前回の記事、フリーランスの確定申告をぶっちゃける 2 – 青色申告/複式簿記の鬼門、クレジットカードの仕分け問題の続きを書いてみます。
前回の記事では、複式簿記でクレカの仕分けは厳密にやると凄い大変だから、通帳の引き落とし日を見ながらアプリを使うのが楽という話をしました。
ただ、それでも、個人用と事業用のクレカが同じ場合、預金口座の数字を合わせるために事業主貸とかめんどくさい仕分けがいろいろ出てくると書いたら、「そのへんを詳しく。。」と言われたので書いてみます。
個人用と事業用のクレカを分けろとは言うけれど
さて、個人用と事業用のクレカを分けないと複式簿記の記帳がいろいろと面倒になるという話なんですが、「じゃあ、分ければいいじゃん」という当然の疑問が出てくると思う。
しかし、個人と事業のクレカを分けるというのも、これはまたこれで面倒なのです。
フリーランスを始めたばかりの人だと、クレカをもう一つ作るのも審査あるし、いろいろなサイトで登録したクレカを、事業と個人で明確に区別できない場合もある。
つまり、口座を分けるのは面倒だけど、口座を分けないと複式簿記の記帳が面倒。どっちも面倒。
どうすんの?となった時、事業が大きくなるまではクレカは同じ人が大半だと思うので、その場合にどう記帳が面倒かを書くというのが今回のテーマです。
ちなみに、個人と事業の口座は分けるのが会計の原則なのですが、小規模な個人事業の場合、事業が大きくなるまで一緒でもいいよということらしい。
ここで当然のように僕が疑問に思ったのは、個人事業が小規模かどうかを具体的にどう判断すればいいんだということです。
本を読んでいても、具体的に”所得がいくら以下なら小規模とみなす”とかそういう記述は見当たりません。ここ、とても重要なとこなんですが、なんで説明がないんだと。
税務署に聞いてみたら、特に決まりはないのでケースバイケースらしい。
明確な基準がないから、事業内容とか総合的に判断してもらうしかないと。まあ、税務の事を勉強して思ったのは、特に個人事業だと明確な基準がない部分が多いのでしょうがない。
口座の数字を合わせる面倒さ
個人と事業のクレカが同じ場合、つまり、個人と事業で使う銀行口座も同じ場合は複式簿記の記帳が面倒です。
複式簿記で記帳する場合、銀行口座の通帳と仕訳帳の数字をぴったり合わせる必要が出てくるので、個人用と事業用のお金の出入りをいちいち仕訳しないといけない。
というわけで、今から面倒だということを説明するために、いくつかの例を書きます。
あらかじめ断っておきたいのは、この後の説明を読んでも、口座の数字を合わせる記帳方法は理解できないということです。なぜかというと、ルールと科目名が直感的に意味不明で、専門家のアドバイスを聞きながらじゃないと分かり難いからです。
なので、個人用と事業用の口座をひとつにした時の複式簿記がいかに面倒か。これだけをなんとなく理解してもらえたらOKです。
前回の記事で紹介したクレカの明細を見ながら、引き落とし日で記帳するやり方を前提として、銀行の通帳が下記のようだったとする。
2014/05/05 15,000円 事務所レンタル料
2014/05/05 80,000円 振替 カード引き落とし
この場合、事務所レンタル料を経費として計算して、
2014/05/05 地代家賃 15,000 / 普通預金 15,000
と普通に記帳できる。
でも、個人と事業のカードが一緒の場合、80,000円全部を事業に使ったわけではないですよね。明細を見ながら事業用の経費だけを記帳していって、個人用に使った金額は経費として記録していない。
例えば、80,000円の引き落としの中で、50,000円分が個人用に使って、30,000円分が経費として使った金額だとする。
明細を見ながら事業用に使った支払いは2つだと特定して下記のように記帳したとします。
2014/05/05 事務用品 20,000 / 普通預金 20,000
2014/05/05 交通費 10,000 / 普通預金 10,000
この場合、80,000円の引き落としが通帳にはあるのに、仕訳帳に記録されるのは30,000円分だけだから、数字が合わなくなります。
考え方としては、個人と事業で使っている口座はもともとは事業口座であり、個人用に使うお金は、事業用の財布から個人にわたす認識になる。
なので、通帳と仕訳帳の数字を合わせるために、カード払いで個人用に50,000円分は下記のように記帳しないといけない。
2014/05/05 事業主貸 50,000 / 普通預金 50,000
これで通帳の数字と仕訳帳の数字が合いました。お疲れ様です。
さて、複式簿記では通帳の数字と仕訳帳の数字をしっかり合わせないといけないけど、経費や個人用として使う現金を事業用の口座からわたす時も
2014/06/12 現金 50,000 / 事業主借 50,000
とかやらないといけない。もうなんだかよくわからなくなってきました。とにかく面倒で分かりづらい。事業主借とか、事業主貸とか、もう直感的にぜんぜん分かりづらくてクソUIすぎます。
ちなみに、この通帳と仕訳帳の数字を合わせる作業の面倒さはクラウド自動会計サービスを使っても一緒です。自動会計は通帳の記録から、勘定科目を自動判別して記帳してくれるということなので。
freeeやMFクラウドなど、クラウド自動会計ソフトは事業用のクレジットカードがある場合は相性抜群だと思うけど、個人と事業用のクレカ併用している人が使うと逆に混乱するかもしれない。
この作業は真面目に専門家に相談しながらやらないと、数字が合わなくなってめちゃくちゃになる。
適当に記帳していって、決算の時に無理やり数字を合わせるために事業主勘定を強引に使い、税務署に指摘されるとかもよくあるらしい。
それでも小規模な事業だったら税務署もちゃんとチェックしてないんですかねと聞いてみたら、最近はネットでの収入を申告してない人が凄く増えているので、税務署もそのへんかなり強化するとハッキリ明言しているとか。どうなんでしょ。
一番効率よさそうなのは、事業用のクレカを作る、クラウド自動会計で仕分け、現金部分はアプリで記録、クラウド会計がわかる専門家に決算書を作成してもらうことだと思う。
ただ、小規模な個人事業主だとクレカもわけないし、税理士へ依頼するとコスパが悪いから、どうしようっていうのがこのシリーズのテーマなんですね。
複式簿記での確定申告は難しい
というわけで、個人と事業のクレカを一緒にした場合、上記のようにアホみたいに難解になって、複式簿記の確定申告はぜんぜん簡単じゃないというのが僕の結論でした。
経費の記録はそんなに難しくないんだけど、通帳と数字を合わせる部分が面倒で、どこかしら変なところが出てくる。なので、初めての決算書作成だけは専門家のアドバイス聞きながらやらないと厳しすぎると思った。
ちなみに、いろいろな青色申告の本を読んでいて、一冊だけ、ウルトラ簡単な方法を提案している「簡単仕訳帳」でトクする青色申告」という本がありました。
小規模な個人事業主はすべて事業主勘定で済ませればよいというやり方で、事業用の仕分けをすべて事業主勘定で済ませるという方法。
例えば、経費となるお金をクレカで払っても、現金で払っても、すべて事業主勘定でやる。こんなの。
2014/06/12 交通費 2,000 / 事業主 2,000
僕は、「なんだこの簡単さは、他の本に書かれているやり方と全然違う。」と思い、青色申告会の担当の方に、「この方法でやってもいいですか?」と聞きました。
そしたら、いや、これはさすがに複式簿記の意味がなくなるからまずいんじゃないかな。。と言われ、そんなもんかと思って使ってないのですが、一応こんな本もあるよと紹介しておきます。
そこまでして青色申告(65万控除)複式簿記をする意味あるのか?
さて、ここで一番最初に書いた記事である、青色申告(10万控除)の簡易簿記のほうがコストパフォーマンスいいんじゃないか?という疑問にブーメランのように戻ります。
だって、簡易簿記だったら白色申告とほぼ一緒で、通帳の数字と仕訳帳の数字をチマチマ事業主勘定使って合わせるとかまったくいらない。スーパー簡単になる。
次は青色申告/簡易簿記(10万控除)と青色申告/複式簿記(65万控除)で、年間でどれだけお金がお得になるのかを具体的に分析し、複式簿記のコストパフォーマンスを計測したいなと思い、第4回も書きました。
フリーランスの確定申告をぶっちゃける 4 – 青色申告/複式簿記に苦労したところで、白色申告や青色申告/簡易簿記に比べていくらお得になるの?
ついでにTaxnoteもよろしく。
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*家計簿と読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら。