最近、Yコンビネーターがやっている、How to start a startupっていう動画授業が良質コンテンツなので暇な時に見てる。

その中でも、How to Build Products Users Loveが特に素晴らしかった!個人的ににすごく刺さった2つの事があって、その2つは繋がっている。この2つを聞いただけでこの授業は自分にとって価値があって素晴らしかった。

KevinさんはWufooというサービスを作って、今はYCのパートナー。Wufooは最初にYCに投資されたあと、ほぼ増資などもせず、黒字経営でそのまま進んで最終的に会社を売却したらしい。なので、お金を使わずどう製品をよくするかの話がてんこ盛り。

ユーザーヘルプは投資対効果が凄く高い

まず1つ目に、マーケティングに力を入れる前に、ユーザに製品の使い方を知ってもらうように改善するほうが遥かに投資対効果が高いと力説していた。

これは本当にその通りだと思うし、頭の中では分かってはいたのだけど、自分を振り返ってみると徹底されていなかったことに気づかされました。

これ、言われると当たり前だよなと思うんだけど、なぜかヘルプを分かりやすくしたり、ユーザの初回起動時の分かりやすさ、UXなどを細かく詰めていくのは地味すぎて後回しのまま放置になりがち。

どうしても効果が分かりやすそうな宣伝ページを作ったり、マーケティングに時間を使ってしまいがちなんです。地味で効果がわかりにくいものはやる気がでないんで。

僕はこの事が頭の中に十分入っていたと思ってたんですよ。バッチリ俺はわかってるぜと。

アプリを出す時は最初から宣伝ページ作る事なんてしないし、せいぜいアプリをこんな理由で作って、リリースしたよと最初にブログの文章を書くぐらい。

最初はアプリをユーザのフィードバックを聞きながらコツコツ改良していって、もう成熟してきたかなと思った段階でようやくランディングページを作るという手順。

そういうわけで最近作ったTaxnoteランディングページはリリースから半年以上たってからです。

しかし、このビデオを見た時、まだまだヘルプや、初回起動時のUXを改善できる余地はあって、そっちに時間とったほうが効果的なのに、先に宣伝ページ作る事に時間を作ったことに気づいた。

なぜUXの改善の余地があるかというと、アプリの基本的な用途や、重要なステップの部分で同じような質問がいまだにくるから。

例えば、似たような質問が1週間に3回来るということは、わざわざ質問しないでわからず離脱している人がその10倍の30人ぐらいはいるはずなんです。

機能を増やすほど、プロダクト理解とのギャップが広がる

なぜプロダクトを分かりやすく、直感的にしなければならないか。それは製品の使い方やよさを理解するのに時間がかかるほど潜在的なユーザが離脱してしまうからです。

これも当然ながらわかってるぜと思ってたんですが、24:30ぐらいに説明されているこのグラフを見て、「ああ、まだまだ意識が低かった。。」とうなだれました。

このグラフの右側までいくとすべての機能の知識になって、ここまで理解しているのは作った本人ぐらいです。

Currentというところがユーザの製品に対する知識で、すべてとまではいかないまでも、Targetあたりまでは理解してもらうように製品を作らないといけない。

そして、アプリに機能を追加するたびに、アプリのオプション項目を増やすたびに、この横幅は広がり、ユーザの製品に対する実際の理解と、作り手が望んでいる理解のギャップが広がっていきます。

だからこそ、KevinさんのWufooでは、すべてのエンジニアがカスタマーサポートに対応し、ユーザがサポートに連絡する前にヘルプで問題を解決できるよう、ヘルプの質を常にあげるため相当な時間と手間をかけたようです。

ただ、ヘルプは簡潔なほうが望ましい

さて、ここで、じゃあヘルプを充実させるぜと意気込んだとしても、また落とし穴にハマることになる。

なぜかというと、ヘルプの項目が多すぎると、またユーザは目次を見るだけで疲れて離脱するうえ、自分に必要な情報にたどり着くまで時間がかかって、これもまた離脱する。

なので、理想としては、UIや画面を見ただけでユーザが理解できるようなモノに改良していき、どうしても説明が必要な時はヘルプで解説する。その時、ヘルプは直感的にわかるよう動画があるとなおよい。

もちろん、開発者向けのAPIサービスとか、ヘルプの量が多くならざるをえない製品と、コンシューマ向けのシンプルなアプリでは事情が違ってくるので、ヘルプの項目を一つ増やす時も、ケースバイケースでアプリの機能を一つ増やす時と同じぐらい慎重に考えないといけないですね。

ヘルプや説明を出すタイミングも、必要な時に、必要な場所で出すのが理想。アプリでよくあるのが、初回起動時にそれぞれのボタンの説明を半透明のオーバーレイで解説するパターンだけど、あれは読まずに消す人が大半ではないだろか。

なので、解説やヘルプは一気に出しても読まれないので、順番に一回のメッセージで一つだけの説明といった具合がいいと思う。例えば、ユーザがしばらくアプリを使っていて、それでもある特定の機能に気づかれていないという時だけメッセージを出すとか。

Taxnoteで実践してみた

この動画を見ても、「ふーん」で終わるといけないのでさっそく実践してみました。ヘルプのUIはいろいろ凝ることもできるけど、簡単にすぐ出来る方法として単純にアラートビューを使った。

まず、初回起動時にこのアプリはなんなのかを完結に説明。このアプリで貸借対照表や決算書作成までできますか?などの質問がよく来ていたので、最初に仕分け入力に特化したアプリですよと説明し、この後、青色申告の方、白色申告の方とそれぞれの使い方を完結に説明する。

Taxnoteで入力した仕分けを、Excel、弥生会計、freeeなどに取り込む説明はとても重要なので、ひとつひとつ動画付きのヘルプを作った。そして、データ出力画面を初めて開いた時に動画ヘルプがあるよとアピール。画面右上にも出力専用のヘルプに飛ぶボタンを設置。

損益表画面の上のボタンでは年別、月別などを切り替えられるのだけど、しばらく使った後も一度もそのボタンをタップしてない人だけに、この機能使ってみてくださいねというメッセージを表示。

これは一例だけど、ヘルプページを見なくても、アプリを使っているとその時に応じて解説が出る動きを何度も考えながらいろいろ改善してみました。

難しいのが、あまりメッセージを表示しすぎてもウザくなるというところ。初めて起動した人がすぐアプリを使えるような動線にしつつ、最小限のメッセージは表示するバランスが難しい。

さらにいうと、やっぱりメッセージを表示しても反射的に読まずに閉じる人は多いので、もっと時間を使う価値あると判断した時に直感的にわかるUIを実装するのが理想です。

ちなみに効果はあったようで、操作方法やデータ出力など、キモとなる機能についての質問はかなり減りました。製品を理解してもらえずついたレビューも減った気がする。

今、本当にヘルプに力を入れるべきか

さて、ここまでヘルプに力を入れる重要性を書いてきておいて、一気に逆のことをいうわけではないのですが、製品開発において時間というリソースは有限なわけです。

なので、この記事を読んで、よーしヘルプ充実させてユーザの離脱率下げるぞと思ったとしても、今の段階で、本当にそこの優先順位を上げるかを考えるのもすごく重要です。

例えば、Taxnoteはリリースしてからこつこつ改良して半年以上たったけど、これが初回リリースの時点ならデータ出力の動画も作らないだろうし、細かいヘルプの動線などは後回しにします。まったくやらないわけではないけど、最低限レベル。

なぜかというと、リリース直後は、ユーザが本当にアプリに価値を見出してくれるかどうかの検証がもっとも大事だし、UIや画面遷移も後からどんどん変わる可能性が高いんです。この時点でそこまでヘルプの充実に時間を使っても投資対効果が低くて、もっと先に優先すべきことがたくさんある。

他のケースとしては、アプリの性質として、ほぼ直感的に迷わないレベルのものなど。

現時点で88点ぐらい理解されているぐらい簡単なものを93点にあげようと努力するのもそこまで費用対効果が高くない。そのレベルなら宣伝とかマーケティングに力いれたほうがいいかもしれません。

参考例

初めて使ったサービスでも、すごく分かりやすい説明や動画などがありストレスが少なかったものとして、アプリ開発者向けのサービスであるParseやCrashlyticsがある。

特にCrashlyticsは導入時にいろいろと面倒なので、そこでなんとかハマらないようにとあの手この手で説明を試みてたので、参考にしてみてください。

アプリだとMoneyTreeのUXデザイナの人が、最初の銀行登録時までのコンバージョンを上げるために何度も何度も改善を重ねてたので参考になるかも。

最近触ったアプリでは、メルカリで初めて出品する時の説明の動線が秀逸だと思った。商品を発送するのはやっぱり手間なので、そこの解説をナイスタイミングで説明してました。

ちなみに、How to Build Products Users Loveの動画は、いかにユーザサポートが製品開発の中心となるかを説明した動画ではピカイチ。CtoCやSaaSなどユーザに課金が発生するタイプのサービスで、サポートが重要なサービスはとても参考になると思う。

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