最近、海外のスタートアップ界隈では”モバイルファーストは間違いだった”という意見がよくでてきている。

それにたいして、”これからはモバイルだ!モバイルだ!”とずっと言い続けていたTechCrunchのエース記者MG SIEGLERさんとの対談が非常に面白い。

動画はこちら。Mobile First Or Mobile Worst?(英語)

この動画で語られている事は興味深すぎるので、出来る限りどんなことを話しているかを紹介するとともに、事の経緯とか、iPhoneアプリを開発している立場として僕の意見も書きまくりたい。

ちなみに、この動画で話しているのは、スタートアップが新規事業を立ち上げる時にスマホアプリから始めるか、それともWebベースのPCサイトから始めるかの話です。

例えばFacebookはWebファーストで、Instagramはモバイルファーストのスタートアップ。

基本的にはサービスに合致するプラットフォームを選択するのが大前提なんだけど、新規事業の初期段階において両者のメリット・デメリットの話をしている。

モバイルファーストはまちがい?

いろんな起業家の人達が、モバイルアプリでのマーケティングの難しさ、データ分析のし辛さを嘆いていたんだけど、特に最近話題になった記事がOrigami LabsというYC出身の起業家が書いた記事。

なぜ、僕たちがモバイルファーストからWebファーストにピボットしたか(英語)

この記事はモバイルアプリ開発およびマーケティングをしている人達なら必見の記事で、素晴らしい。

二つのモバイルファーストスタートアップでの経験をもとに、ユーザの行動データ、ユーザ獲得のコストなどのデータを示しながら、なぜモバイルファーストは難しいかを書いている。

絶妙なタイミングで宣伝しておくと、こういう長い英語の記事こそ、Lisgoで聞くとか、英語苦手な人は耳で聞きながら読んでね!

この長文の記事はデータもいろいろあって面白いから原文で読んだ方がいいんだけど、ざっくり主旨を紹介すると、

  • ユーザ獲得のためのUI・UXを最適化しづらい
  • モバイルだと口コミマーケティングがしづらい

ものすごく大雑把に言うと、この二つに絞られると思う。

モバイルアプリはWebに比べてユーザがどこからきて、どういった行動を取って、どのようにアプリに戻ってくるかのデータが取る事が非常に難しい。

初期のスタートアップにとっては、アクティブユーザの行動を分析して、どういうふうにアプリのUIやUXを最適化すれば、ユーザー獲得のコストを最適化できるかが肝なんだけど、これが難しい。

結果的に、どのターゲットや分野に絞るべきかなど、アクティブユーザを獲得する最適な道筋を探ることができない。

まあ、これは目隠ししたまま銃を乱射するようなもんですよね。モバイルは本当にこれが厳しい。

初期はユーザ獲得のコストを出来るだけ下げないといけないから、Growthハッキングとかが重要になってくるんだけど、それに必要なデータがそもそもとれないから最適化しようがないと。

また、モバイルユーザはWebに比べて我慢しないから、Facebookのサインアップがあると結構な数の人が離脱、メールアドレスを取得するのも一苦労。

そもそもダウンロードした人の半分がアプリを開かないみたいなデータもあるらしい。これはアプリのダウンロードに広告打っている場合、かなり痛い。

さらに言うと、多くのモバイルユーザはアップデートをほとんどしない。アップデートに時間もかかるため、バグの可能性を最小限にするために開発側のアップデートも慎重になり、開発スピードも落ちる。

Origami Labsの人が主張しているのは、これからもモバイルユーザが増えるだろうけど、Webサービスから始めるほうが成功確率が高いから次はWebファーストでやるということだった。

理由は、サービスの初期段階はユーザを分析して最適化を素早く繰り返す必要があるので、モバイルは不利だと。

PCはいずれ死ぬ、モバイルだ!

ずっと前から、モバイルファーストを連呼してきたMG SIEGLERさんの主張はシンプルで、今後モバイルユーザが圧倒的になり、PCを触る事が一切ない人達がほとんどになる時代が迫って来ている。

それなのに、Webサービスに少ないリソースをさくのは地獄への道だと。

この二人がガチンコで対決だ!

このモバイルファースト派と、Webファースト派の二人が議論する動画が冒頭で紹介したやつなんだけど、実はこの二人、投資したVC側の人間と、投資してもらったスタートアップ創業者という間柄でもあって面白いですね。

MGさんとしては、モバイル時代にWebに飛ばして、そこからまた戻すというのは時代錯誤なんじゃないかとか、VC側の人間らしく大きな視点で語っている。

Origamiの人は、モバイルを捨てるわけではなくて、分析しやすいWebからユーザを集めてモバイルに流すんだとか、PCユーザが多いUSマーケットかどうかでも違うし、アプリのタイプにもよるとか、現実的な話が多い。

非常に興味深かったのが、”モバイルファーストのスタートアップはチームを雇う形での買収が多くて、Webで成功したサービスに取り込まれる形が多い。”というOrigamiの人の話だった。

マネタイズも難しいし、データ分析がしづらいモバイルアプリの場合、その後の成長可能性の判断となる指針が見えにくい。データ分析もマーケティングもやりづらいし、アップストアのランキングアルゴリズムで一気に変わる恐怖が常にあるのはキツいよなあ。

モバイルアプリはWebサービスより一気に成長もするけど、その分もろい部分があるかもしれない。

現時点での最適戦略はなにか

ここから僕の意見を書いていくんだけど、結局は現時点で、自分のやっているサービスにとって最適な戦略はどれかということになる。

ちなみに、ネイティブとWebViewを組み合わせるハイブリッド型という選択肢もあるんだけど、ユーザの要求が高いiOSアプリだと現時点ではパフォーマンス面で厳しい部分もある。

ハイブリッドだとAppStoreの検索にも引っかかるし、レビュー通さず変更できる部分が増えるので理論上は利点が多いのだけど。

※参考 ネイティブでもHTML5でもない「ハイブリッドアプリ」の価値

Facebookだって、これからはHTML5だと未来を予想して舵を切ったけど、思ったよりテクノロジーが進化しなくてネイティブメインにしてるし、ここのさじ加減はみなさん悩んでいる部分だと思う。

どこまでハイブリッドにするべきかは、アプリのタイプによっても変わってくる。

未来をみると明らかにモバイルばっかりになるけど、下手すれば半年以内に方針が大きく変わってピボットなんてしちゃうスタートアップからすると、現時点で最適な戦略はなにかが大切だ。

そういう意味で、僕はモバイルファーストのサービスをやって試行錯誤した後に辿り着いた事を話しているOrigamiの人にかなり共感した。

僕自身も最近は、アップストアの検索が厳しいから、Webのランディングページを充実させることも考え直しているし。

※参考 モバイル全盛の時代だけど、アプリのWebランディングページを洗練させる意味も大きい理由

例えば、Twitterでアプリの宣伝する時に、Webの宣伝ページをリンクするか、AppStoreの直リンクをはるかどうかも非常に悩む部分。

Webサイトだったら動画とかつけられるし、ユーザにある程度アプリの魅力を説明してからダウンロードしてもらえるし。そういう場合は、アプリを起動してすぐ捨てる可能性もかなり減るだろう。

いろいろ話す事は多いんだけど、お前のブログは長過ぎるとか、アイドルの写真を挟めとかよく言われるので、このへんで終わるとする。

追記

※動画ページのコメント欄を見ていたらこんなコメントが。

“API first. Build a web app. Nail distribution loops. Then extend views into the platform universe.”

“APIファースト。Webアプリを作って、販売網を確立してからプラットフォームを拡大する。”

全部やればいいじゃないかと思うかもしれないけど、最初はとにかく小さな範囲で検証と改善を低コストで回すのが重要だから、どこに絞るかとても重要。

※スマホアプリのランディングページについて

Twitterでモバイル広告に詳しいお方がコメントしてくれたんだけど、スマホアプリのプロモーションはなんだかんだいって直接AppStoreが主流みたいだ。

2011年初めとかに大手がStore直とWebのランディングページを挟むABテストとかやって、結局Store直に落ち着いたとか。

当然ながら、このへんはアプリやサービスのタイプによってやり方は変わってくるなあ。iOS6の変更でストアからアプリが見つけにくくなったとはいえ、スマホ用の単体ゲームだったら仮説検証したいスタートアップとはまた違うだろうし。

スマホ用のランディングページは自分も結構迷っている。

アプリのランディングページにoLarkつけたら、結構初めて自分のアプリを知る人が質問してきてくれて、その人達とチャットすることによっていろいろな疑問ポイントがわかったりもした。これは大きな利点だった。

でも、アプリでTwitter見ている人がリンクをタップした時は直接ストアに飛んだ方がいい気もするし。デバイスがモバイルだったらストア飛ばして、PCだったらWebのランディングページ飛ばすとかが理想なのかな。

なんでもそうだけど、結局は自分のアプリやサービスに合うと思うやり方を自分で考えて選択しないといけないっすね。スマホゲームで攻めるか、Githubみたいなプログラマ相手のサービスか、Instagramみたいな写真アプリかでも違うし。


*確定申告のTaxnote、家計簿ZenyListTimerなど作ってます。自己紹介はこちら