リーンスタートアップという、出来る限り少ないコストで仮説検証を繰り返していく新規事業の手法があります。
この方法論は、バズワードを作るのが上手なアメリカ人によって、数年前瞬く間に広まり有名になりました。スタートアップ界隈で流行り始めの頃は「リーンスタートアップはすごい重要!」という雰囲気だった。
でも、あまりに有名なバズワードになると、ちょっとみんな口に出すのが恥ずかしくなったり、「あれは前々から〇〇では常識で当たり前のようにやってたことであり。。」とか、「あれはダメだよ。なぜなら。。」という言説が増えていったのを覚えてる。
そして、僕自身は、当時Dropboxの事例やら、いろいろ参考にして、自分のアプリ開発に取り入れて大いに参考になったのです。
実は、この方法論を最初に知った時に陥りがちな落とし穴とか、悩みとかについて書いたメモを先日発見しまして、せっかくだからブログ記事にすることにした。
なんでメモのままだったかというと、「うーん、これ書いてみたものの、今更この話題はどうなんだろ。。」といった気分でお蔵入りになってた気がする。
というわけで、話を進めたい。
まず最初に、このリーンスタートアップ、本を読んで、ふむふむ、じゃあこんな感じで新規事業やってみるかと実践に移すとき、よくある落とし穴があります。
製品を作る前に顧客を探す仮説検証をして、需要を見極めてから作るというのがリーンスタートアップのキモなんだけど、いつまでも仮説検証し続けてしまい、なかなかプロダクトを作り始めないという落とし穴。
というか、リーンスタートアップを勉強した時に僕自身がハマった落とし穴で、リーンスタートアップあるあるなんじゃないかと。
スティーブブランクもブログで、生徒でこの落とし穴にハマった人がいたよと書いてたし。
この落とし穴にハマる最大の原因は恐怖が関係してる。
需要があるかわからない恐怖
リーンスタートアップの本を始めて読んだ時は、「おお、この手法通りにやれば簡単やないか。素晴らしい!」と気分が乗ってくる。
というのも、アプリやサービスを作る時、一番の心配事は苦労して作っても誰も使ってくれないんじゃないかという恐怖です。人間誰しも無駄なことはしたくないもんです。作る過程事態が楽しいからそれ事態が報酬だという気持ちもあるが、結果はまったくいらないと言う奇特な人はまずいない。
やっぱ成功する希望を心にせっせとモノ作りをするはずなんですよ。この誰しもが持つ恐怖感により、いつまでも顧客を探し続け、まだ確証が持てないからもうちょいユーザーインタビュー続けよっか、となってしまうやつです。
僕はLisgo作る前に、自分が欲しいアプリでユースケースもばっちしイメージ出来てたのに、だらだらインタビュー繰り返してた苦い記憶があります。ほとんどの人がいらないと言ったので、ターゲットユーザどこにいるんだよと時間浪費してた。
知り合いの石橋さんに相談後、自分がまず使いやすいようにしてリリースしてみたら、勝手にユーザーが質問や要望送ってくれるようになりました。
ようは、自分が最初のユーザだったり、どういうものが欲しいかを把握していたら、それをバックアップしてくれるユーザを探し続けて安心しようとするのは時間の無駄だと、この時思いました。
作り始めるタイミング
でも、どのタイミングで作り始めればいいのよ?というのが自然な疑問なんだけど、ユーザーの問題とそれを解決する製品アイデアが出来た時がよいと思う。
逆に言うと、問題を十分把握している時は、さっさとリリースする事に時間を使ったほうがいい。
例えば、自分がユーザーである製品の場合、似たような人を探すことに時間を使うより、最低限のプロダクトを作り始めたほうがよい。
実際に何人の人が使ってくれるか、どれだけの人がお金払うかはリリースしないとわからない部分なので。人間、インタビューでは評判よくても、実際に製品を前にするところっと意見が変わる。
ただ、解決する問題をハッキリ理解してない時は、市場調査を先にしたほうが効率いい。
ちなみに、「ユーザーに欲しいもの聞いても意味ない」という市場調査に対する批判があります。確かに欲しいものかどうかはリリースしないとわからないけど、ユーザーの問題は理解してないと誰も使わないもの作っちゃう危険性が凄い高いです。
Taxnote作る前は、自分が確定申告の帳簿入力をアプリでやりたいという明確なニーズを持ってたけど、申告制度や、人気ソフトの使われ方は知らなかったので、アプリ作り始める前に相当研究しました。
時間の投資効果で決めればいい
結局は、市場調査にかかる時間と製品作る時間のトレードオフで考えればいいと思うんです。
ターゲットユーザーを探して、アポ取って、インタビューする時間がまったくかからない環境ならリスクも低い。普通はターゲットユーザー探すのに苦労するから時間かかるけど。
そして、製品作り始める段階では、どの機能が一番早く作れるかではなくて、どの機能が一番重要かをまず先に考える。そのプロダクトに需要があるかどうかを検証するにはどの機能が最低限必要かを考え、その最低限必要な機能からリリースして、仮説検証するまでの時間を可能な限り短くする。
結果的に、その他のナイスな機能は後回しになると思います。その時一番重要な検証部分を決めて、小さく進んで行く。
向き不向き
リーンスタートアップが向く製品と向かない製品があるので、応用できないものに無理して応用しようするのも落とし穴。
例えば、ガンの特効薬とか痩せる薬に市場調査なんていらない。需要があるのは明白だから。重要なのは、副作用なく効果のある薬を開発できるかどうかであり、そこに時間使えばいいわけです。
逆に、プロダクトハントみたいな、メーリングリストから小さく始められたサービスは、まさに、ぴったりハマった事例。
偉い人がディスってたよ?
ピーターシールとかマークアンドリーセンが、「リーンスタートアップが流行してるけどいかがなものか」的なことを少し前に言ってたりする。
でも、あれはよく聞くと、早く失敗するという風潮が大きくなりすぎて、失敗することが目的になったり、すぐ諦めて方向性を変えることに対していかがなものかと言ってるわけで。
言動の一部分だけ切り取って、「そっかー、リーンスタートアップなんてただのバズワードで意味ないんだー」と早合点し、振り回される必要はないと思います。
仮説検証を小さく区切り、フィードバックを聞きながら、トライアンドエラーを繰り返す。単純にこれを忠実にやるだけなので。
現代では、最初から完成度ないとダメじゃない?
よくある悩みとして、これもある。
ようは、「第一印象がとても重要だから、競争の高い現代では、最初から完成度の高いものをリリースしないとダメだ!」という意見です。これも、モノによりまして、例えば、人の命に関わるハードウェア、車とかなら、最初からある程度の完成度は重要です。
ただ、ソフトウェアやアプリでそこまで考えると、逆に自分の首を絞めることになると思う。
というのも、ユーザのフィードバックを参考に改善していくレールにいかに早く乗るかがキモなので、これを遅らせると、完成度の高いアプリが出来上がるまでの時間がその部分遅れる。
さらに、どんなものでも、一度作ったものを完全に破棄したり、やり直ししたりするので、そのやり直しリスクも遅らせるほど高まります。
そうは言っても第一印象が重要は重要だよ?というのは直感的に思うけど、別に、一目惚れしたたった一人の女の子に渡すわけではないんですよ。将来、たくさんの人に届ける予定のサービスを作っているなら、たくさんの初回ユーザーがいるから大丈夫。
それに、最初からたくさんの人が群がってこないもんです。最初に来るのは、本当にその製品が刺さる人だけなんで、そういう人こそ、長い目で見ながらフィードバックをしてくれます。
ちなみに、最初から宣伝にお金かけたり、テククランチに乗らない方がいいのは上記の流れが阻害されるからでもあります。
さて、これこれの理屈が分かっていても、宣伝も最小限に抑え、小さくスタートすることがままならないケースがあると思う。思いつく限りでは、会社のブランドが傷つくから、小さくスタートできない場合とか。
これは大きな組織のデメリットなので、失うブランドがない、小さなスタートアップや個人開発者はスタート地点から有利に立っているということになる。
小さな組織が大きな組織と戦うには、相手が真似できないことで競争有利になることを、トライアンドエラーでやりまくればよいと思います。
*家計簿と読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら。