最近になって、AppStoreの自動継続課金の利用ルールがかなり柔軟になり、今までは問答無用で却下されてきた普通のツール系アプリでもiOSで自動継続課金が使えるようになりました。

さて、これはアプリでビジネスをしている人達にとっては有難いことであり、このブログでも度々取り上げてきたんですが、いろんなアプリが自動継続課金に移行しやすくなると共に、このシステムを悪用した詐欺アプリが出てくるなど、色々と問題も出てきたりしてます。

僕の作っている会計アプリTaxnoteや読み上げアプリVoicepaperでも、自動継続課金を一年以上提供してきたので、このへん、デリケートな課金部分をどう実装していくかの難しさも色々経験してきた。今日はそれについて書いてみたい。

まず初めに、AppStoreの自動継続課金のシステム上、どういう時に問題が起こるかって話から。

AppStoreの自動継続課金で問題が起こりやすい2つの理由

AppStoreの自動継続課金はその仕組み上、ユーザが知らないうちに課金の更新がされてしまいがちになってる。そもそも、自動継続課金という名前であることから、ユーザが課金を開始した後、自動継続のボタンをオフにしないと、次の更新時期になると自動で課金を継続することになる。

まあ、このへんまでは普通のWebサービスでもよくある仕組みです。解約するの忘れていて、使っていないサービスに課金し続けてしまった!くそ!ってやつです。

ただ、AppStoreの自動継続課金では、以下の2つの理由からこの問題が起こりやすい。(2018年11月12日時点で)

  • 1.自動継続課金をオフにする方法が分かりにくい
  • 2.アプリを削除したら解約されると勘違いしてしまう

1.自動継続課金をオフにする方法が分かりにくい
これは本当に分かりにくい。Appleのヘルプはこちらなんだけど、やってみるとわかるけど、この設定行くまでに慣れてないと時間がかかる。

「設定」>「[ユーザ名]」>「iTunes と App Store」の順に選択します。
画面の上部に表示されている Apple ID をタップし、「Apple ID を表示」をタップします。場合によって、Apple ID でサインインする必要があります。

アプリ開発者は自動継続課金をこっちから解約することはできないので、「解約してください。」っていう問い合わせが来たら、この解約方法を説明するという面倒な流れになります。

まあ、アプリ開発者自身が解約機能を作らなくて良いというのは開発コストが大幅に下がるし、デリケートな課金部分をAppleに任せられるから素晴らしいことなんだけど、この管理システムがユーザにとって使いにくいのが問題だったりします。

僕のアプリでは、アップグレードの画面で、ユーザが一発でAppStoreの有料版の確認・解約画面に飛べるようなボタンを作ったり、ヘルプへのリンクをつけて、そこからワンタッチで飛べるようにしたりしてます。これだけでもだいぶ違う。

2.アプリを削除したら解約されると勘違いしてしまう
アプリをインストールして、自動継続課金に加入して、使わなくなったらアプリを削除するという流れの時、自動継続課金はアプリを削除しても解約されない。ユーザは1で紹介した方法でちゃんと自動継続をオフにしないといけない。

アプリを削除したら自動的に解約されていると思ってしまうユーザは多いと思うので、ここも混乱しやすいポイントです。

例えば、一年単位の自動継続課金があるアプリをインストールして、継続課金を購入。使わなくなってアプリ削除。一年後の課金更新時期に、アップルから更新時期で課金されましたというメールが来て初めて気づくというパターンです。

僕のアプリTaxnoteでも、上記2点に付随した問い合わせは初期から多かったので、それに伴ってチビチビとアプリの課金部分にヘルプを分かりやすく置いたり、メッセージを工夫したり、色々試行錯誤してきて、今でもあれこれ悩んでます。

解約のしやすいアプリ設計をする意味

僕個人の考え方として、購入する前から、どうやったら解約できるかをハッキリと説明しておいたほうが良いと思う。なぜなら、僕が何かの定期購読サービスを始める時に、どうやって解約できるか、解約は面倒ではないか?ということをすごく気にするからです。

これは、昔PHPで作ったアラートポンという無料サービスでも、デカデカとアカウント解約のボタンをわかりやすいところに置いて、友達に「解約して欲しいのかよ!」って突っ込まれたぐらい気にしている部分なのです。

というわけで、Taxnoteでは、有料版の画面に解約方法というボタンをわかりやすい位置につけたんですが、もうちょいわかりやすくできる工夫は頭の中であるので、もっと良くできるとは思う。

ちなみに、上の考えは若干思想じみていてビジネス的に正しいかどうかはわからない。だけど、解約しやすい設計にする具体的なメリットとして、ユーザからの解約したいというサポートメールが減るということがあります。

有料課金のあるサービスを提供している人なら分かると思うけど、ユーザからの問い合わせのほとんどが課金方法、解約方法、課金でどういったことができるかなど、課金周りのことが多いんですよ。

これは当然のことで、とにかくお金を払うことになると、人間誰しも、「待てよ、これは多分こういうことなんだろうけど、ちょっと不安だから一応聞いておこう。」という気分になるもんです。

これは、ちょっとでも疑問に思ったらとりあえず確認してから購入しようかとなるんです。なので、課金部分は、死ぬほど詳しく説明するぐらいでちょうど良かったりする。

ただ、ユーザがさあ、課金しようかと思っている直前に色々な説明文をこれでもかと表示して、「購入する前にちゃんとこれ全部読んでくださいね!」っていう姿勢で設計すると、ユーザの認知リソースが一気に枯渇して疲れちゃって、「疲れたから、もういいや。めんどくさ。」ともなるので、バランスがとても難しいのです。

 買う気満々の時に言われた定員さんの言葉

ただですね、商売している人なら誰にでもあることだと思うんだけど、「これを話すと、今買う気になっているこの人は買うことを辞めちゃうかもしれない。」っていう瞬間がよくあると思うんですよ。

例えば、僕は最近都内をひたすら散歩して、正月で太ったこの4キロの贅肉が落ちないかなと淡い期待を持っているのもあり、Macbookを持ち歩けるバッグやリュックを探してたんです。

そこで、ふらりと入った服屋さんで、めちゃくちゃかっこいいショルダーバッグが置いてあったんですね。Macbookもぴったり入る、よし、これは買おうかなと思って、実際に試着して店舗内を歩き回ってたんですよ。

そうすると、やっぱり自分が使っているリュックに比べて、どうしても疲れやすいかなあと悩み始めたのです。なんかちょっと肩が疲れそうと。

その時、定員さんが正直に、「疲れないのはやっぱりリュックの方で、がっつり締めつけてフィットさせるほど楽にはなるんですよ。ショルダーバッグだとどうしてもその辺限界ありますね。」というアドバイスをくれたわけです。

ぶっちゃけ、その時の僕の気分としては、このショルダーバッグもう買っちゃおうっていう勢いだったんだけど、そのアドバイスはすごく参考になって、結果的にその一言で買わずに店を出たんですね。

この時の僕は、あんなにゆっくり見てたのにちょっと悪いなあと思いつつ、すごく正直にアドバイスしてもらったおかげで、この定員さんへの信頼度はマックスになったわけです。

短期的に売り上げを上げたい焼畑農業みたいなビジネスならともかく、長期的にやる商売ならこういう信頼感って後々ボディブローのように効いてくるんじゃないかなと。そして、明日交通事故で突然死ぬかもしれない人生、どういうビジネスをやって時間を過ごしたいかと言うと後者だと思うわけですよ。

そんなわけで、僕の帳簿入力アプリTaxnoteでは、TaxnoteプラスとTaxnoteクラウドという有料機能が二つあるんですが、後者のクラウドの方は、本当に必要な人以外はあまり入らないと思うので、悩んでいる人には「本当に必要かなと思ってから入った方が良いかもです。」というようなテンションで説明しております。

まあ、僕のアプリも色々失敗を繰り返してきたし、事業ごとの事情、それを実現するためのコストと理想のバランスが常にあると思うのですが、理想はこんな感じというイメージを持つのは良いことかなと。


*家計簿読み上げのアプリ作ってます。自己紹介と過去ログはこちら