以前、カーネマン先生のファスト&スローを読んだのですが、この本は素晴らしいので、アプリのUI設計やマーケティングに関わる人にぜひオススメです。

本で学んだ事は多岐にわたるけど、とりあえずUI設計に役立つ事を書いてみたい。

認知リソースのHP

以前から気にしてたけど、この本を読んでさらに気をつけるようにしているのが、アプリのUIを考える時の、認知リソースです。

僕は認知リソースのHP(ヒットポイント)と勝手に呼んでる。

ようは、認知リソースのHPが100あるとしたら、アプリを操作する時にだんだんと無意識にそのHPゲージが削られていくことを意識してます。

例えば、モバイルアプリ使っている時は、ノートパソコンを使っている時と違い、外出中で周りに騒音があったり、近くに魅力的な姉ちゃんのポスターが貼ってあったりと、認知HPがどんどん削られる機会が多い。

アプリをダウンロードするまでの、スクショでも削られる。ストアのスクショの中で説明する文字が多すぎると、インストールする前にユーザの認知HPが削られていく。

アプリを開いて、チュートリアルが長いと、いらいらして認知HPが削られる。

ボタンやメッセージの長さが長いと読むたびに認知HPが削られる。

ローディングに1秒かかるごとにHPが減っていく。

この認知HPが0になったら、めんどくせえとなって、ユーザはアプリを閉じてしまう。なので、離脱率と認知HPゲージは密接に関わってくる。

操作を学習しても削られるHP

自分のアプリの操作方法をユーザが学習してくれた後も削られる。

以前の僕は、少し学習コストが高い操作だけど、一度覚えてしまえばこっちのほうがはるかに使いやすいとか、一般的なUIと少し違うけど慣れると価値があるとか、そういう時の敷居を低く見積もってました。

いったん学習すればOKだろうと思うことも、ファスト&スロー読んだ後に、もう少し慎重になりました。絶対やらないというわけでなく、かなり慎重になった。

つまり、ユーザが学習してくれたUIでも、その他のアプリを使った後、自分のアプリに戻ってきた時に認知HPが削られる。

「あれ、そうそう、このアプリの操作はこうだったよな」とユーザは無意識に頭のスイッチを切り替えたとしても、二つの異なるUI操作をアプリによって頻繁に頭で切り替えるのは認知リソースを食うので、離脱率が高まる。

ファスト&スローでは、人間が無意識に行動できる直感的な動きと、論理的に考えないといけない動きをする時の仕組みを詳しく書いてる。

直感的な動きから外れると論理的に考えないといけないシステム2が動きだし、これにはとてもエネルギーが必要で、人間は出来る限り節約しようとする。

この認知リソースを出来るだけ節約してくれるアプリじゃないと、すぐに閉じられて、二度と開いてくれないかもしれない。

ということで、本を読んでからは、一般的な動き、メッセージ、名称、それらをいっそう意識するようになってきて、少し変化を加える時は流れの中での認知HPの推定ゲージを考えるようになってきた。

新しいUIや操作方法にチャレンジする時は、この事を十分考えて、それでもやる価値があるのかどうかを何度も考えるとか。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら