最近、トップレベルの将棋棋士が、対局中の休憩時間に将棋ソフトを使用してた疑惑という衝撃のニュースがあったけど、ちょっと前に読んだ最高に面白い本を紹介してみる。

不屈の棋士 (講談社現代新書)

この本は、今年読んだ本の中でトップ3には入る面白さだった。

というのも、世間では「AIに仕事が奪われたらどうしよう!僕の今やってる仕事は数年後も大丈夫かな!」という懸念をよく聞きますが、この本読むと、将棋棋士の人たちにとっては、それが今そこにある危機状態だというのがひしひしと感じる。

この本は、数年後に読むより、今すぐ読むのが一番面白い。

本の中では、ソフト将棋に詳しい棋士から、ソフトを練習にバンバン使ってる若手棋士、羽生さんやら、元名人の森内さんやら、インタビューを受けてるメンツも豪華ながら、それぞれ見解が違っててすごく面白い。

例えば、ソフトをバリバリ研究に使って実力を伸ばそうとしている若手棋士の見解もあれば、ソフトが考えた戦法は絶対に使いたくないと主張するベテラン棋士など、それぞれの見解も全然違う。

羽生を破って名人になった28歳の佐藤天彦名人はソフトを研究に使っているらしいから、時代の流れはコンピュータとの共存なしには強くなれないのかと最初は思ったけど、そう単純ではないのがインタビュー読み進めていくとわかる。

なぜかというと、最初はソフトを研究に使っていたけど、あまりにソフトに局面局面での答えをすぐに教えてもらうようになってしまうと、実際の対人戦の時の読みが鈍ってきてしまい、結果的に弱くなってしまったという棋士のインタビューもあったからです。

個人的にはここが一番面白かった。

さらにいうと、あくまで人間の棋士が対戦するのは人間だから、ソフトと戦う時とは戦法も違う。人間はミスするし、疲労もするし、戦局をわざとぐちゃぐちゃにしてあまり研究されてない局面に持って行くと形成が逆転する可能性も高まる。

だから、こういう対人戦でのみ有効な強さやかけひきは、対人戦でのみ鍛えられる。なんか、昔ストリートファイター2でいくらCPUと対戦しても、ある一定レベルから対人戦での強さが鍛えられなかったことを思い出しました。

かといって、ソフトを使ったほうが研究効率が高い部分も多くあるには間違いないので、本当に強くなるにはどこで使って、どこで使わないか、その見解がそれぞれの棋士で本当に全然違ってて興味深い。

将棋でこの先も食っていけるか

そして、もうひとつ面白いのが、今まさにAIの進化によって、食い扶持がなくなってしまうかもしれないという危機感がインタビューからひしひしと伝わるところ。

いくらAIがいろいろな仕事を奪うと言われていても、実際にそれが現実になるまでそこまで人間は真剣にならないもんですが、将棋棋士の人たちにとっては今そこにある危機だから、みんな真剣に考えている。

もちろん、チェスのように人間の棋士がコンピュータに完全に勝てなくなったとしても、人間対人間の勝負にこそ価値があるから将棋人気は衰えないし、将棋棋士の収入も減らないだろうという考え方もできる。ボルトはバイクより遅いけど、世界一速い人間としてみんなが熱狂するし。

でも、もし自分が将棋棋士だった想像してみたら、そんな論理で安心できるわけがない。

コンピュータに人間がまったく勝てないとわかったら、一般人は将棋棋士同士の戦いに興味をなくしてしまうかもしれない。

対局中の中盤での局面でも、どちらが有利かをはっきりと数値化されてしまい、コンピュータを使っている人がみるとあとは答え合わせという状況になるとする。あとは詰将棋をミスなく終わらせるかだけというのがすぐわかるようになれば将棋観戦の醍醐味はなくなるのではないか、など、いろいろな見解がインタビューで出てくる。

ただでさえ、将棋棋士のメインスポンサーである新聞業界が元気ないわけだし、人気がなくなると、トップレベルで億稼いでいる棋士が数年後に10分の1の収入にならないとも限らない。

逆に、AIとの戦いがきっかけで、将棋への注目が集まり、新しい観戦の仕方、楽しさが発見され、エンターテイメントとして人気が出る可能性もないとも限らない。ドワンゴの電王戦なんかが発展していったり。

AIで仕事が奪われるかもしれないという危機感がめちゃくちゃ高く、なおかつとびきりの頭脳を持った人たちがそれに対してどう考えているかっていうのが面白いので、数年後読むより、今読むのが一番熱い本だと思いました。


*確定申告のTaxnote、家計簿ZenyListTimerなど作ってます。自己紹介はこちら