先日、ジュンク堂に寄ったら、ワッサーマンの「The Founder’s Dilemmas」の邦訳本が並んでるではないですか。

起業家はどこで選択を誤るのか――スタートアップが必ず陥る9つのジレンマというタイトル。

スルーしかけるタイトルだった。

おお、こんなマニアックな本の翻訳本が出ているとはと思い、サラサラっと目次を読んでみたら、やっぱこの本は面白そうだ。

面白そうなんだけど、まだ読んでない。なんか教科書みたいに太いのと、値段が高いから買うのを顕著してしまったのだ。

ハーバードの教授が研究を元に執筆した本だから太いんだけど。

でも、一時間ぐらいあるThe Founder’s DilemmasのPodcastは昔聞いたので、それについて書いてみる。

たしかスタンフォードのPodcastだったはずなんだけど、どうも見つかったヤツは短いのしかない。

Joelが推薦してる

この本について知ったのは、Joel SpolskyがTwitterで薦めてたから。

ちなみに、Joelさんのブログ記事はかなり深くて好きだ。

文章も上手いのだけど、Joelさんがユニークなのには理由がある。

マイクロソフトという大企業で勤め、自己資本で受託会社、コンサル、自社サービスを作り、なおかつ、StackOverFlowが成功したため、資金調達での急成長を目指すスタートアップも実際にやってるので、それぞれの側面を語れるユニークな人なわけです。

YC主催のスタートアップスクールでの講演も期待通り面白かったし。

ちなみに、ブートストラップ(自己資金での起業) vs スタートアップ(投資を受けるやつ) というテーマは常にホットなトピックで、Rails作ったDHHとかが油をそそいて、よく、やんややんやとなる。

もちろん、この二つのメリット、デメリット、会社のコントロールを優先するか、大成功とスピードのジレンマもこの本では扱っているようです。

ファウンダのジレンマの授業が面白い

実は、以前聞いたファウンダのジレンマの授業の1時間分のトークは、Podcastで聞いた覚えがあるんだけど、これがめちゃくちゃ面白い。

短いバージョンしか見つからなかったけど、以下はリンク。

  • 創業は一人でするか共同創業者とするのがいいか。
  • 共同創業者と起業するなら、資本比率は5:5がいいのか、片方が決定権を持つぐらいなのがいいのか。
  • 自己資金でやるか、投資を受けてやるか。
  • 学校を卒業してすぐに起業するか、一度企業で勤めて経験をつんでからやるべきか。
  • こういう、スタートアップあるあるなジレンマの数々を、ケーススタディだけでなく、実証的な数字を元に語っている研究結果なので面白い。

    普通はその人個人の経験から、自分が選んだ道をもとに「こっちのほうがいい。なぜなら自分の経験から〜」と薦めてくる場合がほとんど。

    でも、ワッサーマン先生は、CEOがIPOした後に取締役会から追い出される確率は何%だとか、共同創業者と一緒に起業した場合、途中で分かれる確率は何%だとか、とにかく研究結果からなる数字を出してくる。

    具体例となるケーススタディも面白い、

    別に統計結果がどうだろうが、自分の選んだ道を行けばいいと思うけど、実際のデータを元にした話には価値があると思う。

    なぜかというと、人間は分かりやすかったり、感情に訴えやすいストーリーを聞いた時、どうしてもそれがマジョリティだと頭の中でインプットする。

    あと、成功における運の比重が大きい分野になるほど、実際の確率を見誤りやすい。

    例えば、Facebookを作って大金持ちになったザッカーバークがいるけど、似たような事を目指しても、もの凄く成功確率は低い。

    でも、大リーグで大活躍するダルビッシュみたいになるよりも、ザッカーバーグになるほうが可能性ありそうと感じるかもしれない。

    ブラックスワンによると、運の比重が大きい分野ほど、人間は実際の確率を判断するのに不自由になり、ダルビッシュになれる確率はある程度正確に見積もれるけど、ザッカーバークになると不自由になるらしい。

    もちろんザッカーバーグは凄い実力と頭脳を持ってこそで、あれは運だと言っているわけではなく、確率の見積もりの話なのです。

    だからいろんな反証の連続を数字と具体例で見せるこの本は面白いと思う。

    答えはないから自分で決断するしかない

    ワッサーマンの授業を見てよかったのが、こっちのほうがオススメだという答えを提案しているわけではなく、ジレンマとリアルな数字をマシンガンのように延々と話しているところ。

    「A案のメリットはこれで、デメリットはこうだ。一方、B案ではこれが解決するが、デメリットはこれだ。一般的にはこういうイメージだが、実際の数字はこうだ。」という形式。

    それを踏まえて、こういう情報と数々の事例が君たちの意思決定に役立つといいね、グッドラック!といったスタイルだった印象。

    この本を読んだら、似たようなジレンマで悩んでいる人はさらに悩むかもしれないけど、数々の反証を知る事はよりよい意思決定には繋がるかも。

    そのうえで決めた事は知らずに判断するよりいくらかよいだろうし。

    それをふまえ、統計データがどうであれ周りがなんと言おうと俺はこうだという、自分の納得する決断であれば素晴らしい。

    こういっちゃなんですが、最終的には理屈じゃなくて、好みで決めるべきだと思います。


    *家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら