先日Twitterを眺めてたら、iOSアプリの価格モデルについての記事を発見。

Paid, Paymium or Freemium?

“有料アプリは死んでないよ”みたいなツイートと共にリンクが貼られてたと記憶してる。Clearを作った会社が書いたいい記事。

価格設定というのはその製品の戦略やポジションそのものを決定するとても重要な要素。僕もいつも悩む。

最近のアプリは有料アプリがどんどん売れなくなってきていて、売り上げランキングでもアプリ内課金がほとんどを占めてる。

アプリ戦国時代のご時世、いったいどうすればいいのだろうか?

価格モデルで悩んでいる人に参考になりそうなので、かんたんに要約して、それをネタにいろいろ書いてみたい。

ゲーム系でもある程度は参考にはなるかもしれませんが、主にプロダクト系のアプリを前提にしています。

有料アプリ

いろいろ言われてるが有料アプリモデルはまだ死んでない。特にツール系アプリでブランド力がある場合、有料モデルはまだまだよい選択肢だ。

有料アプリはセール時のプロモ効果があるだけでなく、ブランド力があるならとても上手く機能する。

有料モデルはここ18ヶ月減少傾向であり、アップストアの36%が有料アプリで。Distimoによると、アップストアの売り上げの4%しか占めてない。

しかし、無料アプリばかりになった今、有料アプリのプレミアム感が相対的に向上して有料モデルが復活するかもしれない。

僕は有料モデルが以前みたいに売れるようになる可能性は低いと思う。

アプリの数が増えれば増えるほど全体の質は落ちるので、ダウンロードして数秒で削除するようなハズレを引く可能性が高い状況でユーザが気軽にお金をさくっと払ってくれるとは思えない。

返金システムが変わるか、動画紹介やプロモーション方法が大きく進化するか、Appleが有料モデルをプッシュするような仕掛けに本腰をいれない限り厳しい。

でも、Appleのビジネスモデルはデバイスからの売り上げが大きく占めており、アプリの平均価格が低いほうがiPhoneは売れやすいので、構造的な問題であまり大きく期待できないのが現状。

製品の質とブランド力に自信がある場合は有料買い切りモデルがマッチするけど、問題は、製品の質とブランド力があるデベロッパーはほんの一握りだという点。

例えば、TweetBot3などは有料アプリが下火だからといってフリーミアムにしてたら逆効果だっただろうというのが分かりやすい。

さらに、有料買い切りモデルを成功させるにはプロモーションでも高いレベルが要求され、間違いなく数年前より敷居は高い。

僕の中では、有料買い切りモデルでの敷居が高い部分は、最初のリリース時から完成度と、それに備えたプロモーションを用意しないといけなくて、売れるかわからないアプリだと失敗した時のリスクが高いところだと思っています。

まとめると、ブランド力があり、すでにマーケットがあると確信があり、バージョン1.0に力を入れられるなら、有料買い切りはよい選択肢。

ランキングでも有利で、セールというブーストも使える。

あと、長く使い続けるかはわからないけど、一度触ってみたいという魅力があるアプリにも向いていると思う。

フリーミアム

※ここでのフリーミアムの定義は、無料でダウンロードできて、アプリ内課金を売るモデル。

たくさんの開発者が単純にフリーミアムに移行して、なにも得ずに失敗しているのを見てきた。

無料でユーザに与えすぎたか、与えすぎなかったかが原因であり、経験と知識がないとフリーミアムで成功するのはとても難しい。

アップストアでの売り上げの92%はフリーミアムのアプリからだが、実は、アップストア全体でフリーミアムのアプリが占める割合は11%だ。

一日に5,000万円以上稼ぐフリーミアムモデルのアプリもあるが、成功しているのはほんの僅かであり、それらの会社は新規ユーザを獲得するための戦略や、分析などにたくさんの投資をしている。

フリーミアムで収益をあげるにはたくさんのダウンロード数が必要。小さなデペロッパがフリーミアムタイトルで、長期的な収益をあげるのはとても難しい。フリーミアムモデルを選択する時は十分慎重にならないといけない。

ここで指摘しているように、フリーミアムモデルの場合、どこまで無料で、どこからアップグレードにするかの選択がとてもとても難しい。

ちなみに、アップストアのルールでフリートライアルは禁止されているので、Webサービスでよくある、30日間無料で、その後続けるには有料というモデルが使えない。

なので、Dropboxみたいな無料でも使えるアプリにしないといけないので、そこの境目を考えるのが難しい。

ちなみに、”みんなが使いたがる機能は無料にし、一部のハードコアユーザだけ必要な機能に課金する”というフリーミアムモデルの考え方が参考になるかも。これも、時と場合によるから難しいけど。

このモデルのメリットは、たくさんの人にとりあえずアプリを試してもらえるところ。

有料買い切り+無料バージョンの二つ出す場合と同じじゃないかと思うかもしれないけど、二つに分けるより、アプリ内ですぐアップグレードできるほうがシンプルで待ち時間もないので、ユーザフレンドリです。

気に入った人にだけ購入してもらうので、アプリに自信があれば、価格も買い切りモデルより高めに設定しやすいとも思う。

上手くいっている参考事例がPaperですが、このモデルを採用した時点で、ある程度のネガティブフィードバックは避けられない運命にもあります。

他のデメリットは、買い切りモデルと違い、有料版をプロモコードで配ることができない。

これは、なにかトラブルがあった時にお詫びとしてユーザにプロモコードを渡したり、レビューアに無料のプロモコードで試してもらうことができない。

他には、セールでダウンロード数を増やす無料のプロモーション活動が使えない。

ちなみに、元記事にある、”フリーミアムで利益を出すにはダウンロード数が相当数必要で難しい”という指摘は正しくないと思う。

ダウンロード数がそこまでいかなくても、コンバージョン率 x 一人当たりの単価が高い場合もあるからだ。

僕は有料買い切りモデルと無料+アップグレードは有料のフリーミアムモデル、どちらもやったことがあるけど、基本的にフリーミアムが多いです。

一番の理由は、新しいアイデアのアプリを早くリリースして、反応を聞きながらアップデートしていくという開発方法がフリーミアム型に合っているからです。

ペイミアム

元記事の最後では、「有料で最初に購入してもらい、一年ごとのアップグレードや追加機能にアプリ内課金で購入してもらう」という、ペイミアムというモデルも最後に紹介されている。

このモデルは今後可能性があるので、試していきたいと書かれているけど、これは有料買い切りアプリを売るよりハードルが高そうである。

まず、有料アップグレード機能をAppleが採用しないと無理だし、有料で購入したアプリでさらにアプリ内課金があると、アップストアの一般的なユーザ心理としてはかなり難しいと思う。

ただ、新しいモデルにチャレンジする先行者は常に応援するつもりなので、難しいだろうなと思いつつも、ぜひ頑張って頂きたいです。

僕も、あれが上手くいったとか失敗したとか、出来る限り試した事をブログでシェアしていきたい。

長くなってきたけど、価格モデルをネタにもうちょっと書いてみたい。

広告型

カジュアルゲームでは広告型が多いけど、プロダクト系のアプリではあまり広告型はみない。

これは、プロダクト系のアプリでは広告が嫌われるという要素もあるけど、実は広告のマッチング率の話なんじゃないかと思う。

アプリ広告を専門にしている人に詳しく聞いた事があるんだけど、日本でアプリ広告にお金を出す会社は、同じくアプリで儲かっているアプリゲーム会社が多い。

となると、似たようなユーザからの流入が期待できるカジュアルゲームのほうが、ユーザがその広告をタップしてくれる確率が高くて、その後、広告先のアプリをインストールしてくれる確率が高い。

例えば、毎日使う便利系のアプリに広告を出しても、それを使うユーザはゲームアプリに興味がない人が多く、タップしてくれる人はほとんどいなくて、広告単価が下がって、いれても儲からないというサイクルになるらしい。

ただ、モバイルでのEコマースが今後広がり、マッチング率も高まったら、プロダクト系のアプリを使っている人でも興味のある広告が出やすくなる可能性が高まるので、今後は変わる可能性がありそうです。

例えば、Gunosyというレコメンド系のニュースアプリにコマース系の広告出したら、もの凄い結果がよかったと最近聞いて、ほほーそうなんですかとびっくりした。

広告モデルはシンプルにユーザからお金を貰うモデルに比べ、サービス側が誰を優先するかのインセンティブが広告主とユーザと二分されてしまう難しいデメリットはあるけど、WebだとStackOverFlowというプログラムのQ&Aサイトみたいに、プログラマの求人広告がウザくない感じで上手く表示されているケースもありますね。

また、地味に重要なポイントとして、個人開発者がアプリを出す時に有料アプリは心理的ハードルが高いけど、広告モデルだと気軽にアップストアに出してみようかなとなりやすいこと。

ちなみに、サブスクリプション型とか、iOS7から可能になった買い切り => フリーミアムというやり方や、買い切り型とフリーミアム同時に出すとか、まだいろいろあるけど、さすがに長くなりすぎるので止めようと思う。

一番重要なこと

価格モデルを決定するうえで最も重要なのは、ユーザを知ることだと言われます。

自分のアプリを使ってくれる人はどういう人達なのか。さらにいえば、どういう人達に向けて売りたいか。

また、往々にして、実際にリリースする前に、この値段で払いますか?と聞いても無駄なことが多い。

人間は「喜んで払うよ」という人も、使った後に、「これは違うな、これじゃ払わないわ」となったり、「絶対払わないわ」と言っていた人が、「これはいいものだから払ったわ」となったりすることは日常茶飯事だし、自分もたくさんそういうことがある。

価格モデルには正解がないので悩ましいところです。

参考記事

discounted app upgrades suck
なぜか元記事のリンクが消えてたのでしょうがなくキャッシュ先。開発者が長年訴えてきた、有料アップグレード機能がなぜ最悪のユーザ体験に繋がるかの一読の価値ある文章。

How to Develop Your SaaS Pricing Model
SaaSを前提にしてるけど、価格設定の基本的な考え方は共通なので凄くいい。

ユーザーインタビューで製品にお金を払うか聞いても無駄な理由


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら