今後、社会問題になりそうなのが、AIとの協業によるオーバーワークだと思う。すでに、この数ヶ月で体験したので、どんな感じか説明してみたいと思います。

まず、新しいテクノロジーが出てくることによって、人間の生活や働き方が変わり、新しい問題が出てくるのは世の常です。

インターネット普及時は、Google検索が人間の脳みそにどれだけ影響を与え、昔より人類の考える力がどんどん失われていっていると、ニコラス・カーが本で言っていました。

スマホ普及後は、『スマホ脳』という本が出て、スマホ依存によって、どれだけ僕たちの脳の集中力が低下しているかという話をしていました。

そして、今度はAIです。AIはインターネットやスマホを超える便利さを持っているので、さらに影響力は大きいと思う。

普通の人が使うAIだけでも、調べ物、検索、相談と色々あって影響はあるんだけど、今回は仕事での「バックグラウンドエージェント・オーバーワーク問題」に絞って書いてみます。

前の記事で書いた通り、IT系の人、特にエンジニアはAIをガンガン使っている人が多いので、その他の職種よりAIによるストレス問題を先取りしていると思う。

Claude Codeとか、バックグラウンドエージェントを並列で使いまくっている人は、経験しているはず。でも、そういう人はまだ少数派だと思うので、このオーバーワーク問題のしんどさを説明してみます。

数ヶ月前からIT界隈で爆発的に普及しているのが、Claude Codeというバックグラウンドエージェントです。ChatGPTも、Googleも似たようなのがあるんだけど、全部、バックグラウンドでゴリゴリとタスクを仕上げてくれる優秀なAIです。

これ、かなり難しいプログラミングをじっくり時間をかけてやってくれるんですね。10分とか20分とか、じっくり。

だから、サクッとすぐ返事を返すAIとは違って待ち時間がある。その分、プロジェクトのことをじっくり認識して、こちらの細かい指示を理解して、サクッと返すAIより良い結果を出してくれる。

じゃあ、待ち時間にゲームしたり漫画を読んでゆっくりできるやん、最高やん、と思うじゃないですか。そうはいかないんです。このバックグラウンドエージェントは、同時に何人も並列で動かすことができるんです。

自分がレストランの料理長だとすると、部下の料理人Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんと、何人でも同時に働いてくれる。

となると、Aさんに新しい料理メニューを考えてもらいながら、Bさんに仕込みをやってもらって、Cさんには店舗の掃除をしてもらって、Dさんには……と同時進行でいろんな仕事をやってもらえる。

こうなってくると、Aさんが「新メニューの味見してくれ、こんな感じで良いか?」と聞いてくるので対応して、「うーん、もう一味足りないな。そうだ、味噌を混ぜてみるのはどうだ?」とか指示している間に、Bさんが「仕込み終わりました!こんな素材も入れたけど、どうですか?」と聞いてくる。

新メニューのアイデアを吟味していると思ったら仕込みのことも考えないといけなくなって、そうこうしている間にCさんが「掃除は終わったけど、今度、窓拭き用の道具を買ってもいいですか?」と指示を求めてくる。

こうなると、自分は手を動かさなくて楽なんだけど、並列でいろんなことを考えないといけないので脳みそフル回転。めちゃくちゃ疲れるんです。

だから、ずっと集中していたら数時間でぐったりする。でも、自分が確認、計画、指示出しを止めると、みんなずっと作業止まったままになる。その間の時間がもったいない気分になってしまう。

都内の一等地に土地を持っているのに、店が毎日数時間しか営業していないみたいな。

もったいないので、仕事が終わった後、パソコンから離れても作業を続けてもらうよう、指示を出してお出かけするとする。

そうすると、仕事時間は終わったのにスマホに進捗アラートが来て「ここまで出来たけど、どうしましょう?」と確認や指示を仰がれる。

こうなったら、AIで楽になるはずが、さらに競争が激しくなって、ずっと仕事から頭が離れないベンチャー企業の社長さんみたいになる。頭の片隅に常に考え事があるようなストレス状態が続いてしまう。

いやいや、AIが勝手に自律的に判断して進めてくれるぐらい頭が良くなればいい、と思うかもしれないけど、そういう未来は来るんですかね。

人間がAIに求めるのは「賢さ」と同時に「スピード」でもあるから、結局、速さも上がって、複数の「出来ました!」に対応しないといけないのではないだろうか。

実は僕も、仕事終わりにバックグラウンドエージェントを止めるのがもったいなくて、最後に指示を出して終わったりしていました。すると、仕事終わりに「出来ました!」の通知が来て、それを確認して、また続きをスタートさせたくなって……とループに陥りました。

結局、1日中ずっと仕事が頭から離れない状態になって、目の前のことばかり考えるトンネル化現象にハマってしまった。なんか、全体を見れなくなるというか。

というわけで、最近はちゃんと仕事時間を制限して、時間が来たら絶対にAIエージェントも止めて仕事をしないルールを、もう一度しっかり守るようにしました。

すると、1日が晴れ晴れとした気分で過ごせるようになり、新しいことを学ぶ勉強時間もできて、ブログまで久々に書けました。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら