ブラックスワンという不確実性を扱った本があります。
この本は人生で最も影響を受けた本といっても過言ではないので、最近もう一度読み返してみた。
以前読んだのはこの本が発売した2009年の6月だと思うから、4年ぶりぐらいにしっかりともう一度読んだ。やっぱ素晴らしい本だった。
4年前といえばサービスもアプリも作り始めてなかったし、プログラミングさえもやってなかった。
単純にその頃は行動経済学とか歴史とか金融とか科学とか、そういう本を読むのが好きで、ブラックスワンはその中でも特に面白かったけど、今読むともっと面白かった。
というのも、3年前ぐらいからプログラミング初めてWebサービスやらアプリを作るようになったのが大きいと思う。
予測ができない事象の数々
プログラミングする時は、将来どの程度まで開発を続けるか、どの程度までスケールするかが分からない中、なんとか変化に柔軟に対応できるようにしつつ、なおかつ目の前の効率とのバランスを考えながら設計を考えないといけない。
機能の開発にどの程度の時間がかかるかも不確実で、あたらしいことをやる時は思ってもみなかった部分でハマって時間を食うということがよくあります。
もっと分からないのは、どんなWebサービスやアプリがヒットするかどうか。後から説明をつけるのは簡単だけど、なにがどの程度ヒットするかの予測はほんとわからない。
ブログ記事でも、どの記事がどの程度バズるかはわからなく、まさかあの記事があそこまで読まれる事になるとはという現象がよくあります。
ここで重要なのは、ある程度予測できる部分と不確実で予測は不可能な部分、いろいろな事象があり、ブラックスワンという本はそこをもの凄く詳しく書いている。
科学は大災害を予測できるか とか、最近ではシグナル&ノイズなど、予測系の本はいろいろあるけれど、これらの本は予測が難しい事象にどの程度まで挑めるかという内容でした。
短期的には予測がある程度可能な事象と不確実で予測は不可能な事象の違いを詳しく説明し、それらをどう区別してつき合うかまでを描いた点でブラックスワンは別物で、そこがこの本を特別なものにしていると思う。
不確実性とは不完全情報のこと
僕もよくこの罠にハマるのですが、どうしても「正解」というもの、正しい道筋というものを求めがちな事がよくあります。
アプリの設計なら、将来Webサービスまで拡大するかも、ソーシャル機能をつけるかも、月額課金に移行するかも、などなど、いろんな将来の可能性を見越して可能な限り柔軟な設計にしたいと。
往々にして、柔軟性と目の前の開発効率がトレードオフになって悩む。さらにいうと、アプリ自体のシンプルさとのトレードオフにも悩む。
いろんな拡張性を残したいという気持ちと、最小限の機能でシンプルなものを最初に作る時のトレードオフにも悩む。
ああだこうだ悩みながら、現時点での最善の進め方はこれだなと決めて前に進むわけですが、やっぱ間違ってたという時も往々にあります。
アプリのアイデアを考える時も、設計を考える時も、後から無駄だと思うような事はしたくない、可能な限り成功の精度を高めたいと思うのが人間の性です。
不確実に見える事象にも実は法則性があり、本当はなにか正しいやり方があるのでないかと。
そんなもやもや感を持っていたのですが、ブラックスワンではこう書かれています。
現実的にはランダム性とは不完全情報のことである。
現実のランダム性を相手にしていない人には、この微妙な違いがわからない。〜中略〜
真にランダムなシステムとは、本当にランダムで、予測できる要素をもっていない。カオスなシステムは完全に予測可能な性質を持つが、それがとてもわかりにくい。〜中略〜
現実的には、これら二つが果たす役割はまったく違わない。私たちは二つを区別できないからだ。二つの違いは数学的なもので、現実的なものではない。
お腹の大きい女性がいるとして、子供の性別は私にとって純粋にランダムだ。でも、その人がかかっているお医者さんにとってはランダムではない。もう超音波で判定しているかもしれない。
現実には、ランダム性とは不完全情報のことである。〜中略〜
結局、ランダム性とは不知、つまり知らないことにすぎない。世界はぼやけていて、ちょっと見ただけでは私たちはだまされてしまうのである。
カーネマンのファスト&スロー に詳しいのだけど、人間は過去を振り返って因果関係を作り出す性質があるらしい。
新しいアプリやサービスのアイデアで言うと、ある程度のとっちらかった状態で小さくトライ&エラーをするしか道はないので、不確実性と上手くつきあう方法を選択するのが得策だなと思った。
よい不確実性とうまくつき合う部分、悪い不確実性に備える部分について、アプリ制作やブログにどう応用するかをうんうんと考えているので、また書いてみたい。
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*家計簿と読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら。