反復に敏感になる

ゼロベースの無料相談室にお邪魔した時、石橋さんに言われて最も印象に残っていたのが、「反復に敏感になる」でした。この言葉はとても衝撃的で、僕のUI設計の考え方に大きな影響を受けました。

「よいUIのiPhoneを作るためには、自分が毎日使うアプリを作ること」と素晴らしき言葉を深津さんはonLabのイベントで言っていた。

これに加え、自分でアプリを触っている時に、第三者の視点で自分が無意識に面倒な動作、使いづらい動作をしていないかをチェックする心がけが使いやすいUIのアプリを作るのにはとても役立つ。

つまり、自分が何回も使っているアプリだと、一連の動作に慣れてきてしまい、本来ならば面倒で自動化を考えるべき一続きの動作を高速で行えるようになるので、その動作が面倒だという認識がだんだんと薄れてしまっていく。

例えば、テキスト画面のフルスクリーンの切り替えであったり、フォントの大きさの調整までのステップであったり。工夫をこらせば2ステップのタップやスワイプで実現できる部分を、反射的な動作に慣れきってしまい、3ステップかかってても不便さを意識できないままだったりする。

かといって、自動化することでユーザの望む細かい動作が不可能になったりする場合もあるので、実際にコーディングしてUIをいろんな状況で触ってみないと判断が下せなかったりもする。

様々な状況でアプリを使う(家、外、昼、夜、歩きながら、寝ながら、etc)

Webサービスと違い、iPhoneアプリだと日常の様々な状況、姿勢、握り方で使うため、ボタンの配置の最適位置も状況によって変わる。

例えば、GoogleReaderアプリで、記事画面から前のリスト画面に戻るボタンは左上にある場合が多いけど、左利き、右利きの人でそのボタンがタップしやすいかが変わる。

さらに、寝転びながら落ちないように持ってるがっしり握る系の持ち方と、立ちながら支えて持つ方法でも、ボタンまでの指の距離が大きく変わる。

そんな時、スワイプで戻る機能を追加したり、逆にスワイプを有効にすることで誤動作が起きやすくならないかをチェックしないといけない。

僕みたいな引きこもりは、たまには外に出て様々な場面でアプリを使うのも重要であります。地下鉄に乗った時、電波が断続的に途切れる時の挙動、ポケットに閉まったり、持ち直したりした時に使いやすいか。

歩きながら画面を見ていると、座って静止した状態で画面を見ている時よりも見づらいので、大きな文字サイズのありがたみが身にしみる。

Lisgoの場合、車に乗りながらのテストがなかなか日常的に出来ないのがつらい。

他の人に触ってもらって観察する

ユーザビリティテストは完全に第三者の視点になれるから効果的だけど、そんなに長い時間を何度も何度もかけられないので、まずは自分で第三者の視点にたってアプリを使う自分を擬似的に観察するのが重要となる。

でも、もしユーザビリティテストが出来るチャンスがあればあるほど素晴らしいです。

自分のアプリを他の人に触ってもらう時は、使い方を逐一教えないで観察する。少しは動作の目的を教えないと進まない場合でも、達成してほしい項目だけ伝える。

「これどうやるの?」って聞かれても、出来る限り、どうやるかはすぐに教えないほうが、目的をユーザが自然に達成できるようにUIが作られているかがよくわかる。

ユーザビリティテストでは、「使いながら思ってる事を出来る限り口にしてもらう」とか、「使いづらいところをどんどん伝えてもらう」というのが理想だけど、普通の人はなかなかそこまで自分の考えをリアルタイムにべらべら話せないし、遠慮して、否定的な意見もあまり言わないと思う。

なので、黙って自分のiPhoneアプリを弄ってもらっているところを、横から観察するしかない。

この時、自分も見えるように、机の上にiPhoneを置いてもらって観察するのではなく、普段と同じように持ってもらって、自分は後ろから回り込んで覗き見するように観察したりする。

補足

ちなみに、最短で目的を達成させる効率的なUIを採用することによって、初心者にとっての分かりやすさが失われたりもするので、トレードオフが発生するか注意しないといけないので難しい。

また、TweetBotで有名なTapBotは、最短で目的を達成させるより、使ってて気持ちよいUIを目指してアプリを作るらしい。

極端な例だと、なめこ栽培のアプリなんて、ひたすら反復動作の繰り返しだけど、あれが気持ちよいからみんなやるので、ゲーム系じゃないアプリでも使う時の気持ちよさはこれからどんどん重要になると思う。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら