僕は個人でアプリを出してるんですが、以前から試してみたいなと思いながらもビビっていた電話サポートを最近始めてみた。

以前から、アプリ内にHelpshiftでヘルプチャットいれて、そこからのフィードバックは多いに参考にしながらアプリをアップデートしてるんだけど、さすがに電話サポートまでは面倒だなというか、開発中に突然電話かかってきたら集中力が途切れないかなとか、そういう懸念からやってませんでした。

しかし、チャットに比べて電話で対応できたらユーザがどこで詰まるかの情報量も圧倒的に多くて改善に役立つだろうし、その場でこちらから質問もできるから解決も速いはず。

さらに、問題がわかった順にアプリを改善していったり、ヘルプの書き方を変えていけば、同じ質問は何度もこなくなるというのは以前からの経験でわかっている。Airbnbの創業者も創業当時はずっとヘッドセットつけながら、ユーザーサポートを自分でやってたらしい。

といっても、自分はスタートアップじゃないしなあとか、こっちの時間で返信できるサポートメッセージとは違うだろうしなあと思ってたわけです。

しかし、時は確定申告シーズン真っ只中。Taxnoteで試してみてもいいかなと先日ふと思った。電話に取れなかったら掛け直せばいいし。どうせたいしてかかってこないだろう。

なんでも試しにやってみて上手くいかなければ中止すればいいかという軽い気持ちでやることに。Taxnoteのヘルプページに電話サポートも始めたよと書いて、サブで持ってた050の電話番号を記載しておいた。050って解約するのが面倒で放置してたけど、こんな時に役に立つとは。

Helpshiftのヘルプページがこんな感じなので、一番上に電話対応の項目を追加。これは、Web側から自由に消したりできるので楽チン。

電話がかかってきました

今から二週間前ぐらいから始めたんだけど、さっそく電話がかかってきてた。その時は自分がiPhoneをお休みモードかなんかにしてて気づかなかったので、こちらからかけ直した。

電話してみると、僕と同じ関西出身の若い感じの人でした。質問は、「このアプリってどうやって確定申告に使うの?」っていう話だったかと思う。なので、「このアプリは帳簿をサクサク入力できるアプリで、申告時は損益表画面の集計を書き写してもらって〜」というような話をした。

次の日もかかってきた。次の日もなぜか電話に気づかなかったのでこっちからかけ直した。次は落ち着いた感じのお店を経営してる人だった。「このアプリを数年前に買って有料版で使ってるんだけど、またお金払ったりしないといけないの?」といった質問だった。

これは、Taxnoteクラウドという月額課金のオプションを今年から追加したのだけど、これをみて、「以前アップグレードしてるんだけど、課金しないと使えなくなるのか?」といった質問だったと思う。

そこで、「いや、これはさらに便利になるオプション機能だから、特に必要なかれば今まで通り使えますよ」というようなことを説明した。

それ以外にもだいたい二日に一回ぐらい電話がかかってくるけど、よくあるのはやっぱり有料版に関する質問。お金を払う部分になるとみんな慎重になるから、ここはしつこいぐらい丁寧にアプリ内で説明しておいて、誤解のないようにする必要があるなあと再認識できた。

課金の質問と同じぐらい多いのが、やっぱり確定申告さっぱりわからんのだけど、どうすればいいんでしょうかといった具合の質問だった。

ここは、アプリ内で、初めて確定申告する人からのよくある質問とか、確定申告を楽にする合理的な方法のまとめとかのリンクを張っているけど、それ以前にわからない部分とかいろいろあるようで、ここも初めて申告する人がまずどこで詰まるのかというのがすごく参考になる。

初めて申告する人がどういう疑問を持ちやすいかがわかれば、どういうアプリのデザインをしていって、どういう順番で適切なヘルプに誘導すればよいのかも想像しやすくなるので、ここもかなり参考になる。

電話だとITに疎い人の状況がよくわかる

予想してたことなんだけど、メッセージベースのサポートと電話サポートの大きな違いは、ITにあまり詳しくないユーザの話が聞けたり、その人の状況が詳しくわかるということである。

例えば、メッセージでのサポートは、IT系に慣れている人に向いている。というのも、PCやアプリを使い慣れている人は、自分のエラー状況とか、困っている状況を適切に説明することに慣れているわけです。

「こういう状況で、こういう操作をするとアプリがクラッシュします。これこれこういうことを試したんだけど、上手くいかない。自分はiOS9だけど、それが原因ですかね?」

結構詳しい人だとこんな感じです。もっとわかりやすくするため、スクリーンショットまで貼り付けてくれたりする。こういう場合、メッセージから相手の状況がわかりやすいし、適切に解決方法がわかって対処できたりする。

しかし、ほとんどのユーザはアプリにそこまで詳しくないし、PC操作も慣れていない人が多い。そういう場合、メッセージ打ち込むのも時間がかかるからやらないだろうし、そもそもメッセージしても短文でこんな感じです。

「弥生会計に移せない」

この場合、Taxnoteのデータ出力機能を使った時に問題があるのか、それとも、TaxnoteのデータをPCに移す過程がわからないのか、それとも弥生会計にTaxnoteファイルを取り込む部分がわからないのか、こちらとしては情報量が少なくてわからないわけです。

なので、「今はこういう状況ですか?もしかして、こういう状況ですか?」とこっちで詰まっているところをいろいろ想像して質問を返して、相手に状況を説明してもらうよう促すのだけど、たいていの人は問題の状況を説明するのが面倒だろうし、どう説明したらいいのかも慣れていないから諦めてしまう。

こんな時、電話サポートだと、その場で直接相手の状況をこちらから質問できるので、ITに疎い人でも、言い方を変えたり、相手にわかりやすいような質問の仕方を工夫することによって、問題の状況が圧倒的に理解しやすい。

こんなふうに、情報量が圧倒的に豊富になるというのと、こちらから質問しやすいというのが電話サポートの大きなメリット。

さらにいうと、メッセージでのサポートとは違った種類の質問がくるというのもわかった。例えば、メッセージだと、「こんな機能ありますか?」というようなものが多いけど、電話だと、「そもそもこのアプリはなにができるんですか?」という、もっとはじめのの段階の話が多い。

つまり、電話サポートというのは、メッセージでのサポートとはまた違うセグメントのユーザに対応できるというのがやってみてハッキリわかりました。

ちなみに、いろいろサポートをしていると、「この操作をすると、ホーム画面が表示される」という表現はアプリが落ちるという意味であることが多いとか、どういった表現を使えば分かりやすいかというのが学習できて、アプリ内にわかりやすいテキストを書く力が向上しやすい。

どこで離脱しているかの想像力が格段に高まる

電話サポートをしてみると、全国各地のいろんな人が使ってくれてるんだなとか、問題を解決した後に直接喜んでくれるとか、最後になにか要望とかありますか?とか聞けるとか、いろいろよいことはあるんだけど、なんといっても一番の価値は、ユーザがどこで離脱するかの想像力が高まるということです。

ユーザをグループ分けしてみると以下のようになると思う。

1.少し使ってよくわからないから離脱した人。
2.少し使ってわからないからヘルプ探した人。
3.少し使ってわからないからヘルプ見て質問送った人。
4.少し使って自力で使い方を習得した人。

今までは、1と2で離脱していた人のレベル感とか、どのへんで離脱するかはブラックボックスだったわけです。3以降の人はメッセージが来るから、その内容から「ああ、このへんがわかりづらいんだなあ。」とか想像することができた。

しかし、電話サポートしてみたことで、2の段階の人の声を少しでも聞くことができて、「ああ、こういうところでわからなかったらもうお手上げだったのかー」とか、もう一つ前の段階のレベルで改善すべき点がたくさんわかった。

これは、別に新しい機能をつけるとかたいそうなことが必要じゃない場合も多くて、ちょっとヘルプの書き方を変えたり、ヘルプにスクリーンショットをつけたり、アプリのメッセージの文言を改善したりで解決する場合が多い。

ようは、気づくか気づかないかの違いだったということが多くて、この情報が大きな差になるというのが、小さな改善の積み重ねの繰り返しでは重要になってくる。

というわけで、サポートに力をいれてもいいかなと思うアプリだったら、新しい気づきがあるので興味のある人はぜひ試してみてください。


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