Taxnoteを宣伝するために書き始めた、フリーランスの確定申告ぶっちゃけシリーズですが、思ったより好評でついに4回目まできました。

本屋に行くと、「会計ソフトを使えば青色申告も楽チンですヨ♪」という甘い囁きが溢れています。ただ、実際僕がやってみると、「全然楽チンじゃないよ。。」という衝撃の面倒さだったので、3回まではそのへんを具体的に書いてきました。

手間はある程度説明したので、今回はリターンの部分に焦点を当ててみたい。

専門家への相談料、実際にどれだけ税金がお得になるかを数字でわかると、費用対効果を計算しやすくなるからです。

このシリーズの第1回で書いたことを、数字を使ってもっと掘り下げる形。

青色申告(65万控除)と白色申告のお得金額の違いはネットでシミュレーションとかあるんだけど、本当にコスパがいいのは青色申告(簡易簿記)を入れた計算機があまり見つからないんですよね。

書籍では青色/複式簿記(65万控除)と青色/簡易簿記(10万控除)の手間は会計ソフト使えば一緒だから65万狙おうと書いているけど、複式はかなり面倒で、簡易は白色と同じ簡単さだということをシリーズ2と3で説明しました。

だから、比べるべきは青色申告/複式簿記(65万控除)と青色申告/簡易簿記(10万控除)のパフォーマンスであり、この二つを主に比較します。

ちなみにこれ、65万控除と10万控除だから、そのまま50万円分お得ってわけじゃないんですよ。紛らわしいけど。

控除はあくまで税金計算する時に所得額から引き算できる額です。なので、最終的にいくらお得になるかって具体的にイメージできている人は少ないと思う。

例えば、複式簿記で年間50万円ぐらいお得になるんだったら頑張ってやろうかなって考えるかもしれない。

でも、「え、苦労してやっても年間で5万円程度しかお得じゃないの。。複式簿記のコスパ低すぎ。。手間と学習時間、税理士さんへのお金考えると全然割りに合わんわ。。」となるかもしれない。

本屋に並んでいる青色申告の本って、この一番重要な部分をあまり深く書いてないんですよ。単純に、「65万控除だからお得です、会計ソフト使えば楽だから頑張りましょう♪」みたいなノリがほとんど。

手間とリターンがイメージできないと無駄な努力をしてしまう恐れがあります。

ただ、最終的なお得金額って、所得金額を元にした所得税、健康保険料、住民税を考慮しないと出ない。これ結構計算が面倒なんです。

でも、ザックリとなら分かります。そして、フリーランスが手間とメリットの判断をするにはザックリで十分なので、ザックリ説明します。

ザックリ計算方法を紹介

今回は所得額によって変わってくる所得税、健康保険料、住民税を対象に計算。復興特別所得税は簡略化のため省く。

健康保険は住むところによって違うのでややこしいけど、”フリーランスのための青色申告2014年度版”で記載されている東京都大田区基準を使い、40歳未満として計算します。

まず、税金は売上から経費を引いたのが所得です。

売上 – 経費 = 所得

そして、所得のあとに控除額を引いたのが課税所得。税金は課税所得から計算されます。

所得 – 控除額 = 課税所得

控除額は、白色でも青色でも絶対もらえる基礎控除がまずあります。所得税の基礎控除は38万。住民税と健康保険の基礎控除は33万。

その他、年金に払った額とか、医療費が控除に入れられたり、いろいろありますが、今回は簡略化のためにスルー。年金分や、医療費分、健康保険料分などを控除に入れると、もっと所得が少なく押さえられるとイメージしてください。

今回の比較で重要なのが、白色、青色で違ってくる控除額です。白色だと0円。青色/簡易簿記で10万、青色/複式簿記で65万です。

この違いが最終的に所得税、健康保険料、住民税の3つに影響するので、結果的にいくらぐらいお得になるか。ここがテーマです。

というわけで、いくつかのケースを例に出して書いていきます。

ケース1 赤字だった時

売上 100万 – 経費 130万 = 所得 -30万


所得税
白色/青色ともに 0円

所得がないので所得税はすべて0円。


住民税
白色/青色ともに 0円 + 均等割4000円

所得がないので、住民税の所得割は0円。一律に払う必要がある均等割だけ。


国民健康保険
白色/青色ともに 0円 + 均等割41,400円

所得がないので、健康保険の所得割は0円。一律に払う均等割だけ。


@最終的に払う合計金額
白色 45,400円
青色/簡易簿記 45,400円
青色/複式簿記 45,400円

白色申告と青色申告で税額は一緒。ただ、赤字分を繰り越せるので、青色申告/簡易簿記(10万控除)がオススメ。

青色申告/複式簿記(65万控除)で記帳してても、所得がないので控除する部分がなく無駄骨となる。ちなみに、控除額は経費ではないので赤字繰越には役立たない。

ケース2 所得は33万だった

売上 133万 – 経費 100万 = 所得 33万


所得税
白色/青色ともに 0円

所得税の基礎控除38万円分があり、33万 – 38万はマイナスなので課税所得額は0。よって所得税は0円。


住民税
白色/青色ともに 0円 + 均等割4000円

住民税の基礎控除33万円分があり、33万 – 33万で課税所得額は0。均等割だけ。


国民健康保険
白色/青色ともに 0円 + 均等割41,400円

健康保険の基礎控除33万円分があり、33万 – 33万で課税所得額は0。均等割だけ。


@最終的に払う合計金額
白色 45,400円
青色/簡易簿記 45,400円
青色/複式簿記 45,400円

白色申告と青色申告で税額は一緒。この年の赤字分の繰越はないけど、以前の赤字分や開業費が残っているなら継続できる青色申告/簡易簿記(10万控除)がコスパ高い。

青色申告/複式簿記(65万控除)で記帳してても、所得がないので控除する部分がなく無駄骨となる。

ほかにも保険料や医療費などいろいろ控除を追加できれば、所得がもう少し多くても最終的に課税所得が0になりやすい。

ケース3 所得は150万だった

売上 300万 – 経費 150万 = 所得 150万


所得税
白色 56,000円
青色/簡易簿記 51,000円
青色/複式簿記 23,500円

所得税の基礎控除38万円。

白色の課税所得は150万 – 38万で112万。195万以下の税率は5%なので、白色だと56,000円。

青色/簡易簿記だと、112万 – 10万(簡易簿記の控除)で102万。税率5%で51,000円。

青色/複式簿記だと、112万 – 65万(複式簿記の控除)で47万。23,500円。


住民税
白色 11,7000円 + 均等割4,000円 = 121,000円
青色/簡易簿記 10,7000円 + 均等割4,000円 = 111,000円
青色/複式簿記 5,2000円 + 均等割4,000円 = 56,000円

住民税の基礎控除は33万円。150万 – 33万で白色の課税所得額は117万円。住民税は一律10%なので、11,7000円 + 均等割。

青色/簡易簿記だと、117万 – 10万(簡易簿記の控除)で課税所得は107,000円。税率10%の10,7000円 + 均等割。

青色/複式簿記だと、117万 – 65万(複式簿記の控除)で課税所得は520,000円。税率10%の52,000円 + 均等割。


国民健康保険
白色 97,812円 + 均等割41,400円 = 139,212円
青色/簡易簿記 89,452円 + 均等割41,400円 = 130,852円
青色/複式簿記 43,472円 + 均等割41,400円 = 84,872円

健康保険は地域によって違うし、かなりややこしいです。。

健康保険の基礎控除は33万円。150万 – 33万で白色の課税所得額は117万円。117万 x 6.02% (医療分)と117万 x 2.34% (後期高齢者支援分)で97,812円。

青色/簡易簿記だと、117万 – 10万(簡易簿記の控除)で課税所得は107万円。上記の税率で64,414円(医療分) + 25,038円(後期高齢者支援分)で89,452円。

青色/複式簿記だと、117万 – 65万(複式簿記の控除)で課税所得は520,000円。上記の税率で31,304円(医療分) + 12,168円(後期高齢者支援分)で43,472円。


@最終的に払う合計金額
白色 316,212円
青色/簡易簿記 292,852円
青色/複式簿記 164,372円

ついに複式簿記で苦労した意味が出てきました。青色/簡易簿記に比べて、13万円近くお得になっている。

白色と青色/簡易簿記なら素人でも申告できると思うけど、シリーズ3で説明したような理由から青色/複式簿記なら専門家に決算書の指導してもらわないときつい。

手間と専門家への相談料を考えると複式にするかは悩みどころのライン。

ケース4 所得は300万だった

売上 500万 – 経費 200万 = 所得 300万


所得税
白色 164,500円
青色/簡易簿記 154,500円
青色/複式簿記 99,500円

195万円~330万円の所得税率は10%。控除額は97,500円。


住民税
白色 271,000円
青色/簡易簿記 261,000円
青色/複式簿記 206,000円

住民税は一律10%なので計算式は変わらず。


国民健康保険
白色 264,612円
青色/簡易簿記 256,252円
青色/複式簿記 210,272円

計算式は同じ。


@最終的に払う合計金額
白色 700,112円
青色/簡易簿記 671,752円
青色/複式簿記 515,772円

今回は青色/簡易簿記と青色/複式簿記の納税額の違いは16万近く。ちょっと複式簿記のやる気が出てくる金額でしょうか。手間考えるなら微妙だなと思う人もいそうです。

ケース5 所得は500万だった

売上 700万 – 経費 200万 = 所得 500万


所得税
白色 496,500円
青色/簡易簿記 476,500円
青色/複式簿記 366,500円

330万円~695万円の所得税率は20%。控除額は427,500円。


住民税
白色 471,000円
青色/簡易簿記 461,000円
青色/複式簿記 406,000円


国民健康保険
白色 431,812円
青色/簡易簿記 423,452円
青色/複式簿記 377,472円


@最終的に払う合計金額
白色 1,399,312円
青色/簡易簿記 1,360,952円
青色/複式簿記 1,149,972円

ここまでくると、青色/簡易と青色/複式で21万円の違いが出てきました。これが多いと見るか、少ないと見るか。どうでしょう。

課税所得が多くないと複式簿記のメリットは少ない

さて、具体的にいくらお得になるかを数字でハッキリさせると、だいぶ見えてきたものがあると思います。

つまり、課税所得が多くない場合は、面倒な複式簿記をしてもメリットが少ないということです。ここが本屋に並んでいる青色申告の本にあまり書いていない真実だと思う。

今回は簡略化のために、医療費控除とか、年金や保険料の控除などは入れてないけど、それらも控除できる場合はさらに課税所得が低くなります。

しかし、一年間の所得金額がいくらになるかはその年の終わりになるまでわかりません。所得が多いなら複式簿記にしたいし、低いなら簡易簿記にしたい。でも、未来のことなんてわからないのが現実。

そんな貴方にオススメの方法があります。

手間とメリットを比べて、確定申告直前に簡易簿記か複式簿記を選ぶ方法

青色申告/複式簿記の一番面倒な部分は、仕訳帳の帳簿残高と、事業用口座の残高をぴったり合わせないといけないところです。これは、シリーズ3で説明したところで、特に事業用と個人用のクレカが同じならすごい面倒。

逆に言えば、それ以外はアプリを使えば結構楽。

Taxnoteを使って普段の経費をペチペチ記録すると、自動的に複式簿記で仕訳帳データが記録されていきます。事業用のクレカがあるならfreeeやMFクラウドなどのクラウド会計ソフトでもOK。

普段はアプリで経費をかかさず記録していき、確定申告前に一年間の所得金額をみて、青色/複式簿記で確定申告するか、青色/簡易簿記でするか決めたらいい。

つまり、確定申告直前に、複式簿記の一番面倒な口座と帳簿の数字を厳密に合わせる作業をやるかどうか、メリットを計算して判断するんです。

普段の経費はアプリで自動的に複式簿記で記帳されているから、65万控除を狙うなら残りの口座明細をみて数字合わせる作業をすればよいわけです。もちろん、その年の初めの届け出は青色申告(65万控除)で出しておく。

あまり所得がなくて手間に見合わないなと思ったら、その年は簡易簿記で申告すればいいのです。

普段のお金の流れを複式簿記で記帳してても、簡易簿記で申告することはもちろんできるし、簡易簿記だと帳簿が複式ほど厳密にしなくていいので、申告が一気に簡単になります。

手間以外にかかるコスト

事業をやるにあたってコスト意識を徹底するのは大切なことです。自分の時間が一番重要なので、手間とメリットの話をしてきましたが、最後にその他のコストの話を。

まず、青色申告/複式簿記(65万控除)を目指すなら、決算書作成の時だけは専門家に相談したほうがよい、全然楽チンじゃないからという話をしてきました。

最初は専門家に記帳指導だけしてもらって、一年に一回、決算書作成の時だけ仕訳帳データを渡して変なところがないか相談しながらやってもらうというのがよいです。

税理士さんの相場は知らないけど、知り合いがいるならその人にお願いするのもいいと思います。

僕は青色申告会でお願いしたので年会費が2万4千円でした。最初に記帳のキモを教えてもらい、あとは実質一年に一回、確定申告の時に行くぐらいです。

担当者との相性がもっとも重要な部分なので、近くの青色申告会でダメだと思ったら他の地域のところでも入会できるので試すとよいです。行くのは年に2,3回もないので、多少遠くてもいい人がいるところを探そう。

僕は最初に行ったところがすごく親身な方で、たくさんの質問に答えてくれて助かった。

レシートを送って記帳代行してもらうやつはもったいない。勘定科目覚えるのは最初だけだし、アプリがあればそこまで手間ではないし。ただ、レシートを貯めて一気にやると日付確認はさすがに大変なので注意。

後は、会計ソフトのお金ですかね。簡易簿記ならGoogleスプレッドシートなどの無料表計算ソフトでも十分だし、青色申告/複式簿記(65万控除)の決算書作成を自宅でやるなら”やよいの青色申告”などの会計ソフトが必要かも。

徹底的にコストカットしたいなら、青色申告会や税理士さんに記帳指導してもらい、会計ソフトは買わずにアプリでその日から記帳し始めるんですよ。そして、1年後の確定申告の時期にアプリで作成した仕訳帳データを持って行って、事務所で決算書を作成してもらう。

フリーランスがやる必要があるのは日々の経費を記録するぐらいなので、そこだけやれば決算書作成は任せるぐらいでちょうどよい。

青色申告会や税理士さんは2月中盤ぐらいから一気に忙しくなって予約が難しくなるらしいから、できるだけ空いている1月の間に行こう。

ついでにTaxnoteもよろしく。

 

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