先日、ふとツイッターを覗いたら、StripeがiOSに対応して、iOSでも簡単にWeb側の決済できるようにしたという投稿があった。

これはめちゃ使いやすいな、最高だわ。特に最近、AIをバックエンドにアプリを開発していくような流れなので、従来の月額プランだけでなく、AIを使う頻度に応じて従量課金オプションもつけたいから丁度いいじゃないかと思ってました。

しかし、よく考えると、ずっとStripeがiOSアプリの外部決済対応してなかったのは、AppleがiOSアプリに外部のWeb決済を禁止していたからなんですよね。AppleがiOSアプリ開発者に対して、課金する時は15%〜30%の税金を課している。

一年に100万ドルの売上以下なら、15%に割引するよという処理を数年前にスタートしたけど、これでも5%程度のクレカ使えるWeb決済に比べてかなり高い。

僕みたいな小さい個人開発者は、まあこれでもいいかって感じでやっとるけど、SpotifyとかNetflixとかでかい会社にとっては大きな違い。なんとかしてクレカ決済したいところだけど、そこはAppleさんのプラットフォーム力には対抗できなかったわけです。

しかし、Forniteを運営しているEpic Gamesという、iOSアプリから締め出されても他のプラットフォームで収益性が十分あって戦える大きなゲーム会社が反旗を翻しました。そして、Appleに対して裁判で訴えてました。

開発者側としては、「いいぞ、頑張れ」みたいな感じで応援していた人が多いと思うんです。そして、数年ほど前にEpic Gamesが裁判で勝利。おお、これでついにクレカ決済もiOSアプリから誘導できるようになるか! とみんなが思ったところ、Appleが色々な手段を講じてこれを無効化してたわけです。ここはややこしいので割愛するけど。

そんなこんなで、僕なんかは、毎日のAIの進化についていくのが精一杯で、このニュースをすっかり忘れてたわけです。

そんな折、なんと、Epic Gamesがこの裁判でAppleに再度勝利し、アメリカの裁判所にAppleがこっ酷く怒られるというニュースを目にしました。

なんか、Appleが再度この裁判で負けて、今回は規約を変更し、本当にiOSアプリから外部のクレカ決済に誘導できるようになった、と。これはびっくりのニュース。

最近は、もう自分で調べるのが面倒なので、ChatGPT o3に調べてもらったら、1分ちょいですごいいい感じのまとめが返ってきた。ちなみに、プログラミングはGemini 2.5 Proが一番良いけど、リサーチはUIの見やすさと精度と速さでo3を使ってる。

何が起きたのか

2025-04-30 米国(カリフォルニア北部連邦地裁)

  • Yvonne Gonzalez Rogers 判事が、Epic Games 訴訟で2021年に出した“アンチ・ステアリング差し止め命令”にAppleが故意に違反したと認定
  • Apple に対し、外部決済リンク経由で課していた27%「外部決済手数料」の即時撤廃を命令
  • ユーザーを威圧する警告ポップアップ(いわゆる「怖がらせ画面」)を禁止
  • Apple と財務担当 VP を刑事コンテンプト(裁判所侮辱罪)で連邦検察に送致

2025-04-24 EU(欧州委員会)

  • Digital Markets Act (DMA) の“アンチ・ステアリング”義務にAppleが違反したと発表
  • 5億 € の制裁金に加え、是正が済むまで最大売上高の10%に相当する追徴金を科す用意があると警告

Apple が取った直近の対応

日付 対応 主なポイント 対象地域
2025-05-01 App Store Review Guidelines 改定 ガイドライン 3.1.1 / 3.1.3 から「ボタン・外部リンクの禁止」条項を削除。外部リンク用 entitlement も不要に 米国ストア
2025-04-30 27% 外部決済手数料を停止 裁判所命令に従うと声明。ただし判決には不服として控訴予定 米国
2025-01〜 EU 向け “DMA 準拠策” EU 限定で20% + €0.50「Core Tech Fee」を表明 → 委員会が“非準拠”と認定 EU

今後 iOS アプリで出来る/出来ないこと(2025年5月2日現在)

項目 米国ストア EUストア それ以外の地域
アプリ内に複数の外部決済リンク/ボタンを自由配置 ✅ 可能。ガイドライン改定で明示 🔶 ほぼ可能になる見込み(DMA準拠版ガイドライン待ち) ❌ 依然として制限あり(External Link Account Entitlement + Apple 税)
Apple への手数料 0%(裁判所命令で禁止) 未確定だが 0% が想定される流れ 27%(現行ルール)
ユーザー遷移時の警告画面 中立的な一行注意のみ可。恐怖を煽る文言・強制待機は不可 同等水準をEUが要求すると予想 現行の警告画面を維持
App Review 審査 外部リンクに対し UI/文言の細かな指定は基本なし ガイドライン更新後に整合性チェックへ 従来通り

 

なんと、これは、もうApple側は今度こそどうしようもないのではないか。AIの従量課金もこれでやりやすくなるなと喜んでみたものの、どうやらまだアメリカのみの適応らしい。

しかし、今後、日本でも同じような対応になる可能性は大きいので、期待して待つとします。

さて、iOSアプリで生計を立てている僕としては、かなりでっかいニュースなんだけど、Appleが今後どう対応していくかというのは注目です。

一番良いのは、Appleが課金に対する税金をさらに下げてもらって、クレカ決済するよりもちょっと高いぐらいに設定してもらうぐらいになってもらえると一番嬉しい。

なんだかんだ言って、Stripeみたいなサービス使ったとしても、すでに課金設定しているAppStoreの仕組みを使って決済できる利便性には敵わなかったりする。

そして、課金の問題とか、返金とか、そういう死ぬほど面倒でやりたくない事柄をAppStoreで完結できるのはでかい。ユーザの課金情報とかクレカ情報とか、アカウントとパスワードとか、できるだけ開発側で持ちたくないんですよね。Stripe使うと、その辺もだいぶ楽になるんだろうけど。

まあ、NetflixとかSpotifyとか、でっかい会社は元々アカウント登録させる仕組みがあるし、税金30%が5%ほどに下がると死ぬほど大きな売り上げの差になるんだけど。

確か、Netflixって、一時期からiOSアプリからはサブスク自体に入れない仕組みになってた気がする。

iOSから加入されると30%の税金取られるから、iOSアプリからの有料版加入者は捨てて、Webから絶対加入しないといけないという仕組みにしてたはず。

というわけで、Appleさん、ここは、もう諦めて、課金に対する税金を値下げしてもらえないだろうかというところなんだけど、ここはかなりの収益源なので、Appleもまだまだ戦うことが予想されます。

ちなみに、よく聞いているLexという人の海外の有名インタビュー番組に、早速Epic Gamesの創業者が出ていて、この件について話してた。Appleとの戦い以外も、ビデオゲーム業界の進化とか、インディゲーム開発者に対するアドバイスとか、色々話しててかなり面白い。

特にAppleについては、こんな感じで語ってる。

あなたがコンピュータや電話を買うとき、自分のお金を払っていますよね。支払った以上、その端末はあなたの所有物です。にもかかわらず Apple が他の開発者のアプリを直接インストールしたり、自分でアプリを書いて動かしたりすることを妨げる理由などありません。開発者アカウントも面倒な手続きも必要なく、直接実行できるべきなんです。ユーザーがアプリを手に入れたら、開発者と直接取引できるべきです。

すでに端末を買っているのに、なぜ Apple があらゆる商取引に 30 %もの“ジャンクフィー”を上乗せするのでしょう? しかも特定の分野には課し、別の分野には課さない。これは競争エンジンを停止させる行為です。Windows やインターネットでは依然として活発な競争があるのに、モバイルアプリの世界ではストアが競争を潰してしまいました。Valve が iPhone 向けに Steam を作ったら、App Store よりずっと良いものになるでしょう。

競争があれば Apple はより良い App Store を作らざるを得なくなり、結果として全員が恩恵を受けます。しかし Apple と Google がソフトウェア経済を動かす競争エンジンを止めたことで、すべてに深刻な影響が出ています。モバイルアプリの性質もゲーマーの感覚から見て酷いものに変わりました。コンソールのトップゲームは真に価値のある作品ですが、iPhone のトップゲームはほぼ常に金銭的に貪欲な“ホエールゲーム”で、Pay to Win やルートボックスが蔓延し、ギャンブルのようです。

こうしたゲームは楽しさではなく、プレイヤーを操作して利益をむしり取ることが動機です。楽しいゲームが成功するのは非常に難しい状況になっています。オンラインゲームの運営コストは非常に高いのに、収益の 30 %を Apple に払わなければプラットフォームにアクセスできません。30 %は多くのゲーム会社の利益率をはるかに上回ります。つまり、その分だけ価格を上げるしか生き残る道がない。これは経済全体へのインフレ圧力です。

それだけではありません。たとえば Apple が Fortnite をブロックする前、“Fortnite” と検索すると一番上に出るのは競合ゲームでした。検索結果の上位を得るには実質 45 %払うことになりますし、SNS でのユーザー獲得にはさらに 20 %。結局 70 %近くが“ジャンクフィー”に消え、残りでは健全なゲームを作るのが難しい。

iOS にも例外的に素晴らしいゲームはありますが、競争が失われエンジンは腐敗しています。競合ストアが解禁されれば、もっと良い選択肢、もっと良い価格が生まれるでしょう。

すべての企業は Apple を恐れています。 Apple は彼らのビジネスを破壊できるからです。エピックはフォートナイトという世界最大のゲームを抱えていた特別な立場にあり、ユーザーの大半が PC とコンソールでプレイしていたので、iOS から締め出されても生き残れました。

Spotify や Facebook のような企業は Apple なしでは生き残れません。 Apple は開発者に「戦えばアプリを全ユーザーから取り上げる」と明確に示しています。実際、我々への対応は法廷闘争だけでなく世界の開発者への見せしめでした。

もう一つの武器が“ソフトパワー”です。審査を早めたり遅らせたりするだけで企業の競争力を左右できます。アップデートを数週間、時には数か月遅延させられた大手企業もありますが、公に言えず沈黙しています。

私は、10 億人規模のリアルタイム 3D ソーシャルエコシステム――いわゆるメタバース――を実現するには、 Apple と Google の門番独占を打破する必要があると信じています。

Apple は iOS の全ブラウザに制限を課し、Web アプリがネイティブアプリと競合できないようにしています。もしメタバースを同じ扱いにしたら「Apple 製以外のエンジンは禁止」という事態になりかねません。多数の障壁を築き、一つ突破しても他が残る。その結果が DMA 法があるヨーロッパでさえ見られ、Epic Games Store の成功は阻まれています。EU が本気で DMA を執行し、厳罰を科すまで変わらないでしょう。

彼らのやっていることは間違いです。公開圧力と政府の圧力によってプラットフォームが開放されることを願っています。競争はすべてを良くします。 Apple は最良を目指せるのに、古いポリシーにしがみついている。私たちは再び Apple と協力したいのです。Apple II の頃のようにオープンな Apple が戻ってくれば、世界一の企業になれるでしょう。今の Apple は歴史の間違った側に立っており、変わる必要があります。

 

こんな感じでかなり辛辣です。確かに、Steamみたいなプラットフォームに比べて、モバイルは金儲け主義のゲームが増えてしまうのは、エコシステムが原因なのかもしれない。アプリの検索システムはもっと良くして頂きたいなあと。

僕としては、最近のAppStoreは以前よりレビューの審査も早いし、サブスクの管理もしやすいし、10年前よりはるかにビジネスしやすくなって助かるなあと思ったりもしてるんですが、Webが標準の開発者からするとあり得ない部分は多いのかも。

Xcodeとか、AppStoreの仕組みとか、課金部分をまるっとやってくれたり、Webでサービス作るよりすごく簡単にできるっていう部分はあるので、その分の取り分を払うのは特に不満はないんですよね。正直。それが何%ぐらいが適切かってのは、難しいところだ。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら