒュームも人間だったか。

    人間の本性と幸せ

    実証心理学の実験にもよく出ますが、人間は9年間で収入0円、次の一年で5000万円稼ぐよりも、10年に渡って500万円ずつ稼いだほうが幸せを感じるようです。

    最初の一年で5000万稼いで残りの9年で収入が0円でも、均等に稼いだほうがずっと幸せを感じる。

    いい気分の強さより、いい気分になった回数のほうにずっと強い影響を受ける。

    楽しく暮らすには小さな快楽を均等に分けたほうが胃に優しい。

    当然、果ての国の職業は胃に悪いですな。

    職業選択を安定重視で選んだとしても、人生はごくたまに起こる大きなジャンプが全体に強い影響を与える。

    問題はもちろん、私たちは結果が安定的には出ない環境で生きていることだ。黒い白鳥が人類の歴史の大部分を左右している。

    残念なことに、今の環境に合った正しい戦略は、私たちの体内で報酬を提供しないし、正のフィードバックも起こさない。

    過去に比べ、果ての国の事象が増えているのが現代社会。

    僕は技術革新が好きだけど、人間は隣の芝生を見て自分の幸福度を計測するので、収入、ネットでの影響力など、あらゆる部分で格差が可視化できるのが現代社会。

    Facebookを見ればリア充がまぶしく、不幸になるという研究結果があるらしいけど、ここで上手く折り合いをつけていくのは重要な問題かもしれない。

    ネットは人間を憂鬱にする部分もあるし、救う部分もあるので、救う部分を強化するサービスを作れば流行るかも。

    お仲間と敬意

    人間、一人じゃ生きていけないなんて陳腐な言い草かもしれないが、実際、自分で思っているよりも私たちには他人が必要なのだ。

    特に尊厳や敬意という点で必要なのである。

    実際、まわりから認められることなく、何か大きなことを成し遂げた人は歴史上ほとんどいない。〜中略〜

    黒い白鳥に左右される営みに手を出すなら、お仲間がいたほうがいいのである。

    これを読んでいる時、ポールグレアムのエッセイを思い出した。

    スタートアップでは、周りから無駄な事をやっていると思われ、蔑まされる辛い期間を耐え抜くスタミナが必要で、一人ではなかなか耐えきれず諦めてしまう。だから共同創業者がいたほうがいい。とかだった気がする。

    この章を読んだあとは、なかなか成果が出なくても努力している人には敬意を持とうと思った。敬意と言うとジョジョを思い出す。

    こうしたほうがいいんじゃないかとか、ついつい思ってしまうのが人間ではあるけれど、そんな些細な予測は当てにならないし。

    その営みの過程で何かを発見するという事が往々にしてあるし、全面的に応援するという姿勢が重要だと思ったので、うっかり忘れない限りそうしようと思う。

    ちなみに、著者のタレブが個人にオススメするのは、9割を月並みの国の仕事に割り当て、残りの1割ぐらいで果ての国の事象に割り当てるバーベル戦略というものなんですが。

    ただ、リスクテイカーである起業家に対しては敬意を持っていると、スタンフォードの授業に出ている動画で言ってた。

    失敗できる数が限られている個人としては最適戦略ではないけど、無数のソルジャーによって、社会にとっては大きな前進が起こる原動力になるかららしい。

    月並みの国と果ての国のパーセンテージをどのぐらいで割り当てるかは、その人の趣向やおかれている状況によっても変わってくる。

    関連リンク

    果ての国と月並みの国:橘玲 公式サイト

    果ての国と月並みの国と、スタートアップのスケール

    不確実性とは不完全情報のこと

    ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
    ナシーム・ニコラス・タレブ
    ダイヤモンド社
    売り上げランキング: 6,088

    *家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

    不確実性とは不完全情報のこと

    ブラックスワンという不確実性を扱った本があります。

    この本は人生で最も影響を受けた本といっても過言ではないので、最近もう一度読み返してみた。

    以前読んだのはこの本が発売した2009年の6月だと思うから、4年ぶりぐらいにしっかりともう一度読んだ。やっぱ素晴らしい本だった。

    4年前といえばサービスもアプリも作り始めてなかったし、プログラミングさえもやってなかった。

    単純にその頃は行動経済学とか歴史とか金融とか科学とか、そういう本を読むのが好きで、ブラックスワンはその中でも特に面白かったけど、今読むともっと面白かった。

    というのも、3年前ぐらいからプログラミング初めてWebサービスやらアプリを作るようになったのが大きいと思う。

    予測ができない事象の数々

    プログラミングする時は、将来どの程度まで開発を続けるか、どの程度までスケールするかが分からない中、なんとか変化に柔軟に対応できるようにしつつ、なおかつ目の前の効率とのバランスを考えながら設計を考えないといけない。

    機能の開発にどの程度の時間がかかるかも不確実で、あたらしいことをやる時は思ってもみなかった部分でハマって時間を食うということがよくあります。

    もっと分からないのは、どんなWebサービスやアプリがヒットするかどうか。後から説明をつけるのは簡単だけど、なにがどの程度ヒットするかの予測はほんとわからない。

    ブログ記事でも、どの記事がどの程度バズるかはわからなく、まさかあの記事があそこまで読まれる事になるとはという現象がよくあります。

    ここで重要なのは、ある程度予測できる部分と不確実で予測は不可能な部分、いろいろな事象があり、ブラックスワンという本はそこをもの凄く詳しく書いている。

    科学は大災害を予測できるか とか、最近ではシグナル&ノイズなど、予測系の本はいろいろあるけれど、これらの本は予測が難しい事象にどの程度まで挑めるかという内容でした。

    短期的には予測がある程度可能な事象と不確実で予測は不可能な事象の違いを詳しく説明し、それらをどう区別してつき合うかまでを描いた点でブラックスワンは別物で、そこがこの本を特別なものにしていると思う。

    不確実性とは不完全情報のこと

    僕もよくこの罠にハマるのですが、どうしても「正解」というもの、正しい道筋というものを求めがちな事がよくあります。

    アプリの設計なら、将来Webサービスまで拡大するかも、ソーシャル機能をつけるかも、月額課金に移行するかも、などなど、いろんな将来の可能性を見越して可能な限り柔軟な設計にしたいと。

    往々にして、柔軟性と目の前の開発効率がトレードオフになって悩む。さらにいうと、アプリ自体のシンプルさとのトレードオフにも悩む。

    いろんな拡張性を残したいという気持ちと、最小限の機能でシンプルなものを最初に作る時のトレードオフにも悩む。

    ああだこうだ悩みながら、現時点での最善の進め方はこれだなと決めて前に進むわけですが、やっぱ間違ってたという時も往々にあります。

    アプリのアイデアを考える時も、設計を考える時も、後から無駄だと思うような事はしたくない、可能な限り成功の精度を高めたいと思うのが人間の性です。

    不確実に見える事象にも実は法則性があり、本当はなにか正しいやり方があるのでないかと。

    そんなもやもや感を持っていたのですが、ブラックスワンではこう書かれています。

    現実的にはランダム性とは不完全情報のことである。

    現実のランダム性を相手にしていない人には、この微妙な違いがわからない。〜中略〜

    真にランダムなシステムとは、本当にランダムで、予測できる要素をもっていない。カオスなシステムは完全に予測可能な性質を持つが、それがとてもわかりにくい。〜中略〜

    現実的には、これら二つが果たす役割はまったく違わない。私たちは二つを区別できないからだ。二つの違いは数学的なもので、現実的なものではない。

    お腹の大きい女性がいるとして、子供の性別は私にとって純粋にランダムだ。でも、その人がかかっているお医者さんにとってはランダムではない。もう超音波で判定しているかもしれない。

    現実には、ランダム性とは不完全情報のことである。〜中略〜

    結局、ランダム性とは不知、つまり知らないことにすぎない。世界はぼやけていて、ちょっと見ただけでは私たちはだまされてしまうのである。

    カーネマンのファスト&スロー に詳しいのだけど、人間は過去を振り返って因果関係を作り出す性質があるらしい。

    新しいアプリやサービスのアイデアで言うと、ある程度のとっちらかった状態で小さくトライ&エラーをするしか道はないので、不確実性と上手くつきあう方法を選択するのが得策だなと思った。

    よい不確実性とうまくつき合う部分、悪い不確実性に備える部分について、アプリ制作やブログにどう応用するかをうんうんと考えているので、また書いてみたい。

    ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
    ナシーム・ニコラス・タレブ
    ダイヤモンド社
    売り上げランキング: 6,088

    *家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

    四作目のアプリが失敗した過程

    TweetMashを2ヶ月前ほどに出したけどびっくりするほどダメでした。フリーミアムモデルだけど、売れる以前に一日のダウンロード数が2とかだった。

    失敗談を書くのも価値があるかなと思ったので、当初の予想と現実の違いを書いてみる。

    自分が欲しいアプリではあった

    TweetMashは自分のTwitterタイムラインから、リンク記事付きのツイートだけを取得するアプリ。

    僕はGoogleReaderが閉鎖してからRSSを使うのが極端に減りました。そこで、普段から面白い記事はTwitter上から拾ってきているので、それを効率化するアプリが欲しかったわけです。

    リンク記事付きで、なおかつ元のメッセージもTwitterと同じように表示し、写真とか動画とか、Web記事以外はミュートできるような仕様にしました。

    iOS7からはSafariに共有リンクという似たような機能が出来たけど、写真とか動画とかをフィルタして、リストの表示もできる、共有リンク収集に特化したアプリが欲しかった。

    よく、自分がユーザになる製品を作れば、誰もほしがらないものを作ってしまうリスクは下げられると言いますが、一応この基準はクリアしてた。

    文字で書いても伝わりにくいので、簡単なデモ動画がこちら。

    他人も欲しがるか

    自分が欲しくても、他人も欲しがるものじゃないと売れないので、ここは常にブラックボックス。ただ、似たようなアプリもいろいろあったし、おそらく他人も欲しがるのではないかなあという期待はありました。

    しかし、そういうわけではなかった。

    デザインやもっと細かい機能とか突き詰めるといろいろ違いが出て、また違った結果が出る可能性はあったかもしれない。

    ただ、自分はシンプルな現在のTweetMashみたいなものが欲しかったので、そういうものへの需要はなかったということかも。

    ふと思ったのは、Twitterクライアントの中のさらに共有リンクを取ってくるというニッチなアプリはTODOアプリみたいなもので、10人いたら10通りの好みがある種類のアプリなのかもしれない。

    Twitterアプリ、TODOアプリ、ニュースアプリなど、細かく細分化されたニーズがあり、なおかつ開発者が作りたがるものは相当突き抜けた完成度でないと相当レッドオーシャンなのかな、ちょっと戦場を間違えたかなと思いました。

    でも、これは後づけでなので、結局リリースしてみないとわからないことだらけ。

    とりあえず最低限の機能でリリース

    今までの経験から、一番重要な機能だけに絞りシンプルな状態で早くリリースという事を心がけ、開発スタートから2週間ぐらいでストアに出した。

    そこから周りの人に見せたり、Twitterでフィードバックをもらおうと思ってて、この試み自体はよかった。いろいろ有益な意見や、考えてなかったナイスな機能をアドバイスもらえた。

    例えば、Retweet数でフィルタする機能などは意見をもらった後に凄くいいと思って後からつけた機能。結果的に、自分一人でアプリの内容をつめてバージョン1.0を出すより効率よく改善は出来たと。

    早く出して一番よかったのは、ここまでダウンロードされないとは思ってなかったので明確な数字が早くでたという部分。

    早めにシビアな現実が分かり、それでも続けたいか、だいたい自分が使うのに満足するレベルで終わらせるかの判断が分かりやすかった。

    まとめ

    4作目なので、コードも設計も今までで一番綺麗に書けてるなあとは思っているけど、ユーザには当然そんな事どうでもよく、ニーズがなければそれまでという悲しい結果に。

    オープンソースにしようかと思ったけど、有料で買ったアイコンとかの処理が面倒だなと考えてそのまま。自分が欲しくて、なおかつ他人がお金を出してもよいと思うアプリを作るのは難しいなあと思いました。


    *家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

    競合の開発者が動画作ってくれた

    この世の中にはイケメンがいるもんです。

    先日、Lisgoの競合であるReedeoというアプリの開発者から一通のメールが届きました。

    :Reedeoにタオル投入

    兄弟でLisgoと似たコンセプトのアプリを作る会社を作ったんだけど、残念ながら人気が出なかった。

    Lisgoを使ってみたけど、すごくよくできてる。

    Reedeoの紹介ビデオをすこし編集したらLisgo用として有益かもしれない。

    もし興味があればLisgo用に作り直すから教えてくれ。

    グッドラック

    David

    ちなみに、Reedeoの紹介ビデオはこちら。後で読むサービスであるPocketを耳で聞くアプリというコンセプトを上手く伝えていて、ユーザの問題を提示してから解決方法を示している。

    正直このアプリの事は初めてしったんだけど、メールを読んだ時は、「マジか、なんて太っ腹な人なんだ。確かにコンセプトは一緒だけど動画編集は面倒な作業なのに。」とびっくりした。

    もちろん、感謝の気持ちを伝えて、可能ならぜひお願いしますという旨の返信を送信した。

    Lisgoを作った後にこういうビデオを作りたかったけど、面倒だから結局作らなかったのを思い出しました。

    そうしたら、しばらく立って、

    やあ、出来たよ。気に入ってくれたらいいね。これがリンクで、こっちが元ファイルのダウンロードリンクだよ。

    Best of Luck with Lisgo

    という返信メールが届いた。

    これがLisgo用に作ってもらった動画。

    写真とかを変えるだけとか説明してたんだけど、動画を見てみるとかなりカスタマイズされている。。。

    ナレーションも新しく喋ってくれてるし、Lisgo特有の機能である読み上げ箇所のハイライト、自動で次の記事に進むとかもわざわざ説明してくれているではないですか。

    ここまでのものをわざわざ作ってくれるとは感動しました。

    という事で、これに答えるにはランディングページもリニューアルせねばならんと思い、ビデオが映えるように僕も作り直して感謝のメールを送りました。Voicepaperを流用したから結構楽にはできたんだけど。

    これが昔のランディングページ。

    スクリーンショット 2013-12-16 18.25.23

    こっちが新しいランディングページ。http://lisgo.org/
    (Lisgoは日本語含め10カ国語の音声にも対応してます)

    スクリーンショット 2013-12-17 21.00.05

    競合同士ってどうしても、潰すぞオラ、こっちが先に新機能出すぞコラ、みたいになるもんだと思うんですが、開発終了後とはいえここまでGiveの精神の人と出会い、イケメンとはなにかを教えて頂きました。


    *家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

    Copyright © 2025 うめのんブログ

    Theme by Anders NorenUp ↑