投稿者: umemoto

AppStoreの自動継続定額課金の新ルールについて (Auto-Renewable-Subscriptions)

今日、仕事終わってUnderTheRadorっていうポッドキャスト聴いてたら、AppStoreの定額課金のルールが変わるとかいう話題になり、「いやいや、またまた。。聞き間違いだろ。。」と思って調べたら、本当だった。

僕は、Lisgoで月額課金しようと思って、メディア系ではないからという理由でリジェクトされた過去がありまして、その時のいろいろ調べたら、AppStoreでの自動継続課金は雑誌とかメディア系じゃないと使えないという不可思議なルールがあることを知りました。

その時の記事がこちら。(今はあまり読む価値はないので飛ばしてもOK。)
iPhoneの月額課金で直面するマニュアルにないルール

かいつまんで説明すると、メディア系でないサービスは、AppStoreのIDを使った自動継続課金は使えず、自分でIDを管理する仕組みをサーバ側で用意して、わざわざユーザにログインしてもらって、なおかつ自動更新は使えないという悲しい状況でした。

そして、そのルールがなぜか適用されない大手のSaaS系サービスが自動継続課金を使っている例もあり(Evernoteとか)、アプリ開発者はアップルの曖昧なルールに混乱したり、なにも知らずにお金と時間をかけて開発したあとリジェクトされるとか、理不尽な出来事が世界中で起こっていたとは思います。

そして、ついに、やっと、SaaS系のサービスでも自動継続課金が使えるようになったようだ。今回こそは、アップルが大々的に発表しているから間違いない。ブラボー。。長かった。。

とりあえず、Appleの開発者向けのドキュメントが更新されていたので、全部読んだ。
What’s New in Subscriptions (英語)

ネット上でもこの件についての記事がちらほらあるけど、記事では取り上げられてないレベルの詳しいことがこのドキュメントからわかる。きになる人は必見。ここを読むのが一番確実で詳しいので、ビジネスサイドの人はぜひ読もう。

あと、こちらの記事も重要な情報がわかる。
App Storeに加えられる3つの改善――林信行がフィル・シラーにインタビュー

ちょっとかぶるけど、DaringFireballの記事も読むと完璧。(英語)
The New App Store: Subscription Pricing, Faster Approvals, and Search Ads

読むのが面倒だという人のために、重要事項を自動継続定額課金にしぼってまとめてみる。

以下、自動定額課金の新ルールのまとめ。

SaaS系サービス、ゲーム系(MMOなど)で自動継続課金が可能に

今年の秋から適用。クラウド機能やコンテンツをクラウドに保存したりするサービス系のアプリ、サーバ側の継続的なサービス提供が必要なアプリでは、自動継続課金が可能に。AppStoreのカテゴリジャンルの制限はなし。

アプリの種類によっては、自動継続課金に適さないとしてリジェクトされる場合もあり。つまり、どういうアプリがOKかはまだはっきりとわからない。クラウド機能を持っているアプリへの定額サービスならまずOKっぽいけど、まったくクラウド機能のない単品アプリで自動継続課金を申請してもリジェクトされそうな予感。

クラウド機能はないけど、継続的にアップデートし続けるタイプのアプリについて(Paperとか)、PC版ソフトのように、年に一回ずつ継続課金というようなビジネスはできるのが不明。

定額課金の2年目から利益がStore売上の70%から85%にアップ

これは大きな変更。ただし、定額課金をしていたユーザが途中で退会して、その後、二ヶ月以内に再入会しないと、85%への道のりの計算は最初からやり直しになるようです。

すでに自動継続課金を提供しているアプリの場合、過去に遡って計算するらしいので、すぐにでも85%の分配が適用されるとか。(林さんのインタビュー記事2ページ目参照)

これは定額課金サービスをしているビジネスにとっては大きい。今まで、Webでやってる場合はクレジットカード会社に払う分でよかったのに、AppStoreの課金システム使うだけで30%も取られ続けてきたわけです。

このため、ほとんどのサービスにとって、AppStoreでの流入はでかいけど、できればユーザはWebから契約してもらってApple税を回避したいという気持ちがあった。

Apple側が、それにたいして、こういうプランならどうでしょうかといった動きをついにしてきたと。しかし、2ヶ月退会したら、また最初から一年経たないと85%にはならないので、まだまだ、Webでクレジットカード登録してもらったほうが事業者側としては有利だけど。まあ、アップルが課金システム用意してくれてるから、そこはしょうがないとEvernoteの創業者も以前この話をしていましたね。

ちなみに、iPhoneとAndroidとWebで定額サービスを展開している場合、アップルの課金システムとは別個になるから、それはそれでややこしい仕組みになるんだけど。

定額課金の価格帯をあとから柔軟に変更できる

今年の秋から適用。例えば、月額600円で売っていた課金体系が、途中から月額800円になった場合、以前の値段の時に入会したユーザには月額600円のまま課金が継続される仕組みができ、後から課金体系を変更しやすくなった。

定額課金の価格体系はあまり変更しにくい部分だけど、以前の価格帯で入会した人をカバーするプログラミングは自力でやるとどんどん複雑になるので、これをAppleがまるっとやってくれる仕組みを用意してくれるのはありがたい。

また、定額課金のプランが、Basic (月額500円)、Premium (月額1000円)とかあったとして、ユーザが途中でBasicからPremiumにアップグレードしたり、反対にPremiumからBasicにダウングレードしたりと、開発者が用意した複数のプランを、ユーザが後から変更することが可能に。ちなみに、このBasicとかはただの例なので、名前や価格帯はなんでもよい。

国ごとに、定額課金の料金を変更できる

今年の秋から適用。国ごとに課金価格を変更できる。定額課金の料金体系は、普通の料金体系よりさらに細かく刻むことが可能のようです。注意点としては、デフォルトの料金よりある国で価格を下げた場合、その国の税金とアップル税の計算方法が変わるらしい。これはドキュメントに書いていたけど、細かすぎて詳細はわからない。きになる方は、公式ドキュメントのTerritory Pricing and Expanded Subscription Price Tiersの部分を。

今年の秋から適用?

公式のドキュメントを読むと、今年の秋から適用と書かれている項目が多い。このへん、次のiOSのバージョンアップしてから適用されると考えたほうがいいのか、次の新しいiOSでしか使えないSDKの機能を使うからと考えるべきなのかは、ちょっと悩ましいところです。

とりあえず、アプリ開発者の方々はWWDCの発表を見て、方向性がわかるまでなんもしないのがよいかもしれません。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

ナシーム・タレブが成功の定義を大学の卒業スピーチで語ってた

ブラックスワンを書いたタレブが、自身の地元レバノン、ベイルートの大学での卒業スピーチで人生の成功について語ってた。

こういうスピーチでは、基本的に社会的に成功した人たちが呼ばれて、「人生で成功する秘訣」みたいなものを語るのが多いと思うけど、タレブが本当の成功とはなにかというのを、タレブらしく語ってた。

こんな感じ。

英語

“For I have a single definition of success: you look in the mirror every evening, and wonder if you disappoint the person you were at 18, right before the age when people start getting corrupted by life. Let him or her be the only judge; not your reputation, not your wealth, not your standing in the community, not the decorations on your lapel. If you do not feel ashamed, you are successful. All other definitions of success are modern constructions; fragile modern constructions.”

日本語訳

“私にとって成功の定義は一つです。毎晩、鏡をみた時、18歳の時の自分が今の自分を見てがっかりするかどうかを自分に問うことです。人生に侵食され始める前の自分だけに、それを判断させるのです。あなたの評判でもなく、あなたが金持ちかどうかでもなく、コミュニティーにおけるあなたの地位でもなく、あなたの胸につけられた装飾品によってでもないのです。18歳の時のあなたが、今のあなたを恥じていなければ、あなたは成功している。他のすべての成功の定義は、現代社会の、脆弱な現代社会の創作物でしかないのです。”

全文のスクリプトは、このサイトで読める

ちなみに、倫理面でタレブがよくいうのは、「詐欺師をを見た時、それを詐欺だと言わなければ、君自身も詐欺師となる。」というセリフ。そういう意味では、成功したら大金もらえて失敗したら税金で救済される投資銀行に対しては容赦ない反面、自分でリスクをとる起業家にはいつもエールを送ってる。

しかし、このスピーチ、いいこと言ってて、そこそこ歓声も上がってるんだけど、画面の後ろでスマホをいじっている人がすべてを台無しにしてる感が半端ない。(笑)


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

愛着のわくプロダクトを作るには

愛着のわく製品を作るにはどうしたらいいんだろうか。と、ルンバちゃん、ルンバちゃんとか言ってるおかんを見ながら、ふと思いました。

というのも、一ヶ月ほど前、あれは母の日の一週間前ぐらいになった頃、うちのおかんが突然こんなことを頻繁に呟くようになった。

「ルンバ欲しいわあ。。ルンバってたぶん便利やと思う。。」

ちょっと前から実家に一時帰郷してて、食費とか払っているものの、家事とかでお世話になっている手前、目に見えないプレッシャーを感じ、新古品の安めのルンバを母の日のプレゼントにした。

結果的におかんは毎日ルンバを使いたおしていて、最近の買ったもので一番役にたっていると言われてとてもよかったんだけど、どうも、ルンバは愛着を持つなにかがあるらしい。

「あれ、ルンバちゃん、止まってる。。」とか、「ルンバちゃん、ちゃんと見とかな座礁する時があるから。」とか、本来はロボットとして失格だろと思うような動きも大目に見てもらっているんですよ。なんだろうか、これは。

これはなにか、ものづくりのヒントになるのかなと思って、なんでか聞いてみた。すると、

「なんでやろうか。たぶん、丸い形してるのがカワイイからちゃうかな?」

これが本当なら、なんでも丸みを帯びた設計にすれば愛される確率が高まるってことかね。そんな簡単な話なんでしょうか。まあ、確かにジョブズも製品の丸みとか、アイコンのまるみにこだわってたけど。

「あと、ゆっくり動いて、一生懸命なのも愛らしい。ちょろちょろっと動いて、ピタッと止まって、また、よいしょよいしょって感じで動くから。」

うーむ、まあ、確かにこれはルンバの動きを見ていて結構共感する部分はあるけど。本来ならびびっと素早く動いて、効率的に掃除して、ハイ終わりました!となってくれたほうが便利なんだろうけど、この頑張ってる感がいいんだろうか。。

なんか、仕事効率的に終わらせてさっと家に帰る合理性より、無理して残業して頑張ってる感出している人のほうが評価される日本社会みたいで嫌だなとも思ってしまったけど、結果的にその動きがペットみたいに愛されてしまうなら認めるしかない。

この時思ったのが、ルンバ作った人は意図的に設計して、愛されルンバになるよにしたんだろうかということなんですが、さすがにそんなことはないと思う。たぶん。現時点で可能なベストの動きで、まるい形もいろいろ掃除するには単に都合がよかっただけなのかも。

でも、この動いているのを見ててカワイイっていうのは、製品作りのヒントが隠されてると思う。

もちろん、ある程度まではちゃんとした仕事をしてくれるものが選ばれるんだろうけど、ある部分のレベルまでいくと、実用性よりデザインとか、愛着とか、使ってて気持ちよいとか、カワイイとか、そういう機能以外の部分をみんな求めるようになるから。

僕が好きなトップギアというBBCの車番組があるんだけど、ランボルギーニ・ウラカンに対する評価を語ってるリチャード・ハモンドがこんなこと言ってた。

「この車は今までのランボルギーニより優れた車なんだけど、今までのランボルギーニは、この車より”ランボルギーニとして”優れてた。以前のランボルギーニに乗ってる時は、特別な気分にしてくれた。渋滞の中でもだ。でも、この車にはそれはない。大きな損失だ。。」

ちなみに、今までのランボルギーニと、このウラカンにはなにが違うのかについての明確な言及は特にないけど、司会のジェレミーも「残念ながら同意見だ。」とこの後に言ってたので、なんだか説明しにくい、なにかがそこにはあるんだと思う。

ちなみに、利便性を追求していないスポーツカーっていう分野は、乗ってて気持ちいいとか、かっこいいとか、そういう部分こそが最も重要だとされてる。ついでに言うと、自動運転が普及した時、みんながプレミアを払うのは運転してて楽しい車だけになるという理屈を、トヨタの社長も言ってたような。

アプリで置き換えると

じゃあ、アプリで置き換えると、そういうものを目指したもので思い当たるのがいくつかあった。

有名なのは、TweetBotというアプリ。このアプリを作っているTapBotという会社は、

「僕たちの作るアプリは、効率性を極限まで追求するよりも、使っていて気持ちいいという部分を大事にしています。」

といったようなことを言ってて、実際にTapBotとかは、アニメーションに工夫があったり、ボタンをタップした時の音にもこだわりがある。

こういうのも一つの方向性なんだと思うけど、僕もそれにならって、ZenyとかTaxnoteにアニメーションやら、音やらつけようかと実験してみたことがあります。でも、これはなんか違った。

単純に僕の好みかもしれないけど、逆に売りであったサクサク感がなくなって、アニメーションとサクサク感の境界線ってのは思ったより際どいもんなんだなあと思いました。

例えば、なにかのボタンをタップして画面転移する動きを作ったとしても、シンプルに画面が右から左にサッと流れて次の画面が現れるだけのデフォルトのアニメーションと、そこに弾力性があるかのように引っ張って跳ねるような追加のアニメーションで画面転移するものとでは、デフォルトのシンプルなままのほうが逆に気持ちよいと感じてしまう。

まあ、これは好みが分かれる例だけど、なんか作ってたら、そういう細部の好みとか、製作者の直感に左右される選択肢は無限に出てきたりする。

そういう部分は、なんでもデータで判断すればいいっていう手法ではうまく行かない領域で、この感性を伸ばすにはとにかくよい作品を見たり触れたりするしかないんだろうなあと。


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DMM会長亀っちの部屋が攻めてて面白い

みなさんはDMMっていうエロいサイトを知っているでしょうか。僕はそこまでエロくないので、一週間に7日ぐらいしかこのサイトを開かないんだけど、DMMの会長の亀山さんがインタビューする連載がすごく面白かった。

亀っちの部屋 【亀山×猪子】猪子に出会ったから、自分は今のキャラになった

チームラボっていう会社の猪子さんという人にインタビューしてるんだけど、二人が友達だから他の人では突っ込めないところをズバズバ突っ込んでる。

例えば、「君は個人的な話をすると煙に巻くけど、家族持ちたいとか、個人の幸せとか、そういう気持ちは一切ないの?」的な話とか、カッコイイ、アーティスティックな話から、もっと人間臭い部分をこの機会に聞いてやるぞという意図が込められててそこが面白い。

いろいろ突っ込んでも最終的には、「そうか、ガチで世界平和とかイメージしてるんだな。。俺は周りの人間が幸せになったら嬉しいという性格だけど、それだと結果的に社会には悪い方向に道を外してしまう危険性もあるな。。」とか、亀山さんが妙に納得する流れになるとか、予想できなかったこの展開も面白い。

そして、その後なぜか食の旨味成分の話に移ったり独特の世界観の話に巻き戻されるんだけど、それでも、

「亀さんは気楽でいいけどね。もうビジネスの仕組みががっちりできていて、別に自分自身が人からどう見られようと、事業には関係ないから。こっちはこの対談が面白くないと、チームラボ自体がイケてないみたいに思われるかもしれないんだから(笑)。」

といったセリフを引き出したり、インタビューする側も正直に自分の事も打ち明けてたりしてて、そういうぶっちゃけ感をすごく感じて、こういうところに人間は共感してしまうなあとしみじみしてしまいました。

ちなみに、元々、亀山さんがメディアに出てくるきっかけとなったのが、数年前のベンチャーイベントで猪子さんに出会い、「なんでこの人はこんな馴れなれしいんだ。そうか、この業界は全然知り合いがいないけど、そこまで身構えなくてもよいか。」みたいに思って、そこから猪子さんにいろいろ知人を紹介してもらってすごく感謝してるというような話も書いてて、そこも読んでて楽しい。

ちなみに、亀山さんはDMMの会長として数年前から突然メディアに出てきて、その面白い話からDMMに対するイメージはかなり変わって会社としてはよかったらしい。怖い人が運営してると思ってたら、印象変わったという人が多いとか。

今や、就職ランキングでも話題になるような未上場企業として高学歴な学生が面接に来るようになったらしい。DMMはいろんな事業にちょこちょこ小さく賭けていて、次のビジネスを常に見つけようとする手法がタレブチックで興味深いんだけど、これは新しい事業にお金バンバン使っても、株主に対する説明責任がいらない未上場だからこそできる方法らしいですね。


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とりあえず応援するけどアドバイスは難しい

周りで新しいサービスで起業しようとしてる人や、なにかのアプリを作り始めてる人がいたら、とりあえず応援するようにしている。

この、とりあえずという表現は適当に聞こえるかもしれないのだけど、とりあえずの無条件で応援することが重要だと思ってる。なぜかというと、新しいものを作ろうとしても大抵の人は理解してくれないだろうから。

サービスやアプリを作って起業なんて発想は、合理的じゃないし、成功確率も悪いし、もっと悪いことに、この日本だと企業で勤めてた人が辞めて起業したら合コンでモテなくなるらしい。つまり、世間からつまはじきにされるらしいんですよ。いや、そこまでではないだろうけど。。

僕は最初から捨てるものがなかったから楽だったけど、アプリを作り始める時はあんまり理解されないもんだし、大抵の人からは「なんだか、すごく時間を無駄にしている人」という認識だったと思う。

ポールグレアムもエッセイで、「起業というのは、周りからそういう目で見られるし、もっと悪いことに、周りはどこかで君の失敗を願って、ああやっぱりダメだったねというのを期待する」と書いてた。なんて残酷なことを赤裸々に書くんだ。

こういう時に一番ありがたいのは、とりあえず、無条件に応援することだと思う。これは、その対象に詳しい人じゃなくても、身近な人であればあるほど意味がある。彼女、彼氏、奥さん、夫、親、兄弟とか。

ちなみに、大抵の起業家は自分の作っているものに夢中だと思うので、「ああ、なんか楽しそうにやってるな。本人は夢中そうだし、大丈夫そうだな。」と思うかもしれないけど、実際は不安な部分もあるはずなので、そんな時も陰ながら応援すると想像以上に助けになるんではないでしょうか。

ちなみに、ネット系のニュースに取り上げられた時に、Facebookでイイねしたり、「凄い!」とかコメントしようと言っているわけではなくて、そういうのは他の人がしてくれるからあまり必要ないと思うんですよ。

むしろ、ネットで取り上げられてなくて、泣かず飛ばずの時とか、何回ピボットしてもうまくいかんとか、ずっと作り続けてるけど、未だにリリースできんとか、そういう様子の時こそが重要なんじゃないかなと。

応援するというのは、Facebookでプロダクトページをイイねするとか、シェアしてあげるとかいう意味でもない。そういうのは、使ってみて本当に良いと思った時だけにしとけばよくて、もうちょい精神的な部分で、心の中で勝手に応援とかでもよいと思う。

もっと具体的に考えると、大抵のチャレンジは失敗して当たり前だから、行動に対して応援するというか、そういうのがいいと思う。シリコンバレーは、チャレンジを奨励していてそういう人達への敬意があると聞くけど、そういう土壌が重要なんだろうなあと勝手に夢想。

ここまで書いてて思ったけど、別に起業に限らなくても、なんかやろうとしてる人がいて、その行為が世間的には賢いやり方には見えなかったり、失敗の確率が高くてあまり理解されなくて逆境っぽい状況であればあるほど、お仲間や敬意が意味を持つんではないかなと。

漫画家、小説家、音楽家など、勝者総取りの世界でこつこつ頑張っててまったく売れてなくても、それが周りを見ても当たり前で、気軽にみんなが目指してますっていう世界だと気が楽そうだ。

社会活動とか、お国のためになることだったら、基本的に「偉いですね。」って褒めてもらえるからいいんだけど、そうじゃない、「現実みようぜ。。」とか言われそうな分野であればあるほど、まわりの応援が必要なんじゃないかなあと。

アドバイスについて

アドバイスは一番難しい。なぜ難しいかというと、そもそも自分がよかれと思って話すことが、全然間違ってることが往々にあるわけなんです。まあ、話している時はそれが正しいと思うことを正直に話すわけなんだけど。

でも、もっと難しいのは、万が一、自分のアドバイスが正論だったり、結果的に正しかったとしても、正しいことを言うのが正しいとは限らないからなおさらのこと難しい。というか、聞いている相手としては、正しいことなんて最初からわかってるよっていう場合も多いとも思うんですよ。

じゃあ、どういうことを言えば一番いいんだろうといつも悩む。最近思ったことは、相手が自分では思いつかなかったことこそが意味のあることなのかもしれないってことでした。相手が聞きたいことを言ったとしても、それはそれで気持ちよくなるかもしれないけど、一番自分が役にたっているとは言い難いし。

例えば、僕がはじめてプログラミングを勉強した時に作ったのは、Amazonの本の写真を大きな写真に拡大して、順番に並べたりソートしたりするWebサイトだったんですよ。PHPで作った。で、当時はこれがめちゃめちゃイケてるアイデアだったと本気で思ってた。

で、当然のように、「これ天才的でしょ、イケてるでしょ」と周りに見せたんだけど、もちろん評判はちっともよくなく、「こんなん絶対流行らない」という評価でした。でも、結果的に、そこがきっかけになって、また何個も流行らないサイトを作って、その次にiPhoneアプリに進むことができたので、当時のまったくダメなサービスをせっせと作ることが無駄でもなかったのかもしれない。

というわけで、なにが言いたいかというと、客観的には遠回りや、まったく無駄な努力をしているというのが正しかったとしても、その過程そのものには価値がある場合が往々にしてあるので、正しいことを言うのが結果的に正しくないことも十分にありうるなと。

さらにいうと、こんなもんダメだろと自分が思ったとしても、それを覆される事柄が世の中にごまんとあるわけで、先の先のことを考えたつもりが、一番手前から僕が間違ってましたという可能性もある。

例えば、SmartNewsってアプリはあんなにヒットして、自分自身もよく使うようになるとは想像もしてなかったし、タイムスリップしてみると、自分の予想が外れまくってるのはもっとよくわかると思う。今から振り返ると、自分の都合のいいように記憶をほとんど改ざんしてるから、日記でも書いてたらわかりやすいのかもしれない。

というわけで、最近は、「僕もころころ意見が変わるし、現時点ではこう思うけど、僕の意見なんて無数にある中の一つだから、いろんな人の意見を聞いて、それを聞いたからといってあまり影響を受けずに、自分のやりたいように納得できる方法でやったらいいと思う。」といったような、若干、無責任なんだかよくわからない言い方をすることが多い。

本当は、「絶対こうだから、こうするべき!」みたいに言い切ったほうがカリスマ性もあって、人々がついていくリーダー像なんだろうけど、まあ僕はリーダーでもないのでよしとしておきます。

と、ここまで書いておいてなんだけど、僕は娘ができたらやいやいとしつこく助言したがって、絶対に嫌われるタイプだと思う。親にもよくしつこいとよく言われるし、そういう傾向が多々あって、本当にどうしようもない。

この前、こういうことをコンサルしてる友達に話したら、「実は、うちの上司にもそういう嫌われるタイプがいて、娘の話を聞いたら、すごく論理的に正しいことをアドバイスするんだけど、とうの娘からすると、なんだかお父さんに相談したら面倒くさいとか思われて、お母さんにしか相談してくれなくなり、その人はしょんぼりしてるよ。」というせちがない話を聞いた。

最近、むらかみさんのところっていう本をあらためて読み返したんだけど、村上春樹はすげえ受け答えがうまくて渋かった。熟成されててすごい。ノンフィクションばっかり読んでたら、知恵はつくけど人間性はなかなか向上しないみたいなことを誰かが言ってた気がするので、小説を読む比重を増やそうかなとも思いました。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

プロダクトのコピーはなぜ難しいのか

Web業界では、先進的なイケてるプロダクトのアイデアを思いつく人が多い。そして、そのアイデアを誰かが先に作る前に世に出したい!と考える人も多いと思う。僕もなにか思いつくたびにそういうことを考える。

でも、実際はそんな心配は杞憂な場合が多いんじゃないでしょうか。そのまま真似してもうまくいくケースは本当に少なく、いろいろ工夫して真似したとしても失敗するケースも多い。もし真似しやすいケースだと、すぐ他の人も真似して優位性もなくなっちゃうし。

もちろん、物作りは真似から始まるし、素晴らしい製品は既存のアイデアがあって、僕が作る時も誰かのアイデアをパクってきたものばかりなんだけど、よく考えると単純にコピーするのは結構難しいので、あまり心配しなくてもよいのではないかと思った。

とはいえ、デジタル時代の著作権というデリケートな話にも繋がってくる話でもありますね。どこまでがまるまるコピーで、どこまでが工夫の余地あったのかとか。さすがに完全にコピー製品を作られたら困るだろうし、そうは言っても、真似から入るのがイノベーションでもあるし。

という面もありつつ、一般的にサービスをコピーするのはけっこう難しいから、あんまり心配しなくてもいいんじゃないかなと思ったことを書いてみる。

プラットフォームは真似できない説

まず、一番思いつきやすいのは、ユーザがいるプラットフォームをコピーするのは難しい説だ。これは分かりやすい。

例えば、Twitterのコピーサービスを作るのはできても、ユーザがいないとそのサービスには魅力が出ないというパターン。その他にも、ブログサービスみたいに、ユーザが書き込んだ資産が増えていき、容易に移動できなくなるパターン。

ユーザがいないと使えない、でも、最初に使ってもらうにはユーザいないと使ってもらえないという鶏卵問題。

じゃあ、初期ユーザを用意できる必殺技がある場合、コピーしやすいんだろうか?

Googleユーザを流しこんでコピー

じゃあ、すでにたくさんのユーザがいるサービスのユーザを流し込み、最初の鶏卵問題をすっ飛ばしながらコピーするケースはどうだろうか。

これもそう簡単にはうまくいかない。ちょっと前だと、GoogleがGoogle+というサービスを作って、Facebookをコピーしようとして失敗してた。

Googleアカウントというすでに大量のユーザを囲い込んでいるGoogleが、そのユーザ層を使って、Google+に流し込み、なおかつFacebookで不満の種だった要素に切り込むサークルといった機能まで備えていた。

でも、うまくいかなかった。

最近よく読んでるしばだんでも書かれていたけど、既存サービスのユーザを流し込むとか、いわゆるシナジー効果というやつはそう簡単にうまくいくものではないらしい。あるサービスを使いたいユーザは、そのサービスが目的できたわけで、そこから違うサービスに流れ込むために来ているわけではないからと。

会社を売却すると、創業者の身に何が起こるか
(面白くて、最近ハマってるしば談の記事)

Google+の例でいうと、Googleアカウントにログインした人たちは、Googleサービスを使いたくてログインしただけで、SNSサービスのためにやってきた人たちではないからという話になる。

単純に、広告という意味では効果はあるだろうけど、10億人いるサービスから流し込んでも、その中の何パーセントが興味持ってくれるかはわからない。

先に囲い込むから説

その他に思いついたのは、すでに成功しているプロダクトがユーザを囲い込んでしまい、後からコピーしても時すでに遅しというやつだ。

例えば、北米の検索エンジン市場を考えてみる。Google一人勝ちの状態で、ちょっとやそっとの製品で切り込むのは難しい。相当使えるものじゃないとユーザはわざわざ移ってこないからだ。まず、自分の場合で考えたら分かりやすいけど、使いかってがちょっと上がる程度で今すでに使っているものから移るだろうか。

大抵の人は面倒だからやらないし、今自分が使ってるものを実際以上に評価するバイアスも出来上がっているので、実際には、「乗り換える面倒さ + 現状バイアス」を超える魅力が必要となる。

もちろん、囲い込んだ結果、ネットワーク効果が出来上がって、みんなが使っているから価値が上がるという防御壁も出来上がっちゃう。

となると、ネットワーク効果なんてそもそも存在しない、UIだけ真似したらいいアプリなんかの場合はどうだろうか。

FlappyBirdはコピーしやすいか

その昔、FlappyBirdという、鳥がピョコピョコ飛びはねるゲームが一時的に大ブームになった。このアプリが大ヒットした結果、コピーアプリが大量生産されて、似たようにいろんなモノがピョコピョコ跳ねるゲームだらけになったことがある。

FlappyBirdはSNSでもないし、お一人様ゲームなので、特に鶏卵問題も発生しない。とりあえずゲームも作りやすいし、UIだけパクれば出来上がりである。作者がアプリを取り下げたのもあり、当時は大量にコピー製品がAppStoreに溢れていた。

でも、FlappyBirdのUIをパクってまったく同じものを作ったとしても、FlappyBirdのように成功するとは限らない。

まず、FlappyBirdはリリースした当初から大ヒットしたわけではなく、ずっとAppStoreで低空飛行を何ヶ月も続けていたところ、北欧のヒカキンの10倍ぐらい儲けてるらしい海外のYoutuberが、「このゲーム難しすぎて笑える」みたいな紹介でいきなり火がついたらしい。

となると、FlappyBirdと同じようなゲームを作るのはできても、大ヒットするきっかけとなった現象をコピーするのは実質不可能に近いとなる。十分準備して待たないといけないし、準備しても幸運は訪れないかもしれない。

これが、UIだけ真似したらよさそうなアプリでも、本家本元のアプリと同じように成功するのはなかなか難易度が高い理由だと思う。

じゃあ、逆にコピーが成功しやすいパターンを考えてみる。

海外のサービスをローカライズ化する場合

なんかシリコンバレーでAirbnbというサービスが流行ったらしいから、うちの国でもやってみようぜとか、Uberっていうタクシー配車サービスが当たったから、うちの国でもやるぞというようなケース。

中国でよく聞くパターン。

これは、アイデアが時代にマッチしているけど、特定の国ではまだ進出してない、なおかつその国の文化障壁などがあり、その国の人にしかわからない隠し味やら、工夫する要素がたくさんあるケース。

インドのカレーをそのまま日本で売っても人気がでないので、日本人に受け入れやすいカレー屋を作ろうみたいな。

このケースは成功例がたくさん思いつくけど、かといって、簡単にコピーできるとは言えないんじゃないでしょうか。よくよく考えると、よくあるイノベーションの事例の一つな気がしないでもない。

ある製品を誰かが成功させて、それを見た違う人が、その製品のアイデアを参考にしつつ改良を加えた製品を作るケースはたくさんある。で、それが目論見通りうまくいく場合もあれば、うまくいかない場合もあって、イージーモードってわけでもない。

なおかつ、ローカライズ戦略に特化したとしても、グルーポンがアメリカで流行った後、日本でも類似サービスが100個ぐらいタケノコのようにできた時のように、わかりやすいアイデアであればあるほど競争が激しくて、これはこれで難しい。

ここまで書いてきて、プロダクトのコピーは意外に難しいんだなと思ったけど、現時点で王者として君臨しているサービスも決して安泰ではないのが面白いところ。

Myspace、Mixi、米国のYahooなど、流行ってたサービスが数年で萎んじゃったりする。変化の速いWeb系でなくても、一時期もてはやされていた大企業がバタバタと潰れていくのはよくある。

これは、環境が変わるとニーズも変わるからであり、大きくなればなるほど急激な変化に対応するのには不利になるからなんだけど、この話はまた長くなるのでやめておく。

これ系でいうと、最近読んだ理不尽な進化という本が面白かった。進化論っていうと科学的に聞こえるけど、騙されたらいかんよ。進化の過程で最適化してた種も突然のルール変更で絶滅するから、突然のルール変更と最適化の二つを混同してはいかんよという本だった。

なんの話をしていたんだろうか。そうだ、プロダクトのコピーはなぜ難しいかだった。

最後に、プロダクトじゃないけど、コピーしやすかった例を思いついた。マネーボールである。

みんなが真似したマネーボール革命

僕も好きな作家であるマイケルルイスが書いたマネーボールという本では、大リーグに統計学の手法を取り入れて、お金のない弱小球団が強豪に打ち勝つっていう実話を書いてる。

今まで見過ごされていた要素を、データ革命によって拾い上げ、そこを競争優位としてライバルに打ち勝ったって話である。でも、このネタは他の球団がすぐ真似しちゃって、数年でその競争優位はなくなってしまったという話らしい。

ちなみに、最近の大リーグはどうなってんだろうと思う人は、ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法がオススメ。最近はえらく複雑になってます。

こういう話を聞くと、「そうか、簡単にコピーできることはすぐ陳腐化するから、真似から入りつつ新しい価値を作らないといけないのかな」と当たり前のことを思うけど、じゃあ簡単にコピーできない価値ってなんだろうか。。これもまた難しい。


※更新

Facebookで@zerobaseの石橋さんからよいアドバイスをもらった。許可をもらって掲載。

結局、一時的な競争優位を作るイノベーションができたとして、パクられるから「持続」しないですね。一見わかりにくくても、いずれパクられる。成功すればするほど外から解明されるし、中からも「秘密」が漏れやすくなる(トヨタでもアップルでも)。だから静的な持続的競争優位は幻想で、「持続的競争優位を動的に作り続け、更新し続ける能力」が重要なんじゃね? といった結論を得てますが、まあご自身で考えながら読んでいただくのがよいと思います。 (『ストーリーとしての競争戦略』『経営戦略全史』など)

シンプルに言えば、「簡単にコピーできない価値」なんて幻想を捨てましょう。それがあるように見えても、それは単に短期か長期かの見方の違いでしかない。長期的にはすべてが簡単にコピーできる。だから「簡単にコピーできない価値(を一度作ればあとは一生安泰だ)」という幻想を捨てることをお勧めしますよ。

そういう幻想にすがりたくなる自身の「心の弱さ」こそ克服すべき。という超マッチョ結論w

でも考え方を変えれば「誰にでも逆転のチャンスがある」ということでもあるわけですよ。中世のように身分階級が固定化された「冷めた社会」がいいの?って考えてみれば、「どんな勝ち組でさえ、その競争優位性が永続的ではありえない社会」を言祝ぐべきではなかろうかw


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

当たると桁が違う英語ブログだけど、翻訳もいろいろ難しかった

以前からいろいろ試している英語ブログについての悪戦苦闘を書いてみる。うまくいったこともあれば、うまくいかなかったこともあり、途中経過のまとめみたいな話である。

英語ブログを書きたかった理由

ひとつの理由は、ブログ経由でTaxnoteとかListTimerなど、自分のアプリの宣伝になるかなというのであった。

僕は以前から37Signalsの本を参考にしてるんだけど、自分の試行錯誤をブログで書くのが一番いい宣伝方法だと彼らは言っていて、僕も「ああ、そうだな。そうしよう」と思って日本語で気がむいた時に書き続けていると、それなりにブログ経由で自分が作ったアプリを使ってくれる人が増えたというのがあります。

文章を書くのがそこそこ楽しかったというのもあり、このやり方は自分に向いていた。多分、ブログ書いてなかったら、AppStoreという広大な海原の中で僕のアプリは見事に埋もれていたんじゃないでしょうか。まあ、宣伝しても埋もれちゃったJetDoみたいなアプリもあるけど。

あと、ブログを書いていろいろ交友関係が広がったり、予想もしてなかったよい出来事がたくさん起こるので、英語圏でもなにかそういう事が起こると楽しそうだなというのも大きな理由。

じゃあ、英語でもブログ書くかって単純に思ったんだけど、ネイティブじゃないから英語で書くのは本当に疲れる。。日本語のようにささっと文章ができない。

でも、ブログ書く以外で海外でアプリをうまく宣伝する方法はあまり思いつかないし、どうすれば面倒さを軽減しつつ、効果を最大化できるかなあと試行錯誤してるのが最近。

まず、最初に考えたのが、日本語でバズった記事を順番に英語化していくといいんじゃないかということだった。

日本語で人気でた記事を英語化してみた

ブログで書く記事って、どういうのが人気出るかって本当に予測できないので、予測なんてせずに、適当に書きたい事を書いてあとは運に任せてるんだけど、英語で書くのは骨が折れすぎるのでこれだとちょっとつらい。

というわけで、日本語ですでに書いた記事の中から、ある程度人気が出たやつで、なおかつ英語圏でも受けるかもしれないというのから翻訳してみることにした。

ちなみに、Gengoとかで翻訳依頼すると、そんなに長くない記事でも8000円とかかかっちゃうので、そんなお金はないから自分でまずは英語化してみた。

まずはこの記事。
要望にNOと言う時の伝え方が難しい

これを自分でこつこつ英語化してみて、ネイティブのお友達にそのあと添削してもらったのがこれ。

How do you say No to users without annoying them?

これはたいしてバズりはしなかったけど、刺さる人には刺さったようで、UXのお仕事してる人から「この記事よかったよ!」というメールをもらった。これで気をよくした僕は、また英訳するかと思ったけど、元来面倒なことが嫌いなのでそのあと時間が空く。

その後、いくつか翻訳してみたんだけど、なんというか、一度日本語で書いた記事を英語に翻訳する作業はすごく退屈で辛くてつまらない。やってられない。まだ、適当な英語で一から書き始めたほうが楽な気もする。

ただ、英語人口は日本語人口の10倍以上。もし何かの運で記事がバズったら、10倍以上の効果があるので、そこが魅力的だなというのがモチベーションだったんだけど、やっぱネイティブじゃないからしんどい。英語ネイティブの人が羨ましい。もちろん日本に比べて競争率は高いんだけど。

英語圏でちょっとだけ読まれる

少し前、ちょっとこれは英語にしたら面白いかもというネタがあった。

競合の開発者が動画作ってくれたという、自分でもびっくりした出来ごとである。

これはなかなかない話なので、その時に勢いで英語にオラオラと翻訳してみて、ネイティブの添削もしてもらわず適当にHackerNewsにポストしておいたら、ちょっとだけ読まれた。

My competitor made my app promo video for free

HackewNewsで48pointとか表示されて、コメントが4つ付いた程度なんで、はてぶが8ぐらいついた程度だろうか。しかし、こんなちょこっとHackewNewsでポイントついただけなのに、瞬間的なPVがぐいっと上がってて、まさに日本語ブログで経験したトラフィックの10倍ぐらいであった。

やっぱ読者人口が10倍以上いると、予想通り、ちょこっとバズるだけでこんな結果になるのかと思い、またブログを英訳しようかなというモチベーションが湧いたのだが、やっぱり面倒なので英語ブログはそのまま放置というサイクルに。

英語記事がもうちょいバズった

さて、しばらく期間が空いてから、またちょこちょこ3つぐらい英語で記事書いたり、翻訳したりしてみたけどウンともすんとも読まれなかったので、やる気をなくしていた。しかし、定期的に英語マーケットへの熱が高まる時期があるのか、暇だしちょっと翻訳してみるかとなる時期がくる。

そこで、今まではなんとなく題材を選んでいたけど、このさいだから、日本語ブログで一番読まれた記事を上から順に翻訳していくかと。で、日本語でそこそこ読まれて評判よかった記事がこれ。

開発を短い時間で集中して毎日やる

もう、自分で翻訳するのは面倒だから、AppStoreのローカライズでも使ってるgengoというサービスで見積もりしてみたら平気で100ドル近くいったので、そっとページを閉じた。

しょうがないので、まず自分で英語に翻訳してみて、Upworkでネイティブに添削してもらうことに。日本語から英語への翻訳は100ドルぐらいでも、英語の添削なら10ドルぐらいで済む。

添削頼むのも面倒だなあと思ってたんだけど、以前ネイティブの友達に僕の英語記事を読んでもらったら、「うん、何を言いたいかはわかるけど、小学生が書いた作文みたいだね。ノンネイティブが書いたんだなというのはすぐわかるよ。」と言われたのを思い出したので、添削してもらうことに。

一応、Gingerっていう素晴らしいスペルや文法まで訂正してくれるツールは使うんだけど、そういう小手先の技術ではいかんせん限界があるんですよね。

で、添削してもらったのをぽちっとHackerNewsに投稿しておいたら、これが結構読まれた。そっからRedditにも誰かが投稿して、さらに読まれた。

3年前ぐらいに書いた一つの記事が、はてぶ500ぐらいついて3万viewぐらいだったんだけど、この記事は半日で一気に5万viewぐらいいってた。HackewNewsでちょっとの期間だけ上位に表示された程度なので、日本のはてぶだと60ぐらいのイメージなのかな。やっぱり英語圏は桁が違うんだなと再認識。

なんか論争を呼ぶ内容だったのだろうか。これは俺には無理だ、いや俺はこういうやり方でやってるよとか、いろいろ議論があってなかなか興味深かったのを覚えている。あと、一週間の間に15通ぐらい「これ面白かったよ」とか、「これ質問があるんだけど」というメールが届いた。あんまりそういうことは日本語ではなかったので、文化が違うのかなと。

ちなみに、HackewBitsとかいうオンラインキュレーション雑誌とかにも選別されたり、ロシア語に勝手に翻訳されたりもしてたんだけど、アプリのダウンロードにはほとんど繋がらず、ああ、ちゃんと記事の中で強引にアプリ名を書いておくべきだったなと思ったのは後の祭りです。

他言語に翻訳されたり、どっかのサイトに転載された時、自分のブログで記事の下につけてるような自動リンクはなくなるので。

というわけで、もっと翻訳していこうかなと思ったものの、英訳するのは面倒だし楽しくもないしという根本的な問題が解決されてないので、なんかいい方法ないかなあと考えてみた。

Upwork使って安く英訳できないかな

そこで、Upworkでネイティブじゃなくてもいいので、安くやってくれる人にまず「日本語=>英語」の翻訳をお願いして、その英語を今度はネイティブにまた添削してもらったら、結果的に安くできるのでは?ということを思いついた。

というわけで、まず、日本語の記事を一つピックアップして、Upworkで募集。「そこまでクオリティーは求めないので、ネイティブではない人でも大丈夫です。」と書いておいて、価格重視で募集してみた。

すると、1日程度で、時給6ドルのフィリピンの方から、25ドルのネイティブの方から、いろいろと12人ぐらい応募がどしどしきた。相変わらずUpworkは流れが早くて便利だ。なんだろう、この素晴らしいサービスは。

今回はいかにコストカットできるかの実験だったので、時給6ドルと時給8ドルの人、二人に別々の記事をお願いしてみた。とりあえず一人だけで判断するより、違う人に頼んでみたほうがよいだろうと思ったんだけど、これが大正解でした。

まず、時給6ドルの人は1時間で終わって、ものすごい安くついたんだけど、これがもう機械翻訳かねこの英語はといった具合で、「うーん、これだと、ネイティブに添削してもらおうとしても、元の記事自体が何言ってるか理解できないだろうな。。」という具合でした。これは厳しい。。

次に、時給8ドルの人が頑張って5時間かけて、もう少し長めの記事をやってもらったんだけど、こっちは普通にちゃんと読めた。確かプロフィール欄では、私は英語はネイティブですと書いてたので、たぶんは英語はペラペラな人なんだと思う。

でも、やっぱり、日本語に引っ張られているというか、一部何を言っているのかわからないようになっているというか、これをネイティブにさらに添削してもらっても、あまり関係ないだろうな、、という悩む結果に。

僕も以前は翻訳業界にいたこともあったんだけど、翻訳は本当に難しい。。これはネイティブだとかそういう問題ではなく、一つの言語からもう一つの言語に、引っ張られずに自然な文章にするという特殊能力で、なおかつ元の文章の意図や背景知識も理解しておかないといけないから、お手軽にできるものではないのかと思いました。

うーん、お金もかかるし、お金かけたからといって、いい具合のものができるとは限らないし、自分でやるのをネイティブに添削してもらうのが結局落としどころなのかな。でも、英訳するのは疲れるし、もう無理だな。諦めが肝心だわ、別に無理して英語ブログを書かなくても日本語でいいや。となりました。またモチベーションが到来するのを待つとします。

ちなみに、iAWriterってのが書いてて気持ちよくて、オススメです。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

革新的なやり方を見つけるには

世の中には「おお、そんなやり方があったか、賢いな!」とか、今までなかった新しい事をやってくれる人たちがいます。で、そんな新しく、なおかつ効果のある革新的なやり方をやるのは大抵新しいスタートアップだったり、まだ有名でない小さなアプリだったりする。

なんでだろうかと考えると、これはとても簡単なことでして、ある程度に規模が大きいものになると、リスクが高い事をやるメリットが、失敗した時のデメリットを上回らないからである。

例えば、iPhoneアプリで考えてみる。

もし自分のアプリの年間収益が10億円ぐらいあったとする。そんな時、iOS9の新しい機能を使って、新しいアイデアを試そうと思ってもなかなかできない。

iOS9の新しい機能を使うには、iOS7やiOS8にも対応したコードを書かないといけないし、その分岐コードが原因でバグが起きるかもしれないし、そもそも使いたい機能を使うためのライブラリを使うにはiOS7を完全に切らないと実装できないかもしれない。

となると、じゃあ新しいことに挑戦するため、いっそのことiOS7を切りますかとなる。iOS7の割合はもう全体の3パーセントだし。まあ、いいでしょ。毎回iOS7対応にかかるコストも軽減できるしと。

でも、10億円の3パーセントとなると三千万円になるから、「うーん、こんな効果あるかもわからない施策にこの儲けを捨てる価値はあるんだろうか。やめとくか。。」ってなってしまう。

こんな時、自分のアプリが小さな状態だったら、新しい事に挑戦しても失うものが少ないので、やりやすい。こんな具合で、失うものが少ない小さなスタートアップだったり、個人開発者のほうが結構おもしろくて新しい施策を試してることも多い。で、もちろんほとんど失敗するんだけど、その中でキラリと光るやり方もあったり。

例えば、野球に統計分析の手法を取り入れて成功したマネーボールみたいな例も、最初にやり始めるのは弱小球団が多い。失うものが少ないから新しい事に挑戦しやすいんだろうと思う。

最近、サッカーでもデータ分析を取り入れた実験をしているチームの話をクーリエジャポンの記事で読んだけど、これも弱小球団だからこそ実験的な事がしやすかったらしい。そもそも破産寸前のチームだったからお金出してくれるオーナーの意見を聞いてくれやすかったとも。

デンマークのクラブが取り組む“過激な実験” サッカー界でも『マネーボール』は通用するのか

これがレアルとかバルサみたいなチームだったら、「もし新しいやり方を試して、うまくいかなかった時の損失額を考えてみてくれよ。今までのやり方で勝ってるのに。。メッシの全盛期を君の実験で潰す気かね。。」と言われたら、そうですねってなるし。

もちろん、アップルみたいにデカい企業なのに、Macbook12インチでUSBポート削ったりと、守りに入らない挑戦をする例もあるんだけど、そういうのは僕みたいな小さな個人開発者には真似できない規模の話が多い。

となると、革新的なやり方を見つけるには、小さなスタートアップや小さなアプリから探したほう効果的となる。大きな会社がやってる事はもうみんなに知れ渡ってるし、当たり前の事だから競争優位もないという意味で。

どうやって探すか

でも、小さなスタートアップなんて数が多すぎて、とてもじゃないけど全部見てらんないよ。そもそも、そいつらの新しい施策はほとんど失敗するわけだしというジレンマにぶち当たります。

うーん、これはどうしたらいいんだろうか。

一つ考えたのは、急成長しつつ、新しい事に挑戦している会社やアプリに注目するというのがいいのかもと思いついた。

例えば、最近の例だと、Slackというエンジニア向けのサービスは、ユーザサインアップやら、いろいろな部分で新しい挑戦をしていて、なおかつ効果的だなと関心させられた例が多かった。こういうのは、もうとにかく使ってみて覚えるのが一番早い。

僕がなるほどなと思った一つとしては、Slackのアプリで最初にサインアップしようとした時、メールアドレスを入力したんですよ。そしたら、入力した後、ポップアップでもう一度そのメールアドレスを表示してきて、これで合ってますか?と聞いてきた。OKと押したら次に進む。

これは、すごくシンプルかつ賢いなあと関心してしまった。メールアドレスを二回入力させるより、まず入力した後、次に進むと画面いっぱいに今入力したアドレスが表示されて、ある意味、切り替わった頭で間違いがないか再確認できる。

アプリでも、家具でも、食べ物でも、なんでもそうだけど、良いものを体験すると、今まで想像できなかった領域を初めて知るってことが多い。トロの美味しさを、トロ食べた事ない外国人にいくら説明してもわからないだろうし。

真似すべきかどうか

優れたやり方はどんどん盗みまくるのがいいと思うし、みんながあまりやってない事こそ価値がある場合が多いんだけど、そう話が単純でない時もある。というか、単純でない時がほとんど。

なぜかというと、急成長してる企業がやってるからといって、新しいやり方と急成長の因果関係はないかもしれないからである。たまたま違う要素で当たったアプリであって、新しい挑戦をしているUIは全然その成長とは関係がないかもしれない。

むしろ、革新的なUIはマイナスだったんだけど、そのアプリの需要がそのマイナス面をはるかに上回る人気を持っているだけかもしれない。

そんな懐疑心を持ってしまったアプリがSnapchatのこの記事を読んだ時。

広告が大嫌い。スナップチャットの悪童CEOの稼ぎ方

ちなみに、この記事は凄く面白い。Snapchatは従来のシリコンバレーのエリート達のやり方とはちょっと違っていて、会社の場所もサンフランシスコ周辺でなく、データより感覚を重視して、シリコンバレーエリート達の作ったものに不満な人たちの気持ちを汲み取るにはどうしたらいいかっていう、シリコンバレーの逆張りをついたという思想が面白かった。

で、すでに成功しているシリコンバレーの企業をそのまま真似しなかったのがよかったんだろうなというのは納得できたんだけど、Snapchatのあの独自UIまでもが成功の要因だったかはよくわからない。

よくわからないというのには意味があって、わからない時はわからないと判断を控えたほうがいいと思うからである。

よく言われるのは、SnapchatのUIはおじさんには使いこなせないけど、ティーンには使いこなせるというやつ。そうかもしれない。ティーンには、LineみたいなiOSの基本に忠実なUIより、SnapchatのUIのほうが使い易くて、ティーンはすぐ覚えるからそれでよかったのかもしれない。

でも、本当はiOSの基本に忠実なUIのほうが、やっぱりティーンにとっても覚える事が少なくて理解しやすく、たんにSnapchatの他の要素の魅力が大きいからその勢いで広がっただけかもしれない。

英語は全世界で使われてるけど合理的で優れた言語体系を持った言語は他にたくさんあるし、現在使われているキーボード配列だって、もっと合理的で使い易い配列にできたのに、もう広まった後だからいまさら変えられないという話はよく聞く。

だから、単純に流行ってるアプリが採用したUIだからといって、そのUIがアプリを流行らせた一つの要因だと決めつけてかからないほうがいいとなる。

というわけで、この話に結論はないけど、「無理に結論なんて作らなくてもよいんだよ」と、昔、小論文の添削してくれた先生が言ってたし、長くなったしこのへんで終わろうかなと思うけど、そもそも何の事を書いていたんだろうか。そうだ、革新的なやり方を見つけるにはだった。

うーん、どうしたらいいんでしょうね。新しい事に挑戦してるものをいろいろ見て、使えそうなら盗んでやるぞ、でも、本当によいかどうかはじっくり自分で考えるぞとすることぐらいでしょうか。

これはいいやり方と思ったあと、いやそうでもないという反証を考えて、それに耐えうるか何度も行ったり来たりするのがよいかな。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら

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