この前たまたま夜中にプログラミングに疲れ果てて死にそうだったんですよ。そして、ちょっと気晴らしでもするかと思ってネットを徘徊していたところ、ちきりんさんがはてなのオフィスを訪れたという話を読んだ。

はてな訪問 – ちきりんの日記

これがサービス提供者とユーザ視点という観点でみると非常に面白いなあと思いまして、いつものごとくサービス開発にどう生かせばいいかとうんうん考えた事を書いてみたい。

この記事のなにが興味深かったかを説明すると、ちきりんさんがはてなダイアリーを使い続けている最も重要な理由が、”日付が分りやすい”という理由らしい。

これには「そんなことが理由なんですか?」みたいな顔をされましたが、私に言わせると、「それ以外にはてなでブログを書く理由って何があるんですか?」って感じです。

もちろんはてなダイアリーはブログとして最低限の水準をクリアしてたんだろうけど、ちきりんさんにとっては”日付が分りやすい”という部分が何よりも大切で、これが決定的な部分だったらしい。

こういう、サービス提供者側が想像してない理由、使い方などで、ユーザがそのサービスを選んでいるという事は本当によくあることだと思う。

サービス作っている側からすると、”他の競合サービスにはないこの機能でユーザに選ばれてるのだろう”とか、”うちのアプリを使ってもらっている理由はUIデザイン”だろうとか、こう思ってていても、実際のユーザ側としてはまったく違う理由だったりする事がある。

自分がなにかの商品を使い続けている理由も、結構ささいな部分が多かったりするもんな。

もちろん、どのターゲット層に最適化するかでニーズに答えるかどうかは変わってくるから、ちきりんさんがこういっているからそこを重視しろっていう事が言いたいわけではなくて、そういう理由で選ばれているのかと知るだけでもすごく参考になると思う。

ユーザが商品を買う理由

このはてな訪問の記事を読んで、37SignalsのJasonFriedが2012年で一番影響を受けたとTwitterで呟いていた、クリステンセンのビデオを思い出した。

※クリステンセンって誰よ?っていう人に説明すると、イノベーションのジレンマを書いた有名なハーバードの教授で、ジョブズも非常に影響を受けた人

簡単に内容を紹介してみるとこんな感じ。

あるミルクシェイクの会社が商品を良くしようと思って、ユーザーインタビューを実施した。”フレイバーはどれがいいか、チョコレートの配合はどうするといいか”とかいろいろなユーザーフィードバックをもらい、その調査を参考にミルクシェイクの味を改善したらしい。

しかし、まったく売り上げには影響がなかった。

そこで、ミルクシェイクの会社は、実際に商品売り場に調査に行き、お客がどういう時間帯に商品を買っているか、どの時間帯に売れているか、どういう人達が買っているかを一日中調査することにした。

すると、ミルクシェイクの売り上げの半分は午前8時前に売れていた不思議な事実が判明。

ミルクシェイクを購入した人達はみんな一人で、ミルクシェイクだけを購入し、みんなが車に乗っている人達だった。

そこで、その人達に”不思議なのですが、なんでミルクシェイクを選んだんですか”といったような質問をしてみた。

“もしミルクシェイクを買わなければ、どういう理由でなにを選んでいましたか?”といったような質問もすると、それぞれがみんな、退屈な長い通勤時間を我慢しなければならないことがわかった。

片手でハンドルを握り、空いている片手で退屈な通勤時間になにか気晴らしになるものが必要だった。

朝早いからまだお腹は減っていないけど、10時頃にはお腹が減り始めるから、ちょっとだけお腹を満たしてくれるものが最適だった。

お客さんが言うには、”バナナはダメだった。バナナはすぐ食べ終わる。ドーナツも試したけど、ドーナツは手が汚れて運転中には向かない。ベーグルも味がなくて退屈でダメだ。”

“ミルクシェイクはこんな時ぴったりで、手も汚れないし、持ちやすい。空腹も解消される。”

お客がその商品になにを期待しているかを理解できれば、商品を改善するのは非常に楽になる。(終わり)

いやあ、これは言われてみるとそうかそうかと思うんだけど、開発側はついつい近視眼的になってしまうから、常に意識しないと忘れちゃうなあ。

この機能を完成させれば、競合製品と差別化できるからユーザが増えるはずだ!とか思ってても、今のユーザにとってはそれはたいして重要な部分ではなく、もっと違う部分を良くして欲しいと思っているとか。

むしろ、どうでもいい機能が増えたら、それを特に重要視してないユーザにとっては複雑さがまして逆にマイナスになったり。

ユーザのフィードバックをもらう時は、”使い続けている理由で一番重要な部分はなにか”、または、”使うのを止めてしまった理由の決定的な要素はどこか”。とか知りたいんですよね。

UXの専門家とかだったら”当たり前の話だね、うん。”ってなるかもしれないけど、ついついこういう視点を忘れちゃう事って多いからなあ。

こういう事を答えてもらえるようにはどういう聞き方がいいかとか、いろいろと悩ましい。


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