リーンスタートアップという仮説検証を繰り返す新規事業の手法があります。

これは新規事業開発の考え方として必読の内容なんだけど、小さく作ってさっさとリリースする手法であると同時に、製品を作る前に顧客を探せという手法でもあるのです。

理想としては、需要調査で潜在顧客が見つかり、小さな製品を素早くリリースするという流れなんだけど、いつまでも仮説検証を続けて、なかなか製品を作り始めないという落とし穴がある。

というか、リーンスタートアップを勉強した後に僕自身がハマった落とし穴で、あるあるじゃないだろうか。

リーンスタートアップの父的な存在で顧客開発モデルを広めたスティーブブランクも、仮説検証のインタビューが十分終わり製品開発を始めてよい時期なのに、この落とし穴にハマる生徒がいるよとブログで書いてた。

この落とし穴にハマる原因は恐怖が関係してる。

需要があるかわからない恐怖

リーンスタートアップ始めて知った時は、「おお、この手法通りにやれば簡単やないか。素晴らしい!」と気分が乗ってくる。

というのも、アプリやサービスを作る時、一番の心配事は苦労して作っても誰も使ってくれないんじゃないかという恐怖です。

人間誰しも無駄なことはしたくないもんです。作る過程事態が楽しいからそれ事態が報酬だという気持ちもあるが、結果はまったくいらないと言う奇特な人はまずいない。

やっぱ成功する希望を心にせっせとモノ作りをするはずなんですよ。この誰しもが持つ恐怖感により、いつまでも顧客を探し続け、まだ確証が持てないからもうちょいユーザーインタビュー続けよっか、となってしまうやつです。

僕はLisgo作る前に、自分が欲しいアプリでユースケースもばっちしイメージ出来てたのに、だらだらインタビュー繰り返してた苦い記憶があります。なかなか「それ凄い欲しいよ!」という人が見つからないなあと。

でも、作ってとりあえずリリースしたら、「これは凄くいい!」と言ってくれる人が勝手に集まってきたので、この場合、逆に時間を無駄にしてた気がする。

作り始めるタイミング

じゃあ、どのタイミングで作り始めればいいのよ?というのが自然な疑問だけど、残念ながら明確な方程式なんてないので難しい。

あえて言うなら、ユーザーの問題とそれを解決する製品アイデアがある程度理解できている時。さっさとリリースしたほうが、ターゲットユーザがあちらから集まってきてくれる事も多い。

例えば、自分がユーザーである製品の場合、ユーザを探すことに時間を使うより、まずはリリースして、その製品のよさや使い方を広める工夫に時間を使ったほうがよい。

実際に何人の人が使ってくれるか、お金払うかはリリースしないとわからないし、インタビューの時に反応がよくても、製品を前にするところっと意見が変わるもんです。

ただ、もちろん、解決する問題をハッキリ理解してない時は、市場調査を先にしたほうが効率いい。

Taxnote作る前は、自分が確定申告の帳簿入力をアプリでやりたいという明確なニーズを持ってたけど、申告制度や、人気ソフトの使われ方は知らなかったので、アプリの作り始める前にかなり研究しました。

実際に自分が確定申告を済ませるまでの流れで、どこが面倒な部分か、アプリを作ったとしても、致命的な欠陥を見通してないかなどを調査しました。

時間の投資効果で決めればいい

結局は、市場調査にかかる時間と製品作る時間のトレードオフで考えればいいんです。

ターゲットユーザーを探して、アポ取って、インタビューする時間がたいしてかからない環境ならリスクも低い。普通は苦労するけど。

そして、製品作り始める段階では、どの機能が一番早く作れるかではなくて、どの機能が一番重要かをまず先に考える。

そのプロダクトに需要があるかどうかを検証するにはどの機能が必要かを考え、その最低限必要な機能からリリースして、仮説検証するまでの時間を可能な限り短くする。

結果的に、その他のナイスな機能は後回しになると思います。その時々で検証部分を決めて、小さく進んで行く。

向き不向き

リーンスタートアップが向く製品と向かない製品があるので、向かない製品に無理して応用することはできない。

例えば、ガンの特効薬とか痩せる薬に市場調査なんていらない。需要があるのは明白だから。重要なのは、有効な製品を開発できるかどうかであり、そこに時間使えばいいわけです。

逆に、2014のベストニュースタートアップを受賞したProductHuntみたいに、メーリングリストから小さく始めたサービスは、まさに、リーンスタートアップがハマった事例。

どういった方法論でいくかは、その時の製品、趣向(目指すもの)によって変わるので、結局は最適だと思う方法を自分で考えてやるのがいい。一番ダメなのは、こう書いてあったからこの通りにやろうという姿勢なわけで。

ちなみに、ピーターティールのリーンスタートアップ批判について面白い洞察をしている記事があった。=>リーン・スタートアップ教をめぐる宗教論争


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら