Web業界では、先進的なイケてるプロダクトのアイデアを思いつく人が多い。そして、そのアイデアを誰かが先に作る前に世に出したい!と考える人も多いと思う。僕もなにか思いつくたびにそういうことを考える。

でも、実際はそんな心配は杞憂な場合が多いんじゃないでしょうか。そのまま真似してもうまくいくケースは本当に少なく、いろいろ工夫して真似したとしても失敗するケースも多い。もし真似しやすいケースだと、すぐ他の人も真似して優位性もなくなっちゃうし。

もちろん、物作りは真似から始まるし、素晴らしい製品は既存のアイデアがあって、僕が作る時も誰かのアイデアをパクってきたものばかりなんだけど、よく考えると単純にコピーするのは結構難しいので、あまり心配しなくてもよいのではないかと思った。

とはいえ、デジタル時代の著作権というデリケートな話にも繋がってくる話でもありますね。どこまでがまるまるコピーで、どこまでが工夫の余地あったのかとか。さすがに完全にコピー製品を作られたら困るだろうし、そうは言っても、真似から入るのがイノベーションでもあるし。

という面もありつつ、一般的にサービスをコピーするのはけっこう難しいから、あんまり心配しなくてもいいんじゃないかなと思ったことを書いてみる。

プラットフォームは真似できない説

まず、一番思いつきやすいのは、ユーザがいるプラットフォームをコピーするのは難しい説だ。これは分かりやすい。

例えば、Twitterのコピーサービスを作るのはできても、ユーザがいないとそのサービスには魅力が出ないというパターン。その他にも、ブログサービスみたいに、ユーザが書き込んだ資産が増えていき、容易に移動できなくなるパターン。

ユーザがいないと使えない、でも、最初に使ってもらうにはユーザいないと使ってもらえないという鶏卵問題。

じゃあ、初期ユーザを用意できる必殺技がある場合、コピーしやすいんだろうか?

Googleユーザを流しこんでコピー

じゃあ、すでにたくさんのユーザがいるサービスのユーザを流し込み、最初の鶏卵問題をすっ飛ばしながらコピーするケースはどうだろうか。

これもそう簡単にはうまくいかない。ちょっと前だと、GoogleがGoogle+というサービスを作って、Facebookをコピーしようとして失敗してた。

Googleアカウントというすでに大量のユーザを囲い込んでいるGoogleが、そのユーザ層を使って、Google+に流し込み、なおかつFacebookで不満の種だった要素に切り込むサークルといった機能まで備えていた。

でも、うまくいかなかった。

最近よく読んでるしばだんでも書かれていたけど、既存サービスのユーザを流し込むとか、いわゆるシナジー効果というやつはそう簡単にうまくいくものではないらしい。あるサービスを使いたいユーザは、そのサービスが目的できたわけで、そこから違うサービスに流れ込むために来ているわけではないからと。

会社を売却すると、創業者の身に何が起こるか
(面白くて、最近ハマってるしば談の記事)

Google+の例でいうと、Googleアカウントにログインした人たちは、Googleサービスを使いたくてログインしただけで、SNSサービスのためにやってきた人たちではないからという話になる。

単純に、広告という意味では効果はあるだろうけど、10億人いるサービスから流し込んでも、その中の何パーセントが興味持ってくれるかはわからない。

先に囲い込むから説

その他に思いついたのは、すでに成功しているプロダクトがユーザを囲い込んでしまい、後からコピーしても時すでに遅しというやつだ。

例えば、北米の検索エンジン市場を考えてみる。Google一人勝ちの状態で、ちょっとやそっとの製品で切り込むのは難しい。相当使えるものじゃないとユーザはわざわざ移ってこないからだ。まず、自分の場合で考えたら分かりやすいけど、使いかってがちょっと上がる程度で今すでに使っているものから移るだろうか。

大抵の人は面倒だからやらないし、今自分が使ってるものを実際以上に評価するバイアスも出来上がっているので、実際には、「乗り換える面倒さ + 現状バイアス」を超える魅力が必要となる。

もちろん、囲い込んだ結果、ネットワーク効果が出来上がって、みんなが使っているから価値が上がるという防御壁も出来上がっちゃう。

となると、ネットワーク効果なんてそもそも存在しない、UIだけ真似したらいいアプリなんかの場合はどうだろうか。

FlappyBirdはコピーしやすいか

その昔、FlappyBirdという、鳥がピョコピョコ飛びはねるゲームが一時的に大ブームになった。このアプリが大ヒットした結果、コピーアプリが大量生産されて、似たようにいろんなモノがピョコピョコ跳ねるゲームだらけになったことがある。

FlappyBirdはSNSでもないし、お一人様ゲームなので、特に鶏卵問題も発生しない。とりあえずゲームも作りやすいし、UIだけパクれば出来上がりである。作者がアプリを取り下げたのもあり、当時は大量にコピー製品がAppStoreに溢れていた。

でも、FlappyBirdのUIをパクってまったく同じものを作ったとしても、FlappyBirdのように成功するとは限らない。

まず、FlappyBirdはリリースした当初から大ヒットしたわけではなく、ずっとAppStoreで低空飛行を何ヶ月も続けていたところ、北欧のヒカキンの10倍ぐらい儲けてるらしい海外のYoutuberが、「このゲーム難しすぎて笑える」みたいな紹介でいきなり火がついたらしい。

となると、FlappyBirdと同じようなゲームを作るのはできても、大ヒットするきっかけとなった現象をコピーするのは実質不可能に近いとなる。十分準備して待たないといけないし、準備しても幸運は訪れないかもしれない。

これが、UIだけ真似したらよさそうなアプリでも、本家本元のアプリと同じように成功するのはなかなか難易度が高い理由だと思う。

じゃあ、逆にコピーが成功しやすいパターンを考えてみる。

海外のサービスをローカライズ化する場合

なんかシリコンバレーでAirbnbというサービスが流行ったらしいから、うちの国でもやってみようぜとか、Uberっていうタクシー配車サービスが当たったから、うちの国でもやるぞというようなケース。

中国でよく聞くパターン。

これは、アイデアが時代にマッチしているけど、特定の国ではまだ進出してない、なおかつその国の文化障壁などがあり、その国の人にしかわからない隠し味やら、工夫する要素がたくさんあるケース。

インドのカレーをそのまま日本で売っても人気がでないので、日本人に受け入れやすいカレー屋を作ろうみたいな。

このケースは成功例がたくさん思いつくけど、かといって、簡単にコピーできるとは言えないんじゃないでしょうか。よくよく考えると、よくあるイノベーションの事例の一つな気がしないでもない。

ある製品を誰かが成功させて、それを見た違う人が、その製品のアイデアを参考にしつつ改良を加えた製品を作るケースはたくさんある。で、それが目論見通りうまくいく場合もあれば、うまくいかない場合もあって、イージーモードってわけでもない。

なおかつ、ローカライズ戦略に特化したとしても、グルーポンがアメリカで流行った後、日本でも類似サービスが100個ぐらいタケノコのようにできた時のように、わかりやすいアイデアであればあるほど競争が激しくて、これはこれで難しい。

ここまで書いてきて、プロダクトのコピーは意外に難しいんだなと思ったけど、現時点で王者として君臨しているサービスも決して安泰ではないのが面白いところ。

Myspace、Mixi、米国のYahooなど、流行ってたサービスが数年で萎んじゃったりする。変化の速いWeb系でなくても、一時期もてはやされていた大企業がバタバタと潰れていくのはよくある。

これは、環境が変わるとニーズも変わるからであり、大きくなればなるほど急激な変化に対応するのには不利になるからなんだけど、この話はまた長くなるのでやめておく。

これ系でいうと、最近読んだ理不尽な進化という本が面白かった。進化論っていうと科学的に聞こえるけど、騙されたらいかんよ。進化の過程で最適化してた種も突然のルール変更で絶滅するから、突然のルール変更と最適化の二つを混同してはいかんよという本だった。

なんの話をしていたんだろうか。そうだ、プロダクトのコピーはなぜ難しいかだった。

最後に、プロダクトじゃないけど、コピーしやすかった例を思いついた。マネーボールである。

みんなが真似したマネーボール革命

僕も好きな作家であるマイケルルイスが書いたマネーボールという本では、大リーグに統計学の手法を取り入れて、お金のない弱小球団が強豪に打ち勝つっていう実話を書いてる。

今まで見過ごされていた要素を、データ革命によって拾い上げ、そこを競争優位としてライバルに打ち勝ったって話である。でも、このネタは他の球団がすぐ真似しちゃって、数年でその競争優位はなくなってしまったという話らしい。

ちなみに、最近の大リーグはどうなってんだろうと思う人は、ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法がオススメ。最近はえらく複雑になってます。

こういう話を聞くと、「そうか、簡単にコピーできることはすぐ陳腐化するから、真似から入りつつ新しい価値を作らないといけないのかな」と当たり前のことを思うけど、じゃあ簡単にコピーできない価値ってなんだろうか。。これもまた難しい。


※更新

Facebookで@zerobaseの石橋さんからよいアドバイスをもらった。許可をもらって掲載。

結局、一時的な競争優位を作るイノベーションができたとして、パクられるから「持続」しないですね。一見わかりにくくても、いずれパクられる。成功すればするほど外から解明されるし、中からも「秘密」が漏れやすくなる(トヨタでもアップルでも)。だから静的な持続的競争優位は幻想で、「持続的競争優位を動的に作り続け、更新し続ける能力」が重要なんじゃね? といった結論を得てますが、まあご自身で考えながら読んでいただくのがよいと思います。 (『ストーリーとしての競争戦略』『経営戦略全史』など)

シンプルに言えば、「簡単にコピーできない価値」なんて幻想を捨てましょう。それがあるように見えても、それは単に短期か長期かの見方の違いでしかない。長期的にはすべてが簡単にコピーできる。だから「簡単にコピーできない価値(を一度作ればあとは一生安泰だ)」という幻想を捨てることをお勧めしますよ。

そういう幻想にすがりたくなる自身の「心の弱さ」こそ克服すべき。という超マッチョ結論w

でも考え方を変えれば「誰にでも逆転のチャンスがある」ということでもあるわけですよ。中世のように身分階級が固定化された「冷めた社会」がいいの?って考えてみれば、「どんな勝ち組でさえ、その競争優位性が永続的ではありえない社会」を言祝ぐべきではなかろうかw


*確定申告のTaxnote、家計簿ZenyListTimerなど作ってます。自己紹介はこちら