マイクルルイス原作の世紀の空売りの映画、ケアンズのガラガラの映画館で見てきた。タイトルは原題と一緒でThe Big Short。

ちなみに、ガラガラすぎて指定席さえもなかった。値段は1000円ぐらい。安い。

原作が面白いから、かなりの期待を持って見たんだけど、期待以上の出来でめちゃくちゃ面白かった。

リーマンショック引き金になった住宅バブルで空売りして、何百億以上を儲けたヘッジファンド達の話なんだけど、映画はうまいことエンタメになってるし、崩壊を招いた腐敗や金融業界の腐敗に対する描写も面白い。

CDOとか、サブプライムローンとか、複雑な金融商品も、わかりやすく、なおかつ笑えて楽しく説明していたのが印象的。

ちなみに、詐欺金融商品を作って儲けてた金融業界の詐欺師達への怒りもしっかりと映画では表現している。本当は複雑な世界なんだろうけど、映画なので悪者をはっきりとさせている感じ。

ヘッジファンド達はリスクを取って一世一代の勝負に出るからまあフェアなんだけど、詐欺商品を作って、失敗したら国民の税金で救済される金融業界に対する怒りを表現しつつ、面白いエンタメになっている。

義眼の孤高の投資家マイケル・バーリが、ゴールドマンサックスに行って、ものすごい金額の空売りのポジション取りに行くところが面白かった。

ゴールドマンの人たちは、「こんなディールするなんて、こいつ正気か?」みたいな顔でバカにしてて、バーリが「万が一の時もちゃんと払えるのか?」と確認して本当に購入して帰った後に、みんなで、「あいつ本当に大間抜けだよー」みたいな態度の描写。

他にも、空売りという性質上、本当に市場が暴落するまで顧客に「訴える」とかひっきりなしにメールが来て、それに精神的に耐え続けるバーリの描写とかも最高だった。

他の登場人物として、性格がめちゃ悪くて口の悪い、Mark Baumというやつが出てくるんだけど、こいつがひたすら金融業界の腐敗に怒りを燃やして、言いたいことを言ってくれるというキャラで、エンタメになってる。

あんなに複雑な金融商品と、どうやって儲けたかの空売りの仕組みを、短い映画の時間で上手いこと、楽しく説明しながらエンタメにしていた監督の手腕に脱帽でした。原作は史実をもとにしたノンフィクションだけど、映画は原作をもとに、結構いろいろな部分を脚色したり、変えたりしてる。

タレブが最近書いたエッセイによると、ヘッジファンドのおかげで、現代の金融業界は以前ほど崩壊しづらくなっているとか。むしろ危険なのは、オイルに頼りきっている中東の国経由の経済危機らしいです。

世紀の空売り原作に関しては、この解説がわかりやすい。
ついに文庫化! 『世紀の空売り』世界経済の破綻に賭けた男たち、マイケル・ルイス、東江一紀(翻訳) – 金融日記

そういや、最近のポールグレアムのエッセイで、「優秀な若者が金融業界に行くのは、金融業界が好きだからじゃなくてお金が好きだから。スタートアップする若者はお金もあるけど、世の中を変えたい気持ちがあるから。」というようなことを言ってて、金融業界を目指すより、スタートアップしたがる若者が多い世界の方が望ましいというようなことを書いてた。

こういう映画って、メッセージとしては腐敗した金融業界を批判してるんだけど、皮肉なことに、ボロ儲けしている人たちが出てくるこの映画を見て、金融業界に入ろうと思う人が増えるっていう現象もあるんだろうなと思いました。


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